「すみません、部長や役員って…正直楽しいですか?」女性が“上級管理職”になりたがらない理由――女性リーダー採用・活躍支援プロジェクト特集(前編)

5年先、10年先、20年先のキャリアを描くとき、あなたには「上級管理職を目指す」というプランはありますか?

上級管理職とは、一般に部長クラス以上のこと。

「課長まではイメージがつくけど、部長は男性ばかりで自分のことだと思えない…」「役員なんて遠い存在過ぎるし何だかとてもたいへんそう。とてもわたしには…」と、自分ごとに思えない、躊躇してしまう人が多いのではないでしょうか。

特に女性は、課長の数こそ微増しつつあるものの、上場企業の役員数が約1,500人(上場3,708社、4万1,000人超のうち※東洋経済『役員四季報2019年版』より)と、上級管理職のロールモデルの数が極めて少なく、「実際のところどうなのか」イメージがわきづらいのが現状。だけど、上級管理職には上級管理職のやりがい、楽しさがあるはずなのです。

そこで今回は、ジョカツ部リーダー中野裕子(プロフィールはこちら)が、女性上級管理職のロールモデルのひとりとして、株式会社グロービス経営管理本部長林恭子さんに「部長、役員−女性が上級管理職を目指す時に必要なこと」を聞いてきました。

プロフィール

株式会社グロービス

マネジング・ディレクター 経営管理本部本部長 林恭子氏

筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士課程前期修了(MBA)。モトローラで半導体、携帯電話端末のOEMに携わった後、ボストン・コンサルティング・グループへ。人事担当リーダーとしてプロフェッショナル・スタッフの採用、能力開発などを担当する。その後グロービスに転職し、人材・組織に関わる研究や教育プログラムの開発を担当した後、経営管理全般を統括。グロービス経営大学院での講義、企業研修、講演も務める。共著書に『【新版】グロービスMBAリーダーシップ 』(ダイヤモンド社)、『女性プロフェッショナルたちから学ぶキャリア形成』(ナカニシヤ出版)など。経済同友会会員。

なぜ女性は「上級管理職」になりたがらないのか?

中野:女性が管理職を目指したいとなかなか言わない理由は何だと思われますか?

:女性に、「上級管理職になってくれ」と言っても、積極的になりたいとはならない。それは、特性として「自分のために出世したい」と思いにくいからだと思います。だったら、「お客様や、メンバーなど、自分が大切にしている誰かのために、管理職になる」と考えてみてはどうでしょうか?

中野:自分が大切にしているお客様やメンバーのためなら管理職になってがんばれる、という気持ちの持ちかたですね。

:はい、その人達をまとめ、育てていくことがその人たちのためになる。その延長線上に部長や役員があるのだと思っています。今、いち社員として会社への不平や不満があったとしても、自分の立場でできることは限られている。ですが、役員になったら本当に変革ができます。

人間の持つパワーというものは、「個人の力」「公的なポジション」「ネットワーク」の3分類でできています。管理職になり、立場が上がれば上がるほど「公的なポジション」のパワーが上がります。その結果付き合う人も変わり、「ネットワーク」の質も変わる。

そして「ネットワーク」を活用して人の力を借りれば、自分自身にはある分野の力がなかったとしても、力のある別の人が動いてくれればなんとかなるということができることになります。

もちろん、管理職でなくても力のある人とつながることはできなくはないですが、役員会や経営会議などで直接他の役員達と定期的に顔を合わせ、直接自分の意見を言える権利をもつことで、周囲の力も借りやすくなると思います。

中野:林さんご自身も自社の中で、かなり働き方改革を進めてきたとうかがっています。

:働き方に関しては、大胆に変えてきましたね。例えばフレックス制を基本として、部門や仕事によってはコアタイムさえなくていいという制度に変えました。

私自身はもともと外資系コンサルティング企業出身なので、短い時間で良質なアウトプットを出す人が優秀だという世界観で仕事をしてきました。弊社は社会人向けにスクール事業もやっていますから、イベントのある日は、業務は夜間に渡る。それなのに、一律朝9時半に全員が出勤することはリーズナブルでないし、健康にもよくないと思っていました。

結果、「働きやすくなりました」と言われることが多く、それはとても嬉しいです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

課長、部長、役員に求められるマネージメント能力の違い

中野:課長、部長に求められるマネージメント能力ってどういうことでしょうか。

:課長は、それまではひとりのプレイヤーとして自分だけが良い仕事をしていれば良かったものを、決められたある範囲、範疇のミッション (事業から求められる役割や責任)を持ち、メンバー全員を率いてしっかり結果を出すということが仕事。

部長、役員については基本的にはその範囲が大きくなるというだけだと思います。ただ、部下の中には階層が出てきますので、自分の配下のリーダーが、彼ら彼女らの配下のメンバーを率いて結果を出せているかを見ていくことになります。

会社によって部下の人数はバラバラだと思いますが、事業部長など、ある分野の責任者になるというところからが本当の上級管理職ではないかと思います。

その事業が本当に成立しているかどうか、売り上げ、コスト、その他の収支、その先の次の成長性を考えて何ができているかを含めて責任者。本当の事業、すべての責任を負っています。その重みは課長とはだいぶ違う。

中野:事業の責任者、人事の責任者になると聞くとだいぶ腰が重くなる。引き受けるには勇気がいるように思います。

:経営責任ですから。上場会社であれば、株主に対する責任もあります。

中野:「経営責任を負うことが面白いと思えるかどうか」が向き不向きを分けるところかもしれませんね。

:あまり堅苦しく考えず、気負わず、日々の自分の仕事を頑張ることの延長上に上級管理職があるという考えでいいと思いますよ。

純粋に面白い仕事をするとか、やっている仕事が面白くて一生懸命なら全然良いと思います。硬く考えなくていいんです。

少し前に日経新聞が上場企業の女性役員へのアンケートで、若い時は管理職になりたかったかと聞いたところ、「はい」と答えた人は31%しかいませんでした。

多くの女性役員が管理職になる前に会社を辞めようと思っていたことがわかりました。

どうして、管理職になること、さらに上のポジションに昇進することに前向きになったのかというと、きっかけは初めて管理職になったくらいの頃からと皆さん言っていました。

それは結局仕事が面白くなったからだと思うんです。自分で意思決定できたり、大切な仲間たちと一緒に大きな目標を達成することができたり、しんどいがやってみると楽しかった、成長できたという経験をその頃くらいからするようになる。

私もそうでしたが、初めて管理職になった頃から純粋に仕事が面白くなり、上を目指そうなんて思わず一生懸命仕事をやっているうちに、ひとつやったら「次これもやる?」と言われて。「仕方ない、みんな喜んでくれるし、やるか。」と思っているうちに上級管理職になった。そういう方が多かったようです。

動機は個人差ですから、自分の出世が嬉しいのであれば、それでいけばいい。

ただ、女性は自分が偉くなることにあまり燃えない傾向にあるのかなと。だからむしろ、自分が上に行くことで人を幸せにできるというのが動機になり、仕事そのものが面白くなるのだと思います。

 

後編へつづく

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INTERVIEW:中野裕子 EDIT&WRITING:飯沼暢子
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