2020年後半になっても、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)に関するニュースが途絶えることはありません。
女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を手掛ける川崎貴子さんのもとにはいま、コロナ禍が要因と思われるストレスを抱えた人が多く相談にやってくるそうです。
今回は、自分では変えられない事態の中、「自らが変わって適応することで少しでもストレスを手放す」という考え方を語っていただきます。
プロフィール
川崎貴子さん
リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。2人の娘を持つワーキングマザーでもある。
目次
多くの人が同じ要因の悩みを抱えている
最近、私のところに相談にやってくる人たちに共通している点があります。
それは「コロナ禍が根本原因のストレス」を抱えているということ。
キャリアビジョンが立てられない、夫婦関係が上手くいかない、将来が不安、など、相談内容は皆それぞれ異なるにも関わらず、お悩みを紐解いていくと根底にコロナの影が潜んでいるという状態です。
仕事一つ取っても、新しい働き方に今までのセオリーが通用しないとあっては無理もありません。
「満員電車は嫌だったけれど、社員同士、顔を突き合わせて仕事をしていた時は安心感があった」
「上司が自宅にいると思うと気軽に問い合わせができない」
「オンラインだと業務連絡はできるが、個人的な相談がしづらい」
「やる気や帰属意識が薄れる」
と、不安や不満を覚えながら、
「そもそもうちの会社や業界は大丈夫なんだろうか?」
という大きな悩みまでも抱え込んでしまう。
緊急事態宣言解除からしばらく経ち、街に出れば一見、昔と変わらない活気が戻ったように思えます。しかし、確実に以前とは違うのだと私たちは認識しています。
行き交う人々のマスク姿、閑散とする大通り、潰れてしまった飲食店。そんな目に見える風景に加えて、各イベントの中止・延期、テレワークという働き方、会食の激減なども体験し、普通に暮らしているだけで、
「世界は、私たちの生活は、一変したのだ」
と否が応でも思わされます。
その中で、ご自身やご家族の仕事、健康、将来に関して悲観的になってしまうのは当たり前のことです。
以前はストレス解消方法の一つだった「友人と会う」も、コロナ禍の今はとても気を使います。
仕事でもプライベートでも、コロナウイルス感染症予防対策に対する考え方は人それぞれで、家族以外との外食は避けている人もいるし、対面に座らずにマスク着用なら可能と考える人から、長居しなければOKという人までいます。
お相手の考え方がわからないまま「ランチでも行こうよ!」と誘って軽蔑されないか?対面のアポイントを取って失礼に当たらないか?と、他人に会うことにこんなに神経を摩耗させることはかつてなかったわけです。
結局、自分も相手も不愉快な思いをするかもしれないから、と誘うのをやめて孤独を募らせている人は多いのです。
事態が変わらないなら自分の行動を変えて
かく言う私も、緊急事態宣言のころは漠然とした不安を抱えていました。
今まであった仕事の半分がなくなり、頭では「この状態が続くわけがない」と思っているものの、経営や家族の健康、生活費や子どもたちの教育費などなど不安材料は次々と浮かんできます。
友人との交流は途絶え、ジムもプールも、旅行にも行けない。気づいたらいつの間にか、飲酒量だけが増えていたのでした。
このままではいけないということで私が意識的に取り組んだのは、
「いま私が抱えている不安は、事態が変わらない限りなくならない。それならば自らが変わることで適応していこう」
でした。
例えば、私にはコロナ感染症の流行を終息させることはできません。
でも私は、仕事が減った分の時間を使って、コロナ禍で不安を抱えている人にオンラインでカウンセリングすることはできました。普段、手が回らなかった事務作業やインプット作業もできた。
できないことに思い悩まず、できることに着目してみると、実は悩んでいる暇がないくらいやることがありました。
おそらく同じような思いで語学を習得したり、家でできるエクササイズに取り組み始めたりした友人たちのSNS投稿には、当時かなり励まされたものです。
そうして私は「そうか、自分のアクションを変えればいいんだ」と気づき、少しずつストレスを手放せるようになっていきました。
