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リクナビNEXTジャーナル

キャリア・ビジネスの情報満載【リクナビNEXTジャーナル】

日本人は日本の本当の良さに気付いていない?多国籍なメンバーで作る外国人観光客向けサービス

 2020年の東京オリンピック開催へ向けて、外国人旅行客を獲得すべくさまざまなサービスが生まれつつある。しかし、実態は外国人旅行客のニーズとは合致しないことも多く、日本人が当たり前と感じている何気ない文化にこそ、ビジネスチャンスが隠されているケースも多いようだ。

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 そんな日本人だけではなかなか気づくことのできない盲点に着目したのが、今年2月にローンチ予定の、外国人旅行客を対象にした旅行シェアリングサイト『Odigo』だ。同サービスは、外国人観光客がより自由に日本での旅行ツアーを楽しめるよう、マップやスケジュール帳などを組み合わせて、個々で旅行プランをカスタマイズすることのできるサービスを開発している。レストランや博物館など、ローカルのスポットにはレビューを書き込めるようになっており、その情報元は、日本人を含むローカルに根づいたライターや識者、アーティスト、フォトグラファーだ。

 同サイトを手がけるコミュニティマネージャーで、日本で17年間ベンチャー企業や国内のレストランで働いた経験があるOdigo社のLauren Shannon氏 は、「日本人が気づいていない日本の魅力をもっと発信して、東京、京都だけではなく、地方にも外国人が気軽に行けるような環境を整えたい」とその夢を語る。

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▲向かって左がOdigo社のLauren Shannon氏、右がエディターのKuv Ahmad氏と

 同社は、香港で設立された旅行関連サービスを提供するレッドホースコーポレーション社の子会社として、日本を拠点として誕生した。現在8人いるスターティングメンバーは、日本人、アメリカ人、スコットランド人、フランス人、中国人など、まさに多国籍。日本で長く滞在している外国人たちは、自分の友人や家族が日本を訪ねたいと考えた際、必ずといってよいほどツアープランについて相談されるという。そういった個人同士のやりとりをひとつのコミュニティサイトに結集し、日本を観光したい旅行客たちとシェアすれば、より日本の魅力に気づいてもらえるという、まさに親日家が考えた親日家のためのサービスだ。

 「ダイバシティ」や「グローバル化」が頻繁に叫ばれるようになった一方で、まだまだコミュニケーション下手を指摘されやすい日本人。自国の魅力を伝えることは、国際交流の要でもある。日本に興味を持ってくれている海外の人たちに、どのように日本の魅力を伝えていけばよいのか? また、私たちの気づいていない外国人観光客のニーズとは?Shannon氏に話を伺った。

■英語で書かれた地方の観光情報が圧倒的に少ない日本

――Odigoのサービスの特徴について教えてください。
Shannon氏:旅行の計画や感想を友人や家族、旅行者たちと共有できる外国人観光客のための旅行シェアリングサイトです。 地元ならではの情報にフォーカスして、実際にユーザーが行ってみて気に入った場所や印象深かった場所などの情報共有が目的です。旅行ガイドに書かれてあるようなフォーマルな情報ではなく、たとえば、このレストランには優しいオーナーがいるとか、ほかではなかなか食べられないブランド肉を使ったとんかつがあるとか、友達同士のクチコミのような情報が広がっていくことを期待しています。

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――既存のレビューサイトとの違いは?
Shannon氏:既存のレビューサイトは、よい情報もあれば、そうでない情報もあります。けれど、Odigoは日本に興味があって、日本を楽しみたいと思っている外国人をターゲットにしているため、ネガティブな情報はあえて載せず、ポジティブな情報のみをより魅力的に伝わるように編集しています。そうすることで日本に来た外国人観光客はより多くの有効な情報をスピーディーに取得することができるからです。また、コンテンツのクオリティにもこだわっています。不特定多数の人が書き込みができるレビューサイトですと、どうしてもコンテンツの内容や質にばらつきが出てしまいます。そこでOdigoでは、一定のクオリティを保つため、エディターチームが校正してから掲載するようにしています。

――Odigoが外国人観光客に与えるインパクトにはどのようなものがありますか?

