今日から磨ける!「5年後の選択肢」を広げるスキルとは?

「将来に向けて、何かスキルでも磨こうかな」と気になりつつ、「忙しいし、まあ、いいか」と先送りにしていたり、どんなスキルを磨いていいのかわからず、立ち止まっている方も多いのではないでしょうか。そんな皆さんにこそ知ってほしい“5年後の選択肢を広げるスキル”の見つけ方と磨き方を、これまでに3,000人以上のカウンセリングを行ってきたキャリアアドバイザー・長谷川貴子さんにうかがいました。

プロフィール

長谷川 貴子

株式会社リクルートキャリア エージェント事業本部 カスタマーサービス部 マネージャー。キャリアアドバイザー歴11年。おもに事務職、営業職の女性のキャリア支援を行ってきた。

「ポータブル・スキル(持ち運びできる能力)」を磨くことを意識しよう

5年後、10年後のキャリアの選択肢を広げるためにどんなスキルを身につければいいのかを考えるための前提として、「スキルについて誤解している人が多いことが気になっています」と長谷川さん。スキルと言うと技術や資格を思い浮かべ、「私にはスキルがない」と自信を持てなかったり、「英会話スクールに通って、TOEICの点数を上げなければ」と焦る人も少なくないそうです。

「でも、仕事に必要なスキルは技術や資格以外にもあります。例えば、営業事務で役立つスキルはパソコンスキルだけでなく、チームのメンバーが仕事をしやすいように『この資料を作りますか?』と先回りして提案したり、改善点を見つけて提案し、実行する力など多岐にわたります。転職の採用でも、技術や資格だけではなく、対人スキル、仕事をやり切る力、物事に取り組む姿勢といった“仕事をするための能力”すべてを企業は“スキル”として評価します」と長谷川さんは言います。

つまり、社会人として数年働いてきた人なら、誰でもスキルを持っているということです。その上で、「これからスキルを磨くにあたって意識してほしいのは、“ポータブル・スキル”です」と長谷川さん。「ポータブル・スキル」とは、直訳すると、「持ち運びできる能力」。業種や職種を超えて通用する汎用性の高いスキルのことです。

「転職をするつもりはないから、自分には関係ない」と思った人もいるかもしれません。「でも、ポータブル・スキルを意識した方がいいのは転職を考えている人だけではありません」と長谷川さん。「今は企業を取り巻く環境の変化が激しい時代ですから、自分の意思とは別に転職をせざるを得ない状況に置かれることもありますし、同じ会社の中で別の業務に配置される可能性もある。そうなった時も、汎用性の高いスキルを身につけておけば心強いですし、そういう人材はどんな企業でも高く評価されています」。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

今の自分の「強み」を知ろう。それこそが、磨くべきスキル

さて、「ポータブル・スキル(持ち運びのできる能力)」を磨くには、具体的にどのような力を身につければいいのでしょう。「実は、ポータブル・スキルというのは、『営業事務ならこんな力、販売スタッフならこんな力を身につけて』と万人に同じアドバイスができる類のものではないんです」と長谷川さんは言います。

その理由は、ポータブル・スキルには、「専門技術・知識」と、「コミュニケーションスキル」「リーダーシップ」といった測定が難しいスキルの2種類があり、後者は人柄や性格によって同じ力でも実現のためのアプローチが違うから。例えば、「リーダーシップ」を発揮するのに、自分の意見を相手に納得させて周囲をグイグイ引っ張っていくタイプの人もいれば、相手の意見をじっくり聞いてチームをまとめていくタイプの人もいます。

「ですから、自分がどんな力を身につければいいのか、それぞれが探ることが大切です。ただ、業種や職種を超えて通用するスキルについては、多くのキャリア論の専門機関や専門家が分類の枠組みを提唱していますから、自分のポータブル・スキルを整理するための手がかりにすると良いと思います」と長谷川さん。

出典:JHR一般社団法人人材サービス産業協議会作成「ポータブルスキル活用研修」資料(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000091180.pdf)

【参考】ポータブルスキル セルフチェック(http://sp.j-hr.or.jp/)

「自分が磨くべきポータブル・スキルを知るためには、自分の強みと弱みを把握し、こうした枠組みに当てはめて考えてみましょう」と長谷川さん。自分の強みを把握するにあたってのポイントは「客観性」。「プロのキャリアアドバイザーのカウンセリングを受けてみたり、上司や同僚に聞ければより性格に把握できますが、手軽にできる方法としては、家族や友人など身近な人に自分の長所と短所を聞いてみるのがおすすめです」と教えていただきました。

短所も聞くのは、長所は身近な人に聞くと客観性に欠ける場合もありますが、短所は身近な人ほど率直に言ってくれるから。短所からは「弱いから、伸ばしたい力」を知ると同時に、裏返しで考えれば、長所の発見にもつながります。例えば、「優柔不断でたまにイライラするけれど、何でもコツコツと丁寧にやるよね」と言われたら、「業務を確実に遂行する力があるということかな」「もうすこし決断力を磨こう。でも、優柔不断も裏を返せば、周囲を気遣えるということだよね」と考えてみることができます。

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8,568通り、あなたはどのタイプ?

