現在、女性が働くことは一般的になっていますが、まだなお、「女性が活躍している会社」の情報を正しく収集するのは難しい問題のひとつです。
リクナビNEXTの女性会員に調査したデータ※では、78%の女性が「女性がきちんと活躍できる会社があれば転職したい」と回答していますが、一方で74%の女性が「きちんと活躍できる会社の情報を取得できない」と回答しています。
では、どこを見れば、「女性が活躍できる会社」と判断できるのでしょうか。
※1:2016年実施:リクナビNEXTの女性会員(n=124)へのアンケート調査
目次
完璧な会社はない。実現したい優先順位を整理しよう
全てにおいて「完璧」な人間も存在しないように、全てにおいて「完璧」な会社も存在しません。全ての希望を叶える会社を探すのではなく、転職活動を始める前に、優先順位を整理することをお勧めします。
「これまでの経験・スキルを活かせるか」「年収維持もしくはアップするか」「勤務地は通いやすいか」など、働く上で大事にしたい価値観や条件を複数の観点で書き出し、その中で譲れないものは何かを明確にしていきましょう。そして、「今回の転職で最も叶えたいこと」を軸に会社を選んでいくと良いでしょう。
また、「女性がきちんと活躍できるか」という点も、客観的に判断します。女性活躍のための制度の進み具合で、同じ仕事内容、業界であったとしても、得られるチャンスやその後の年収の上がり幅が全く変わってくる可能性があります。次項で具体的なチェックポイントをご説明します。
「女性が活躍できる企業」を見極める3つの観点
「女性が活躍できる」と言っても、様々な観点がありますが、大きくは三つに分けられます。
一つ目は「女性がライフイベントを経ても長く働き続けられる」という「ケア」の観点。二つ目は「女性が男性と変わらずフラットに評価される」という「フェア」の観点。三つ目は「女性が専門性やマネジメント力などのスキルを身に着け成長し続けられる」という「キャリア」の観点です。
「ケア」…両立支援施策が整っているか
「ケア」に関しては、“両立支援施策が整っているか”を確認しましょう。産休育休制度や時短勤務制度は法律で定められているため、法令順守している企業であれば制度自体はあるはずです。ただし、「子どもを産むとそのまま辞めていく方が多い」、「時短を取りづらい雰囲気で活用して働いている人が少ない」など、制度が形骸化して使われていない場合もあるので、「運用の実態」や「個々人の事例」を面接で人事担当者に確認してみましょう。転職エージェントを活用している場合は、キャリアアドバイザーに相談すれば、企業に確認してもらえます。
「フェア」…女性比率と女性管理職比率はどうなっているか
「フェア」に関しては、“男女の採用数や勤続年数”、あるいは“女性の管理職比率”を確認しましょう。ただ、技術系など職種によっては、もともと女性の就業者の存在比率が低い場合もあるので注意が必要です。女性の社員数が多く勤続年数も長いにも関わらず、管理職には女性がほぼいない場合は、「フェア」の部分での観点が薄い企業の可能性があります。
「キャリア」…女性管理職比率はどのくらいか
「キャリア」に関しても、女性の管理職比率を確認すると良いですが、前提として管理職に占める女性の割合は7.2%※2に留まっているため、それだけでは判断できないこともあります。女性向けの研修や育成プログラムがあるなど、育成・登用に対しての施策を行っている会社は、積極的に女性活躍を進めている可能性が高いです。
※:帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査」2018年
転職前から「管理職を目指しています」と明確に思っている方は少ないかもしれませんが、自分が管理職にならないにせよ、組織の意思決定をするメンバーに女性が一人もいない会社と、ある程度の割合で女性管理職がいる会社では、女性社員の働きやすさや働き甲斐が変わってくる可能性があります。
「ケア」「フェア」「キャリア」に関しては、まず定量的なデータで判断することをお勧めします。企業のホームページや求人情報、あるいは「女性の活躍推進企業データベース(→)」などで各項目の数字や制度を確認してみると良いでしょう。特に新卒採用の求人情報は、情報量も多く分かりやすいのでお勧めです。
「企業の開示データ」から判断する
「女性活躍推進法」とは、平成28年4月に施行された法律で、正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」です。その名の通り、女性が職業生活において希望に応じて十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備するために制定されたものです。ただし301人以上を雇用する企業が対象となっており、それ以下の場合は努力義務です。
2.その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・公表
3.自社の女性の活躍に関する情報の公表
が義務づけられ、届出をしている企業の情報は、誰でも閲覧可能です。
公表データのチェックポイント
2018年9月時点で、9722社がデータを開示しています。
公表されている情報
・採用における男女別の競争倍率又は採用における競争倍率の男女比
・男女の平均継続勤務年数の差異又は男女別の採用10年前後の継続雇用割合
・男女別の育児休業取得率
・一月当たりの労働者の平均残業時間
・年次有給休暇の取得率
・管理職に占める女性労働者の割合 など
公表されているデータのうち、以下は企業を選ぶ上で重視したい項目です。判断する際は、統計として公表されている平均値を参考にしましょう。
・男女別の育児休業所得率(女性平均83.2%、男性平均5.14%※厚生労働省「雇用均等基本調査」2017年)
・一月あたりの労働者の平均残業時間(14.3時間※厚生労働省「毎月勤労統計調査」2016年)
・管理職に占める女性労働者の割合(7.2%※帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査」2018年)
ホームページや求人情報に記載がない場合は?
