【変わらない唯一の方法は変わり続けること】せんべいとジェラートのコラボに挑んだ訳

 1979年にミラノで創業したジェラート店「ジェラテリア マルゲラ」が海外初出店となる麻布十番店の1周年を記念し、創業150年を超える岐阜県「田中屋せんべい総本家」とコラボレーションした。田中屋の六代目、田中裕介氏に実現に至った経緯を伺った。

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柚子 × ジェラート(ミルク、ヨーグルト、ラズベリー、ピスタチオ、抹茶)、せんべい 山椒 × ジェラート (ミルク、チョコオレンジ)、せんべい コーヒー × ジェラート(チョコ、ヘーゼルナッツ)、せんべい ミント × ジェラート チョコミント 500円~。7月14日(月) ~ 8月17日(日)の期間限定販売

きっかけは友人のFacebookから

 今回のコラボレーションで誕生した 「ビスコッティ M×T」は、このためにつくられた柚子、山椒、ミント、コーヒー味の4種の手焼きせんべいに合うジェラートのフレーバーを、マルゲラ オーナーのフランコ氏自らがセレクトし誕生した期間限定メニュー。

「知人のFacebook上でジェラテリア マルゲラオープンの情報を知り、実際に店舗へ足を運びました。ジェラテリア マルゲラが日本上陸1周年に際し、素材や手仕事を大切にしている日本の老舗ブランドとのコラボレーションを検討していたことから、トントン拍子に話が進んでいきました」

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田中屋せんべい総本家六代目の田中裕介さん

原価よりも味を優先

 開発期間は短かったものの、これまでに試作してきたせんべいの中からジェラートに合うと思われるものをピックアップ。さらに、ジェラートの食感に合わせるため、味、堅さ、厚みなどを何度も調整し、主役のジェラートを引き立たせた。

「今回使っている飛騨高山産の山椒は最高級で、高価なものを選びました。原価を考えるとよい材料が使えなくなるので、計算はあえてしていません。味の開発で一番苦労したのはコーヒー味のせんべいです。無香料、無着色でやるために一年以上試行錯誤しました。これは全国、世界のどこに行ってもない田中屋オリジナルのせんべいの味だと自負しています」

変わらない唯一の方法は変わり続けることだ

「150年以上続く弊社の看板銘菓「みそ入大垣せんべい」は今もずっと手焼きのままです。しかし、教わった伝統をそのままやり続けるだけでは必ず経年劣化しますし、本質から遠ざかってしまいます。そうならないためにしなくてはならないのは、チャレンジし続けること。

 和菓子やクッキーにくらべると、せんべいはどうしても駄菓子的なポジションになりがち。丹精込めて、丁寧に作っても、なかなかその良さを知ってもらう機会が少ないのが現状です。こうしてジェラートとコラボすることでたくさんの人、特に若い人たちに美味しさを知っていただければうれしいです」

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 古いものを長く伝えるために、新しいチャレンジをする。ただバトンを受け取るのではなく、それをさらに磨き、美しくするための努力をする。老舗の新メニュー導入に対するイメージが変わった。

取材・文:北本祐子

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