仕事で役立つ「問題解決能力」の極意とスキルの高め方

「頑張っているのになかなか成果がでない」と感じることはありませんか?着々と結果を出し、トラブルが起きても迅速に対処できる、いわゆる「仕事ができる」人に共通しているのは問題を捉える力。「問題解決―あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術」の著者でもある、株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ 高田貴久氏に、問題解決力の高め方について語っていただきました。

問題解決力のイメージ画像
Photo by Adobe Stock

問題解決力はビジネスパーソンの必須スキル

「問題解決力」とは、今目の前にある問題と向き合い、解決策を立て実行する力。ビジネスパーソンに求められるスキルの中でも必須スキルといえるでしょう。いくら知識や経験があったとしても、ベースとなる問題解決力がなければ活かしきれません。いわば、思考のオペレーションシステムというべきものです。

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問題解決能力を高めるメリット

問題解決力は、日々の業務だけではなく、あらゆるビジネスシーンにおいて役立つスキルです。自身のキャリアアップにも確実につながっていきます。

メリット1:直面する問題に対する思考力が身につく

目の前の問題に対して、自らの頭で原因を追究し、解決策を深く考えることで、論理的思考力や仮説思考力といった思考力が身につきます。

メリット2:問題を多面的にとらえる分析力が向上する

問題を多面的にとらえ、短時間で効果的な対策を導く分析力も高められます。まさに予測不可能なVUCAの時代に求められる力と言えます。

メリット3:仕事の質やスピードが上がる

問題解決力を高めることで無駄な対策や仕事をなくし、業務効率の向上や仕事で高い成果を出すことにもつながるでしょう。

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問題解決の3ステップ「WHERE・WHY・HOW」で考える

問題解決のためにやるべき基本の手順は、どんな業種どんな仕事でも共通。「WHERE・WHY・HOW」の3ステップで考えます。

1)WHERE:問題がどこにあるのか特定する
2)WHY:その問題の原因は何か深掘りする
3)HOW:どう対処すればいいのか対策を考える

「WHERE・WHY・HOW」3ステップ画像
※著書「問題解決 ― あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術」より

このとき肝心なことは、まず漠然とした問題を明確化することです。例えば、「具合が悪い」と言われても、症状がわからなければ対策を取りようがありません。まずはそもそも頭が痛いのか、お腹が痛いのか、熱があるのかといった問題を特定(WHERE)します。

お腹が痛いのだとしたら、食べすぎたのか、お腹が冷えたのか、食あたりなのかなど、原因は何か(WHY)考えます。原因がわかったところで、その問題を解消する対策(HOW)を打つのです。

ビジネスで言えば、例えば、「売り上げを改善する」というゴールがあったときに、まずはどこが問題なのかを明確にしないと、原因分析を具体化できません。売り上げが落ちているのはエリアなのか、時期による変動が大きくなっているせいなのか、商品別の落ち込みなのか、問題の全体を正しくとらえることが大事なのです。

HOW思考の落とし穴に気をつける

ここで気をつけたいのは、「HOW思考の落とし穴」に陥ってしまうことです。
「HOW思考」とは、いきなり目先の解決策に飛びついてしまう思考パターン。問題がどこにあるのか検証することなく、思いつきで行動しても成果は出しにくいでしょう。

いくらやっても成果が出ず、その結果、進展がなくても次の代案が思いつかず、さらに無駄な仕事を重ねてしまいかねません。

若手ビジネスパーソンにありがちなのは、上司から「これやっておいて」と対応方法(HOW)だけ指示されて、そのまま何も考えずにやること。言われたからやるという働き方を続けていくと、HOW思考が板についてしまいます。

そもそもどこに課題があるのか、原因はなぜなのか、それを踏まえてどうするか。問題解決の手順を踏みながら、解決策を自分の頭で考える仕事の進め方を身につけていきましょう。

問題解決力を高める4つのポイント

問題解決力を向上させるために、ぜひ取り組んでいただきたいポイントをいくつかご紹介します。

ポイント1:思考ツールや他人の力も借りる

問題全体を正しくとらえるためには、モレなくダブりなくの考え方「MECE」で検討することを意識しましょう。これまでの知識や経験、思い込みにとらわれずに物事を考えるゼロベース思考など、さまざまな思考ツールも使って、自分の考えを広げることは大切です。

MECEとは、(Mutually:相互に, Exclusive:ダブりなく, Collectively:総合的に, Exhaustive:漏れなく)の略語で、話の漏れやダブりを防止するロジカルシンキング

しかし、いくら多角的に検討したつもりでも、一人の頭脳だけでは限界があります。実行すべき対策を練っても、自分だけではいいアイデアが思いつかないこともあるでしょう。そんなときにとても大きな力になるのが、他人の頭脳を借りることです。