301人以上の企業として登録があるにも関わらず、自社ホームページや求人情報の中で、全く前述の項目に触れていない企業もあります。
記載がないからといって、必ずしも女性活躍への意識が低いとは言い切れません。自社ホームページや求人情報の場合は、他に伝えたい項目を優先させることもあるため、「『女性の活躍推進企業データベース』でデータを開示しているかどうか」をチェックしましょう。
逆に、「その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・公表」で「中途採用」を行動計画に置いている会社もあります。そういった企業は、現状の女性社員の割合が少なかったり、制度が十分でなかったりするかもしれませんが、少なくとも門戸を開いて積極的に採用、育成、登用を進めている企業と言えます。「将来的にどのように成長していくのか」といった未来を見据えて推進しているかどうかも判断のポイントです。
「経営者のコミットメント」から見極める
企業の未来は、経営者がどのような経営戦略を描いているかによって変わります。
女性活躍やダイバーシティを推進していくにあたって、何よりも重要なのが、「経営のコミットメント」と言われています。
「女性活躍推進法があるから」「イメージを良くしたい」といった理由で女性活躍を進めている企業は、些細なことで方向転換する可能性があります。ポーズとして女性活躍を進めるのではなく、経営者自身が「経営戦略の一つであり重要な課題である」と明言している場合は、これまで「ケア」「フェア」「キャリア」の観点で施策を実行していなかったとしても、わずか数年で企業が変わったかのように、働きやすくなったり、働き甲斐を感じられるようになったりすることもあります。
経営者の考え方は企業ホームページやインタビュー記事などで確認できる場合もあります。女性活躍やダイバーシティ、働き方改革等において、どのような考えを持つ経営者なのかを、確認できる範囲で調べてみてください。
制度の充実度だけではなく「実態」を確認
「育児休暇制度最大3年」、「時短勤務制度は10分単位で選択可能」、「フルフレックス制」、「全社員在宅勤務・リモートワーク可能」、「家族手当・住宅手当有」、「託児所有、ベビーシッター代の補助有」「男性の育児休暇取得の奨励」…雇用環境の変化に伴い、制度の充実に力を入れている先進的な企業が増えています。制度面に関しては、企業のホームページや求人情報で知ることができます。
制度が充実している企業は魅力的ですが、最も重要なのは「実態」です。制度が充実していても、使う人が負い目を感じてしまうような風土の企業や、「ケア」に寄りすぎた制度ばかりで、長く働くことはできても、フェアとは言い難く、キャリアアップのチャンスがない企業では、本当の意味で「女性が活躍できる会社」とは言えません。
そのため、制度の実態を確認することが重要ですが、応募や面接時に直球で「御社では産休育休が取れますか?」と聞いてしまうと、働く意欲が高いにも関わらず、「福利厚生目的で転職をしたいのか?」と不要な誤解を招く可能性があります。
「ライフイベントを経ても働き続けたいと思っているのですが、出産後も活躍している女性はいらっしゃいますか」、「現在○歳の子供がいるのですが、仕事においてもキャリアアップをしていきたいと思っています。御社で子育てとの両立をされている女性社員の方はどのような工夫をされていますか」など、質問に工夫を加えるようにしましょう。できれば、活躍している女性社員や、同じような境遇で入社した中途社員を紹介してもらうなどして、「実態」を確認できる面談の場を設けてもらうと良いでしょう。
実態の確認に口コミサイトを活用する方もいるかもしれませんが、匿名のため、信憑性に欠ける場合もあります。経営者の交代や戦略の変更によって職場環境が大きく変化する企業や、特に女性活躍においては女性活躍推進法の施行(平成28年4月)から変化した企業も多いため、「いつ」の情報かを確認し、あくまでも参考程度にとどめることをお勧めします。
なお、女性社員が少なく「ようやく一人目の育児休暇取得者が出た」という企業もあります。そういった企業では、復職後の女性とのコミュニケーションに慣れていないことが多く、一時的に摩擦を生じつつも他の女性社員からの働きかけにより、制度・ルールの見直しがスピーディーに定めされていくケースが多いのが特徴です。組織が専業化されていることの多い大手企業より、中小企業でその傾向が見られます。
いずれにせよ、全てにおいて完璧な企業はありません。「制度や実績が不十分」という企業の中にも、魅力的な企業があるはずです。公表データや制度や実績が少ないだけで判断するのではなく、複数の観点で企業を見てみることをお勧めします。
まとめ
働き方改革など、大きな環境変化の中で、多くの企業が変わろうと動いています。転職活動を、変化し続ける企業との出会いのチャンスと考え、働きやすく働き甲斐のある会社をぜひ前向きに探してみて下さい。
・女性活躍の進み具合を「ケア」「フェア」「キャリア」の観点で確認・経営者がコミットしているかを確認
・制度の運用や会社の風土等の「実態」を確認
リクルートキャリア「ジョカツ部」(女性リーダー採用・活躍支援プロジェクト)
復職、共働き、そしてキャリア構築が当たり前の時代へ。
働く女性にとって、無理すぎず、誰かのまねでなく、自分らしいリーダーシップを発揮するチャンスが増えています。これからの当たり前を、私達だけでなく皆さんと一緒に創る、プロジェクトです。
今後もさまざまな切り口での女性活躍に関する情報発信等を予定しています。女性のライフ&キャリアのヒントを得たい方は、ぜひフォローしてみてください。
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