1万人調査でわかった「生き生き働ける8つの要素」~自己診断チェックシート付き 

新型コロナウイルス感染症拡大を受け、ソーシャルディスタンスを前提とした新しい働き方の試行錯誤が続いています。仕事が捗る人もいれば、心身ともに疲弊している人もいるでしょう。そんな中、改めて自身の働き方や働きがいについて考え直す人が増えているようです。

リクルートワークス研究所では“「働く×生き生き働く」を科学するプロジェクト”を発足し、ビジネスパーソン約1万名への調査を実施しました。その調査内容について、同プロジェクトのリーダーである辰巳哲子主任研究員と、藤井薫『リクナビNEXT』編集長が対談。これからの時代を生き生き働くためには何が必要なのか、語り合いました。

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ワークス研究所辰巳さんリクルートワークス研究所
辰巳哲子主任研究員

リクルート入社後、組織人事のコンサルティング、社会人向けのキャリア研修の開発、高校生・高卒後未就業者のキャリアカウンセリングなどに携わり、2003年4月より現職。全国の自治体や学校と共同研究、文部科学省や経済産業省にて委員を務める。『キャリア形成における高校キャリア教育の役割』で、お茶の水女子大学で博士号(社会科学)取得。専門領域は、働くことと学ぶことの接続(キャリア、キャリア教育、社会人学習、リカレント教育)。『分断されたキャリア教育をつなぐ。』『社会リーダーの創造』『社会人の学習意欲を高める』『「創造する」大人の学びモデル』などの調査レポートを発行。

藤井編集長顔写真『リクナビNEXT』編集長
藤井 薫

1988年にリクルート入社後、人材事業の企画とメディアプロデュースに従事し、TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長などを歴任する。2007年からリクルート経営コンピタンス研究所に携わり、14年からリクルートワークス研究所Works兼務。2016年4月、リクナビNEXT編集長就任。リクルート経営コンピタンス研究所兼務。著書に『働く喜び 未来のかたち』(言視舎)。

日本人の「仕事のやりがい」は1981年から下がり続けている

藤井
調査結果を興味深く読ませていただきました。本調査に当たって“「働く×生き生き働く」を科学するプロジェクト”を立ち上げ、辰巳さんがプロジェクトリーダーとしてこの調査をまとめたそうですね。どういう思いで、このプロジェクトを立ち上げたのですか?

辰巳
プロジェクトの立ち上げは、個人が「生き生き働くこと」に対して強い課題感を持ったのがきっかけです。

内閣府の「国民生活選好度調査」によると、「仕事のやりがい」について「満たされている」と答えた人の割合は、1981年をピークに下がり続けています。数年前から国主導で各企業が取り組んでいる「働き方改革」でテレワークや時短勤務、有給休暇の取得促進などが進んでいますが、やりがいを回復するには至っていません。なぜ、日本人の「仕事のやりがい」はここまで低いのか、本気で個人の「やりがい」を考える必要があると感じました。

藤井
働き方改革で働きやすさ、働きがいを感じられるどころか、不安感、不満感を増幅しているという側面があるのですね。

辰巳
例えば若手ビジネスパーソンからは、「今はいろいろな経験をして成長する時期なのに、定時で帰らなければならない。せっかくの成長機会を手放しているようで不安」、ワーキングマザーからは「昼間は子育てに追われているので、子どもが寝た後に仕事をしたいが、一律に『就業時間以降は働かないで』と言われてしまう」などの声が上がっています。

藤井
働き方改革による時間制限で、個人の自由裁量が奪われているということですね。
今回の調査は、そんな状態にあるビジネスパーソンの「やりがい」や「生き生き働く」の本質を一から考える、重要な研究だと思います。

 

個人が自分の「生き生き働ける要素」を理解することが重要

――今回の調査では、働く個人は「生き生き働く」をどのように捉えているのか探るために、1600名に対する自由記述調査を実施。その結果を分析したうえで定量調査のための調査項目を作成し、1万人への定量調査を行った。

藤井
ビジネスパーソン1600人への調査では、「生き生き働く」というイメージが個人によってかなり異なっていることに驚かされました。

辰巳
私も驚きました。個人が「生き生き働けている」と感じる瞬間は、こんなにも多種多様なのだと。ある人は、汗をかいているときに生き生き働いているという実感を覚え、またある人は自分のペースで働いているときが一番生き生きしているという。そして、「毎日同じ仕事」「忙しい状態が続く」など、ある人にとっては一見生き生きと働けないような状態であっても、別のある人にとっては生き生き働くキーワードになっていることもわかりました。