上司や同僚、友人と雑談をすることで、自分とは違う視点に気づくこともあります。さらに私がお薦めしているのは普段話さない人と話したり、普段行かない場所へ行ったりして、世界を広げることです。

思考ツールや他人の力も借りながら、身の回りにある問題に対して、「WHERE(どこで?)」「WHY(なぜ?)」を考え、どんな対策がふさわしいのかというアイデア「HOW(何を)」を発想する。その習慣化が問題解決力を高めることにつながります。

ただし気をつけていただきたいのが、他責にしないことです。自分目線に振り戻して問題を分析しましょう。例えば、「お客様が理解してくれなかった」ではなく、「私が提案するタイミングが悪かった」。「他部署が協力してくれなかった」は「私が他部署のメリットに落とし込んで説明できなかった」など。

「私が」を主語にしてもう1度考え直しみてみると、今まで気づかなかった点が見えてくるかもしれません。

ポイント2:WHATを考える「課題発見力」を身に付ける

「WHERE・WHY・HOW」の3ステップで考えることは基本ですが、さらに問題解決能力を高めるためには、「そもそも何が問題か(WHAT)」にも目を向けましょう。これは問題解決力の中でも、「課題発見力」と呼ばれる力です。

かつては、課題を発見して設定するのは管理職の仕事でした。しかし、この世の中の動きが速い時代では、上司も何が正しい答えなのか分からない。そもそも設定している課題が正しいかどうかも分からなくなっています。

「商品の認知度を高める」という目標に対して、認知度の測り方を例にとってみましょう。以前はテレビCMでしたが、今はインターネットでのキーワード検索数やSNSでの拡散数など、基準そのものがどんどん変化しています。

こうした中で、会社や組織の目標を睨みつつ、状況に応じて臨機応援に自分自身で課題を設定して取り組んでいくことが求められるようになってきています。

ポイント3:PDCAサイクルで問題解決力を高めていく

「WHAT(何を)」「WHERE(どこで)」「WHY(なぜ)」「HOW(どうやって)」の手順に沿った問題解決は、PDCA(プラン、実行、評価、対策・改善)のP(プラン)の部分だということを忘れないでください。

問題解決自体をプランとして、DCAまでのサイクルをきちんと回す。プランを実行してチェックすることで、次のアクションに向けた改善ができ、より高いフィールドでの仕事が可能になっていくのです。

最初はマイナスをゼロにするためのゴールを目指してPDCAを回す。2回目はもう少し高いゴールを設定してみるというように、定期的な振り返りをして改善していきましょう。

問題解決力を高めるPDCAサイクル

問題解決力を高めるPDCAサイクル画像

上司からの指示の多くはHOWだけが提示されることが多いので、「そもそもこの指示のWHAT、WHERE、WHYは何だろう」と考える。問題解決の基本型を常に意識しながら、PDCAを回すことが大切です。

ポイント4:成果指標は難しすぎてもやさしすぎてもNG

課題を設定するときに気をつけたいのは、成果指標を正しい大きさでとらえることです。課題の設定≒成果指標ととらえるとわかりやすいかもしれません。大きすぎて自分が手に負えないもの、努力が反映されないところに目標を置いても、単なる夢になってしまいます。

半年後・1年後を見据えて、自分の課題を考え、頑張れば何とか手が届く、到達が想像できるストレッチ目標を設定し、環境変化に合わせてアップデートしましょう。

逆に、課題は小さすぎない、簡単すぎないことも大切です。自分の仕事を受け取る人、後工程の人やお客様に評価される成果であるかに基準を置きましょう。

例えば、マーケティング部の人が、「毎日SNSで情報発信すること」を目標にしても、それは自分の行動で完結する目標です。その情報を見たユーザーにどう響いたか、仕事の受け手を意識した成果指標を立てましょう。

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プロフィール

株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ
グローバルCEO・代表取締役社長 高田 貴久(たかだ・たかひさ)氏

高田貴久氏画像東京大学理科Ⅰ類中退、京都大学法学部卒業、シンガポール国立大学Executive MBA修了。戦略コンサルティングファーム、アーサー・D・リトルでプロジェクトリーダー・教育担当・採用担当に携わる。マブチモーターで社長付・事業基盤改革推進本部長補佐として、改革を推進。ボストン・コンサルティング・グループを経て、2006年にプレセナ・ストラテジック・パートナーズを設立。トヨタ自動車、イオン、パナソニックなど多くのリーディングカンパニーでの人材育成を手掛けている。著書に『ロジカル・プレゼンテーション』『問題解決―あらゆる課題を突破するビジネスパーソン必須の仕事術』がある。
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取材・文:中城邦子 編集:馬場美由紀
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