以下は、このような経験から私が得た「変化に適応するためのヒント」をまとめ、紹介します。
変化に適応するためのヒントその1:ポジティブな情報を取りにいく
(2020年の)春ごろは、気分を切り替えようと思って目を向けたテレビもネットもコロナウイルス感染症の話題一色だったので、私も気がつけばネガティブ思考に引っ張られておりました。
そこで、いくつか選んで閲覧していたニュースサイト上でもネガティブな記事は熟読しないという、自衛のための自己ルールを作ったことはよかったと思います。
このルールのおかげで気持ちが少しずつ上向きになり、緊急事態宣言解除のころには飲酒も適量に戻り、できることをやろう!というポジティブな自分を取り戻せていたからです。
もし情報を選別しないで不安なままお酒に耽溺していたら、と思うとコロナそのものよりずっと恐ろしい。
思うよりも人は「目や耳で直接見るもの、聞くもの」に影響を受けているのだ、とあらためて思い知らされたこの体験をきっかけに、今後も情報は受動的にではなく、ポジティブなものを能動的に取りに行こうと思った次第です。
変化に適応するためのヒントその2:「コロナ禍があったからこそ」にフォーカスしてみる
現在もコロナウイルス感染症の脅威は続いています。その中で生じる人々のストレスは相変わらず解消が難しいものもあるでしょう。それでも、「コロナ禍を経たからこそ」前向きな方向に変化できたことは間違いなくあると私は思います。
例えば、ある友人はずっと念願だった田舎暮らしを実現させました。それまで、本当は海や山があるところでずっと暮らしたかったけれど、仕事柄あきらめていた彼女の夢でした。自粛期間中、初めてオンライン環境のみで仕事をしたおかげで、「すべての仕事がオンラインで済む」ということに気づいたのだとか。
また先日、とある男性タレントが育休を取得すると宣言。生き馬の目を抜く芸能界で、異例の育休を取るのは不安が大きいと同業者たちは解説していたけれど、本人は、
「目先の仕事より、自分の人生を考えた時に、育休を取るべきだと思った」
「コロナ禍が人生や家族について考え直す良いきっかけになった」
と語っていました。
他にも、新事業を立ち上げた友人、副業を始めた友人、新たな趣味をスタートさせた友人など、コロナ禍をきっかけにして百花繚乱。必要にかられてのスタートかもしれないけれど、いやはや、彼らを通し人間のたくましさや、人生を切り開いていく力を日々目の当たりにしております。
ちなみに、私はどうかというと、こんなにも子どもたちと一緒に過ごしたのはいつ以来だろう、という経験をしています。ステイホームが、子どもたちと毎日ご飯を食べる生活を私にもたらしたのです。
はじめは準備などで大変でしたが、仮に状況が以前のように戻ったとしても、当面はコロナ禍前の働き方や時間の使い方はしないだろうと思います。高1の長女と小3の次女と一緒に過ごせる時間は思うよりずっと短いのだと、皮肉にもコロナが私に教えてくれたからです。
これは、ストレスを手放せた上に、新たな価値の発見にもつながるできごとでした。
変化には変化を、そして適応を
ネガティブな変化が起こったとき、人はそう簡単には受け入れられないものです。それでも、避けられない変化なら、自分もまた見方や考え方を変えてみることで、その変化と楽に付き合える方法を見つけてみませんか?
飲み会ができなくなったから、オンライン飲み会なるものが編み出された。
会場イベントが開催できなくなったから、オンラインイベントが企画された。
まだまだ課題は多いものの、オンライン学習環境の整備が進んでいる。
すべて、変化を受け入れ、事態に向き合おうとした人たちによるものです。
私たちは皆、生きている限り、色々な不安に足を取られます。
でも、転んだって起き上がる方法を知っていれば、良い変化の仕方を知っていれば、大事に至らず自分を取り戻せます。
ダーウィンのアイディアを示すものとして言われる、『生き残るのは最も強い者でも最も賢い者でもない。変化できる者である。』ということばがあります。
失くした過去を思い、見えない未来に恐れを抱くだけじゃなく、環境に適応しようとする姿勢や意識を柔軟に持つこと。
それが私たちの、自らできる進化の「はじめの一歩」かもしれません。
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