女性が“上級管理職”を目指すために、20代・30代でできること――女性リーダー採用・活躍支援プロジェクト特集(後編)

女性は管理職、特に部長以上クラスの上級管理職をなかなか目指したがらない。「たいへんそう」「別に管理職になりたくない」「男性ばかりだから自分がやるイメージがもてない」…。上級管理職のロールモデルの数が少なく、「実際のところどうなのか」イメージもわきづらい。だけど、女性ならではの、上級管理職のやりがい、楽しさがあるはずなのです。

今回、ジョカツ部リーダー中野裕子(プロフィールはこちら)が、女性上級管理職のロールモデルのひとりとして、株式会社グロービス経営管理本部長林恭子さんに「部長、役員−女性が上級管理職を目指す時に必要なこと」を聞いてきました。

前編では女性が管理職を目指したがらない理由、課長、部長、役員のマネージメント能力の違いを聞きました。

前編記事はこちら

今回後編では、どんな人が上級管理職になれるのか?社長が女性の上級管理職に求めていること、攻めのダイバーシティ、女性の昇進にはスポンサーが必要?20代、30代のわたしたちが上級管理職を目指すためにできることをお伝えします。

プロフィール

株式会社グロービス

マネジング・ディレクター 経営管理本部本部長 林恭子氏

筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士課程前期修了(MBA)。モトローラで半導体、携帯電話端末のOEMに携わった後、ボストン・コンサルティング・グループへ。人事担当リーダーとしてプロフェッショナル・スタッフの採用、能力開発などを担当する。その後グロービスに転職し、人材・組織に関わる研究や教育プログラムの開発を担当した後、経営管理全般を統括。グロービス経営大学院での講義、企業研修、講演も務める。共著書に『【新版】グロービスMBAリーダーシップ 』(ダイヤモンド社)、『女性プロフェッショナルたちから学ぶキャリア形成』(ナカニシヤ出版)など。経済同友会会員。

上級管理職を目指すために20代・30代でできること

:管理職を目指すからどうこうは置いておいて、やっぱり今目の前のことで結果が出せないと次はない。いかに目の前のことでいい仕事をして、周りの人に「彼女すごいよね、よくやってるよね」って言われるようやっていくしかないと思います。

管理職ポジションになればなるほど、「スキルを勉強すること」以上に、「周囲からの信頼」が大切だと思います。

中野:社長が女性の上級管理職に求めていることは何なんでしょう?

:物事をみる視点の多様性だと思います。

ある研究で、問題を解決するのに、どのような集団で行ったらクリエイティブな解決ができるかという実験を行ったそうです。

同じように能力が高い集団と、バックグラウンドも能力もバラバラな集団でやってみたら、後者の方がクリエイティブなアイディアをたくさん出すという結果になった。

これは、多様な視点があるということは、ものを測ったり切ったりするツールをたくさん持っているということと同じになるためなんです。

一方の能力が同じように高い集団は、実際は、「巨大な一人」がいることと同じ。

時代の変化と共にクリエイティブなものを求めていくときは、同じように頭のいい人がいても何も起こらない。なので、大事な意思決定をしている時に、多様な意見があるのがいいことだと言えます。だから同じような人ばっかり集まって何十時間も会議しても全くクリエイティブな意見が出てこない(笑)。

中野:経験が似たり寄ったりみたいな。

:みんな趣味がゴルフぐらいしかない。こういう人たちが話していてもクリエイティブなことは出ない。

中野:同じものしか好まないとそうなりますね。

“攻め”のダイバーシティを

:ダイバーシティは今、攻めて勝つためにあると思います。CSR的な、やらないと怒られると思ってダイバーシティをやっているところに発展は絶対ない。だから、あえて、女性も役員にすることのメリットは、これまでなかった視点がそこに出せることなんです。

女性のみなさんにお願いしたいのは、管理職になっても、「おっさん」と呼ばれてしまうような凝り固まった人にならないでほしい。おっさん化した女性が部長会、役員会にいても、それは巨大な一人と同じになってしまうんです。もともと持っている自分の素直な視点で、おかしいと思ったことに意見を言える存在でいてほしいです。

女性が少ない職場にいる人たちに伝えたいこと

中野:男性比率が高い職場では女性が発言しづらいムードがあるという声を聞きます。

:女性が少ないことを悪いと思っていると、悪いことばかり見えてきます。発想の転換をして面白がることが大事だと思いますよ。

女性が少ないということは女性が目立つということで、だから覚えてもらえるとか意見を聞いてもらいやすいとか、向こうが気を使って意見を聞くことがあったりするかもしれない。プラスの面を見ることで前向きなムードが生まれると思います。

中野:自社にはロールモデルがいないから女性管理職が育たないという声もあります。

:ロールモデルは都市伝説だと思っています。ロールモデルがいないからダメだという言い訳のもとに変えられない状況を作っている気がして。

旧来型を踏襲した女性管理職がいたらいいかというと、そうでもないですよ。おっさん化している女性がいても、全くいいことはないし、なんでもできるパーフェクトウーマンがいたとして比較されたらたまったものではないですよね。(笑)

男性でも素晴らしい方はいっぱいいる。その業界とかその会社で上手にやっていくことを学ぶのであれば男女問わず仕事ができて人柄のいい方に習った方がすごくいいことを教えてくれる。本音ベースで、「こういう時はこういうことを言った方がいいよ」とか「あの人がキーマンだよ」とか、男社会の中で本当に上手にやってきている人が、一番本当に大切なところをわかってるはずです。

中野:出産などのライフイベントと仕事を両立するところの気持ちだけは、どうしても男性にはわからない部分があるので、そこは同じ会社だけでなく、外に求めてもいいですよね。ロールモデルはみんなで作っているところだし、理想像はなく、いろんな形の活躍する女性がいればいいのではないかと思っています。

:そうですね。「わたしがロールモデルになってやろう!」という方がいれば、「よろしくお願いいたします!」という感じですが…無理にならなくてもいいと思いますし。

女性の昇進にスポンサーが必要というのは本当?

