『やめてみた。』の漫画家・わたなべぽんさんが、おススメする 「自分らしく生きるヒント」

コミックエッセイ『やめてみた。』がシリーズ累計45万部を突破した、漫画家のわたなべぽんさん。暮らしの中で、これまで当たり前のように使ってきた道具、いつの間にか習慣化していた行動や考え方の癖などを見直し、「やめてみた」ことで、生きるのが楽になったと言います。そんなわたなべぽんさんに、やめるものを見極めるコツや考え方、「やめてみた」ことで一歩を踏み出すことができ、自分らしく生きられるようになったエピソードなどを語っていただきました。

わたなべぽんさん仕事風景

生活必需品だと思っていたものをやめてみたら豊かになった

『やめてみた。』第一話
▲『やめてみた。』第一話より

──日常にある当たり前を見直し「やめてみた」ことで、少しずつ自分らしく生きられるようになったということですが、「やめてみる」という考え方を実践するようになったきっかけは何ですか?

数年前のある日、夕飯の準備をしていたときに急に炊飯器が壊れてしまったことがきっかけです。すでにお米は研いでしまっていたので、おかゆでも炊こうかと思ったのですが、用意していたクリームコロッケには合わない。

そこで初めて、うちにある土鍋でご飯を炊いてみたのですが、これがめちゃくちゃおいしくて!今まで当たり前のように炊飯器を使っていたけれど、案外なくても平気かもしれない…とふと思ったんです。

ただ、スイッチを押すだけで炊けて、予約タイマーや保温機能もある炊飯器ならではの便利さを完全に手放せるのかという不安もあり、「お試しで少しやめてみて、どうしても不便だと感じたときに買おう」とゆる~く「やめてみた」ら、気づけば1カ月経っていました。以来、我が家ではずっと、土鍋でご飯を炊いています。

必需品だと思っていたものでも、苦も無く手放せるものがあるんだ、ほかにも同じようにやめられるものがあるのかもしれない…と、これを機に身の回りのモノや習慣、考え方などを見直してみました。

すると、思いのほか固定観念にしばられていたことに気づかされ、「やめてみる」チャレンジを開始。すると少しずつ心が楽になり、以前に比べて自分らしく生きられるようになったんです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

自分を縛っていたものをやめてみたら、心は軽くなる

──「やめてみる」ことで、具体的にどんなメリットを感じるようになったのですか?

日々の生活の中で何となく使っていたものや、何となく繰り返してきた生活習慣や思考のクセなどを「やめてみる」ことで、心にゆとりが生まれました。一つをやめたら、新たにチャレンジできることが一つ増やせますし、今まで自分を縛っていた習慣や考え方から自分を解き放つことで、心が軽くもなりました。

やめてみようという考えで普段の生活を見直すと、「今まで当たり前のように使ってきたから」「この習慣で今までやってきたから」「ずっとこういう考え方だから」などの固定観念を外しやすくなります。それにより、狭まっていた視界がぱっと開けて明日への意欲もわいてくる気がしています。

──身近なモノやコトが、知らず知らずのうちに自分を縛っていることもある、ということですね。

「〇〇をやめる」という決断は他人から指示されるものではなく、自分にしかできないこと。そして、「何をやめてみようか」と身の回りを見直すことは、「自分が心地いいこと」を探していくことでもあります。

「やめてみる」を考える過程で、自分のためにもっと仕事がしやすいツールに変えようとか、自分のためにもっと住みやすい居住空間にしようとか、自分のためにもっと前向きな思考をしようなど、必然的に「自分のために」を中心に物事を考える機会が増えます。

こうして「自分のために」を考える習慣がつくことで、少しずつ自己肯定感が上がり、今よりもっと自分らしく生きられるようになると私は思います。

土鍋ご飯を食べている風景

8,568通り、あなたはどのタイプ?

仕事中のスマホ…当たり前こそ見直してみる

──ぽんさん自身が、やめてみてよかったと感じているものは何ですか?

普段の生活の中で言えば、掃除機です。掃除機って結構重たいので、掃除のたびにいちいち出してきて、掃除機をかけてしまうという一連の動作がとても億劫だったのですが、試しにフロアワイパーに変えてみたところ「掃除がこんなにラクとは!」と目が覚める思いでした。

家具の下など奥まったところのホコリも簡単に取れるし、出し入れやフィルター交換もいらない。そして「フロアワイパーで掃除しやすいように、床に置きっぱなしはやめよう」とこまめに片付けるようにもなり、家がより広く感じられるようになりました。

お掃除シーン

仕事においても、いくつか「やめてみた」を実践しています。例えば、スマホ。「仕事の連絡が入る可能性があるから」と、当たり前のように仕事中も机の上に置いていたのですが、メールやアプリの通知が来るたびについ反応してしまい、そこからついニュースやSNSを延々と見始めてしまったり…と、気づけばかなりの時間を費やしてしまうことに気づきました。

