【ワンコインで送迎託児!】時間自由・子連れOK・出勤不要のママ企業が“頼り合い”で急成長

 昔ながらの“頼り合い子育て”を今の時代に合わせて、より安心に、便利に実現させよう。そんな声に賛同し、子育て中の母親たちが次々と参画しているリアルとネットを融合した子育て支援ビジネスが盛り上がっている。

 2009年創業の株式会社AsMamaは、子育てを応援する人や事業者と親子の出会い、そして、その交流の場づくりをネットとリアルの両面からサポートするサービスを提供する。ワンコイン(500円)で気心知れた顔見知りに気軽に送迎託児を頼めるとあり、クチコミで瞬く間に広まっていった。本年度はその実績が認められ、「ジャパンベンチャーアワード2014」にて「社会貢献特別賞」を受賞している。

「いざという時に身近に子育てを頼れる人がいることで誰もが育児もやりたいことも、思い通りにかなえられる社会にすること」が同社のミッションである。

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▲甲田恵子さんとパートナーの大介さん、長女の愛珠ちゃん

「『助けてくれる人さえいれば、子どもを預けて仕事をしたい』という女性たちが日本には約300万人いるといわれています。その一方で、晩婚化の影響もあり、これまで十分に頑張って働いてきたから、今は子育てに集中したいという人もいます。その双方が出会える仕組みがあれば、地域の頼り合いが今の時代にチューニングされて、広められるのではないかと思ったんです」と、同社代表の甲田恵子さんは語る。甲田さん自身、一児の母だ。

■子育ての頼り合いを水や電気と同じインフラ事業に

 たとえば「数時間だけぐっすりと眠りたい」、「美容室へ行く時間を作りたい」、「上の子の授業参観へ行く際に下の子を誰かに見てもらいたい」など、「ちょっとの外出」をしたくても、頼れる相手が近所におらず、自由に身動きを取ることができないと悩む母親は少なくない。とはいえ、顔も知らない人に、命よりも大事な自分の子どもを預けるのは誰もが不安に感じるだろう。そんなニーズに応えるべく、AsMamaでは、地域の親子やAsMamaで託児の研修を受けた支援者「ママサポーター」とリアルの場で出会い、交流ができるイベントを開催し、子育て支援サイト『子育てシェア』の両面から、頼りたい人と頼られたい人とのお見合いの場を提供している。

 これまで子育て支援といえば、行政や無償ボランティアがリードすることが多かったが、AsMamaは「継続していくために」、“子育ての頼り合い”をインフラ事業として成長させていくことを目標としている。

「水や電気や鉄道が明日突然なくなったら、困るじゃないですか。それと子育てを同列にしたい。子育てを頼り合う、共助のプラットフォームを確立したいんです」と甲田さん。

 そのために子育て世帯からは高い対価を取らず、企業からは協賛や寄付をもらわず、イベント開催などで企業が必要とする事業価値を提供して、それに対する対価を得ることを特に意識しているという。

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▲ママ・パパも楽しい、子どもも楽しい

■時間自由・子連れOK・出勤不要で約440人の雇用を創出

 送迎託児のサービスに加えて、AsMamaは、これまで子どもがいることで働くことができなかった女性たちの雇用促進に貢献している。現在、全国にいる送迎託児やイベント運営を担うママサポーターたちは、創業5年目にして約440人。時間自由・子連れOK・出勤不要で、子育ての経験を活かして働くことができるとあって、好評だ。ママサポーターがイベントスタッフとして働く際は、同じ館内で託児スタッフが自分の子どもを見てくれるサービスも常備。全支援者に対人・対物・アレルギーなどの保険が適用される。子どもが小さいからと働くことを躊躇していた層や、就職先を見つけられなかった層が積極的に活躍できる環境が整っているのだ。

 仕事を通じて、多くの母親たちの相談にのってきた甲田さんは、「女性も外に出るべきだという、女性活躍支援の波が来ているのも事実。その一方で、歴史的に続いてきた『女性は家を守るものだ』といった風潮は、一朝一夕に変わるものではなく、『子育てを頼ったほうがいい』という文化はまだまだ発展途上」と語る。母親たちが子育てを頼れない理由は大きく2つあり、1つは子供が迷惑をかけたらどうしようとか、自分が不出来な母親だと思われたらどうしようという、自分の中にある不安。そして、もう1つは夫や親世代がそれをよしとしない理解のなさだ。そういう母親たちの中には、ひとりで悩みを抱えてしまい、社会復帰したり、働いたりすることをあきらめてしまうケースも少なくない。そんな女性たちに対して、「とにかく手だけでも出して」と甲田さん。

「子育てを支援したいという人もたくさんいるし、応援したい企業さんも行政さんも増えています。ちょっとだけ勇気を持って、『助けて』と言いさえすれば、助けてくれる手や、支援や、仕組みはいっぱいあります。だから、絶対自分ひとりで我慢しないで、手だけでもいいから出してください。それを悪いとは思わず、むしろ助けてもらうことで、ママやパパや子供たちが、社会的に成長する。それが社会の発展です」

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▲頼りあえる仲間と共に働ける喜び

■ワンコインで、顔見知りに子どもを預けられる安心感

 『子育てシェア』には、下記5つの大きな特徴がある。

【子育てシェアの5つの特徴】

・登録料・手数料が一切無料

・支援依頼は1時間500円~700円(※ママサポーターや有資格者に頼む場合)

