夫婦の「対話」できていますか?“産後クライシス”を防ぎ、育児期のキャリアを豊かにする「夫婦会議」<前編>

子どもを授かった!恋人時代の延長のように夫婦2人のことだけを考えていた世界に、新しい登場人物が加わった時、キャリアはどうなっていくのだろう?

お互いの価値観を尊重し、協力し合いながら同じ方向に進むことができればいいけれど、「家事育児の分担で揉めた」「働き方のことで大げんかになった」などなど、変化に戸惑いすれ違いやすくなるのも事実です。

そのすれ違いの原因は、夫婦でのコミュニケーションの仕方を身につけていないことにあるのでは?ジョカツ部会議でそう話していたところ、『夫婦会議』なるものを提唱する方に出会いました。

Logista株式会社 共同代表CEO(妻)長廣百合子さんと、共同代表COO(夫)長廣遥さんは、ご自身が産後10ヶ月目に離婚の危機を乗り越えた経験から、『夫婦会議』を体験できる講座や夫婦会議ツール『世帯経営ノート』の普及を通じて、未来を担う子どもたちにより良い家庭環境を創り出していける夫婦であふれる社会づくりを推進する事業に取り組まれています。

出産前後に夫婦で共有すべきこととは?「わたし」だけでなく「わたしたち」で人生を創っていくためにおすすめしたい、夫婦会議のはじめかたを、ジョカツチームリーダー中野裕子(プロフィールはこちら)が詳しくお話をうかがってきました。

プロフィール

Logista株式会社  共同代表CEO(妻)長廣百合子さん

九州産業大学商学部商学科卒業後、株式会社毎日コミュニケーションズ(現:株式会社マイナビ)にて採用コンサルティング業務に従事。退職後、福岡中小企業経営者協会にて、中期実践型インターンシップ「キャリアスクープ・プロジェクト」の立ち上げを担う。並行して個人事業者として「次世代リーダー発掘・育成」を使命とした研修事業を展開する。

プライベートでは2013年に結婚。その後すぐに妊娠・出産を経験する中で、「仕事と家庭の両立をめぐる夫婦の葛藤」に直面し続けた結果「世帯経営」という概念に辿り着き、2015年7月より、夫の長廣遥と共に起業。夫婦会議ツール「夫婦で産後をデザインする世帯経営ノート」の開発、「夫婦会議の始め方講座/体験講座」の開催、育児期の夫婦関係に特化した情報サイト「産後夫婦ナビ」の運営などを行う。

https://www.3522navi.com/start/

Logista株式会社 共同代表COO(夫)長廣遥さん

東京工業大学大学院環境理工学創造専攻を修了後、株式会社リクルート入社。東京・福岡・大分と移動し、営業、マネジメント、新規事業立ち上げに携わる中で、「農業の担い手不足」や、「規格外品の野菜の売り先不足」などの問題を解決したいと2009年に退職し大分県豊後大野市に移住。農業や加工場での実践などを経るもヘルニアになり断念。2010年福岡に移住し九州エリアの地域活性のコンサルティングを行う。

プライベートでは2012年に前妻と離婚。2013年に現在の妻と結婚し、翌年娘が生まれる中、人生のプライオリティが「世の中の課題を解決すること」(仕事)から、「一家団欒」(家庭)に変化する。しかし夫が働き方を変えることの難しさや「産後離婚」の危機を感じる中、妻だけでなく夫も含めた子育てしやすい世の中づくりが必要と考えるようになり、2015年7月に妻と起業。

結婚・出産・育児…鍵を握る夫婦の「対話力」

中野裕子(以下中野):「話さなくてもわかる」、「以心伝心」とか「察する」とか。言葉をかわさずとも心が通じるというのは、日本独自の文化なのかもしれませんが、女性も社会の最前線で働く中で、どうしても各々が時間や労力の制約を受けて、コミュニケーションロスからのすれ違いで悩む人が多いように思います。

平成27年の司法統計によると、今や夫婦の3割は離婚する時代。離婚の原因第1位は男女ともに「性格の不一致」※とのこと。

※参考資料:LEGAL MALL「離婚原因ランキングと裁判で認められやすい離婚原因」https://best-legal.jp/divorce-cause-1367裁判所 第18表 婚姻関係事件数―終局区分 http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/713/008713.pdf

お互いに好意をもって結婚したはずなのに、性格の不一致が原因で別れてしまう。家庭の不和や離婚は仕事や人生にも影響を与え、特に子どもが生まれてからは2人の気持ちだけでは人生の大きな決断はしにくくなります。「妊娠期に、話し合っておけなかったのかな?」「産後クライシスを迎える前に話し合っておけなかったのかな?」…。ふと周りを見渡すと、職場でのコミュニケーションが上手なワーキングマザーは、夫婦関係も良好な傾向にあるな、と、日頃感じていました。