そこで、「仕事をするときはスマホをやめる」と決め、別の部屋に置いておくことに。すぐ気が散る性格なので、スマホが目の前にないというだけでぐっと仕事に集中できるようになりました。緊急の要件には対応できるよう、スマホとスマートウォッチと連動させ、メールのタイトルと電話の着信先だけは見えるようにしています。

──今は自宅でリモートワーク中の人も多く、仕事と休憩の境目があいまいになってしまうという悩みもよく聞くので、参考にできそうですね。

ちなみに、「仕事の仕方」も見直し、やめてみたものがあります。マンガのネタや構成を考える際、私は頭の中で何度も考え、シミュレーションを重ねてからネーム(コマ割りやコマごとの構図、セリフなど)を描くタイプでした。

「ああでもないこうでもない」と思考が堂々巡りしてしまったり、「これを指定のページ数で収めるにはどうすればいいのか?」と考え込んでしまったりすることが多く、形になるまでかなりの時間がかかっていました。

ある日、「ずっとこのやり方でやってきたけれど、試しにやめてみるのはどうだろう?」と思い立ち、頭の中に浮かんだアイディアをとにかく紙にぶつけてみたら、すんなり構成が固まり、ネームもスムーズに描けたんです。

まずは頭の中にあるものをとにかくアウトプットして、その後これらをページ内にどうまとめ、形にするかを考えたほうが、断然仕事が捗ると気付かされました。仕事に行き詰まったら、当たり前だと思っていた自分の習慣を見直してみて何かをちょっと「やめてみる」と、私のように突破口が見つかるかもしれません。

わたなべぽんさん夫婦がくつろぐ風景

「やめてみる」から「自分のために」を考える習慣を

──「やめてみる」ためには、身の回りの当たり前を見直してみるのが第一歩とのことですが、そこから「やめてみる」ネタをどうやって見つけて、どう実践すればいいのでしょう?

普段の生活を見直す中で、何となく不便だな、使いづらいな、億劫だなと感じているものに注目してみるといいと思います。先ほど挙げた掃除機も、当たり前のように使っていましたが、使うたびに感じている億劫さ、面倒くささに注目して見直したことで、生活が楽になりました。

もちろん、「フロアワイパーのほうが不便で掃除機のほうが楽だ」と感じる人もいると思います。あくまで“自分”主語で、「自分の不便、面倒くさい、億劫」を「自分のためにどう心地よくするか」と考えるのがポイントです。

すぐに思い浮かばない場合は、「あ、これ不便」と感じたときなど、心が動いたときにその場でメモすることをお勧めします。手帳などでもいいし、スマホのメモ機能でもいい。日常の不便を「実際に書き出してみる」ことで自分の思いが整理され、打ち手が見えてくることもあります。

そして、何となく「やめてみる」対象が見つかったら、あとは気負わずやってみることです。「コレ、やめちゃってもいいのかな…」と重く捉えるのではなく、まずは一定期間だけやめてみる。「やっぱりやめないほうがよかった」と感じたら、戻せばいいだけです。

このような、小さな「やめてみるチャレンジ」を重ねていく過程で、自分が心地いいと感じる機会が増えます。そして、それを繰り返すことで、他人の意見や固定観念などにしばられすぎず「自分らしく生きられる」ようになると思います。

──最後に、読者に向けて「やめてみる」という視点でメッセージをいただけますか?

「やめてみる」というチャレンジには、お金も時間もかかりません。さらには、知らず知らずのうちに自分を縛っていたモノやコトから自身を開放することで、新しい一歩を踏み出すきっかけになったりします。気負わず気軽に、今の生活を変える1つの手段だと捉えてほしいと思います。

ストレスが多い状況下で変化の波にもまれ、つい自分をおろそかにしてしまいがちですが、少しでも自分主体でモノを考える機会を増やし、自分の心を楽にしてほしい。「やめてみる」という考え方が、そのきっかけになればと願っています。

▶あなたの知らない自分を発見できる。無料自己分析ツール「グッドポイント診断」

漫画家 わたなべぽんさん

漫画家わたなべぽんさん第6回コミックエッセイプチ大賞・C賞を受賞しデビュー。身近なモノ・コトを減らす生活を描いた『やめてみた。』『もっと、やめてみた』『さらに、やめてみた。』(幻冬舎)はシリーズ累計45万部のベストセラーに。その他、累計30万部超のヒットとなった『スリム美人の生活習慣を真似したら、1年間で30キロ痩せました』(KADOKAWA/メディアファクトリー)シリーズほか、「どうせ私なんて…」から脱するためにやってみたことをまとめた『自分を好きになりたい。自己肯定感を上げるためにやってみたこと』(幻冬舎)などの著書がある。

取材・文:伊藤理子 編集:馬場美由紀
PC_goodpoint_banner2

Pagetop