ストレス軽減と幸福感の創出も期待できる「ワーケーション」とは、どのような働き方なのか?

コロナ禍以降、テレワークを導入する企業が増え、オフィスの場所や通勤時間にとらわれない働き方が可能になってきた。一方で、自宅での仕事に閉塞感を覚えたり、気分転換できないストレスを感じたりする人も増えている。そこで注目を集めているのが、「ワーケーション」。そもそもワーケーションとはどのような働き方なのか、どんな人に向いているのかなど、日本ワーケーション協会の代表理事、入江真太郎さんに聞いてみた。

ワーケーションイメージ画像
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一般社団法人 日本ワーケーション協会 代表理事・入江 真太郎さん

日本ワーケーション協会・入江真太郎さん長崎県生まれ、同志社大学社会学部卒業。阪急交通社やスタートアップ企業などを経験後、観光事業や海外進出支援事業などを展開。2020年7月に代表理事として日本ワーケーション協会を設立。新潟、長崎、山口、大阪、鳥取などで自治体事業や関連団体、一般企業のアドバイザーを務めている。

ワーケーションが注目される理由

「ワーケーション」とは、一般的には「観光地やリゾート地で休暇を取りながら仕事をする働き方」と解説されることが多いようです。しかし、休みながら働くなんて難しいですよね。そうではなくて、非日常の土地で仕事を行うことで、生産性や心の健康を高め、より良いワーク&ライフスタイルを実現するための1つの手段だと私は考えています。

NTTが国内のどこでも自由に居住して勤務できる新制度を発表して話題になりましたが、今後はフレックスタイム制やテレワークなど、働く時間と働く場所の多様化に対応する企業は増えていくでしょう。

特にデジタルネイティブである学生や若い世代に選ばれる企業であり続けるためには、働き方に対する柔軟な発想が企業にも求められる。そうした中でワーケーションは特別なものではなく、選択肢の1つになっていくと思います。

ワーケーションにはさまざまなスタイルがありますが、大きく分けると個人で行うものと、企業が主体となって行うものがあります。

個人では、休暇を楽しみつつ仕事をこなす「休暇活用型」ワーケーションと、生活や働く拠点を複数持ち移動する「拠点移動型」ワーケーションが主なものです。

企業では、集中的にチームで討議したり立案したりする「会議型」や、社員の研修や交流を深める「研修型」などがあります。例えば、長野県立科町がIT企業のアイデアソンに使われるなど、企業による利用も徐々に増えてきています。

また、個人が費用を負担してワーケーションをする際に、企業が応援する「福利厚生型」もあります。例えば、ユニリーバは現在8つの自治体と連携し、その地域のコワーキングスペースを社員が無料で利用できるようにしています。

同社が2016年から働く場所・時間を社員が自由に選べる働き方を実践してきたなかで、「生産性が上がった」「新しい働き方が始まってから生活が良くなった」など、一定の成果が見られたことから、2019年にこのスタイルが導入されたのです。実は、ワーケーションで大切なことはこの「幸福感」だと思っています。

●7つのワーケーションタイプ

ワーケーションの7つのタイプ
出典:一般社団法人 日本ワーケーション協会「ワーケーションの7つのタイプ

ワーケーションのメリットは業務効率とリフレッシュ効果

ワーケーションのメリットは、個人なら、業務効率の向上やリフレッシュ効果、新たな出会いやアイデアの創出などがありますし、企業ならイノベーションの創出や有給休暇の取得促進、人材確保などがあります。そしてワーケーション施設にとっては、地域や事業の活性化、雇用の創出などが期待できます。

観光庁ではそれぞれの導入メリットを下記のように紹介しています。

ワーケーションの導入メリット

●企業(送り手側)

  • 仕事の質の向上、イノベーションの創出
  • 帰属意識の向上
  • 人材の確保、人材流出の抑止
  • 有給休暇の取得促進
  • CSR、SDGsの取組みによる企業価値の向上
  • 地域との関係性構築によるBCP対策
  • 地方創生への寄与

●従業員(利用者)

  • 働き方の選択肢の増加
  • ストレス軽減やリフレッシュ効果
  • モチベーションの向上
  • リモートワークの促進
  • 長期休暇が取得しやすくなる
  • 新たな出会いやアイデアの創出
  • 業務効率の向上

●行政・地域(受け手側)

  • 平日の旅行需要の創出
  • 交流人口および関係人口の増加
  • 関連事業の活性化、雇用創出
  • 企業との関係性構築
  • 遊休施設等の有効活用

●関連事業者(受け手側)

  • 事業拡大および雇用創出
  • 受入地域(行政)との関係性向上
  • 自社のソリューション開発

出典:観光庁「ワーケーション&ブレジャー」より

これらの根底に共通してあるのが、「幸福感」「ウエルビーイング」なのです。

趣味を大切にしたい人なら、例えば時間を作ってサーフィンができる幸せがありますし、新しい人やものとの出会いを求めている人なら、いろいろな場所に行くことで出会いが生まれる幸せがあります。企業であれば目的達成という幸せを実現するための手段ということになります。