・日本初の全支援者に保険適用

・信頼できる顔見知りとしかつながれない安全認証機能

・お世話役“ママサポーター”の活躍(現在、約440人)

 中でも、力を入れているのが安全認証機能だ。知らない人同士が繋がることがないように、相手と繋がる時には必ず電話番号の下四桁を入れなければならない仕組みになっている。また、万が一に備えて、対人・対物・アレルギーによる事故を対象に最大5000万円の損害賠償保険が付くため、預けるほうも預かるほうも安心だ。

 使うプラットフォームは、シンプルながら、“かゆいところに手が届く”。まず、時間、食事の有無、場所、内容、支援候補者のグループを選んで条件を入力。次に、発信先を自宅周辺の半径●キロの友人、同じマンションの人、AsMamaの託児研修を受けたママサポーターなど、細かく絞りこんで検索する。すると、支援候補者がピックアップ。ピックアップされたリストの中から、自分が苦手とする人をこっそりと外したり、逆に違うグループから支援候補者を追加したりすることが可能だ。「この人になら、子どもを預けても安心」という人を選び終わったら、そこで一斉送信ボタンを押す。

 一斉送信されたほうも、複数配信された一人として自分に届くため、絶対になんとかしなくてはならないなどというプレッシャーはかからない。数分で都合のよい人から連絡がきたら、ほかの人には「この問題は解決しました。ありがとうございました」というお断り&お礼メールが自動配信され、わざわざひとりひとりに挨拶の電話を入れる等の面倒がかからないという優れものだ。また、システムが交通費と謝礼を自動計算で済ませ、当日現金で支払うこともでき、事前にクレジットカードを登録しておけばクレジット払いも可能。

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▲子育てシェアの利用画面(クリックで拡大してご覧いただけます)

 かつ、1時間ワンコインという金額も大きな魅力のひとつ。たとえば急な仕事の会食が入ってしまった場合、一般的にシッターを使うと、1時間の託児代+緊急手配料+深夜料金と5000円を上回ることが少なくなく、なかなか日常的に利用するのは厳しいのが現状だ。また、運よく友人や知人にお願いできたとしても、1000~2000円のお菓子などを持っていかないと気が引けてしまう人が多い。けれど、AsMamaなら、クオカードや図書カードと同じワンコインで送迎託児を顔見知りに頼むことができるのだ。

「昔は持ちつ持たれつでしたが、現代は預けるニーズがあるひとは預けるばかり、預かるニーズがあるひとは預かるニーズばかりです。“お互い様”にはならないので、きちんとお礼ルールがあるほうがいいと思いました。ただし、自分の時給を上回るようではつらい。自分の時間給で賄える金額であることが必要でした」と甲田さんはいう。

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▲イベントで元気いっぱいに踊る子どもたち

■ネットの瞬時性・利便性・簡易性、リアルの信頼感・安心感・直感を融合

 AsMamaは、ネットと並行して、頼りあう友人や支援者と対面で出会うことのできる親子イベントを全国で多数開催。運営はその地域のママサポーターたちが中心になって行っている。

 全国の各地域で年間400回も行われている地域交流事業は、30人規模をベースにしている。それらのイベントは、同じ地域に暮らすママたちが知り合い、直接頼りあえる関係をつくることを目的としており、それ以上の数になってしまうと参加者同士が仲良くなることが難しくなるそうだ。

 それとは別に、ショッピングモールなど、比較的人が多く集まる場所で年間20回開催されている『子育て応援フェア』は、認知向上を目的に行っている。ここでは、地域で子育てを応援したいひとや、就業支援も含めて子育てを応援している企業と出会うことができる。

「その人の暮らしぶりも知らないネットだけで知り合ったひとに、大事な子どもを預けることなどできません。相性や価値観などはリアルで会ってみないとわからない部分が多々あります。ネットの瞬時性と利便性と簡易性、リアルの信頼感、安心感、直感。それらを組み合わせてこそ、頼り合いがおきやすい」と甲田さんは指摘する。

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▲イベント会場で集められていたママたちの切なる声

[AsMamaで働くママたちのReal Voice]

Q AsMamaで働くことのメリットは?

  • 私も頼れる相手を見つけられること。ほかの方のお子さんを自分が見ながら、自分が必要なときには1歳4ヵ月の子どもを預けて働くことができる。これまでも働ける場所を探してきたが、両親が近くに住んでいないため、何かあった時に頼れる人がおらず、条件がどうしても厳しくなってしまっていた。
  • 地域の人たちと繋がれること。人との関わりが多くなり、人と話すことで自分も地域の情報を得ることができる。
  • 「あなたはいろんな人にかわいがられて、いろんな人に育ててもらえたのよ」と胸を張って子どもに伝えられるところ。
  • 子どもが重度障害で24時間全介助でも、週2回、病院に通う合間を縫って、自宅から仕事ができる。スカイプによる人事面接を任されるなど、ほかの在宅ワークと比べてもやりがいがある。
  • 子どもが幼稚園へ行っている朝から昼までの空いている時間を利用して働けるので、自分の子どもを犠牲にしなくて済む。
  • シングルマザーなので、頼れる仲間がたくさんいることが何よりも心強い。自分がほかのお子さんを預かりながらも、それ以上にその人たちが私が困ったときに「手伝うよ」と声をかけてくれて、そのおかげで仕事ができている。
  • 全国にあるので、どこへ転勤しても大丈夫。

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▲今日も元気いっぱい!

取材・文・撮影:山葵夕子

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