「仕事を辞めたいけれど、次が決まっていない」と悩んでいる人もいるかと思います。辞めたいという気持ちが強くても、次が決まっていない状態で辞めてもいいものかどうか、迷いますよね。
この記事では、「辞めたいけれど次がない」場合の対処法や、次を決めるために転職活動の方法などについて、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹さんに伺いました。

目次
仕事を辞めたいけど次がないと悩む理由とは?
仕事を辞めたいけれど、次が決まっていない…と悩む理由として、大きく3つ挙げられます。
人間関係の悩み
上司や先輩、同僚と合わない、仕事関係に苦手な人がいる、クライアントとうまくコミュニケーションが取れないなど、人間関係が原因で辞めたいという人は少なくありません。
仕事での人間関係は避けることが難しく、「この辛い環境から一刻も早く逃れたい」と、辞めたい気持ちを募らせる人は多いようです。
評価への不満
成果を上げているのに正当に評価してくれない、頑張っているのに抜擢されないなど、会社からの評価に不満を抱えている人もいます。
会社の評価体制に失望し「どれだけ頑張っても無駄だ」と無力感にさいなまれ、「一刻も早く辞めて評価される会社に移りたい」と考えるケースがあるようです。
仕事内容、任される役割への不満
希望とは異なる部署に配属されやる気が出ない、ノルマが厳しく疲弊している、業務量が多すぎて逃げ出したいなど、仕事内容や業務量に不満を抱え、辞めたいと考える人も多いようです。
責任ある仕事を任せてもらえずモチベーションが上がらないとの不満や、逆に責任が重すぎて押しつぶされそう…など、任される役割への不満や悩みを抱え、退職を考える人もいます。
仕事を辞めたいけど次がない場合、できれば辞めないほうがいい理由
「どうしても仕事を辞めたい」という場合、たとえ次が決まっていなくても退職すること自体は可能です。
実際、多くの人が「次が決まる前に辞めて」います。株式会社リクルートの「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」によると、現在正社員・正職員の20~50代転職経験者において、転職先が決まる前に前職を離職した人は、年代に関わらず4割を超えています。
実際、辞めてから転職活動をすると転職活動に集中しやすい、選考や入社日のスケジュール調整がしやすい、などのメリットはあります。ただ、次が決まる前に辞めるのは、以下のようなデメリットがあるため、できれば避けたほうがいいでしょう。
(※)出典:「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」株式会社リクルート
収入源が絶たれてしまうから
次が決まらないまま仕事を辞めてしまうと、「勤務先からの給与」という安定した収入源がなくなります。
貯蓄があまりなかったり、なかなか転職先が決まらず失業期間が長引いたりすると、生活が厳しくなってしまう恐れがあります。
経歴にブランクが生まれるから
次を決める前に仕事を辞めると、経歴にブランクが生まれます。すぐに転職先が見つかればいいですが、ブランクが長くなると、「その期間に何をしていたのだろうか」「仕事への意欲が低いのではないか」「仕事の勘が鈍っているのではないか」など、応募先にネガティブな印象を与えてしまう可能性があります。
焦って意に沿わない転職を決めてしまう恐れがあるから
退職後に転職活動を始めたものの、なかなか決まらない場合、「これ以上長引かせたくない」「早く収入を確保しなければ」などと焦ってしまい、意に沿わない企業に入社を決めてしまう恐れがあります。
その結果、入社後にギャップを感じてストレスを溜め込んだり、成果が出せず評価が上がらなかったりして、早期退職してしまうケースもあるようです。
仕事を辞めたいけど次がないと悩んだときすぐにできる対処法
「仕事を辞めたいけど次がない」という悩みを抱えているとき、今の仕事に就いたままでもすぐにできる、心が軽くなる対処法をご紹介します。
強みや長所を活かせる仕事に意識的に注力する
やりたい仕事ではない、仕事内容が自分に合わないという不満を抱えている場合は、「少しでも面白いと感じられる業務」に注力するのは一つの方法です。例えば、営業の仕事の中で新規開拓は苦手だけれど、市場をリサーチするのは好き、プレゼン資料をまとめるのは得意など、強みや長所が活かせて面白みを感じられる業務に積極的に取り組んでみましょう。
「面白い仕事に取り組めている」という事実がモチベーションにつながり、他の業務にも前向きに取り組める可能性があります。「面白いと思える仕事」で成果を出せれば、評価も上がり、より面白い仕事が回ってくるかもしれません。
「自分が取り組む意味」を見出す
仕事内容に不満がある場合、「自分が取り組む」意味を見出せると、辞めたいという気持ちが軽減する可能性があります。
例えば「本当は企画の仕事がしたいのに、営業をやらされていて辛い」という場合、他の営業と同様に行動し目標達成を目指すのではなく、企画職に関連のありそうな業務…例えば顧客分析やマーケット分析などに注力して分析力を磨いたり、マーケティングに関する知識を身につけたりすれば、「自分が営業をやる意味」が出てきます。
「事務処理ばかりで、意味がある仕事とは思えない」とやる気を失っている場合は、自分の仕事が社内のどの部署にどうつながっているのか考えてみるといいでしょう。例えば「自分が事務処理を代行することで営業の仕事の業務効率化につながっている」などと気づければ、日々の仕事にやりがいを覚えるようになるかもしれません。