どんな人がワーケーションを利用しているのか

では実際に、どんな人がワーケーションを利用しているのでしょう。正確な統計があるわけではありませんが、現場を見聞きして実感しているボリュームゾーンは30代、業種に関してはIT系が多い印象がありますが、今後はもっと広がっていくでしょう。

というのも、2020年3月に厚生労働省から出された「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」で、ワーケーションもテレワークの一形態として位置付けられました。このためテレワークを実施している人にとって、自宅ではなく別の非日常空間で仕事をすることも、選択肢になってきているのです。

ただし、誰もがワーケーションをすればいいというものではなく、向いている人がやればいいと思っています。どんな人が向いているのかというと、個人的な印象ですが、好奇心が旺盛な人、コミュニケ―ションを取ることが好きな人ですね。

逆に趣味に没頭したい人や一人の時間を大切にしたい人なども向いていると思います。どちらかというと、自分らしくいられることに前向きな人が向いている傾向を感じます。

一方で、いつも決まった場所に行く方が仕事しやすい、同僚たちの様子を把握しながら働く方が安心できるという方は、無理してワーケーションをする必要はないかなと思います。

ファーストステップは片道1時間を目安に

ワーケーションは、環境を変えることで新しい視点に気づいたり、リフレッシュして集中できたりといった良さがある一方、働く時間も場所も自分でコントロールし自律的に働く強さが求められます。興味がある方や一度やってみたい方は、まず片道1時間ぐらいの場所へ行ってみることをおすすめします。

ワーケーション=都市部の人が遠く離れたリゾート地や観光地へ行くイメージがあるかと思いますが、違うのです。宮崎県の人が鹿児島県に行ってもいいのです。大阪勤務の人が、今日は京都に行って仕事をしてみようでいいのです。

例えば、東京・渋谷勤務の人が横浜に行って仕事をしてみたら、横浜DeNAベイスターズが運営するCREATIVE SPORTS LABがあったり、地域とつながるシェアオフィスがあったり、意外な人やモノ、コトとの出会いに気づいたりします。

そんなふうに場所を変えてみて、何か変化があるのか、自分の気分が変わるのかやってみる。その上で自分は在宅ワークのほうが向いている、会社のほうがいいとわかれば、それでもいいわけです。まずは、片道1時間ほど、日帰りで行ける範囲でトライアルをしてみることをおすすめします。

ファーストステップの拡充こそ地域課題の解決にも

ファーストステップでのプチ・ワーケーション体験者が増えることは、受け入れ施設側にとっても、メリットがあります。

ワーケーションを推進する自治体の連合「ワーケーション自治体協議会」は、すでに会員自治体が207(1道23県183市町村)になっていますが、ワーケーションはコワーキングスペースや宿泊施設だけを整えればいいというものではありません。「箱は作ったけれど使われないよね」とならないためには、地元の人も使っていることに大きな意味があります。

利用者にとっては地元の方も使っているスペースだからこそ、会社の中とは違う知らない世界に触れることができて面白いわけですし、受け入れ側にとっては自分たちも一緒に使うことで、何が求められているのかも感じ取れますし、訪れた人たちとのコミュニケーションや地元とのつながりも生まれていきます。

例えば、長野県の富士見町は、個室型オフィスやコワーキングスペースを使って、地元の人もワークショップやイベントを行うなどで利用しています。長崎県の五島市や静岡県の熱海市もそうですが、地元・周辺地域・外からの方々で、バランスよく利用しているからこそ、7年、8年と利用され続けているのです。

セカンドステップは、滞在型にチャレンジ

近場でいくつか試してみてワーケーションの良さを実感できたら、セカンドステップは新幹線や飛行機に乗って滞在型のワーケーションを利用してみるといいですね。

星野リゾートの都市ホテルブランド「OMO(おも)」は、地域の魅力を活かした滞在を打ち出してすでに12施設を展開しています。23年春には熊本にも開業を予定しています。

また、住まいのサブスク「ADDress」を運用するアドレスなどが沖縄・名護での体験プログラムを開催するなど、滞在型のワーケーションは、自治体だけでなく観光産業も積極的に事業展開しています。

熊本の方が大阪でワーケーションをするのもありですし、新潟県糸魚川のように、子どもたちが自然科学教室のようなことを各所で体験しながら、親はWiFi環境で仕事ができる親子ワーケーションなどもあります。

地域もアクティビティもワーケーションの選択肢は非常に広がっています。ワーケーションが向く人・向かない人もそれぞれが自分に合う働き方を選べる社会になっていくといいですね。従業員の働き方に対する柔軟性や対応も含めて、就業先を判断していく社会になっていくのではないでしょうか。

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取材・文:中城邦子  編集:馬場美由紀
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