今回、長廣さんご夫婦が、「世帯経営ノート」や「夫婦会議」という発想で体系的にまとめられていることを知り、まさに伝えたかったことはこれだ!と感じ、お話を聞きたいと思いました。

長廣遥さん(以下遥):ありがとうございます。家庭でも仕事でも、誰かと共に生きる上で、コミュニケーション能力が問われる場面がありますよね。日常的な「会話」も大切ですが、特に「対話」は欠かせないことだと感じています。

中野:「対話」ですか?

長廣百合子さん(以下百合子):はい。「会話」が、他愛もないおしゃべりや気軽に交わすコミュニケーションであるのに対し、「対話」は、価値観の違いを尊重し、互いに納得のいく結論を導き出すコミュニケーションです。わたしたちが提唱している「夫婦会議」では、この「対話」によるコミュニケーションを重視しています。

:仕事では大切なことは話し合って決めますよね?でも、夫婦や家族の間ではおざなりになっている人も多いのではないかな、と思っています。

夫婦のパートナーシップの秘訣は「臭いものに蓋」をしないこと

中野:確かに、家庭や夫婦では対話をする習慣がなかなかないように思います。それに、「夫婦で話し合いをしよう」と伝えると、逆に話し合うことで関係が悪化するのではないかという心配する声もありますが。

:対話はお互いを攻撃しあうものでは無いということをまずお伝えしたいですね。特に私たちがおすすめしている「夫婦会議」は、自分の意見を通すため・相手を変えるために行うものではなく、わが子はもちろん、夫婦・家族にとってより良い未来を創り出していくために行うものです。「敵対関係ではなく、信頼関係を築くために話し合いたい」という目的意識を共有することから始めてもらえたらと思っています。

中野:特に産後は、自分の力だけではどうにもならないことばかりだからこそ、2人チームの信頼関係が必要。ただ、ここでも「パートナーのことが好きだから、ネガティブなことを言って嫌われるのが怖い」という声も聞こえてきそうです…。

百合子:生涯をともに歩むと決めた相手に対して、自分の感情や考えをきちんと伝えるということは、とても重要なこと。「言えば喧嘩になる」「気まずくなる」と思っても、それを口にする勇気をもち、相手の価値観にも耳を傾けたいところです。ネガティブな感情を乗り越えていかないかぎり、「夫婦の信頼関係」は深めようがないと、思っています。

それにちょっとキツイ言い方になっちゃいますが、「好きだから」という理由だけで、大切なことを話し合えない人とは結婚しない方がいいと思います。結婚や子育ては、今までの生活プラスαではない。「わたしたちとしてどうするか?」を考え決める日々の連続です。特に子育てにおいては、夫婦が下す決断の一つひとつが、良くも悪くも子どもの育つ環境に影響しますから。

「わたしたち」で新たなキャリアを創っていく

中野:夫婦になって、子育てがはじまることで、なんだか全く新しい道が創られていくような印象ですね。

百合子:あ、中野さん鋭いですね。実際に私たちが夫婦会議を提唱している背景にあるのが「キャリア」の問題です。

キャリアとは、「仕事だけでなく、日々の暮らしや人間関係を通じて築き上げる人生そのもの」のことを呼んでいます。

この「人生そのもの」を、独身時代までは「わたし」の裁量で決めてきていると思うんですが、夫婦として生きていくことを選択した時点で、「わたしたち」で決めていくことになるんですよね。講座でもよく、主語を「”わたし”から”わたしたち”」に変えて考えてみましょうとお話をしているんですが、これがスムーズでないと、夫婦の間で危機的状況が訪れやすくなると感じています。

中野:夫婦会議は、ワークライフバランスや、家事のシェアなどのピンポイントの話ではなく、「わたしたちで人生をどう創るか」を考える機会なんですね。

:そうですね。例えば僕は、1度離婚を経験し、2度目となる今回の結婚でも妻が出産後10ヶ月目あたりで離婚の危機を迎えた。細かなエピソードは割愛しますが(笑)結婚も子育ても、これまでの人生に新しいものが加わるだけだと思っていたのでしょう。夫として父として、「自分も前向きに変化していく立場にある」ということを理解していなかったのだと思います。正直なところ、自分のキャリアを変えたくなかったんだと思います。

