デキる人は、なぜ「顧客の悩み」を“絶対に”見逃さないのか?――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』の第23回目です。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「数多くのローカルネットワークを利用すれば様々な情報が手に入る」

(『インベスターZ』第3巻credit.25より)

大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

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リアルビジネスでも、情報を活かした企業が勝つ

警備会社に興味を持った財前。いろいろ調べていくうちに、意外なことがわかってきました。財前を驚かせたのは、警備会社のビジネスモデルが、実はコンビニエンスストアと同じ構造を持っていたことでした。それが“ローカルネットワーク”です。ここで言うローカルネットワークとは「ある企業の提供しているサービスが地域のインフラとなり、そこに情報が集約される仕組みになっている」ことを言います。

現在、特に地方など個人商店が立ちいかなくなっている状況にあって、コンビニの存在感は大きくなっており、モノを売る以外に集荷、郵便、銀行などの機能も担い始めています。警備会社はこれから本格化する少子高齢化社会の到来に向けて、高齢者サービスの充実を図っています。

財前は「こうしたローカルネットワークを築き上げた企業は、今後の成長も期待できる優良な投資先だ」と感じたのでした。

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ビッグデータを活かして大成功した企業

コンビニにしろ警備会社にしろ、その共通点として「社会の新たなインフラをつくり上げた」ということが挙げられます。コンビニは「街の便利屋」としての役割であり、警備会社は「ホームセキュリティ」という新しい分野を開拓しました。彼らのすごさはそれだけにとどまりません。中でも注目すべきは、彼らが「営業しながら顧客の情報が集まる仕組みをつくり上げた」という点です。

ここ数年、企業間では増え続ける膨大なデータをビッグデータと呼び、その活用法を模索する動きが活発になっています。近年になって急成長を遂げたアマゾン、楽天、アルファベット(グーグル)、フェイスブックといった企業は、いずれもビッグデータをサービスに活かして成功しています。

ビッグデータが注目されるようになる以前、ユーザーの反応を知る手法の一つとして行われていたのがモニターキャンペーンです。モニターキャンペーンとは、ユーザーに自社商品を使ってもらい、調査結果を商品づくりの参考にする、というものです。しかしこの方法では、テスト期間も参加者にも限りがあるため、実際のところ結果がどの程度有用なのか、というのが見えにくい一面がありました。

ビッグデータとは「顧客の声」のこと

現在、ビッグデータをビジネスに取り入れている企業は、モニターキャンペーンなどとは比較にならないくらい大量に正確なデータを収集しています。彼らは、ユーザーが検索窓に次々と打ち込んでくるキーワードを解析するだけで、ユーザーの望んでいるものが手に取るようにリアルタイムでわかります。ローカルネットワークの場合は、日々、店頭で売れていく商品の集計データや、顧客の利用履歴などから、現在の傾向が読み取れるでしょう。

こうしたことからわかるのは、

(1)常に顧客の声に耳を傾けることの重要性

(2)顧客の声がいつも聞こえるように仕組み化する

ことの大切さです。

それでは、今回の話をどう、自分に取り入れたらいいのか?ということで、私の事例をお話します。これは、私は取り組んでいるビジネスの内、主にビジネス書作家とフランチャイズオーナーとしての活動に当てはまることになります。

私は独立以来、これまで常に顧客との接点を切らさないようにしてきました。ビジネス書作家で言えば、セミナーやマネースクール、コミュニティ活動、公の媒体への寄稿やメールマガジンといった方法を通じて、自分がお役に立ちたい人たちに向けて経験談やノウハウを公開し続けることで、吐き出した以上の情報が入ってきます。なぜなら、自分が接点を持ちたい属性が欲しい情報を発信することで、会話のきっかけが自然と増えて行くからです。

ビジネスオーナーとしての私は、直接自分が店頭に立つ、ということはしておらず、お店にくる顧客と話すこともありません。この場合はどうやって顧客の立場に立つのかというと、「自分が他社のお客さんになる」「従業員との会話から声なき声に耳を傾ける」ということを意識することです。両者はそれぞれ別の角度から、顧客の立場になるという基本を常に呼び起こしてくれます。

「顧客の声を聞く仕組みをつくる」ことが大切

大事なことは、たとえ細くてもいいから継続的に、自分の顧客が何を考えているのかがわかる環境をつくる、ということです。

顧客の悩みの中にこそ、次のビジネスの種が眠っています。今回は、それを仕組み化した事例としてローカルネットワークを中心にお話しましたが、実際は個人レベルでも実現可能なことなのです。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は40万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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