オンオフのバランスを見直し、頑張り過ぎない
仕事が忙しく「仕事メイン」の日々が続くと、視野がどんどん狭くなり、「辛い」「辞めたい」との気持ちに支配されてしまう恐れがあります。仕事の合間にすき間時間を作り、仕事以外の友人と食事をしたり、映画を観たり、趣味に費やしたりと、オフの時間を確保しましょう。
仕事を離れリフレッシュすることで、視野が広がり、「辞めたい理由」の解決策を思いついたり、辞めたいと思っていたことが小さな問題に思えてきたりする可能性もあります。
休暇を取って仕事から離れる時間を作る
業務量が多くオフの時間が確保しづらい、責任が重くストレスが溜まっているなど、心身ともに疲れ切っている場合は、休暇を取って仕事と距離を置くのも一考です。心身の疲労が軽減すれば、気持ちが前向きに切り替わり、辞めたい気持ちが軽減するかもしれません。
辞めなければ解決しない問題かどうかを考える
仕事を辞めたい理由に向き合い、本当に辞めないと解決できない問題なのかどうか考えてみましょう。
仕事内容や業務量に不満があるならば、上司に相談してみる、人間関係が辛い場合は部署異動やチーム替えを申し出る、評価に不満がある場合はどれだけ努力し工夫したのか1on1や振り返りの場で具体的にアピールする、などの方法が考えられます。
今抱えている「辞めたい理由」が少しでも改善できる可能性があるならば、まずやれることに取り組んでみてから、辞めるか否か検討することをお勧めします。
異動や役割変更などを上司に相談する
どうしても今の仕事が合わない、別にやりたい仕事があるという場合は、希望部署への異動や、部署内での役割変更を、上司に相談してみましょう。
すぐに希望が叶わない場合も、どういう行動を取りどのような成果を上げれば希望に近づけるのか、上司からアドバイスをもらえる可能性があり、目標に向かって奮起することができそうです。
転職活動を始め、自分の市場価値を調べてみる
転職活動を始めてみると、どんな経験・スキルが評価されるのかがわかり、自分の市場価値がつかめます。「現職以外の選択肢がある」と気づけることで、心の余裕につながるでしょう。その結果、「仕事は仕事」と割り切れたりするなど、辞めたい気持ちが減退する可能性があります。
「仕事を辞めたいけど次がない」状態でも、辞めることを検討したほうがいいケースもある
前述のような理由で、できることならば「仕事を辞めたくても、次が決まっていなければ辞めないほうがいい」と言えます。ただ、対処法を試してみても、なかなか状況が改善されないケースや、下記のようなケースに当てはまる場合は、次が決まる前に辞めることを検討したほうがいいかもしれません。
家庭の事情で働き続けるのが困難である場合
例えば育児や介護があるのに、自社に両立するための制度が整っておらず、働き続けるのが困難である場合は、退職して希望に合った働き方ができる会社を探すのも一案です。
転職活動の際の「軸」も明確になるので、退職理由や志望理由の納得度が高く、応募先の理解を得やすいでしょう。
仕事が忙しすぎて今後を考える余裕がない場合
激務過ぎて転職活動はおろか、今後のキャリアのことをじっくり考える余裕もない…という状態に陥っている人もいるようです。
この場合は、先に退職していったん立ち止まって今後のキャリアを考えるのも一つ方法ではあります。自己分析や企業研究、書類作成や面接準備などにもじっくり取り組めるので、納得度の高い転職ができる可能性があります。
心身ともに限界でストレス過多である場合
基本的には、人事に相談したり産業医にかかったりするなどの方法をまず取りたいところですが、いよいよストレスが溜まり、仕事に行くのも辛い状況であれば一度「働く」から離れるのも、自分を守る方法です。
いったん退職して仕事から距離を取り、心身をしっかり休めてからのほうが、転職活動に前向きに取り組めるでしょう。
仕事を辞めたいけれど次がない状況を冷静に捉えて対応しよう
ここまでご説明したように、基本的には「辞めたい!」と思っても、いったん気持ちを落ち着けて考えてみることが大切です。辞めるのは個人の自由であり、いつでも辞められるのだと思えば、冷静になれるのではないでしょうか。
生産年齢人口の減少を受け、どの企業でも人手不足が深刻化しています。つまり売り手市場は当面続くと見られ、無理に急ぐ必要はありません。辞めてから次を探すデメリットを考えれば、在職中に着々と転職準備を進めるほうがメリットは多いと言えるでしょう。
ただ、前述のように心身に支障をきたし「もうどうしても耐えられない」という場合は、次が決まる前に辞めることも選択肢に入れましょう。売り手市場の中、焦らず自分に合う会社を見極められれば、転職活動も長期化せず、スムーズに転職先が決まると思われます。
自分の性格や仕事選びの価値観を整理できる適職診断なども活用しながら、次の仕事を見つける条件を洗い出してみるのも一案です。
なお、転職以外にも、独立・起業する道や、副業でやりたい仕事に挑戦したりスキルアップしたりする道、いったん会社員から離れて学び直しをする道など、「現職に留まるか、転職するか」以外にも選択肢はあります。視野を広げ、今の自分に合った道を選択してほしいですね。
組織人事コンサルティングSeguros
代表コンサルタント粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。