社会保険とは?加入条件や保険料・退職・転職時の手続きなどを解説

皆さん、「社会保険」について正しく理解していますか?普段は会社に手続きを任せていても、退職や転職、あるいは結婚・出産などのライフステージの変化のタイミングでは、給付を受けたり加入手続きを行ったりする必要が生じます。そこで、社会保険にまつわるさまざまな疑問について、社労士 岡佳伸さん監修のもと解説します。

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社会保険とは

社会保険とは、「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」を指します。広義には、「労働保険(労災保険・雇用保険)」も含まれます。病気・ケガ・老齢・介護・失業・労働災害など、社会生活上のさまざまなリスクに備えるため、国や公的機関が運営。被保険者である会社員や公務員が困った事態に陥った場合、給付金を支給します。

健康保険は、会社が加入することを義務付けられており、保険料は会社と社員で折半して支払います。厚生年金保険は、第2号被保険者(会社員・公務員等)が加入し、会社で働いている人が保険料を支払います。厚生年金保険料の中には国民年金保険料も含まれており、保険料は会社と個人が折半して負担し、半額は毎月の給料から天引きされます。

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社会保険制度の種類

社会保険の種類には次のようなものがあります。

●健康保険

業務とは関わりがない病気やケガをした場合、通院・入院・手術などの費用の一部を負担するなど、必要な給付を行います。

●厚生年金保険

高齢のため働けなくなった場合、身体に障害を負った場合、死亡した場合などに、労働者本人または遺族に対して必要な給付を行います。

●介護保険

介護が必要であると認定された場合、介護サービスを受ける費用の給付を行います。

●雇用保険

失業や出産・育児・介護などによって一時期会社を離れた労働者に対し、職場に復帰することができるよう必要な給付を行います。また、主体的な能力開発を図る場合の教育訓練に給付が行われます。

●労災保険(労働者災害補償保険)

業務中や通勤中に発生した災害によってケガをしたり病気にかかったりした労働者に対し、必要な給付を行います。

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社会保険にまつわるQ&A

ここからは、社会保険にまつわるさまざまな疑問にお答えします。

Q.社会保険料はどうやって決まる?

社会保険料は「標準報酬月額」をもとに算出されます。標準報酬月額とは、毎月の給与の月額を区分(等級)ごとに設定した金額厚生年金は32段階、健康保険は50段階に区分されています。

どの区分に該当するかは、4月~6月の3カ月間に支給された給与額で決まります。基本給をはじめ、残業手当・通勤手当・住宅手当といった各種手当も含まれます。

Q.退職日によって社会保険料が変わる?負担額が少ない退職日はいつ?

退職日の違いで社会保険料は異なります。前提として、社会保険被保険者の資格喪失の場合、次の内容が適用されます。

  1. 退職日の翌日が「資格喪失日」となる
  2. 資格喪失日を含む月は、それまで払っていた保険料は不要

「資格喪失日」以降、国民年金・国民健康保険などに加入して保険料を払うか、または、加入していた健康保険の任意継続被保険者になる、配偶者、親、家族などの被扶養者となる方法があります。国民年金については、配偶者の被扶養者として第3号被保険者になる場合を除いて、国民年金に加入して自分で保険料を払う必要があります。

仮に、転職先への入社日が7月1日とします。退職日を6月15日に設定した場合、資格喪失日は6月16日となるため、6月分の社会保険については居住地の自治体で加入保険の変更手続きを行い、自分で保険料を支払います。あるいは、配偶者、親、家族などの被扶養者になります。

しかし、退職日を6月30日に設定にすれば、資格喪失日は7月1日。つまり、6月分の社会保険料は前の会社が半額負担してくれ、半額はこれまでどおり給与から天引きされます。そして、7月以降の社会保険料は、転職先の会社が半額を負担してくれ、半額は給与から天引きされます。

このように、退職日が違うだけで社会保険料を自分で全額支払うか、会社が半額負担してくれるかが異なります。上記の例のように、月末を退職日とすると、自身の負担額が少なく抑えられます。

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Q.副業する場合、副業先でも社会保険の加入は必要?

副業であっても、一定の条件を満たしている場合は、社会保険への加入が必要となります。以下、両方の加入条件に該当する場合、加入の義務があります。

●社会保険の加入条件

  • 社会保険の適用事業所(全ての法人の事業主、社会保険適用条件を満たす個人事業主)で勤務していること
  • 正社員、又はパートタイマーアルバイト等でも、1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上である人

また、正社員の4分の3未満であっても、の5つの要件を全て満たす方は、被保険者になります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 勤務期間が1年以上見込まれること
  3. 月額賃金が8.8万円以上
  4. 学生以外
  5. 従業員501人以上の企業に勤務していること(令和4年10月1日からは従業員101人以上の企業に適用拡大されます)

Q.休職中でも社会保険料は支払わなければならない?

