減塩で集中力を低下させる事も?知っておきたい仕事に効く栄養にまつわる知識4つ

 年齢を重ねれば重ねるほど、憂鬱に感じる健康診断。さまざまな健康ドリンクやサプリメントが売り出されている反面、日本の生活習慣病の発症はどんどん若年化しています 。診断結果に一喜一憂しているひとも多いことでしょう。
 日頃の生活習慣の乱れや偏りが引き金となる病気(高血圧、糖尿病、脂質異常症、痛風、脂肪肝、肥満症など)は、もともと「成人病」といわれていましたが、それらの病気を発症する若年層や子どもが急増したことから、1990年代半ばに国はその名称を「生活習慣病」と変更した経緯があります。
  生活習慣病の若年化が起きている理由として、ライフスタイルの変化、特に食生活の欧米化が大きいといわれていますが、それに加えて、過重労働や不規則な食事時間も要因であると指摘されています。特に働き盛りの20代30代ほど生活習慣病が発症しやすい外部環境になっており、多くの誤った情報が混在していることに対して警笛を鳴らす専門家も少なくありません。

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 血液栄養診断士の佐藤智春さんは、その著書『男は食事で出世させなさい』(ポプラ社)のなかで、「血液は、簡単にいえば、食べたものの結果」といいます。私たちは、その血液によって、内臓や細胞のターンオーバー(新陳代謝)を繰り返していることから、日々の栄養が私たちのコンディションに与える影響は計り知れません。
今回は最新医学の見地に基づいた同書の中から、特に誤解されがちな情報をピックアップ。ビジネスシーンにおいて、脳をフル回転させ、継続的に活力をキープできる食事の摂り方をご紹介します。

1.若く健康な体で減塩食を実行すると、集中力が低下して体がだるくなる

  最近の減塩ブーム。しかしながら、「減塩食」が必要か否かは個人差があるといいます。とかく塩分のリスクばかり注目されがちですが、塩分には元来、細胞を守り、消化の材料として栄養素の吸収を助け、脳の神経伝達に関与する大切な役割があります。もっとも大切なことは、集中力を上げたいときに必要なビタミンB1は、ナトリウムがなければ吸収されない栄養素だということ。塩分は「いい塩梅」で摂らないと、ビタミンB1による疲労回復作用が遅くなり、集中力が落ち、物忘れにもつながるという負の連鎖が起きます。
  ただし、大量生産されている冷凍食品やインスタント食品、冷凍食品などに多く含まれている精製塩は、人間にとって必須なミネラル分(カリウム、カルシウム、マグネシウム等)の大部分が取り除かれた塩化ナトリウムなので、「世の中で減塩が重視されていることにも根拠がないわけではありません」と著者は指摘します。塩を摂取する場合は、天然由来の塩をチョイスすることを心がけましょう。

2. コラーゲンをそのまま食べても、美肌にはつながらない

 過労や寝不足が続くと、どうしても気にならざるを得ないのが肌の調子。特にビジネスシーンにおいては第一印象が大切なので、ハリのない肌や荒れた肌になっては大変とコラーゲンを気にかけているひとも多いことでしょう。ところが、「コラーゲンを摂れば、ぷるぷる肌になれる」というのは「無理」であると同書は指摘。コラーゲンをそのまま食べたとしても、胃酸で一度分解されて、栄養素が再合成されるため、コラーゲンのまま吸収されることはないのだそう。
 コラーゲンを摂取するためには、コラーゲンの元となる材料を食べること。コラーゲンは「タンパク質+鉄分+ビタミンC」の足し算でできています。食べたタンパク質は、胃酸で分解されてアミノ酸になり、そこに鉄分とビタミンCが加わって、消化と吸収、合成を経ることによってはじめてコラーゲンとなり、皮膚組織や関節の材料となるのだとか。コラーゲンをそのまま食べたとしても、胃腸で消化、吸収の機能を果たさないことから効果は期待できないのだとか。美肌やストップエイジング を考えるなら、優秀な動物性タンパク質で鉄分を多く含んだ牡蠣にレモンのビタミンCをギュッと絞ったメニューが理想です


生牡蠣なう! / S_e_i

3. 疲れ目には「紫色」食材を

 パソコン、スマホ、紫外線、24時間の蛍光灯…なかなか治らない偏頭痛やドライアイに悩まされてはいませんか。目の情報は、脳に送られる80%を占め、目を守ることは脳を守ることにもつながります。眼病予防には涙の成分に近い点眼薬は欠かせませんが、この成分もまた食事から摂取することができるのだとか。
そんな食材のキーワードが「紫色」です。紫の色素には、ポリフェノールのひとつである「アントシアニシ」が多く含まれており、目のエイジングケアにはうってつけです。紫キャベツ、紫玉ねぎ、ブルーベリーやビルベリーなどはアントシアニシを多く含み、試験前や、大事なプレゼンの資料づくりが続く日に摂取すると効果が期待できるとか。
また、DNAのコピーを促し、細胞分裂に欠かせない栄養素のひとつであるのが亜鉛。、生きている間、亜鉛は毎日、DNAの損傷をリメイクしながら細胞分裂を繰り返します。よって亜鉛の不足は、視界や視力の低下、生殖機能や精子への悪影響、皮膚細胞の分裂など、さまざまな悪影響を及ぼすのだそう。亜鉛は、カフェインやアルコールなどで排泄されてしまうため、仕事でコーヒーやお酒をついつい飲みすぎてしまうという方は要注意。お酒を飲むときは、ワインとオイスター、日本酒とあさりの酒蒸しなど、亜鉛を多く含む貝メニューを頼むようにするとよいでしょう。

4.玄米菜食でもの忘れが激しくなる?

 健康によいと言われているマクロビオティックや玄米菜食。体を浄化して、きれいにする食事として知られています。食物繊維が多く、野菜のビタミンやカロテンが摂れるマクロビや玄米菜食は、血糖値の乱高下がなく、腸内環境をよくし、肥満や糖尿病を予防する効果があるといわれている一方で、貧血の女性 が実践した場合、貧血をさらに進行させてしまう危険があると著者は指摘します。手足が冷たくなると悪性貧血にかぎりなく近くなり、それにより物忘れがひどくなることもあるそう。
 肉や魚を食べない玄米菜食を続けていると、動物性タンパク質の食材に多く含まれるビタミンB群を摂取できないため、エイジングとともに認知症の可能性が高まるそう。血液栄養のデータを見ると、菜食を続けている人の赤血球は大きくなる傾向があり、全身の細い血管に血液が行き届かなくなりますが、これは動物性タンパク質に存在しないビタミンB12が欠乏すると著者は言います。ビタミンB12の欠乏は、神経系の障害、記憶減退、集中力低下、学習能力の低下など、ビジネスパーソンには致命傷となりかねない症状を引き起こしやすくします。
「最初は、腸内環境のバランスが整い、血糖値の乱高下が起こらないので、体調がよくなった気になるのですが、何十年も続けることはおすすめしません」と著者はいいます。

 自分の体質や体調をよく調べないまま健康情報に飛びつくと、かえって不健康になる危険性もぬぐえません。血液検査やアイドックなど、予防のために役立つ検査を受けつつ、自分に合った栄養吸収のレベルをあげていくことこそ、大切なんですね。

文・写真:山葵夕子

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