男性必見!松屋銀座バイヤーが教える「この時期、ビジネスシャツの下には何を着るべきか?」

クールビズが推奨されている職場はさておき、客先に出向く機会が多く、真夏もスーツ着用を余儀なくされている人にとっては、地獄の毎日と想像します。

そんな中、男性の間で幾度となく議論に挙がるのが「ビジネスシャツの下に何を着ればいいのか?」問題。ノーネクタイの胸元からTシャツのシーム(縫い目)が見えるのはみっともない、でも何も着ないと汗でシャツが張り付いて地肌が透ける…ボクらはいったい、どうすればいいんだ!?

皆さん何を着用しているのかアンケートで調べるとともに、本来、ビジネスシーンではどういう服装をするべきなのか、松屋銀座の紳士服バイヤー・宮崎俊一さんに教えてもらいました。

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株式会社松屋 銀座本店 紳士部MD課バイヤー
宮崎俊一さん

1989年株式会社松屋入社。96年より紳士服バイヤーとして活躍。2002年から年2回開催される紳士服の催事「『銀座の男』市」のオリジナルスーツ等の企画販売を手掛ける。近年は大学やビジネススクール、セミナー等でファッションビジネスの講師を務める。著書に『成功する男のファッションの秘訣60』『成功している男の服選びの秘訣40』(講談社)など。2015年9月4日(金)、自身が生地の買い付けからデザインまでを手掛けた松屋オリジナルスーツ等が並ぶショップ「アトリエメイド」を含む、松屋銀座5階メンズフロアがリニューアルオープン。

「Vネックの肌着タイプTシャツ」が28%と最多、「何も着ない」派は4.6%

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 東京都心で今年最高の37.7℃を観測した8月7日、20代、30代の男性ビジネスパーソン333人に「ビジネスシャツの下に何を最も着用しているか」とのインターネットアンケートを実施した。その結果が、上のグラフだ。

 最も多かったのは、Vネックの半そでTシャツ(肌着タイプのもの)。ファストファッションで売られている夏用の肌着を選んでいる人が多いようだ。続いて、丸首半袖Tシャツ(1枚でも着られるもの)、同肌着タイプ、Vネック半そでTシャツ(1枚でも着られるもの)…と続く。「何も着ていない」と答えた人は、4.6%だった。

 インナーを着用する理由としては「汗を吸ってくれるから」「シャツだけだと肌が透けるから」などの理由が大半。最も多かったVネックの肌着を選んだ理由としては、「丸首は見た目がダサイので着ない」「第1ボタンをはずしてもTシャツが見えない」などの意見が多く見られた。

 この結果を、松屋銀座の紳士服バイヤーである宮崎さんに見せたところ、驚きの答えが返ってきた!
「国際的な基準では、ビジネスシャツは下着として扱われています。本来であれば、シャツの下には何も着ないのがマナー。下着に下着を重ねることになるからです」

8,568通り、あなたはどのタイプ?

透けない色やシームレスの肌着を選ぶか、そもそも透けない生地のシャツを選ぶべし

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 なんと!本来はシャツの下には何も着ないのが望ましいのだとか!実際、スーツ発祥の地であるイギリスを含めた欧州では、ビジネスシャツの下にアンダーウェアを着る人はほとんどいないという。

 しかし、日本の夏は高温多湿。国際基準に則り、素肌にサラリとシャツを羽織っても、すぐに汗でべっとりと張り付き、乳首や胸毛、地肌までもが透けてしまう…という事態に。果たしてどうすればいいのか!?