特に、当時携わっていた地域活性の仕事は、一生やっていたい仕事とまで思っていたので変化に対する葛藤は大きかった。でも、妻ともよく話し合い、どんな人生にしたいか?」を見つめ直していく中で、お互いのビジョンが共有できた。家の仕事も外の仕事も協力し合いながら「一家団らん」を実現することが「わたしたち」には最も大切だったんです。

百合子さん:わたし自身は、結婚を決めた時点で、主語を「わたしたち」に変えて人生を創っていく覚悟を持っていたので「やっとか!!」という印象もあるんですけど(笑)

でもあの当時本気で「対話」を繰り返してきたことは無駄ではなかった。未だにバチバチと火花が散ることはあるけど、今こうして、夫婦・家族としての日々を笑顔で積み重ねていけているのは、「わたしたち」でいることを諦めなかったことに尽きると思っています。

よりよい夫婦会議のために、前向きな対話のコツ

中野:あらためて、対話は大切!ですね。何かコツはあるんでしょうか?

百合子:そうですね…詳しくは、弊社で発行している夫婦会議ツール「世帯経営ノート」や「夫婦会議ノート」にまとめているのですが、主に次の5つを意識してもらえるとスムーズかなと思います。

【対話のコツ】

・その1 「わたしたち」を主語にする
・その2 「ん?」と思ったら確認。お互いの感情や考えに関心を持つ
・その3 価値観の違いを受け止める
・その4 遠慮しない、過信しない、諦めない
・その5 ふたりで夫婦会議のルール・マナーを考える

「わたしたち」としてどうするか?を考えながら話し合い、疑問や違和感が生じれば「どうしてそう思うの?」「詳しく聞かせて?」などとお互いに質問をし合う。途中、どうしても価値観が交わらない部分が出てきても、「そういう感じ方・考え方もあるのだな」と、一度は相手の主張を自分の頭の中で考えるなどしてちゃんと受け止めてみる。「迷惑をかけたくない」と遠慮したり、「夫婦だから言わなくても分かるはず」と過信したり、「元は他人だから分かるはずがない」と諦めたりせず、夫婦の信頼関係を深めていくつもりで自分の感情や考えを言葉にする。お互いのコミュニケーションの癖を踏まえて、「目を見て話す」「話は最後まで聞く」「否定から入らない」など、前向きに対話を続けていくための知恵を出し合う。

こうした対話のコツを踏まえて、夫婦会議を試してもらえたらと思っています。

すれ違いが起きやすくなる産後、子育て期には特に「夫婦会議」を

中野:ここまで色々とお話をありがとうございます。前編最後の質問です。おふたりは、主に子育て期のご夫婦向けに夫婦会議をおすすめされていますが、それはなぜですか?

百合子:一言で言うなら、「産後の危機を乗り越え、子どもたちのためにより良い家庭環境を創り出していってほしいから」ですね。家庭(夫婦)が社会の最小単位であり、子どもたちが最初に触れる社会そのものだと思うから。

:産後は特に、妻は家から出られない時間が続き、暗に「夫は外で仕事」「妻は家で家事・育児」と夫婦間の役割が自然と分断されがちです。

産前産後のすれ違い図解

この状態が自分たち夫婦にとって納得のいくものであれば良いのですが、「あなただけ外で自由にやりたいことをやって!」「家事育児もいっしょにやると言ったのに話が違う!」と、不満が噴出し、すれ違いはじめるご夫婦もいる。時には、すれ違いに留まらず、産後うつや虐待、DVなどの「母子の命に関わる危機」や、産後クライシス、セックスレスなどの「産後離婚に繋がる危機」に発展することだってある。

子どもたちのためにも、こうした妊娠〜産後・育児期特有のすれ違いや危機を乗り越えて、より良い夫婦関係を築いてほしい。「夫婦会議」は、その一助になると思っています。

中野:何を話し合うか?の前に、どんな風に話し合うか?という土壌を整えておくことで、対話の質が変わってきそうですね。そして、「夫婦会議」の目的は、より良い未来、より良い家庭環境を創っていくためだということを忘れないこと。

よい家庭環境が築けるからこそ、お互いの夢や希望も育てて叶えていくこともできる。私自身も、子供が小さい時にパートナーと一緒に協力して毎日を乗り切ってきたことで、「人生をともに歩む同士」になった感覚があります。夫婦の対話が充実するほどに、育児期のキャリアは豊かになっていきそうですね。

 

後編では、「妊娠〜産後・育児期」に夫婦で話し合っておきたい具体的な項目をお届けして参ります。

【後編はこちら】

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INTERVIEW:中野裕子 EDIT&WRITING:飯沼暢子

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