働く女性のお悩みのひとつが、パートナーとのコミュニケーション。「この人と一緒にいきていく」「大好きな人と一緒にずっと幸せな生活を送りたい」そう決めて、結婚式を挙げたのに、お互いが忙しい毎日、いつの間にか相手が何を考えているかわからなくなってぎくしゃく。スキンシップもしてないし、この前ゆっくり話したのっていつだっけ…?
結婚は「夫婦」になる為のスタートライン。もともと別の人間だから、夫婦は違って当たり前。だけど、ちょっとした違和感が大きな亀裂になって、残念ながら数年後離婚という選択をして別々の道を歩むカップルがいるという現実もあります。仲良しだったふたりの間に何が起こったのでしょうか?
行政書士として離婚相談を多く受けるなかで、何とかして離婚を回避し夫婦を幸せにしたいという強い思いを抱き、素敵なカップルになるためのコミュニケーションツール「マリッジノート®」を開発した湯原玲奈さんに、「働く夫婦がずっと仲良く生きていく為の危機回避コミュニケーション」の秘訣をジョカツ部リーダー中野裕子(プロフィールはこちら)が聞いてきました。
プロフィール
行政書士・マリッジデザイン株式会社代表取締役 湯原玲奈さん
ニュージーランドで教師、米国公認会計士専門学校の運営アシスタント、外資系メディアの法人営業を担当。29歳で出産した際に、保育園が見つからず復職し損ねて専業主婦になる。出世していく夫に嫉妬しながら育児に明け暮れ、子どもが幼稚園に通うようになって独学で行政書士の勉強をして2年で合格。専業主婦経験を活かして離婚相談を数多く受ける。2013年にマリッジデザイン株式会社を立ち上げ、円満家庭をサポートする「マリッジノート®」を提供
目次
「ウェディング」ではない「マリッジ」を考えてみよう
中野裕子(以下中野):周りの20代や30代の働く女性を見ていて、結婚するまでが自分のゴールになっていて、その後のことは白紙。という人が多いように思います。そして結婚してみて、出産してみてはじめて、何とかなると思っていた仕事と家庭の両立に「あれ?こんなはずじゃなかった。知らなかったこと、気が付かなかったことが多い。苦しい」となる。とくに悩むことのひとつが、パートナーとのコミュニケーションです。
湯原玲奈(以下湯原):結婚するときにはウェディング情報誌があって、離婚するときには離婚を指南する書籍がある。だけど、真ん中の結婚生活、「マリッジ」の部分の役に立つ情報があまりないのですよね。
私は仕事柄離婚を考える方の相談にのることがとても多いのですが、離婚に踏み切るきっかけは浮気だったとしても、その前段階の価値観の不一致でもうパートナーシップが破綻していることがほとんどです。
専業主婦を経て開業!仕事で夢を叶えたわたしにも訪れたマリッジの危機
中野:湯原さんは、はじめに勤めた会社を退職後、専業主婦として子育てをされてから、行政書士の資格を取得、その後起業をして、再度仕事に舵を切られたのですよね。
湯原:はい。会社員時代には衛星放送チャンネルの営業で出張なども行っていました。当時は1年しか育休も取れず、保育園にも入れなかったため、結構あっさりやめてしまいました。「働いてお金を得る・社会と関わる」方法として会社員という選択肢しか体験したことがなかったので、子育てしながらも柔軟な働き方ができる他の方法を探したいと思いました。親の援助も、夫のサポートもあまり期待できなかったので、子供と過ごす時間と、営業として今までのような働き方をする時間の両方を100%両立できないと思ってしまい、会社に勤めるという選択肢が消えてしまい…。今思えば、100%なんて思わなくて良かったのに、とも感じます。
そして、その後すごく後悔しました。お母さんの顔と、妻の顔はあるけど、3番目の、自分の顔もどうしても欲しかった。
本当にやりたかった仕事は何だったか?と、自分に問いかけてみたところ、以前海外で生活をしていたときに、自分が外国人という立場で随分現地の方に雇用面などで助けてもらった経験から、日本へ帰国したら、日本に住む外国人へ恩返しがする仕事ができたらと考えていたのを思い出しました。
そして、行政書士という資格を取得して、今では外国人の雇用や在留ビザの更新のサポートなど、会社員の時以上にやりがいを感じる仕事に携わることができるようになりました。
中野:新しい自分の顔を手に入れることができたのですね。
湯原:はい。ただ、資格を取得して開業すると夫に言ったら、片手間にやるくらいだろうと思っていたみたいで。わたしもちゃんと話すことをしていなかった為に、本格的に仕事をし始めた開業2年目頃にはケンカが絶えなくなりました。両親も含めてサラリーマン家庭で、開業当初はまったく理解もサポートもしてもらえなかったです。
中野:湯原さん本人の思い描いていた開業後の働き方と、ご家族の思い描いていた働き方にギャップがあったのですね。
そんな中でも、開業した行政書士としてのお仕事をずっと続けてこられたわけですが、あるとき、いちばんの夫婦の危機が訪れた。
湯原:結婚10年目でした。家事も育児もバタバタで、お互いイライラが募り、最も気持ちがすれ違っていた頃です。同時期に、行政書士として色々なご夫婦の離婚相談をお聞きすることも増え、「結婚するときは好きだった者同士が、なぜこんなにいがみあうようになってしまうのだろう」という疑問が頭から離れなくなっていきました。
想いを巡らせているうちに、お互いの状況がわからず、考えていることが理解できなくなると、前向きなコミュニケーションができなくなる。それがそもそもの始まりではないかと思うようになりました。