傷病などで休職する場合も、社会保険料は支払い続けなければなりません。ただし、女性の産前・産後 女性と男性の育児休業中については、社会保険料が免除されます。

Q.契約社員と正社員で社会保険の負担額や支給額は違う?

契約社員も正社員も、社会保険に関する条件は同じです。企業が加入している協会けんぽ、健康保険組合の健康保険料率・給付内容は一律であり、契約社員と正社員で区別していません。

Q.退職時の社会保険の手続きはどうしたらいい?

退職時、自分で手続きが必要となるケースと不要であるケースがあります。それは、退職から次の会社への入社までの空白期間の有無によって異なります。

●転職時に空白期間がない場合

転職時に空白期間がない。つまり、退職日の翌日が転職先への入社日となっている場合、資格喪失手続きは前職の人事担当者が、保険加入手続きは転職先の人事担当者が対応するのが一般的です。この場合、自分のマイナンバーか基礎年金番号を転職先企業に伝える以外、自分で手続きをする必要はありません。

●転職時に空白期間ができる場合

例えば4月末に退職し、転職先に6月1日に入社するなど、会社に在籍していない空白期間が発生する場合、離職期間中の社会保険の手続きを自分で行う必要があります。「退職する会社の健康保険を任意継続」「国民健康保険に切り替え・国民年金に加入」などの対応をします。

所属していた会社の健康保険を任意継続する場合は、退職日の翌日から20日以内に手続きが必要。国民健康保険・国民年金の加入手続きをする場合、退職日の翌日から14日以内に行います。

●再就職の予定がない場合

再就職先が決まっていない場合、国民健康保険・国民年金に切り替える手続きを行います。月末時点で会社に在籍していていない月から、国民健康保険・国民年金保険料を納め始めます。退職する会社の健康保険を任意継続する方法もあります。退職後に扶養家族となり、扶養者の健康保険に加入する場合は、加入する健康保険に申請します。

Q.結婚・出産した場合の手続きは?

結婚後に姓が変わった場合、会社に申請して氏名変更の手続きをしてもらいます。出産した場合、健康保険から支払われる出産費用の補助金「出産育児一時金」(子ども1人につき42万円)の受給に関しては、自分で手続きを行います。

「直接支払い制度」を利用すれば、保険者から直接産院へ出産育児一時金が支払われます。つまり「後から戻ってくるが、先に自分で出産費用を産院に支払う」負担はありません。

このほか、健康保険加入者が出産のために休業する場合、収入減少への不安を軽減するため、「出産手当金」が支給されます。産前休暇日数42日(多胎妊娠の場合は98日)から産後休暇日数56日目までの範囲内で、1日当たり標準報酬日額(※)の2/3が支払われます。
※標準報酬日額/給付開始日前の12カ月間に支給された給与の平均額(標準報酬月額)を30日で割ったもの

出産手当金の受給手続きは自分で行います。出産手当金の申請書に会社から、給与が支払われていない証明、産院からは出産の証明を取り付け、加入している協会けんぽ又は健康保険組合などに申請します。

Q.育児休暇・休業中の社会保険料が免除されるって本当?

3歳未満の子どもがいて育児休業を取得する場合、男女問わず、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料等)が免除されます。

女性であれば、産後8週間経過後、1歳の誕生日の前日までが育児休業期間となります(※産後8週間までは産後休業)。保育園に入園できない場合は、6カ月ずつ延長が可能です。
なお、男性の場合は、出産日または出産予定日からが育児休業期間となります。

Q.長期休職や長期休業の場合、社会保険の支払いはどうなる?

長期間休業や休職する場合も、その間の社会保険料は免除されません。長期休業・休職の理由を問わず、支払い続ける必要があります。

Q.夫婦共働きの場合、扶養家族はどちらの扶養に入った方がいいのか?

基本的に、男女問わず「収入が多い方」の扶養に入るのが原則です。妻は育児休業により収入がなくなる時期もありますが、通常働いているときの標準報酬月額が夫よりも高ければ、妻の扶養家族となるのが一般的です。

Q.社会保険に入っていないとどんなリスク(罰則)があるの?

社会保険は、基本的に会社が加入するものです。自分は国民健康保険への加入を希望したとしても、勤務先企業が社会保険適用事業所となっていれば、強制加入となります。

会社に属さず、フリーランスとして活動する場合も、国民健康保険への加入が必要です。加入していなければ、病気やケガなどで受診・手術・入院などした場合に負担する金額が増えたり、延滞金を徴収されたりするといったデメリットがあります。

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社会保険労務士法人 岡佳伸事務所 岡佳伸氏社会保険労務士法人 岡 佳伸事務所 岡 佳伸氏

大手人材派遣会社、自動車部品メーカーなどで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。各種講演会講師および記事執筆、TV出演などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

取材・文:青木典子 編集:馬場美由紀
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