なお、自分にとっての「生き生き働く」を表現する言葉として最も多かったのは「やりがい」でしたが、10位までの言葉は全体の4分の1にとどまりました。

実は、この調査の前に大学教授や医師、マインドフルネスや脳科学のプロなど、人と組織の研究を行う20名の専門家に「生き生き働く」状態・方法についてインタビューを行い、仮説を立てていました。しかし、1600人からは専門家でも想定していなかった多様な言葉が出てきたのです。自由記述では、「自分で意思決定できる」「自由」「自信がある」「向いている」など。“自分”が主語になった主観的な言葉が目立ちました。

藤井
つまり、「生き生き働く」のカギは個々人によって異なり、個々人にゆだねられているということですね。会社が制度を整えたりすることだけで解決できる問題ではない、と。

辰巳
その通りです。多様過ぎて、会社の制度で何とかできる範囲を超えています。すべての人に、自分だけの「生き生き働く」があり、個々人が自分のそれを理解し、自分で整えることが大切なのです。

 

生き生き働くために必要な「8つの要素」とは?

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――1600人への自由記述調査後に行われた全国1万人への定量調査の分析結果から、「個々人が生き生き働くために必要な8つの要素」を洗い出した。この8つの要素が自分の中でどのように構成されているのかを知ることが、自分にとっての「生き生き働く」をつかむカギとなる。

<生き生き働くための8つの要素>

●要素1:活力実感
自分に任された仕事に没頭し、熱意あふれる取り組みを通じて活力を得ている。
例:「仕事は私に活力を与えてくれる」「仕事に没頭しているとき、幸せだと感じる」

●要素2:強みの認知
これまでの仕事を通じて得た経験や専門性を、自分の強みとして自覚している。
例:「わたしには仕事に活かせる強みがある」「わたしには仕事に活かせる専門的な知識がある」

●要素3:職務満足
責任ある仕事への取り組みを通じて、周囲からの信頼と会社への誇りを感じている。
例:「仕事内容に満足している」「上司からの信認に満足している」

●要素4:有意味感
取り組んでいる仕事の価値を理解しており、自分自身の成長を実感している。
例:「私の仕事は、私自身をより理解するのに役立っている」「私は、自分の仕事が人生にどのような意味をもたらすのか理解している」

●要素5:オーナーシップ
仕事のプロセスを理解し、進め方やペースを自分で考えながら効率的に取り組んでいる。
例:「仕事の進め方などについて自己管理ができている」「違うやり方を学んで試したりするなど、変化し続けている」

●要素6:居場所感
周囲のメンバーからの期待を理解し、職場の一員としての信頼と安心を感じている。
例:「上司、または職場の誰かが、私を人として気に掛けている」「職場での自分への期待を知っている」

●要素7:持ち味発揮
現在の仕事の内容とやりたいことが合っており、自分らしく強みを発揮できている。
例:「今の仕事では、自分の強みが活かせていると思う」「自分のやりたいことと今の仕事はマッチしている」

●要素8:多忙感
周囲のメンバーや仕事の状況に関わらず、いつも全力で働くことに充実を感じている。
例:「常に忙しく、一度に多くの仕事に手を出している」「一生懸命働くように駆り立てている何かを、自分の中に感じることがある」

藤井
この8つの要素は、私たちが自分にとっての「生き生き働く」を知るための大きなヒントになりますね。

辰巳
「働き方」というと、労働時間や働く場所、職場環境といった目に見える条件が語られがちですが、この8つの要素で「自分が大事にする価値観」を可視化することで、自分に合った働き方を新たに発見したり、他者と共有することが容易になったりします。

ポイントとなるのは、これら8つの要素は、人によって重視する要素のバランスが異なるということ。例えば、「職務満足」が3割、「活力実感」が2割、「オーナーシップ」が5割…など。また、同じ人であっても状況に応じてそのバランスは変化します。ぜひ、これから紹介するワークシートを使って、今の自分の「生き生き働く」要素をつかんでみてほしいですね。

 