中野:ちなみによく女性の昇進にはスポンサーが大事だ、という話が出ます。

:前の会社では男女問わず、一人の社員にメンターとスポンサーを両方つけていました。メンターは辛い部分の話を聞いてもらう、時々ランチに一緒に行くなど心の支えとなってくれる存在。スポンサーは、仕事のスキルをどう成長させていくのかを見る責任者として。

だから女性にとってのスポンサーとはそういう意味で、上司で仕事ができる人に本当にここのビジネス社会でうまくやっていくにはどうしたらいいかというのをしっかり教えてもらい引き立ててもらう、というのがいいのではないでしょうか。

中野:両方をつけてくるような先進的な会社っていうのは、数えられるぐらいしかないのですよね…。そのような環境ではない時はどうしたらいいですか?

:スポンサーとメンターと分ける必要はないかもしれないですし、そういった制度があるかどうかよりも、自分にはメンター的要素と、スポンサー的要素が必要だと考えるなら、上司を始めとして、それを提供してくれそうな人と、積極的に信頼関係を作り、自分の求めることを伝えるのがいいと思います。

上級管理職に向いている人はどんな人?

中野:上級管理職に向いている人とは、どんな人ですか?

愛のある人が向いていると思います。

本当にメンバーや社員のことを愛していると、何ができるかというと、優しくもできるが厳しくもできる。理想も持てるし、理想を現実化するためにリアルなことを考えたり、理想と同時に、超リアルにシビアなことも考えられる。そんな人が部長や役員に向いていると思います。

あとは、やはり全体を観ることができる人。

役員会議に出るようになると、やはり自分の部門の話ばかりしていてはだめ。残念な人だと思われてしまいます。会社は人間の体と同じで、例えば腕を骨折すると骨が折れるだけじゃなく、腕を治すために白血球が全部そっちに行ってしまうとか、痛くてほかのことを考えられないとか、全体に影響を及ぼします。

だから全体観を持つことが大事。

それから、今だけに埋没しない人。

「今期だけ乗り切ればいい」という視野ではなく、サスティナブルな経営ができれば、みんながご飯を食べられて、それで家族が生計を持てて、税金を払えるから地域を潤うところまで考えられないと。5、10年先どうなるか考えながら、だから今これをやっていかないといけないと考えなければいけない。

高い視座と広い視野を持つことが上級管理職には絶対に必要だと思います。

20代、30代の今から上級管理職を目指すために身につけておけること

:今からできることは、時代環境が変わっても自分の頭で考え、物を観ることができる力を身につけるといいと思います。具体的には、論理的、構造的にものを考える訓練です。これは人を説得するためにも必要。「なぜそう考えるの?」って、必ず重要な役になればなるほどシビアに聞かれますから。

それから、財務諸表を見ることができるようになること。

会社が儲かっている、儲かっていないとか、会社は今どれくらいの価値があるのかはわからないとですね。

また、当然色々な法律もわかっておいたほうがいいが、いずれ役員をやるなら、会社法の知識も必要ですね。

中野:若い頃から、論理的にファクトベースでものを説明できて、財務諸表もわかる人は、会社視点で発言ができますから、会社からも信頼されそうですね。例えば将来起業するとしても、必ず必要になるスキルですし。

:どっちみち自分のためになるのでした方がいいですよね。することによるデメリットはないです。

中野:会社も将来の面倒まで見てくれないかもしれない中、老若男女問わず全員に求められているのは経営力ですよね。

: 女性は真面目だし努力をするし、どんどん管理職をやるといいと思います。ただ、やっぱり高い視点から全体像を観る視点は必要だと思うので、男性化する必要はないけれど、経営者視点や、話を通しやすくする説明スキルは身につけておいて損はないと思います。

はじめは私も全く経営メンバーになりたいとは思っていなかった。静かに暮らしていきたいと思っていました(笑)。ですが、人事畑で、採用した責任もある。会社の人達をとても好きなので、この人達に幸せになってもらいたいという気持ちから、目の前のことをがんばってやりつづけた。気づけば役職にもつき、やってみたら立場にも慣れ、結果役割ができた、そういうことだと思います。

【上級管理職に向いている人】

(1)愛がある人
(2)全体を見ることができる人
(3)今だけに埋没しない人

【上級管理職になるために20代・30代からやること】

(1)論理的、構造的にものを考える訓練をする
(2)財務諸表を見ることができるようになる

リクルートキャリア(RCA)「ジョカツ部」では、今後もさまざまな切り口での女性活躍に関する情報発信等が予定されているので、女性のライフ&キャリアのヒントを得たい方は、ぜひフォローしてみてください。

最新情報等はこちらを随時更新中/リクルートキャリア(RCA)「ジョカツ部」https://www.facebook.com/rcajokatsu/

INTERVIEW:中野裕子 EDIT&WRITING:飯沼暢子

Pagetop