透けない生地のシャツを選べば大丈夫です。おすすめはオックスフォード地のもの。一般的なビジネスシャツに使われているブロード地に比べるとやや厚めの生地ですが、通気性がよく吸水性に優れているので夏向きです。私も今着ていますが、透けていないでしょう?汗をかいてもこの状態はほぼ変わりませんし、着心地もさらりとしています。透けてしまうタイプのシャツしか持っていないという人は、白いシャツの下に着ても透けにくい、ベージュなどのインナーを着るのは一つの方法です。また最近では、グンゼの『SEEK』に代表されるように、襟・袖口・裾が特殊な技術でカットオフされていてシャツに響かないタイプのインナーも出ています。これならば、インナーの胸元の縫い目が目立ってツキノワグマ状態になる…という事態も避けられます」

 やはり「シャツの下問題」は奥が深いのか。下着メーカーによる透けさせないための対策も、ぐんと進んでいるようだ。

「肌透けが気になる人は、ベストを着用するのもお勧め。これならば、素肌にシャツ派の人も安心です。ベストはお腹周りが押さえられるのでスタイルがよく見えるし、フォーマルにも見える。夏場でもさわやかな印象を与えられます。スーツを作る際は、スリーピースにしておくと活用範囲が広がりますよ」

 実際、宮崎さんのアシスタント・粟竹将さんのベスト姿は実に爽やかではないか。真夏でも暑苦しさを感じさせない。

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▲猛暑日でも、爽やか!

8,568通り、あなたはどのタイプ?

半そでシャツに、胸元からTシャツがちらり…中学生の部活ファッションでいいのか?

 ただ、中には「こんな猛暑に、格好になんて気を使っていられない!自分が涼しく、快適に過ごせるのが一番!」という人もいるだろう。そんな意見に対して、宮崎さんは「ビジネスにおけるファッションの本分は、『ビジネスにおいて信用を得られる服装である』こと。そもそもの原点に立ち返ってほしい」と訴える。

「私は、クールビズの推奨が、皆さんの『考える力』を失わせていると思っています。以前ならば、今日1日のスケジュールを考え、誰と会うかで服装を工夫したはず。しかし、クールビズ期間だからこの格好でいいや…という安易な発想に陥っているのが問題です。グローバル化が進む中、ビジネスで日本を訪れる海外のビジネスパーソンは例外なく国際的なファッション基準を守り、真夏であろうがネクタイを締め、スーツを着用しています。そして、初対面の相手を量るうえで、まずは服装を重視する。そんな中、日本人はどうでしょう?朝、通勤ラッシュの駅の改札から出てくる男性会社員を見てください。半そでのYシャツの胸元を開けて、中の丸首シャツが丸見え。まるで部活帰りの中学生のよう。いくら『中身は違う!』と訴えても、第一印象は非常に悪い。これでは国際社会で勝ち残れないのでは…と危惧しています」

 部活帰り…。厳しい指摘のようだが、「確かに」と自らを省みる人もいるのではないだろうか。

「そもそも半そでシャツを着る習慣があるのは日本と米国ぐらい。国際基準で見れば、ドレスコードに反した服装です。それに、半そでシャツのアームホール(腕ぐり)はゆったりととられているので、正面から見ると何とも間抜けに見える。ジャケットを羽織った時、ひじから先がジャケットにじかに触れる点も、衛生的に問題です。それならば、長袖のシャツを折った方が断然スマート。その際は、手首からくるくる折りたたむのではなく、一度ぐっと肘までたくし上げ、それをもう一段下から折ると見た目もキレイだし、しわにもなりにくい。客先に出向くときにはさっと長袖に戻せますよ」

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▲長袖シャツを折り返した宮崎さん。モタつきはなく、見た目もスマートだ

真夏のビジネスシーンにおいて、我々はいったい何を着るべきなのか?

