エンジニアの『キモチイイ』がユーザーの不便を生む。必要なのは、徹底的な「ファクト収集力」だ

入社当時、「クラウドワークス上のユーザーのマイページをなくす」というプロジェクトで、UIについて考えさせられるできごとに遭遇したというクラウドワークス田中洋喜氏。
それからは、徹底した「ファクト収集力」を重要視して開発を進めるようになったのだとか。ファクトは「コード」ではなく「行動」で見つけるという田中氏にお話を伺いました。

技術はあくまで手法にすぎない

私は、エンジニアとしてのキャリアは9年目、クラウドワークスは3社目です。新卒入社時からずっとサービス作りに関わりたくて、会社を選んできました。

クラウドワークスでは、主に画面のUI設計やサービスの機能開発を担当しています。クラウドワークスはRuby on Railsで作られているのですが、私は前々からRailsで趣味のサイトを作成していて、この言語とフレームワークに可能性を感じていました。

入社前、いつかはRubyを使っている会社でRailsのサービス開発に関わりたいと考えていたこともあり、クラウドワークスでのサービス開発に魅力を感じていました。

しかし技術そのものについては、言い方はおかしいかもしれないですが、あくまで「何かものを作るときに必要な道具」と捉えています。サービスを作るには、コーディングが必要ですし、仕組みを知らないといけません。必要性を感じたものについては都度学ぶ。今もその習慣を意識し、日々仕組みを習得しながら業務を進めています。

株式会社クラウドワークス 田中 洋喜氏
新卒で楽天入社。楽天では女性向けポータルサイトの開発を担当。サービスの改善や新規システムの構築などを経験する。その後、ビッグデータ解析部署で分析系のシステムエンジニアとしてのキャリアを経てクラウドワークスに入社

8,568通り、あなたはどのタイプ?

エンジニアの『キモチイイ』がユーザーの不便を生む

クラウドワークスでは、日々のサービス改善の中で、画面構成やデータ構造も変更しています。エンジニアは、技術面からデータ構造をもとに検索タグを考えたり、シンプルな構成にしたくなりがちです。確信をもって改善しても、後でユーザーや社内のエンジニア以外の意見が異なり、再度改善したことも多々あります。

クラウドワークスに来訪したユーザーが仕事を探す際に閲覧する「仕事検索画面」。検索軸は、データ構造に沿って「プロ向け」と「経験不問」の区分にしていました。しかしユーザーにとって、その検索軸は重要ではありませんでした。

「コンペ形式の仕事だけを見たい」「タスクと呼ばれる作業系の業務だけやりたい」というユーザーなども存在し、そういったユーザーには不便なUIになっていた。我々の考えや改善した設計も、機能的には問題はないのですが、ユーザーの気持ちで考えると、最適ではないこともしばしばあります。

最終的には、ユーザー目線で考え、ユーザーにとってどちらがいいのかを判断します。

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改めてUXとはなにか?を考えさせられたマイページ事件

入社した当時、「クラウドワークス上のユーザーのマイページをなくす」というプロジェクトがありました。

マイページはログイン後に最初に表示されるダッシュボード的な画面です。でも、「マイページに表示される情報は全てではないので不十分。初めにマイページに来ても結局ユーザーは各機能のページに行くだろう」という意見を根拠に、それならばマイページはなくしてメニューを充実させようと考えたんです。初めから「仕事を管理するページ」など、他のページに飛ばしてあげたほうがよいという内容でした。

しかしいざページを削除してみると、数時間のうちにたくさんの批判が出てしまいました。結局、これだけユーザーの声が出るということは有効ではないと判断。すぐにページを戻して、結局そのままお蔵入りのプロジェクトになりました。

改修を決定した時点では、ユーザーの気持ちを理解したつもりだったのですが、実際はそんなことありませんでした。私にとって印象に残っている失敗です。サービスの改善のためには、エンジニアやマーケティングなど様々な立場からの意見があると思います。でもUXは、「ユーザーにとってはどうなのか?」に対して常に答えを出すよう、心がけています。

ユーザーの声、つまり「ファクト」を集めるために、社内では月に1度、ユーザーサポートの声を全社でキャッチするための会議を開いています。また、日々TwitterやFacebookでも、当社のサービスに関わるちょっとした意見を収集しています。

もちろん全てを鵜呑みにするわけではなく、自分自身でも改めてサービスを使ってみて、意見をより深く聞く事でユーザーの真意を掴めるように努力しています。

ファクトは”コード”ではなく”行動”で見つける

徹底的にファクトを集めるには、業務外でもサービスを作ってみたほうが学びが多いのは明確です。しかし、初めから個人でサービス開発に取り掛かるのは難しいと思います。その場合は、サービスを使い倒すところから始めてみることがよいと思います。

例えば、「自社に適任者がいなかった記事作成の業務」や「アイコンなどの素材作成」などは、自分たちでもクラウドワークスを通し、実際に発注してきました。こうやって、自分自身が自社のサービスを活用をしてファクトを集めるようにしています。

実際使ってみると、自分が作った機能でも「なんでこうなってるんだろう」など、ちょっとした気付きがあるので、非常に参考になります。他にも、いろいろな人が作ったサービスを見るのが好きなので、誰かがSNS上でシェアしていたらとりあえず使ってみたり、記事になっていたら見てみる、という行動は、習慣的に行っています。

※本記事はエンジニアのためのTechLife Magazine「motech」(※2014年11月21日掲載)からの提供記事です

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