目の前に積まれた商品。ただの在庫と思うかそれとも…ーー『マネーの拳』に学ぶビジネス格言

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『マネーの拳』をご紹介します。

『マネーの拳』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

ここでは、私がオススメする名作マンガの一コマを取り上げます。これによって名作の理解を深め、明日のビジネスに生かしていただくことが目的です。マンガを読むことによって気分転換をはかりながら、同時にビジネスセンスも磨くことができる。名作マンガは、まさに一石二鳥のスグレモノなのです。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「現金は現金を呼ぶものだ」

(『マネーの拳』第5巻 Round.37より)

地元・秋田の高校を中退した花岡拳(はなおかけん)は、友だちの木村ノブオとともに上京。花岡は、偶然始めたボクシングによって才能が開花し、世界チャンピオンにまで上り詰めます。

その後、ボクシングを引退した花岡は、タレント活動をしながら居酒屋を開業しますが、経営は思うようにいきません。そんな時に知り合ったのが、通信教育業界の成功者・塚原為之介会長でした。花岡は会長の教えを受けながら、ビジネスの世界でも頂点を目指すべく、新しいビジネスをスタートさせますが…。

「資金のない君でも、大量のお金を持っている」

渋谷にTシャツ専門店をオープンした花岡。早々に新宿駅ビル内に次の出店を決めますが、銀行が「待った」をかけます。「銀行の融資を取りつけるためには、渋谷店の売上増が必須」と考えた花岡は、販促活動にマスコミを利用しようと画策します。ところが、ライバル・井川に阻まれて失敗。結局、「良い商品を1枚1枚丁寧に売る」という商売の原点に返りました。

花岡は、ことの次第を出資者の塚原会長に報告。会長が「株式を公開し、資金を調達してはどうか」と勧めるも、「自由に商売をするには、担保と引き換えに融資を受けるのが一番だと思う」と自分の考えを述べます。

「確かに」とうなずく会長。「一般に、投資家は結果を早く求める傾向がある。上場は資金を調達しやすい代わりに、落ち着いて経営に取り組めない可能性がある」のだ、と説明します。「実は、資金面の苦労は意外に早く解決できる」と言う会長。「君は、今でも大量の現金を持っている。売れさえすればね」という言葉に、花岡はハッとするのでした。

多くの小売店が資金難に陥る要因

今回の話のキモとは、「在庫=現金」という考え方を持つ、ということです。言われてみれば当たり前のことですが、多くの人がこのことを意識していません。

私がサラリーマン時代に社内ベンチャーで小売流通業を経営していた時は、全体の在庫はもちろん、商品の並んでいるショーケースを見て、常に「この棚の在庫は概ねいくらだ」と頭に入れていました。例えば「今、ここの棚には商品が100個並んでいる。これらの仕入原価が何%で、平均価格がいくらだから、仕入れ原価ベースで何百万円だ」、といった具合です。このように、小売を手がけている場合は「目の前の商品をお金だと思えるか?」ということがポイントになってきます。

なぜ、この考え方を意識する必要があるのかと言うと、「在庫が自己資金を圧迫する要因となる」からです。銀行から融資は、自己資金に見合う額だけ受けることができます。在庫を売らないことには売り上げが上がらず、現金どころか新しい商品を仕入れることもできません。在庫とは、お金を寝かせているのと同じです。世間でよく聞く「小売店の資金繰りが苦しい」というのは、たいてい「眠らせているキャッシュ(現金)が多すぎる」のが一因なのです。

商売に必要不可欠な要素は、業種によって違う

一方、在庫をほぼ持たないサービス業の場合はどうでしょうか。私は現在、2つのサービス業のフランチャイズ5店舗のビジネスオーナーをしていますが、サービス業が商売として成立するには、通常は3つのものが必要です。それが「場所」「スタッフ」「顧客」です。まずはサービスを提供する空間があって、そこにサービスを希望する顧客がご来店になり、さらに提供するスタッフがいて、初めて商売が成立します。3つの要素に過不足をなくすことがサービス業の経営だと言っても過言ではありません。

サービス業の特徴とは、「売り上げの上限が決まりやすいこと」です。基本的に空間ビジネスであるために、たとえ顧客が大量に押し寄せたとしても、場所が空いていなければ商売が成立しません。けれど、サービス業には「固定客を持てば、ある程度の売り上げが見込める」、「売り上げ予測が立てやすい」といったメリットがあります。

サービス業では、小売業のように商品在庫が経営を圧迫することは少ないでしょうが、「設備費がかかる」「技術者を雇用すると人件費がかかる」といったデメリットが考えられます。

対する小売業は、「商品」「スタッフ」「顧客」の3つが必要な要素となります。小売の場合、理論上は場所や販売員の数に制約を受けません。例えば店員が1人しかいなくても、1人の顧客が10枚のTシャツを購入していくこともありますし、最近はインターネット通販もあります。小売業の特徴としては、売り上げがゼロで終わる可能性がある代わりに、“売れれば青天井”であることです。

©三田紀房/コルク

商売の特徴をつかみ、経営に役立てることが大切

今回は資金繰りの話から始まり、サービス業と小売業の違いなどについて見てきました。これは「どちらが良い、悪い」ということではなく、それぞれに特徴がある、という意味です。

ビジネスを行う際に、こうした知識を事前に知っておくと何かと役に立ちます。加えて「自社の経営を圧迫しているものは何か?」がわかれば、早めにそれに対する対策を採ることも可能となるのではないでしょうか。

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俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン()』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?()』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」()』を上梓。著作累計は38万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

俣野成敏 公式サイト(

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