【連載・“最高の授業”を世界の果てに 2】真のパートナーは見つけるのではなく、“なっていく”

“ICTの力を駆使して、途上国の都心部と農村部における教育格差を壊し、若者に希望の光をともす”。映像授業によるe-ラーニングをバングラデシュ農村部で実践し、「バングラの東大」といわれるダッカ大学をはじめ、多くの合格者を輩出したe-Educationプロジェクト。19歳でグラミン銀行グループの研究ラボ『GCC』初の日本人コーディネーターになり、その後独立。現在ルワンダ、ハンガリー、フィリピン、パレスチナなど、五大陸に渡って活動を広めるe-Education代表・税所篤快氏(早稲田大学7年生・24歳)にパートナーシップについて聞きました。

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――“はじめの一歩”を踏み出す際に大事なことは?
目標に突進していくときのドキドキ感やワクワク感、高揚感を大事にする人生にしたいと思っています。その高揚感が腹の底から腑に落ちて、楽しめたら最高です。初めの一歩に限らず、挫折するたびに「一歩」は踏み出さなければならないんですが、その時に一番大切なのは、初心に戻ることだと思っています。恐怖心に打ち勝つことはもちろんですが、自分の“好き”という気持ちや“愛情”に対して正直になること。失敗したあとって、それが曇るじゃないですか。何が大事か分からなくなった時にどうやって正直になるか。

ひとつはいい仲間を持っておくこと。仲間がいてくれることで、「仲間と本当に何がやりたかったのか」を自分に問い続けることができるので。自分がダメだった時は、支えてもらい、逆にメンバーが失敗して、何が大切か分からなくなっていたら、自分が支えます。

その横のネットワークにプラスして、いざという時に面倒を見てもらえる縦のネットワーク=メンターと関係性を築いておいて、違う角度から視界をきれいにしてもらいます。仲間とメンターの存在は大きい。この二つが一時的に迷ったり、ぶれたりしても、「最終的には自分のやりたいほうへ」と決断するのを助けてくれます。

――二冊の著書『「最高の授業」を世界の果てまで届けよう』(飛鳥新社刊)と『前へ! 前へ! 前へ!』(木楽舎刊)のなかで頻繁に“クレイジー”という言葉が出てきますね?
僕にとってのクレイジーはまさに今の挑戦です。e-Educationはコロンブスの卵だったんですよ。誰もが思いつきそうでいて、誰もやってはいなかった。だから、やってみるまで分かりませんでした。

電気もなければ、マッチもない。そんなバングラディッシュのハムチャー村で、パソコン映像で授業風景を見せるなんて想像もつきませんでした。ですが、やってみたら「いい!」となった。その挑戦をゼロから今のところまで築き上げてきたことが自分自身の“クレイジー表現”。これをさらに広げて、仲間と一緒に世界中の教育が行き届いていない場所へ届けるというのもやっぱりクレイジーだと思うんです。

――異国で真のパートナーを見つけるには?
真のパートナーは転がっているわけではななく、原石でしかありません。出会ってから徐々にパートナーになっていくというか、同じ時間や空間を消化しないとなれない。バングラディッシュでリーダーをしているマヒンは今、確かに最強のパートナーなんですが、それも僕と共同代表の三輪開人と3人で、バングラディッシュで共に過ごした2年半があるからです。

その間、お互いがお互いの良さを盗み、成長し、乗り越えた月日がマヒンをベストパートナーにしていったので、どうやって見つけるかということではないかもしれません。マヒンは確かに原石として、非常に優秀で、リーダーシップがあって、カリスマ性もあったのですが、それが共に成長していく過程で10倍20倍となって、今のチームになりました。

――共同代表の三輪開人さんとはどんな関係ですか?
三輪さんは普通の人と比べると僕タイプなんですが、僕があまりに適当すぎるんで、ふたり並ぶと三輪さんがより緻密に見える(笑)。2つ年上だし、いわゆる逆張りですよね。家族でもよくあるじゃないですか。弟が右へいくと、兄がバランスを取ろうとして左へ行こうとする。

JICAに勤めながら、組織の立ち上げからともに歩んでくれています。徹底した現実主義者で、予算管理も含めてe-Educationのマネジメントを担ってくれている屋台骨です。めちゃくちゃ褒めても褒めたりないくらい、三輪さんの力がないとプロジェクトはまわらない。やっぱりパートナーは作るものではなく、“なっていく”ものなのかなと。

――メンター・米倉誠一郎氏(一橋大学イノベーション研究センター教授)について
米倉先生は今の自分のバックボーン。一緒に夢を見ている感覚です。僕の大前提として、自分自身は弱くて、もろくて、ぶれやすい人間という自己認識があります。それでも、すごく情熱をかけてみたいという夢は、明確に、具体的にあるんです。それがe-Educationで、世界に教育を届けるということ。ところが世間からの目や友達の目、メディアだとかお金だとかで、ぐにゃぐにゃになる時がある。その波が一カ月に2回くらいは襲ってくる。

そんな時に、目の前のもやを消して、その先にある「自分にとっての大事なところはここだったでしょ」と、目指すべきゴールを思い返させてくれる人が米倉先生と仲間たち。彼らの知性や人柄に触れることで自分の軸を取り戻すんです。全員キャラクターが違うので、その時の気分によって会いに行く人は違います。その時に足りてない部分をサポートしてくれそうな人のところにアドバイスを求めに行くんです。

※「リクナビNEXT+1cafe」2014年1月13日記事より掲載。年齢・役職等は取材当時のもの。

※現在のe-Educationの代表は三輪 開人さん。

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取材・文:山葵夕子
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