現在、日本にあるレビューサイトは日本語で書かれてあるため、日本語が読めない人はその情報を得ることができません。また、日本へ来てみたいと思っている外国人が、ようやく英語で書かれてある旅行ガイドサイトを見つけても、内容が薄く、概要しか掲載されていないことがほとんどです。なので、Odigoのように日本の観光スポットについて英語のみで詳しく書かれてあるサイトがあれば、それは十分付加価値のあるサイトと言えます。特に不足しているのが地方の情報。アメリカやヨーロッパの類似サイトは、地方であっても細やかな情報を取得することができますが、日本はまだその点において遅れています。

■日本の観光業の弱点について

――これまでも多くの企業や組織が外国人観光客を増やそうとさまざまな取り組みをしてきましたが、課題は多いようです。日本の観光業の弱点は?
Shannon氏:外国人観光客が最も退屈に感じるのは、だいぶ昔に書かれた日本語のコンテンツをそのまま英語に直訳したものを読まされること。そこには、諸外国と日本の文化の違いが触れられておらず、外国人観光客は、日本人向けに書かれた情報しか取得できません。もし、外国人に興味を持ってもらいたいなら、文化の違いをきちんと記したコンテンツを作成すべきです。なので、Odigoは多種多様な趣味を持つ多国籍のメンバーでチームを作っています。日本人、フランス人、アメリカ人、スコットランド人、中国人。私たちは自分たちの異なるバックグラウンドを利用して、Odigoのシステムやサービスを開発しています。たとえば、同じ英語表現でも、アメリカでは映画館を「ムービーシアター」といいますが、ヨーロッパでは「シネマ」というのが一般的です。このように国や地域によるちょっとした表現の違いも考慮しつつ、私たちは互いに助け合いながらクロスカルチャーな編集に取り組んでいます。
 また、昔ながらのパンフレットやチラシは見た目がいいですが、多くの人は紙に印刷されたガイドブックは使わず、インターネットから情報を入手しています。加えて、サイトがあったとしても大概、日本語サイトより英語サイトの情報は極端に少ないのが現状です。たとえば、レストランのホームページなどでも、日本語サイトにはメニューやイベントなど詳しい情報が載っているのに、英語サイトを開くと営業時間やアクセスの仕方など店舗情報しか書かれておらず、その店の魅力が分からないことがよくあります。
 さらに、外国人観光客がツアーを利用せず、個人で旅行の日程をカスタマイズしようとすると、英語で有益な情報がまとまっているサイトが少ないため、時間がかかってしまいます。その情報の集約も大きな課題でしょう。特に観光客が東京と京都に集まるのは、それ以外の箇所の情報が取得できないからです。どうやって行くかのみではなく、なぜその場所へ行く価値があるのか。読者の想像力を駆り立てて、ワクワクするような書き方をしなければ、そこに行きたいとは思わないでしょう。情報のシェアではなく、ストーリーを語ることが重要なんです。

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■英語コンプレックスを打破して外国人へ日本をアピールするためには

――日本人が魅力を伝えたいと思っても、語学力が原因でそれができないこともありますが、語学力とコミュニケーション力の関連性についてはどうお考えでしょう。
Shannon氏:先ほども話したとおり、Odigoでは英語の誤字脱字や文法の間違いを構成する編集チームを置いています。これはコミュニティをベースにしているからです。たとえば現在、沖縄の情報をOdigoに掲載しようと動いていますが、書き方については私たちがサポートをしています。日本人だけですべてを紹介しようとしなくてもいいと思っています。私たちのように日本を好きで、日本を紹介したい、日本をもっと知りたいと思っている外国人はたくさんいますから、そこで助け合えばなんら問題はありません。

――自分の国や市町村のどこをアピールしてよいかわからないという場合は?
Shannon氏:どこからアプローチしてよいかわからないという人たちは、「日本の強みとは」とか「わが県の特徴とは」とか、あまりにも壮大なテーマで考えてしまっていることが少なくありません。けれど、私が思う日本の一番の魅力は、多くの人が何かしらひとつのことに情熱をもって取り組んでいることです。「日本の魅力は何か?」を考えるなら、まず、「自分が好きなことは何か?趣味は何か?特技は何か?その魅力をどのように初めて日本にくる人たちに説明したいか?」から想像してみるのはいかがでしょうか。
 日本はスペシャリストの国であり、それは大きな強みです。ぜひ自分が情熱をもって、スペシャルに感じていることから説明を始めることをおすすめします。どんなに身近なことでもかまいません。たとえばラーメンは世界的にもとても人気がありますが、海外からやってくると、せっかく本場のラーメンが食べたいと思っても、どうやって注文したらよいのか分からないという声をよく聞きます。それをラーメン好きの人がスープの種類から具の選び方から麺の固さまで説明してくれたら、それだけでもすばらしい国際交流になるでしょう。

■ダイバシティの本来の意味とは

――ダイバシティに富んだチーム構成と新サービスのようですが、ダイバシティの本来の意味をどうお考えですか?
Shannon氏:ダイバシティは国籍や人種だけを指す言葉ではありません。ジェンダーや年齢、家族構成、文化など、さまざまな違いを指す言葉です。ダイバシティを考えるときに最も重要なのは、多くの視点で考えることであり、国の違いに限ったことではありません。違うバックグラウンドをもつ人たちのアイデアを受け入れる。それがダイバシティの本来の在り方です。すでに日本は優しさやホスピタリティという強さを持っているわけですから、ここにダイバシティが加わったら、さらに強い国になれると思います。

文 山葵夕子