「黒いスーツ」は着てはいけない――ビジネスファッションの常識・非常識

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蒸し蒸しと熱い日本の夏。こんなときに、カッコなんか構ってられるか、という気持ちもわからなくはありません。実際、ビジネス街でも駅でも、なんだか「暑いんだから、しょうがないだろ」と言わんばかりの様子の人も…。

「見た目より中身が重要だ」と語る人は少なくありませんが、問題は、決めるのはあくまで相手だ、ということです。一瞬で判断されてしまうことも少なくありません。ところが、そんなに大事な「見た目」がもし、残念なことになっていたとしたら……。実は恥ずかしいことになっていた、としたら……。

これが決して少なくない、と語るのは、著書『ビジネスという勝負の場は一瞬、しかも服で決まる』が大きな話題になっている木暮桂子さん。実は誰も教えてくれなかった「あれ?」と思われないためのビジネスファッション講座、全5回でお届けします。

株式会社ディグニータ 代表取締役 木暮桂子さん

f:id:k_kushida:20170714193515j:plainシンガポール航空にて、フライトアテンダントとしてシンガポールに駐在。その後帰国し、株式会社グロービスの創業期から現在のグロービス経営大学の立ち上げに関わる。その後、独立。経営者、政治家等をクライアントにした外見力強化のコンサルティング、スピーチトレーニング、企業向け研修などを手がける。これまで1000名以上の見た目を変え、外見力強化を実施、依頼が後を絶たない。近著に『ビジネスという勝負の場は一瞬、しかも服で決まる』(ダイヤモンド社)。

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スキル習得に励んでも、「見た目」で決められていたら…

例えば、アメリカやヨーロッパでは、政治家や企業のエグゼクティブが「見た目」をコンサルタントにお願いしていることが少なくない、というのは意外に知られていません。木暮さんは言います。

グローバル企業の多くは、仕事スキルのみならず、「見た目」も重視しているんです。「見た目」の専門家を入れ、社員をサポートしている会社が多いですね。特に、役員クラスには、スピーチライターのみならず、ファッションや色彩の専門家をアドバイザーとしてつけている会社がたくさんあります。なぜかといえば、それだけで印象が大きく変わるからです。実際、ウェブサイトの写真などにも、徹底的にこだわっています」

木暮さんは、シンガポール航空のフライトアテンダントを経て、ビジネススクールを経営しているグロービスの立ち上げに加わり、長く運営に携わっていました。そのときに、強く感じたことがあったそうです。

「日本のビジネスパーソンは、スキル習得について本当に熱心だと思いましたし、とても感心していました。しかし、社外でも社内でも、ビジネスパーソンとしての評価は、スキルだけで行われているわけではないんですよね。むしろ最初の印象は「見た目」で決まってしまうことが多い。ところが、「見た目」についてきちんと意識できている人は極めて少ない、と思ったんです

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装いや持ち物で知らず知らずのうちにマイナスイメージが

そんなとき、ある日本の大手企業から、相談を受けることになります。次世代リーダーたちのプレゼンテーションを見た役員から、「内容はいいのだが、見た目や話し方がなっていない。なんとかならないか」と。

「このときから依頼を受けて、見た目に関する講座を行うことになりました。驚くほどの反響があり、多くの方が受講しました。用意した講座を受けられた方は、みなさん順調に出世され、役員になった人もいます。これが、私がビジネスにおける「見た目」の大切さを改めて実感するようになったきっかけです」

後に木暮さんは独立。ビジネスにおける見た目=「ビジネスアピアランス」の改善を手がけるビジネスアピアランスコンサルタントになりました。ファッションを中心に、プレゼンテーションや話し方、接遇、マナーまで幅広く伝える仕事です。現在のクライアントには、経営者、政治家、外資系企業の役員や営業職の方などずらり。

「見た目といっても、お洒落をしないといけないわけではありません。まず大事なことは、「あれ?」と思われないことです。自分の装いや持ち物が、知らず知らずのうちに相手からマイナスのイメージを持たれていたとしたら、とても損をしてしまいます。しかも洋服などのことは、まず誰かから直接指摘されることはない。恐ろしいことです」

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日本人はまだ気づいていない「黒いスーツは着てはいけない」

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例えば、スーツ。びっくりの事実を、木暮さんは指摘します。日本のビジネスパーソンが、当たり前のように仕事で着ている黒いスーツ。あれは、間違いだ、というのです。

「学生の就職活動のスーツが黒になったのは、10年ほど前だったと記憶しています。そのあたりから、黒いスーツを着る日本人のビジネスパーソンがとても増えた印象があります。ただ、ひとつ知っておいていただきたいのは、欧米では黒いスーツを着ることはまずない、ということです

政治の世界でも着ません。たしかに、アメリカの大統領や日本の総理大臣が普段、黒いスーツを着ているのを見たことはありません。

「理由はシンプルで、黒い服は冠婚葬祭のためだからです。タキシードしかり、喪服しかり。特に海外に出張に行ったりするときには、要注意。黒いスーツは着てはいけません。それは、間違いです

本当は間違いだけど日本ではOK、ということを知っているのといないのとでは大違いです。そうすると、「正式な場にはやめておこう」「欧米の人が来るような席には着て行かない」という判断ができます。

「スーツは紺かグレーにすること。柄にするなら、ストライプのみ。これが基本です。基本を知っておくと、急にきちんとした場に出なければならなくなったときに慌てなくて済むんです。仕事でのプレゼンや交渉の場、大切な取引先との食事、パーティ、社内での人事の面談…。服のことに気を取られずに済むようになります」

好印象をつくるスーツの着こなし4つのポイント

もうひとつ、木暮さんが基本と語るのが、スーツの着こなし方。ポイントは4つ。

1.袖

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「写真のように袖からシャツが見えることです。白いシャツがちらりと見えるだけで、清潔感が大きくアップします。1.5センチほどワイシャツの袖が見えるのが正解です。NG例のようにスーツの袖丈が長すぎると田舎っぽい感じがしてしまいます。逆に、短すぎるとホストのようです」

2.首の後ろ

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「自分では目が届かないところですが、ここも目につくポイントなんです。首から1.5センチほどシャツが出ているのが理想です。NG例のようにシャツが見えすぎるのも野暮ったく見えます。反対に白いシャツ部分がまったく見えないと清潔感が感じられません」

3.パンツの裾

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靴のかかとに裾が少しだけかかるくらいがベストです。これだと靴の上側でワンクッション、もしくはハーフクッションにすると、足がすらりときれいに見えます。若い人がノークッションの細身パンツをはいているのを見かけますが、軽いイメージになってしまうので、ビジネスでは避けたいですね」

4.スーツの着丈

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後ろからみて、おしりの5分の4ほど隠れるのがベスト。おしりが少し隠れるか、隠れないかくらいと思ってください。これより長いとすっきり見えず、足が短く見えてしまいます。また最近では、着丈の短いスーツも見かけますが、軽率な印象になってしまうので、流行り物だと思ってオフなどで着ることをおすすめします」

次回(第2回)はクールビズとシャツについてお届けします。お楽しみに!

【参考図書】

『ビジネスという勝負の場は一瞬、しかも服で決まる』

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著者:木暮桂子

出版社:ダイヤモンド社

WRITING:上阪徹

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