30代に向けて、上司の視点で考える習慣を通じ「おかん力」を身につけて

ところで、磨くべきポータブル・スキルは人それぞれではあるものの、同じ職場で仕事を続けるにしても、転職するにしても、多くの企業が30代以降の社員に期待する力があると長谷川さんは言います。「それは『マネジメント力』です。何やらハードルが高そうに聞こえますが、後輩に仕事を教えたり、“段取りをつけてメンバーに動いてもらい、目標を達成する”など、面倒見の良い“おかん”が持っているような力も『マネジメント力』に含まれます。例えば、新人教育の担当経験や小規模なプロジェクトのリーダーを務めた経験は『マネジメント力』として評価されますし、組織の中で信頼されていたという証にもなります。チャンスがあれば、積極的にやってみましょう。

「マネジメント力」を鍛えるには、入社後なるべく早いうちから、目の前の業務を上司の視点で捉えてみる習慣をつけると良いそう。「“上司はなぜこの業務をやるよう指示したのか”、“自分がマネージャーなら、こういう場合にどうするか”と考えれば、マネジメントの疑似体験を積んでいくことができます。また、組織の中でその業務がどんな意味を持つのかが見えれば、同じ仕事でもより積極的に向き合え、そこから得られる経験やスキルもより意味のあるものになるはずです」。

職務経歴書を書いてみると、「足りない経験」も見えてくる

また、「転職の採用において、企業はポータブル・スキルの有無を実務経験から判断します」と長谷川さん。多くの企業が評価する実務経験を知るには、「転職する意思があるかどうかとは関係なく、職務経歴書を書いてみるのがおすすめです」と長谷川さん。コツは転職関連のWebサイトや書籍などに掲載されている職種別のサンプルを見ながら書いてみることだそう。「サンプルには企業が評価する要素が盛り込まれているので、どんな能力や経験に市場価値があるのかが把握できますし、自分に足りない経験も見えてきます」。

例えば、販売スタッフとして入社4年目の人が店長職の職務経歴書のサンプルを見たとしましょう。

・入社5年目に〇〇店副店長としてパート・アルバイト25名をマネジメント
【実績】注力商品キャンペーン30店舗中1位を記録

と業務内容に書いてあり、自分も副店長を務めているとしたら、「この経験は職務経歴書に書けるな。でも、実績に目覚しいものはないから、これからの半年、小規模な販売キャンペーンから上位を目指してみよう」と目標を立てるときの参考にすることができます。

例:使える! 職務経歴書フォーマット【書き方見本集】

“指示待ち”をせずに動く力を持った人はどんな企業でも歓迎される

長谷川さんに「スキルを効率的に磨くコツ」をうかがうと、「“今はこのスキルを磨こう”と目標を意識して仕事をすること。筋トレと同様に鍛える場所を意識することで、同じ仕事をしていてもスキルの身につき方が変わってきます。これにはもうひとつ効用があって、気が進まないなと感じる仕事でも、“スキルを磨ける!”と思えば前向きに捉えられますよ(笑)。また、転職エージェントではよく『半年間に1個、職務経歴書にかけることを増やしていきましょう』とアドバイスをします。スキルを身につけるペースの指標にしていただくと良いかもしれません」。

最後にもうひとつ、おすすめのスキルの磨き方を教えていただきました。「“指示待ち”をやめてみることです。言われたことをこなすだけでなく、自分で課題を見つけ、それを解決するための段取りを考えて、実行する。それを積み重ねれば、いつの間にかポータブル・スキルが蓄積されますし、“指示待ち”をせずに動く力を持った人はどんな企業でも歓迎されます」。

「できること」「やりたいこと」を問われ続けるのが、働くということ。スキルを磨いて、自分の意思で人生を選ぶ自由を手に入れよう

やりたいことや理想の将来像が明確なら、自分がどんなスキルを磨けばいいのか迷うことは少ないでしょう。「だけど、それがわからないから、みんな悩むんです。誰しもわからないんですよ。“できること”“やりたいこと”を問われ続け、自分で探りながら、応えていくのが働くということなんです」と長谷川さん。特に今は、企業環境が変化しやすく、一つの会社、一つの仕事をずっと続けていくことが以前よりも難しい時代です。それでも、「スキルを磨くなどの学びは年収にプラスの影響を与える」「自己学習がキャリアの見通しや成長効果につながる」という研究結果も出ています。

(リクルートワークス研究所『どうすれば人は学ぶのか −−社会人の学びを解析する−−』)

実際、30代に入ってから等、育児休暇中や子供が小さく自宅にいる時間が長い時を、今後に向けた勉強の時間にあてている先輩ワーキングマザーもいます。「わたし」にとってより良い未来を作るために、学び、自分の意思で人生を選ぶ自由を手に入れたいですね。

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EDIT&WRITING:泉彩子
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