いつも目立たず、地味なイメージのシステム運用の人たち。
システム管理者、ヘルプデスク、業務SE、ネットワークエンジニア、サーバ管理者、保守対応者…いろいろな人がいるみたいだけど、どんなお仕事しているの?
運用のオシゴトって?
運用業務は、大きく4つの箱で成り立っているわ。
* 業務運用
* システム運用
* ヘルプデスク/サービスデスク
* 運用統制
ふむふむ……メモメモ
「運用」って、いったいどんなことをしているの?
まずは、業務運用から説明するわね。
システムを使う、業務サイドに近い人たちね。
業務運用の主な仕事
* 運用項目と実施スケジュール(年間/月間/週単位/日単位)を作って管理したり
* 組織変更や年度末対応のような、業務イベントの対応を計画したり 変更やリリースに対応したり
* システムテスト、運用テストを実施したり
* データやマスタのメンテナンスやバックアップをしたり
* ソフトウェアライセンスを管理したり
* 日々発生するトラブルや障害の切り分けや一時対応をしたり(インシデント対応)
* インシデントを再発させないための防止策/予防策を検討したり(問題対応)
* ユーザの情報を管理(登録/権限付与削除/棚卸しなど)をしたり
* 手順書やマニュアル、ユーザへの周知文書などを作成したり
* ジョブ(オンライン/バッチ)を設計して管理したり
* セキュリティ対策をしたり
そして、システム運用!
「システム運用」とひとくちに言っても、その内容は大きく2つに分けられるわ。
* アプリケーション(業務系、情報系、基盤系)
* インフラ(サーバ、ネットワーク、ミドルウェア、DBなど)
なるほど。
私のシゴトは、「アプリケーション」の「基盤系」ね!
* システム運用の主な仕事
* 各種監視(死活監視、性能監視、セキュリティ監視など)をしたり メモリやディスクなどのリソースやキャパシティを増強したり
* 機器のメンテナンスや老朽化対応をしたり
* パッチの適用やバージョンアップをしたり
* システムに関わるインシデント対応、問題対応をしたり
* 変更やリリースに対応したり
* その他、新しい技術を調査・検証したり
新しい技術の調査や検証も、システム運用のお仕事なの?
担当システムの枯れた技術とずっと向きあわされている人もいるみたいだけど……。
うわぁ~、それはもったいないわね!
新しい技術に理解がないタイプの上司がいると、そんな状況になりがちよね。
「今のままでも十分運用できているから必要ない」なんて言われて、新技術を導入したいのに許可が降りない……。そんなんじゃ、どれだけ優秀なエンジニアでもやる気をなくしちゃうわよ。ほんと、いやになっちゃう。
一方で、社内で定期的にオープンな勉強会を開催したり、平日に開催される技術カンファレンスへの参加を推奨してくれたりする、最新技術のキャッチアップに積極的な企業もあるわ。
いいなぁ、そんな会社!
そんな取り組みがあれば、インフラエンジニアのモチベーションもだだ上がりね。
でしょ!
インフラエンジニアは、どんどん外に出て行って、新しい技術に触れ、試していくことで成長していくのよ。
お次は、ヘルプデスク/サービスデスク!
知ってる。エンドユーザに操作説明したり、クレームとか受けている人たちでしょ。
一般的なヘルプデスクはそうね。最近ではサービスデスクといって、エンドユーザからの問い合わせを受身で対応(※)するだけじゃなくて、積極的に情報発信してシステムの適切な利用を促したり、トラブルを未然に防いだり、進化しつつあるわ。
※ITサービスマネジメントでは、受身の対応を「リアクティブ」、能動的な対応を「プロアクティブ」と呼んでいます。
でもって、運用統制! 業務運用、システム運用、ヘルプデスク/サービスデスクを束ねるマエストロ。顧客のフロントに立ち、そして内部関係者(営業、開発、PMOなど)との調整役としても大事な役割なの。
* 運用統制の主な仕事
* 全体指揮をしたり
* 運用業務(サービス)のグランドデザインをしたり
* 運用のサービスレベルを決め、維持向上するための活動をしたり
* 運用サービスを提供するためのリソース(ヒト、モノ、カネ、システム)をやりくりしたり
* 顧客(経営、情報システム部門、利用部門のシステム担当部署など)や内部関係者に、運用状況の測定・報告・改善提案をしたり
* 変更やリリースを計画したり
* 各種監査対応を計画したり
* 運用サービス価値向上のための活動や人材育成をしたり
なんだか、結構壮大な感じなのね!
(なのに、なんで目立たないんだろう……!?)
もちろん、どこまでやっているかはシステムの規模や企業の大きさによる。
運用統制なんてない現場もある。
1人のインフラエンジニアが、業務運用もシステム運用も、ヘルプデスクまで兼ねているケースもあるわ。
…だよねぇ。
でもね。だからって、運用の業務があやふやでイイってことはないの。
顧客やフロントの担当者(※)に、運用の人たちの存在や業務内容を知っておいてもらうだけでも、無駄ないざこざやトラブルを防ぐことができる。
※フロントの担当者……営業、PM、開発担当者、Webデザイナー、Webエンジニアなど
ふむふむ……メモメモ
いま説明してきた姿はあくまでAS-IS(現状)。
本来、運用はITサービスマネジメントをできる組織に成長しなければならないんだけれど、それはおいおい説明するわ。
登場人物紹介
運用☆ちゃん
妖精。ある日、遥子のもとにやってきた。システム運用業務の認知の低さ、運用者のモチベーションの低さを嘆き、空から舞い降りた。彼女の使命は、運用のプレゼンス向上、価値向上、そして運用者の誇りの醸成。好きな言葉は「ありがとう」。好物は、かき氷ブルーハワイ(嫌なことがあるとやけ食いする)。
見た目も言動も幼い感じだが、実は65535歳らしい。
海野 遥子(うんの ようこ)23歳
大手製造業 日景(ひかげ)エレクトロニクスの情報システム子会社に勤める2年目社員で、認証基盤システムの運用担当。クラスの端っこで目立たないような女子。今日もサーバルームで、システム監視したりパッチ当てたりと目立たぬ日々を送る。好物はいわた茶。
※この漫画はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。
『運用☆ちゃん』連載はこちら
マンガ:湊川あい(みなとがわ あい)
フリーランスのWebデザイナー・マンガ家・イラストレーター。マンガと図解で、技術をわかりやすく伝えることが好き。
主な著書 わかばちゃんと学ぶ Webサイト制作の基本・わかばちゃんと学ぶ Git使い方入門・わかばちゃんと学ぶ Googleアナリティクス〈アクセス解析・Webマーケティング入門〉
Twitter: @llminatoll
シナリオ:沢渡 あまね(さわたり あまね)
IT運用エバンジェリスト。業務改善・オフィスコミュニケーション改善士。ITサービスマネジメント/プロジェクトマネジメントのノウハウを応用した、企業の働き方改革・業務プロセス改善・インターナルコミュニケーション改善の講演・コンサルティング・執筆活動を行っている。
主な著書:『新人ガール ITIL使って業務プロセス改善します!』、『職場の問題かるた』『働き方の問題地図』『職場の問題地図』『仕事の問題地図』、『チームの生産性をあげる。』、『話し下手のための雑談力』
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