【20代の不格好経験】学生起業で培ったスキルを過信し、新人研修で大惨敗。プライドはズタズタに~カタリズム株式会社代表取締役 山野智久さん

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今、ビジネスシーンで輝いている20代、30代のリーダーたち。そんな彼らにも、大きな失敗をして苦しんだり、壁にぶつかってもがいた経験があり、それらを乗り越えたからこそ、今のキャリアがあるのです。この連載記事は、そんな「失敗談」をリレー形式でご紹介。どんな失敗経験が、どのような糧になったのか、インタビューします。

リレー第4回:カタリズム株式会社 代表取締役 山野智久さん

スターフェスティバル岸田祐介さんよりご紹介)

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(プロフィール)
1983年生まれ。大学在学中に地元・千葉県柏市でフリーペーパーの運営を主催。大学卒業後、新卒で情報サービス会社に入社し、人材コンサルティング営業、新規事業開発を担当。2011年3月に体験型レジャー予約サイト「ASOViEW!(あそびゅー!)」をリリース、観光・お出かけコースの検索・閲覧アプリ「holipple(ほりっぷる)」を運営する。

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▲全国のレジャー・遊び・体験が探せる日本最大級の検索・予約サイト「ASOViEW!(あそびゅー!)」。旅先でのアクティビティはもちろん、週末の遊び探しにも気軽に活用できる

■学生起業でビジネススキルを磨き、「社会に出てもすぐに活躍できる」と確信

 社会人になってからさまざまな壁にぶつかりましたが、最も大きく、そして学びが大きかったのは、就職してすぐに経験した「挫折」です。
 当時、新入研修の一環として、「新人全員が飛び込み営業を行い、3日間でいただいた名刺の枚数を競う」というプログラムがありました。この3日間で私のプライドはズタズタになり、自分の無力さを痛感することになるのです。

 高校時代、サッカーに没頭しすぎたせいで、大学受験にことごとく失敗。浪人生活を送ることになりました。そのとき、あまりに勉強しなかった自分を反省し、「大学に入ったら、積極的に社会勉強をして、デキるビジネスパーソンになる準備をしよう」と決意したんです。
 翌年、大学に入学し、さまざまなことに挑戦しました。地域活性を目的に自らフリーペーパーを立ち上げ、実際に企業運営も行いました。このフリーペーパーでは、企画立案から取材、編集、広告やタイアップを得るための営業、経営管理などすべてを担当し、累計30万部を発行するまでになりました。学生起業家として注目され、取材される機会も多かったうえ、実際に利益も出せていたことから、自分のビジネススキルに自信を持っていましたね。社会に出たら、これらの経験を活かしてすぐに活躍できる。そして、光の速さで成長して、世の中に価値を返し貢献しよう…そう考えていました。

■新人飛び込み営業研修で、同期320人中、300位の成績に愕然…

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 そして、情報サービス会社に新卒入社。3年後に辞めて、起業するつもりで選んだ会社でした。約320人もの同期がいましたが、初日から「この中の誰にも負けない!慣れ合いなどもっての外!」と息巻いていましたね。みんなは楽しい大学時代を過ごしてきたんだろうけれど、その間、自分はビジネスの現場で実戦経験を積んできたという自負がありました。冒頭でご紹介した「名刺獲得プログラム」も、「願ったりだ!ここで実力の差を見せつけてやる!」ぐらいの気持ちでいましたね。今考えると、相当イヤなやつでした(笑)。

 しかし、そんなプライドは、すぐにズタズタに切り裂かれます。
 結論から言えば、いただいた名刺枚数のランキングは、320人中、300位。「1位を狙う!」と息巻いていた自分が、です。トップを取ったのは、学生生活を謳歌して来たであろう、明るくて人当たりがよく、元気いっぱいの同期。僕がいただいた名刺の、倍以上の枚数を獲得していました。

■失敗の原因は、自分を過信して戦略を練らなかったこと

 原因には、途中からうっすら気づいていました。「とにかく片っ端から飛び込んでやる!!」と息巻き、無計画に走り回るばかりだった僕に対して、トップクラスの同期たちは、先輩方に教えを請い、飛び込み営業の際のトークのコツを聞いたり、効率的に多くの企業を回れる方法やエリアなどを教えてもらっていたんです。
 営業経験のない同期にとっては、経験豊富な先輩のアドバイスをいただくのは、当たり前のことでした。だからこそ、情報の吸収力も高かったし、事前準備も怠らなかった。なのに、私は自分の力を過信し、戦略を練る努力をしなかったんです。

 最終日の3日目、指定の時間にオフィスに戻りませんでした。自分が情けなくて、戻れなかったんです。夕方ぐらいから、飛び込みで回っていた浅草の、隅田川の流れを見つめながら、悔しくて泣きました。
 そして、心の整理が付きました。大学時代のビジネスと、社会人として関わるビジネスは違う。小さなプライドは、すべて捨ててしまおう。虚勢を張らず、素直に教えを請うていこう。

 翌日からスタンスを180度変え、営業成績ランキング上位の先輩に、とにかく聞きまくりました。電話アポの確率が高い先輩に、どうすれば電話で話を聞いて下さるかコツをうかがい、商談上手な先輩がいると聞けば「ロープレさせてください!」とお願いしたり。先輩や上司の商談にもできるだけ同行させてもらい、話している内容を片っ端からメモして練習しました。きっと皆に、「この新人、うざいな」と思われたでしょうね(笑)。
 しかしその成果が出て、半年後には新人の中で2位の営業成績に。次の四半期からは、連続してトップ成績を収めることができました。

■視座を高く持てば、「挫折も学び」と捉えることができる

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 この時の経験がなかったら、もしかしたら、自己流を貫いて中途半端な営業成績しか挙げられず、かといってプライドがあるから「この会社の商品やサービス、体制が悪いんだ」などと他責にして、別の会社に転職していた…なんてこともあったかもしれません。でもきっと、何も気づきがないままの転職だから、結局は同じことの繰り返しでうまくいかないと思いますけれどね。
 当時を振り返ると辛い経験でしたが、「光の速さで成長して、世の中に価値を返し貢献したい」という目標を達成できるならば、自分の小さなプライドなんてどうでもいいことだと、あのタイミングで改めて認識できたことはとても良かったと思います。視座を高く持てば、立ちはだかる壁や挫折などは、すべて学びであると思えますよ。

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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