会社で「活躍できる人」になる、一番手っ取り早い方法は? ――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』の第30回目です。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「女性の経営参加率は、(日本が)先進国の中で最下位」

(『インベスターZ』第5巻credit.38より)

大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

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株式投資とは「企業に賛同し、投票する」こと

道塾学園の創設者・藤田金七(かねしち)の玄孫(やしゃご)・美雪は、道塾学園の投資部に対抗して、自分も同級生の町田倫子(のりこ)、久保田さくらと共に女子投資部を結成します。

部員の久保田は母子家庭です。娘の影響を受けた久保田の母は、投資の有用性に気づき、投資に深い関心を寄せるようになります。久保田の自宅に招かれた部員たちは、母も交えて投資談義に花を咲かせます。ところが、女子たちは母から「日本では女性がほとんど活躍の場を与えられていない」現実を聞き、ショックを受けます。

「だったら、その怒りを投資で表明しよう」と言う久保田の母。「企業の株を買うということは、その企業に1票を投じているのと同じことなのだから」と。「ただ単に『儲かるかどうか』だけではなくて、投資家としての意思を企業に知らしめよう」と話し合うのでした。

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女性の活躍の場を広げることは、世界共通の課題

経済産業省が作成した資料「成長戦略としての女性活躍の推進(平成26年7月)」によると、2012年のアメリカ女性管理職の割合が43.7%なのに対して、2013年の日本の女性管理職の割合は11.2%、女性役員の割合に至っては、アメリカが16.6%なのに対して、日本はわずか1.4%という数字になっています。依然として、日本は先進国の中では女性の登用率が最下位クラスの状態です。

この状況に対して、国では2017年の4月より女性活躍推進法を施行しています。これは、女性の職業生活における活躍の場を広げることを目的につくられた法律です。国、地方公共団体、従業員301人以上の大企業を対象に、自社の女性従業員の活躍度合いを把握し課題分析を行って、改善プランの策定、届け出、公表までの取り組みができている企業は、厚生労働大臣から優良企業の認定を受けることができる、という制度です(300人以下の中小は努力義務)。

女性の登用は日本だけに限ったことではなく、いまや世界共通の課題になっています。現在は先進国を中心に、世界的規模で少子高齢化が進んでおり、女性が活躍できる仕組みを整えない国は、やがて社会の成長・発展が維持できない時代がやってくると言われています。

もともと男女差がビジネスに与える影響は小さい

確かに性別による違いはあるものの、個人的にはそれをことさら強調したり、逆に同じになる必要もないのではないかと考えます。男性でも力の弱い人はいるし、女性でも強い人はいます。ビジネスで大切なのは、「組織力によってお互いの弱みをカバーした上で、個人の強みを活かすこと」です。ですから本来、男女の区別が仕事に与える影響は少ないのではないでしょうか。

そもそも、なぜ女性はビジネスで活躍できる機会が少ないのか?と言うと、「ビジネスのルールが男性社会のルールに基づいてつくられているから」です。ビジネスは男性の専売特許ではありませんが、先に参入した者のほうが優位性があるのはやむを得ません。つまり、女性は男性よりも後からビジネス社会に参入したに過ぎず、ルールはこれから変えればいいのです。

これは男女を問わずに言えることですが、仕事で活躍したいと思ったら、まずは「仕事で活躍している自分」を目指さなくてはなりません。今は活躍していない自分が活躍できるようになるために、一番手っ取り早いのは「自分の理想とする成功モデルを見つけること」です。例えばあなたが「私は女性の取締役になりたい」と思うのであれば、先ほどの日本の女性役員1.4%の中から、自分が「この人のようになりたい」と思う自分の理想の場所に先に行っている人がいるなら、その人に注目することです。

©三田紀房/コルク

「なりたい自分を目指す」方法

実際の成功モデルは同性である必要もなければ、同業者である必要もありません。ただ、「近づきたい」という気持ちが大事です。成功者の多くは出版やメディアに何らかの形で露出していることも多いですから、そこからその人の考え方を学び、「その人がどういう思考に基づいて行動しているのか?」をモデリングしてみることも有効です。

成功者という“高い目標を目指す”のは、ちょうど富士山に登ることと同じです。富士山のような高い山は、登ると決めない限り登れません。服装や持ち物などに準備が必要だからです。「どこか高い山に登りたい」と思っているだけでは、道順すら特定できません。だから、「どの山に登るのか」目標を定めて、そこに行くための行動を起こすのです。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は40万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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