‘ありがとう’の数だけ「人事評価」につながる!社内の感謝を「見える化」する、5つの効果

「お忙しいところ、○○案件の情報を早急に調べていただき、ありがとうございます」
「事前に〇〇の注意事項を伝えてくれたからスムーズに終わったよ!」
「営業研修の実施、ありがとうございました。いろいろな学びがありました」

株式会社TRUSTのオフィス内では、ポストカードにそんな感謝の言葉がつづられた「グッジョブカード」が交わされています。
自分の仕事をサポートしてくれたり、会社やメンバーのためになることを行ったりしたメンバーに対し、「ありがとう」をグッジョブカードに書いて手渡すのだとか。これが単なる慣習ではなく、れっきとした「制度」として、人事評価の指標にもなっているのだそうです。

これは、仲間同士の信頼を何よりも大切にしているという、TRUSTならではの制度です。この制度が生まれた背景、どのように運用しているのか、どんな効果があるのか、代表取締役の山口一さんにお聞きしました。

独立起業時、理念として掲げたのは「仲間同士の信頼」

もともとはプロのDJを目指していました。でも、活動資金を稼ぐために建築測量の仕事をする中で、慕ってくれる仲間ができた。「DJになるより、この仲間たちと働きたい」という想いが強くなり、建築測量会社を起業したんです。
滑り出しは順調でしたが、起業から5年目、リーマン・ショックによる景気低迷で受注が激減。リストラをせずに社員を守るため、事業の多角化に乗り出しました。内装の設計・施工をはじめ、社員の得意なことや前職経験を活かし、店舗デザイン、Webデザイン、不動産など幅広い事業へ展開していったんです。
現在は、アルバイトスタッフ含めて約70名規模に拡大し、店舗やオフィスづくりの物件探しから設計、施工、集客支援までトータルにサポートしています。地域の方々とのコミュニケーションも大切にするため、自社のオフィスでは、事業のひとつとして運営しているベーグル専門店を併設しています。

事業が多角化する中で部署が6つにわかれ、担当が細分化されました。でも、部署ごとにコミュニケーションを分断したくなくて。全員が仕切りのない空間で顔を合わせて仕事ができるよう、2年前にオフィスを移転したんです。
その折に、「さらにコミュニケーションが活性化して、お互いの信頼関係が強くなるような仕組みを作ろう」ということになりました。「TRUSTらしさを、より具現化しよう」と。そこで、お互いを「承認し合う」制度として、グッジョブカードが生まれたんです。最初はアプリなどITシステムを活用することも考えましたが、手書きのカードのほうがダイレクトに感情が伝わって、もらったほうも嬉しいよね、と。
そこで、当社のデザイナーにカードをデザインしてもらいました。この顔は私の似顔絵だそうです。デフォルメされすぎて誰なのかわかりませんが(笑)。

グッジョブカードの運用にあたっては、最初はさまざまなルールを設けることも検討しましたが、結局「何でもOK」としました。そもそもグッジョブカードを始めた理由が「コミュニケーション」なので、まずはどんなことでも「伝える」ことが大切だと考えたから。また、「感謝の内容の重さは測れないし、グッジョブと思うポイントもさまざま」という意見があり、感謝を項目分けしてルールにする必要はないと判断したのです。
ですから、仕事面で助けてもらった感謝がメインではあるものの、「ランチタイムにメンチカツをくれてありがとう」「花粉症で鼻水が止まらないとき、ソフトな高級ティッシュをくれてありがとう」なんて内容のカードも発行されています。
多い人では、月50枚ほど出したりもらったりしていますね。全体ではひと月に500枚ほどが交換されています。

ちなみに、社長である私のカードは「デラグッジョブ」という特別仕様です。スタート当初は週3枚くらいのペースで出していたんですが、メンバーから「価値が薄まる。ここぞというときだけ出してください」と指摘を受けまして、今では数カ月に1枚程度ですね。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

「制度化」することで定着。社員全員が「グッジョブ」を意識するように

―― 通常、こうした習慣は「良いものとわかっていても、面倒くさくてやらなくなる」というケースが多いもの。しかし、TRUSTでは、発足から2年を経ても続いています。継続のポイントは「人事評価」に組み込まれている点にあるようです。

メンバー同士で交換されたグッジョブカードを月に1回、人事部が回収して、各メンバーが渡した枚数と受け取った枚数をカウントしているんです。枚数が多い人は、人事評価に反映させています。もちろん、複数の指標を組み合わせての評価となりますが、給与アップにつながるわけです。
単なる慣習でなく、このように制度化することで、2年以上運用を続けられています。
グッジョブカードの効果はやはり大きいと感じますから、制度化してでも続ける価値はあると思います。

効果としては、主に以下のようなことがあります。

●誰もが、照れることなく素直に感謝を伝えられる

メンバー同士が信頼関係を築くために、感謝の気持ちを表すのはすごく大切だと思います。でも「ありがとう」と素直に言える人とそうでない人がいる。「照れくさくて言葉にできない」という人も多いものです。けれど、グッジョブカードというフォームを活用することで、素直に気持ちを伝えやすくなります。

●コミュニケーションの時間が取れない人にも気持ちを伝えられる

工事担当など、現場に出ていて普段オフィスにいないメンバーも多い。ほかの部署のメンバーと顔を合わせて話す機会がなかなかない人もいます。それでも、カードなら「さっきは電話で対応してくれてありがとう」「いい仕事していますね」などの気持ちを伝えられます。外から帰ってきたメンバーが、デスクの上にグッジョブカードが置かれているのを見て喜んでいます。

●「謝る」ことに対しても素直になれる

ときにはスタッフ間で意見の衝突があったり、余裕がないときに笑顔を忘れてしまったりすることも。けれど、後で冷静になって謝りたくても、なかなかタイミングをつかみづらい。そんなときにもグッジョブカードが役に立っているようです。「さっきはごめん。いつも○○してくれてありがとう」といったメッセージを送ることで、早いうちにわだかまりを解消できているようです。

●お互いに心苦しい頼みごとが「緩和」される

仕事を頼みたい側は「忙しそうなのに申し訳ないな。お願いしづらいな」、仕事を頼まれる側は「今、忙しいのに、余計な仕事が増えるのはキツイな」と、お互いに心苦しいときもありますよね。
そんな場面で、「しょうがないな、やってあげるよ。グッジョブカード1枚な(笑)」といったやりとりが聞かれます。ともするとギスギスしそうなものですが、グッジョブカードが「緩衝材」になっていると感じます。グッジョブカードをもらった枚数が、人事評価につながるからこその効果だと思います。

●「グッジョブ」が共有され、「喜ばれることとは」の意識が根付く

回収したグッジョブカードを人事担当者が読み、「こんなグッジョブがあったよ」と、ピックアップして全社に共有するんです。すると、「こんなことをしている○○さんの行動を見習おう」と、自然に意識することができます。これが、グッジョブの連鎖を生んでいると思います。

このように、グッジョブカードが当たり前に交わされるようになったことで「信頼による結び付きを大切にしたい」という当社の理念が具現化され、当社らしい風土の醸成に一役買っていると感じます。

株式会社TRUST

EDIT&WRITING:青木 典子 撮影:平山 諭
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