「シャツの下に何を着るべきか問題」が、ビジネスにおける信頼問題にまで発展した。この問題について、もう一段、話を進めてみよう。

 ではこの猛暑の中、「ビジネスにおいて信用を得られる服装」をキープするにはどうすればいいのだろう?「シャツは長袖を選び、暑いときは袖を折る」以外の方法として、宮崎さんが勧めるのは、「置きシャツ、置きジャケ、置きネクタイ」だという。

「一番のお勧めは、置きシャツ。外回りの仕事の場合、日中に炎天下を歩き回ってたっぷり汗をかき、夕方に帰社するという人が多いでしょう。ベタベタのシャツのまま、オフィスワークを続けるのは、本人も気持ち悪いでしょうし、見た目やにおいなどで周りの同僚にも不快な印象を与える恐れがあります。『ビジネスにおける信用』は、必ずしも取引先相手のものだけではなく、同僚に対しても同様に気を配るべきなのです。そこで、帰社したタイミングでいさぎよく『置きシャツ』に着替えると、心機一転サッパリとした気持ちで残りの仕事に臨めます。インナーを利用している人は、インナーごと着替えてしまいましょう。夜に接待がある場合はなおさらです」

 昼間に帰社し、また客先に出かける…というタイミングで着替えるのも方法だ。朝の通勤と午前中の外回りで汗だくのまま、午後の営業に臨むよりも、見た目も気分もいいだろう。

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 置きジャケットは、真夏の今ならではの提案だ。クールビズ期間中であっても、突然の来客や役員の呼び出し、営業ならば客先トラブルへの謝罪などもあるだろう。そういうときにジャケットなしでは体裁が整わない。

「たとえノーネクタイであっても、ポロシャツ姿であっても、上にジャケットを羽織れば印象がガラリと変わります。この時期にお勧めなのは、ウール100%のジャケット。ウールと聞くと暑苦しいイメージを持つ人がいるかもしれませんが、吸った汗を吐き出す力が強いのがウールの特徴。背抜き(背中の裏地がない)タイプを選べば、綿のジャケットよりも実は涼しいのです。さらに強撚の生地を選べば、夏場に手に持っていてもシワになりにくく、より『きちんと感』が出せます」

 社内会議や上司へのプレゼンなど、キリリとした印象を与えたい場合にもぱっと羽織ると有効に働きそうだ。

 そして、よりビジネスの印象を強めたいならば、やはり夏場でもネクタイを。胸元がきゅっと引き締まり、デキる印象が強まる。そんな時、置きネクタイが1本あれば役に立つ。かさばらないのでカバンに忍ばせておいてもいいだろう。

「ネクタイをしていても涼しげな印象を与えられるのが、シルクのニットタイ。ニットセーターのように編み上げたタイのことで、生地にすき間があるため見た目だけでなく実際に胸元が涼しいんです。ニットタイは夏向けというイメージがありますが、濃い色のものを選ぶと冬場のツイードジャケットにも合う。実は万能選手なんです」

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▲さまざまな色が揃うニットタイ。紺や茶などは冬場も活躍しそうだ

「クールビズ=楽な服装」ではない。あくまで相手のために、装うべき

 クールビズには、「ビズ=ビジネス」という言葉が含まれている。クールビズは「楽ができる服装」ではなく、あくまでビジネスシーンにおける服装であることをもっと認識してほしい、と宮崎さんは訴える。

「そもそもビジネスにおいては、自分のためにではなく『相手のために装う』べき。相手に対してビジネスの対象としてふさわしい人物であると伝え、信頼してもらう一つの方法が服装なのです。特に営業など、取引先と直接相対する役割の人は、あなた一人の印象が会社全体の印象をも左右します。真夏だからといってだらしない服装をしている人、夏場でもきちんとビジネススタイルを守っている人だったら、どちらが信用できるか、客観的に判断してみてください。『シャツの下』問題も、同様です。客観的にどう見えるかを考えれば、おのずと見苦しくないインナーを選ぶか、透けないシャツを選ぶか…という選択になるはずですよ」

 真夏の顧客訪問は、かなりの身体的負担だ。普段は格好に気を付けている人でも、つい客観的な視点が緩んでしまうときがあるだろう。そんなときのために、置きシャツ、置きジャケ、置きネクタイをぜひ実践してみてほしい。

「出勤時と、外回り、デスクワーク…ずっと同じ格好でいるのではなく、シーンによって変えるという発想をすると、視野が広がります。ビジネスにとっても、必ずやプラスに働くはずですよ」

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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