ワークシートで自分の「生き生き働く要素」をつかもう

――普段、「自分がどういう状態で働いているときに、生き生きとしているのか」を考える機会は少ないだろう。まずは、自分自身が真に求める働き方、自分に合った仕事の進め方が何なのかを明確にしてみよう。自分はどの要素を重視するのか?それは今、満たされているのか?が明確になれば、自らの環境の改善に努めるなど「自分の価値観に合った働き方」、つまり「生き生き働く」状態に近づくことができる。

以下のワークシートの手順に沿って回答すると、自分がどの要素をどの程度重視しているのかが見えてくる。

ワークシート画像

 

<ワークシートPDFのダウンロードはこちらから>

 

 

 

 

藤井
先の1600人に対する自由記述アンケートでは、「自分のペースで働きたい」「自分が納得できる働き方をしたい」など、「自分が」という主語が多く書かれていたと伺っています。ということは、生き生き働く環境は、周囲からのお仕着せではなく、個人が自分自身の力で作っていく必要がある、ということもできます。

このワークシートにより、自分が大事に思っているもの、自分の「生き生き働く」ための“成分”をつかむことは、「生き生き働く」に近づく第一歩と言えますね。

辰巳
これまでは、勤務先から環境を与えられ、上司によってモチベーションをマネジメントされながら「生き生き働く」を追求するという発想が根強かったですが、調査で分かった通り、個人が求めているものは多様化しており、会社側でその多様さを支援しきれなくなっています。藤井さんがおっしゃる通り、これからは「生き生き働く」状態は自分で作るもの、自分にしか実現できないもの、という意識が必要です。

とはいえ、「いきなり言われてもどうしたらいいかわからない」という人もいると思います。まずは1つだけでもいいので、「これだけは譲れない、手放せない」というものをワークシートで見つけ、それを実現するための環境づくりから着手してほしいですね。

例えば「有意味感」が最も重視する要素だとしたら、目的がわからない仕事があったら上司に対してその意味を確認する。「居場所感」を重視するなら、自分から周囲の人とコミュニケーションを取り信頼関係の強化に動く。こういったアクションが「生き生き働く」ための大きな一歩になります。

 

自分の内面に目を向ければ、生き生き働くために行動でき、心も整う

「イキイキ働く」イメージ画像

藤井
自分にとって「働く」とは?を真剣に考える時期が来ていると感じます。みな自分の靴や洋服のサイズは知っているし、「こういうものを着たり履いたりするとウキウキする」と理解しているのに、「働く」だけは考えることをしないで会社に無理して合わせようとするので、靴擦れを起こしてしまっている。洋服を買うとき、自分に合っているのか試着して鏡を見ながら確認するように、自分は「働く」に何を求めているのか、自分で自分をしっかり見つめることの大切さを、この調査は教えてくれています。

それに、自分自身を理解できないと、会社や上司に希望を伝えることもできず、対話が始まらない。これではいつまで経っても「生き生き働く」に近づけません。「強みの認知」を重視しているのであれば、自分の強みは何かを周りに発信し、強みを活かせる仕事を得る努力をする。「オーナーシップ」を重視しているならば、仕事をより効率的に進められるように周囲から違うやり方を教えてもらって試してみる…というように、個人における「働きかけ方改革」が必要なのだと実感させられました。

辰巳
そうなんです。周囲の人は、「〇〇さんの強み」は理解できますが、「どんなときに生き生き働けるのか」までは察してくれません。自分自身の生き生きの源泉がわかれば、上司もマネジメントしやすくなるし、一緒に働く人の「生き生きの源泉」を理解し合える職場は活気あるいい職場になるはずです。

藤井
新型コロナウイルス感染症拡大など、不安定な社会情勢が続いています。我々を取り巻く環境も日々変化している中、「生き生き働き続ける」ためには何をすればいいと思われますか?

辰巳
リモートワークの機会が増えたことで、同僚がどんな働き方をしているのか気になったり、自分は後れを取っているのではないかと不安になったりする場面があると思います。しかし、見えないものに不安を感じ焦ったところで何も変わりません。こんなときだからこそ、周囲ではなく「自分自身」にもっと目を向けましょう。

その一助になるのが、前述の「8つの要素」で自分の「成分」を知ること。自分が大事に思っていることをつかみ、それを軸にして行動し、自分を「整え」ていくことに時間を費やすいいチャンスだと思います。

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EDIT&WRITING:伊藤理子
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