資格は、RPGで言うアイテムと同じ。取得する“よりも”大切なことは?ーーマンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー(→)。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第35回目です。

『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、特にオススメしたい一言をピックアップし、私なりの解釈とともに解説いたします。その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「アイテムは集めるためじゃなくて使うためにあるんだよ」

(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第4巻 キャリア34より)

龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を輩出することによって当校を救った救世主でした。

井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが…。

今回のストーリー「転職が現実逃避の手段に!?」

キャリアパートナーの井野が次に担当することになった転職希望者・尾形麻由子は、信託銀行に勤めるOLです。ところが、尾形の希望職種を聞いてみると、「今までとは全く違うマスコミ・出版関係を目指したい」という返事が。「信託銀行は私には合わない。もっと、自分自身が輝けるような仕事に就きたい」と目を輝かせます。

尾形は俗に言う資格マニアで、持っている資格はカラーコーディネーター、フラワーアレンジメント、旅行業務従事者等々、多岐に渡ります。華やかな世界に憧れ、「イベント広告業はどうか?」とか「やはり映画関係がいいのではないか」など、発言が二転三転。ついにこらえ切れなくなった井野が、「これらの資格は転職の役には立ちません。もっと現実を見ましょう」と言うと、気分を害した尾形はそのまま帰ってしまいます。

転職希望者が帰ってしまい、状況を上司・海老沢に報告する井野。「本人のために言ったつもりが」と落ち込む井野に対して、海老沢は「相手を説得したいと思ったら、例え話をすると話に説得力が増す」とアドバイス。「例えば、資格とはロールプレイングゲーム(RPG)で言うアイテムと同じ。アイテムには『必須のもの』と『あるに越したことはないもの』の2種類ある。大切なのはアイテムを集めることじゃなくて、どう使うかだよ」と言うのでした。

「その資格は、本当に必要なのか?」

世の中には、資格マニアとはいかないまでも、いまだに「資格があればよい仕事が見つかる」と考えている人が大勢います。ところが、資格とは実は、“入場券”に過ぎません。

確かに医者や弁護士、税理士などといった資格は、持っていなければ、そもそも仕事をすることができません。もし、こうした職業に就きたいと考えるのであれば、確かに資格取得は必須です。しかし、それ以外の漢字検定、パソコン検定、販売士の資格などは、基本的になくても仕事はできます。巷で人気のファイナンシャルプランナー(FP)ですら、最近は金融機関への就職の際に求められることが多いものの、必須というわけではありません。

資格とはどういうものかを説明するのに、事例で挙げられているのがRPGです。RPGとは、プレイヤーがゲーム内のキャラクラーに扮して進行するゲームのこと。たいていはキャラクラーに試練が与えられる設定となっており、アイテムとはそれらを乗り越えるために必要とされる道具類のことです。RPGの本来の目的とは、敵を倒すことにあります。自分の力を温存し、目的に集中するためには、「アイテムの選択がカギになる」のは資格も同じだ、というわけです。

取りやすい資格は、ライバルも多い

資格は、確かに転職などの際に自分を売り込む武器の一つにはなるでしょう。とはいえ、自分がしている仕事と全く関係のない資格を取ったり、保持者の多い資格を取ったところで、あまりプラスにはなりません。

例えば、上記でも挙げたFPで言えば、2017年7月現在で全国の資格認定者数は17万7000人近くもいます(日本FP協会ホームページより)。ほかに、資格を紹介するサイトなどを見てみると、どれも「専門用語が少なくて覚えやすい」「最速○カ月で資格取得が可能」といったことが売り文句になっています。

資格取得が容易であるということは、せっかく取っても価値が下がりやすい、ということを意味します。最近は、さまざまな新しい資格が登場していますが、それは、世の人々の「資格を取って他人と差別化したい」という需要を商機と見て、多くの業者が参入しているからです。

資格は「必要なもの」で「最短・最速」取得を目指す

今回の話を基に、私がオススメするのは「資格は業務上に必要な場合のみ最短・最速で取る」という姿勢です。もともと、人が高いパフォーマンスを発揮するのは、「切羽詰まったとき」です。また、資格が実際の業務に直結していれば、すぐに実践することによって、生きた知識に変えられます。

もっとも近年は「士業すらも食べられない時代」と言われています。それは、資格取得者が多くなり過ぎた、ということも要因の1つでしょうが、結局のところ、資格があっても「その資格で提供するサービスを求める顧客が本当にいるのか?」ということのほうが重要だからだと思います。

俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン()』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?()』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」()』を上梓。著作累計は38万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

俣野成敏 公式サイト(

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