目標達成できる人とできない人の違いは?「挫折しない目標設定のコツ」をプロが解説

新年や年度の始まりなど、生活を心機一転したいときや仕事を始めるとき、新たな「目標」を掲げてスタートを切りたくなります。今回こそはと目標を掲げても、やるべきことが増えて忙しくなり、結局達成できなかった…という人も少なくないのではないでしょうか?「挫折しない目標達成のコツ」を企業や組織における若手ビジネスパーソンの育成にも詳しい人事・採用コンサルタント曽和利光さんに聞きました。

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目標達成できる人とできない人の決定的な差は?

新たに立てた目標達成できる人がいる一方で、達成できない人もいます。その決定的な差は何なのか。目標達成できる人とできない人の決定的な差は、「目標を立てる」ということに対する解像度の差だと言えます。その理由は、高い目標であればあるほど、そこに至るまでの道のりは長く、細かいステップに分けて、それぞれに対処していかなければならないからです。

目標達成できない原因としては、大きく以下の3つが考えられます。

  • 目標の立て方に問題がある
  • 目標に対して自分の知識やスキルレベルが足りていない
  • 目標達成に向けた具体的な行動計画がともなっていない

目標達成ができない場合は、そもそも実現性のない目標を立てていないかをまず考える必要があります。自身の知識やスキル足りていないところがあれば、時間と労力がかかるため、目標への難易度が増します。

難易度が上がれば、目標達成への意欲が削がれていくかもしれません。その上で、目標達成に向けた「やるべきこと」や「段取り」などを具体的にしなければ、適切な行動計画が立てられず、より継続が難しくなるでしょう。

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目標を達成するための対処法とは?

目標を達成するための対処法としては、WILL(やりたいこと)・CAN(できること)・MUST(やらなくてはいけないこと)の観点から考え、3つのステップで実行していく方法があります。

ステップ1.MUSTを、WILLに近づける

目標を立てるとき、多くの場合は「これがやりたい!」「できるようになりたい!」というWILL(意欲)に基づいています。ただ、仕事においては、やりたいことがそのまま仕事になっている人は少ないのではないでしょうか。

プライベートの目標だったとしても、例えば「今年は〇㎏痩せる」「〇〇の資格を取る」などの思いを実現させるには、「やらなくてはいけないことをやる」という行動が必要となり、何らかの負荷がかかります。

そこで大切なのは、「やらなくてはいけないこと」をできるだけ楽しく、好きになれるようにやる力。MUSTを可能な限りWILLに近づける力ともいえるでしょう。

仕事においては意味付け力ともいわれ、「ジョブ・クラフティング」という理論でも知られています。

ジョブ・クラフティングは、仕事の意義を自分自身で捉え直し、やりがいのあるものに変えることを意味します。米イエール大学ビジネススクールのエイミー・レズネスキー教授とミシガン大学のジェーン・E・ダットン名誉教授が、2001年に提唱した理論です。やらされ感ではなく、自分にとっての価値を見出すことで、パフォーマンスの向上につながるといわれています。

私も多くの企業でハイパフォーマーの要素抽出を行っていますが、あらゆる企業のハイパフォーマーに共通するのは「仕事を楽しむ力」があるかどうかだと考えています。

やると決めたこと、やらなければいけないことに対して、「どうせやるのなら楽しみや意義を見出そう」「せっかくなら学んでいこう」と、目標達成の意味を改めて考えることが、意欲を維持する上で大切だと言えるでしょう。

ステップ2.MUSTとCANの重なりを大きくする

目標に対して自分の知識やスキルレベルが足りていなければ、達成は難しくなりますし、そもそも努力を重ねることもだんだんしんどくなっていくでしょう。

そこで、CAN(自分ができること)のレベルをしっかり認識し、それに見合った、かつ手を伸ばせば届く程度の高めの目標を設定することが重要です。ただ、ここで難しいのは、人は自分の能力を正当に評価するのがとても苦手だということ。その認知バイアスは、ダニング・クルーガー効果として知られています。

これは、「専門的なスキルや能力、経験が少ない人は自分の能力を過大評価する」傾向があり、同時に「能力の高い人は自分の能力を過小評価する」傾向があるという仮説です。これは、コーネル大学のデイヴィッド・ダニング教授とジャスティン・クルーガー教授が提唱したものです。

能力が高い人は、こんな仕事や目標は誰にでも達成できるだろうという“当たり前水準”が高いため、周りが能力の高さを評価しても、「いやいや、自分なんて当たり前のことをしているだけです」と自己評価が高まりません。

逆に、能力の低い人は当たり前水準が低く、周りがごく自然にできることでも、「自分にはこんなこともできる!」と自己評価を高めていってしまいます。

このように自己認知ができていないと、目標を設定するにあたり、そもそも達成できるレベルなのか、どれくらいの期間、何を勉強すれば達成できるのかを読み違える可能性が高くなります。
そこで、より客観的な視点で自分の能力やスキルを知るためには、他人からフィードバックをもらうことが欠かせません。

仕事の目標設定であれば、上司や先輩にフィードバックを求め、今の自分のスキルレベルでは、どれくらい努力をすれば達成が見込まれるのかを意見を求めましょう。

すぐに達成できるラクな目標でもなく、高すぎる目標でもなく、1年後には達成とともに自己成長が感じられるような目標はどんなレベルのものか。自分をよく知る周りの人と一緒に設定していけるといいでしょう。

ステップ3.MUSTのタスクマネジメントを徹底する

適切な目標を立てることができたら、そのゴールに向かうためのプロセスを分解していきましょう。

どんな目標にも達成すべき期限があります。WILLとCANが揃っていても、やるべきことの段取りが設計されていなければ、決められた時間内の達成は難しいでしょう。

MUSTの分解には、以下のプロセスを進め、どんな順番で何をするかの段取りを整えていきます。

  1. タスクを抜け漏れなく書き出す
  2. 各タスクにかかる時間を見積もる
  3. 全体作業に大きな影響を及ぼすタスク(クリティカルパス)は何かを見極める

プライベートで自ら設定する目標においても、段取り力は重要です。まずは、「1年後に自分のクルマを購入したい」「趣味で続けている習い事で、上級の資格をとりたい」など、さまざまな目標に対して、なぜやるのか(WILL)を改めて考えましょう。

その実現に向けて自分がこれまで何をしてきたのか、能力やスキルはどれくらいあるのか(CAN)を周りの声を聞きながら見極めていく。その上で期限に向けて、毎月・毎週、何をどう進めていくのかを考え、実現していきましょう。

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目標達成のモチベーションを作ろう

目標達成に向けては、周りを巻き込んで、モチベーションを自ら醸成していく工夫も大切です。

例えば、「今年は〇〇を実現する!」と周りに公言するのも一つ。すると、「あの目標、どうなった?」と声がかかったり、「〇〇を目指していると聞いたんだけど、こんないい情報があったよ」とノウハウが集まってきたり、周囲からのプレッシャーが力になっていきます。

また、目標達成度合いをグラフにしたり、SNSで進捗を報告したりと、自分が見える形で達成までのプロセスをモニタリングしていくのもいいでしょう。

「気持ちを新たに…」という精神論だけでは、目標達成にはたどり着かないのが現実です。WILL・CAN・MUSTの観点で、最適な目標設定を考えていくことから始めましょう。

株式会社人材研究所・代表取締役社長 曽和利光氏

人材研究所・曽和利光さんのプロフィール画像1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)、『人材の適切な見極めと獲得を成功させる採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)など著書多数。最新刊『定着と離職のマネジメント』(ソシム)も話題に。

取材・文:田中瑠子 編集:馬場美由紀
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