夫婦の信頼関係づくりの第一歩は、就職の面接対策と一緒
中野:お互いが忙しい中、働く夫婦は、知らないうちにすれ違いつづけるということが多そうですよね。
違和感を相手に伝えようとしても、女性は、自分のことをわかっているようでわかっていない。本音を言ってもいいと言われても、言葉にすることを戸惑う。
困り果てて誰かに相談しようとしても、人にどう思われるかとか、人と違うことがよくないのではないかなど、色々と気にしてしまって、周りの女性達にもうまく相談できないという孤独なループにはまる。
湯原:そのままの自分の気持ちを伝えると嫌われてしまうかもしれないし、そもそも相手が何を考えているかわからない、考えたことがないから、どう話を進めて関係を作っていいかがわからないのかなと思います。
例えば、就職試験の面接対策では、まず自己分析と会社研究をするように、夫婦のパートナーシップでもまずは各々が自己分析をして、必要なことはふたりで共有することからがスタート。その作業をすることで、相性を見極めて、一緒にやっていけるかを話し合うことができると思っています。
そして日々コミュニケーションを取り、自分や相手の情報や気持ちをアップデートし続けることで、たとえ危機が訪れても乗り越え、仲良くしつづける為の信頼関係の基盤ができていくのだと思います。
夫婦に危機が訪れるタイミングは「時間」「お金」「実家」
中野:夫婦に危機が訪れるタイミングの共通点はありますか?
湯原:みなさん同じことで悩まれると思っています。
危機が訪れるときはたいてい、
2.お金の使い方が変わるとき
3.実家のこと
この3つしかない。
変化の大きな波は、出産、介護、転職など「転機」のときなので、それまでにいいコミュニケーションをとる習慣を作っておくことが大切だと思っています。
それから、コミュニケーションは、話すことだけではなくて、スキンシップもとても大切。スキンシップをしなくなると、心が離れていくのだなと離婚の相談にいらっしゃる方たちをみていても思います。
ただ、スキンシップの前には必ず感情のやりとりがあって、その前に会話がある。いきなりスキンシップレスにはならない。だからやっぱりまず話すことが大切。
中野:一緒に同じ目的を持ってやっていくチームでのコミュニケーションの基本が「自己分析」と「情報共有」だということは仕事と夫婦関係の共通点。
加えてスキンシップも重要だという点は、夫婦関係ならではの特徴かもしれませんね。
具体的にどのようにコミュニケーションを取れば夫婦の危機が回避できて、仲良し夫婦でいられるか、教えてもらえますか?
ふたりは違って当たり前
湯原:ふたりが一緒に暮らしてみると、じぶんやじぶんの実家の常識では考えられないできごとに遭遇することがあります。食べ物に対するこだわりや片付け方の違いなど、小の習慣の違いで戸惑ったり、相手を責めたくなることも。
離婚理由の第1位は性格の不一致。だからお互い理解し合えるように、まずは何より、相手の価値観=大切にしていることをお互いに知ることだと思います。
わたしが主宰するマリッジデザインの活動の一貫で、ふたりの価値観を簡単に浮きぼりにできるように、ウキボリックカルテという診断ツールを作りました。
夫婦で違いがあることを理解して、「相手はこんな風に考えていたんだ!」と発見し、会話することからコミュニケーションを始めてみてください。
▲ウキボリックカルテ
http://www.marriage-note.jp/ukibori/start
価値観を知るだけでなく、日々お互いの今のアップデートが必要
湯原:そして、「言ったつもり」「聞いたつもり」「わかってくれているはず」と思い込みがちな夫婦関係にこそ必要なのが、常に変化している相手の状況を理解すること。
これをふたりのアップデートと呼んでいます。お互いの今をちゃんとアップデートしていくことがとても大切です。
温度差やズレを大きな亀裂にしない為にも、日頃から小さなコミュニケーションの積み重ねを大切にして、転機のときこそ丁寧に分かり合うように心がけたい。ふたりで転機を乗り越えることで、強い信頼関係ができていきます。
最高の夫婦になる為に、日々のアップデートとスキンシップを
湯原:そしてもうひとつ忘れてならないのがスキンシップです。
「全身で相手に受け入れてもらっている」という安心感は、どんな会話よりもふたりの絆を強いものにします。恋人時代に必要だったロマンスにとって代わるもの、それは「信じ、大切にし、思いやる」という穏やかな愛を、スキンシップを通して相手に与え続けることです。
この変化ができないと、ひとによっては、「女(男)として見られなくなった」と言って、恋愛的スキンシップを外に求めるようになってしまいます。
でも、本当の意味でのつながりとは、本能的な欲望からバージョンアップしたところにあります。大事なのは、「相手にいつでも触れられる」関係をつくり続けることです。
ふたりで幸せな関係をつくる覚悟を忘れなければ、心地よい関係を築くことができ、形式だけではない「夫婦」になれると強く信じています。
中野:お互いの価値観を知り、小さなコミュニケーションをとり続けることが、夫婦の危機回避の秘訣ですね。夫婦でのコミュニケーションがうまくなると、仕事場でのコミュニケーションも円滑にできるようになりそうです。今日はありがとうございました。
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