仕事ができなくて辛い気持ちの切り替え方・改善策をスキルアップのプロが紹介

「自分は仕事ができなくて辛い…」。そんな悩みを抱く若手ビジネスパーソンは少なくないようです。仕事ができない要因はどこにあるのか、辛いときにどう気持ちを切り替えればよいのか、仕事ができるようになるためには何を改善すればよいかなどについて、ビジネススキル研修を手がける株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ代表の高田貴久氏にアドバイスをいただきました。

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仕事ができないと悩む原因は?考えられる2つのパターン

「自分は仕事ができない」と思ってしまうのはなぜなのでしょうか。それは「現実」が「理想」に追いついていない状態であるといえます。

私も戦略コンサルティングファームに入社して間もない新人の頃、「自分は仕事ができない」と悩んだ時期がありました。今回のテーマは、私自身の体験談も交えてお話しします。

まず、自分は仕事ができないと考えていても、実際はそうでない場合と本当にそうである場合があります。それぞれのパターンをご紹介しますので、自身はどれに当てはまるかを分析してみてください。

実は一定レベル以上の仕事ができているパターン

実際には一定レベル以上の仕事ができているにも関わらず、「自分は仕事ができない」と思い込んでしまうのは、次のような原因が考えられます。

●他人と比べてしまう/憧れが強すぎる

理想が高すぎるために、自身を過小評価していることがあります。例えば、同期入社者が高い業績を挙げていると、それと比較して「自分はできない」と思ってしまうことがあります。私自身も、同期と同じプロジェクトにアサインされたとき、比較されて焦りを感じた時期がありました。

また、憧れを抱いて「ロールモデル」としている人物がいると、その人になかなか追いつけない自分を情けなく感じることもあるでしょう。

●目的意識や危機感が強すぎる

例えば、「人や社会に貢献したい」という志をもって製薬会社に営業として入社したものの、ドクターに話さえ聞いてもらえず門前払いされる日々が続けば、自身の存在価値を見失ってしまうかもしれません。

また、組織への貢献を強く意識するあまり「成果を挙げなければ」「早く成長しなければ」と焦ることもあります。これも、理想が高すぎるがゆえに生じる葛藤です。理想と現実とのギャップが大きいと感じると、自信を失ってしまうでしょう。

●褒めてもらえず、成功を実感できていない

もともと謙そんしすぎる性格タイプの人もいるのですが、「褒めてもらっていない」ことから成功を実感できず、自身を卑下しているケースも多く見られます。私もコンサルタント時代、分析・提出したレポートに対してお客様からのフィードバックがなく、「良くなかったのかな……」ともやもやした経験があります。

実際に仕事ができていないパターン

自覚しているとおり、実際に仕事ができていないこともあります。これにはさまざまなパターンがありますが、私自身が後から振り返って悪循環に陥っていたことに気づいたケースをお話ししましょう。

私が新人時代、「意欲だけが空回り」状態になっていたことがあります。成果を挙げたいあまり、「高田くん、これできる?」と振られたことを「やります!ぜひやらせてください!」と積極的に引き受ける。けれど、能力が追い付いていないので成果が出ない。すると焦って別の仕事も引き受け、気づくと抱え込みすぎて仕事が回らなくなっていました。

あるときは、評価してくれない上司を見返そうと思い、「あっと驚くような提案を作ってやる」と1人でこもって黙々と作業したこともありました。しかし、相談も確認もしないで独自に進めたため、的外れな内容に仕上がり、結局評価を得られませんでした。

この頃の私のように、意欲があるだけに、勢いと独断で行動した結果、成果につながらず落ち込んでしまう人もいるのではないでしょうか。

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仕事ができなくて辛い気持ちの切り替え方

辛いと落ち込んだときは、まず気持ちを切り替えましょう。悶々と悩み、落ち込んでいる状態では冷静に状況を見つめ直して問題解決をすることもできません。

どのような観点で捉えれば辛い気持ちを和らげることができるか、いくつかのヒントをお伝えします。ただし、これから挙げる方法は、あくまで「一時的」な対処法であることを前提とします。

「あるべき姿」のレベルを下げる

「自分はできていない」ではなく「一定レベル以上はできている」と、自分を信じることから始めましょう。自身が描く「あるべき姿」のレベルを意図的に下げ、「○年目でこれだけできていたら十分だろう」と、自身の成果を肯定してみてください。

「長いものに巻かれている」とわかりながら、巻かれる

上司からの指示や顧客からの要望に対して「おかしいんじゃないか」「こうした方が良いんじゃないか」と考えていると、思いどおりにならない=できないことに苦しさを感じます。そんな時は、自分の理想にこだわり過ぎず、「長いものに巻かれておく」のも一つの手です。「ここは流されておこう。それでいいや」と、一時的に割り切ってみることも大切です。

誰かに褒めてもらう

良い評価を得て褒めてもらわないと、自信も成長実感も持てません。自分では仕事に手応えを感じているものの、他者から評価を得られていない場合は、自ら評価をもらいに行くことも時には必要です。

例えば、上司に会議資料の作成を依頼されて資料を作ったとします。上司も忙しいでしょうから会議が終わった後に「ありがとう、あの資料良かったよ」という褒め言葉が常にあるとは限りません。そのまま何の反応もないと、資料が役に立ったのかどうかわからず、悶々としますよね。

そういう場合は、勇気を持って自ら上司に「資料どうでしたか?役に立ちましたか?」と聞いてみましょう。または、もし可能ならば「私も会議に出ても良いでしょうか?」と持ちかけ、自分の作った資料がどう使われているのか、参加者がどんな反応をするのかを自らの目で確かめに行ってみましょう。

上司には、「褒めるのが苦手」というタイプの人もいるものです。能力が高い部下に対しては「できて当たり前」という意識があり、期待どおりの成果を挙げてもあえて褒めることはしないケースも多いのです。「たまには褒めてくださいよ~」「褒められたら、もっと頑張りますよ!」などと冗談っぽく投げかければ、案外褒めてもらえるかもしれません。

このように、上司だけに限らず、他の社員や顧客などにも、自らの仕事ぶりについての評価をもらいに行きましょう。もちろん不満の声も出るかもしれませんが、それをもとに次の手を打てば成功につなげられるはずです。

うまく質問することで、評価・フィードバックを得る

「褒めてください」とストレートに言いづらい場合、自分の仕事ぶりについての評価を聞くのがちょっとこわい場合は、次のような問いかけをすれば、前向きな返答をもらえることが多いです。

「私の強みはどこだと思われますか?今後、どう活かしていくとよいでしょう?」
「1年前と比べて、私が成長したと思われる部分はありますか?」
「次の目標を立てるために、私が今できていること、これから努力すべきことを教えてください」

開き直る

これは心の平穏を保つために私は最後の手段として使っていました。理想と現実にギャップがあっても、一旦あえて無視しましょう。誰に何を言われても、心の中で「自分の方が正しい」とプライドで武装する。あるいは、すべて受け流す「鈍感力」で対応する。例えば、次のような発想で、心の平穏を保つということです。

「別に死ぬわけじゃないし…」
「別に損する訳じゃないし…」
「人生、ほかにいろいろやることあるし…」
「会社や仕事だけにかまっていられないし…」

仕事ができなくて辛いと感じるのは、そもそも非常に真面目な方々だと思います。だからこそ、ときにはあえて開き直り、緊張感や危機感をゆるめることも大切だと思います。

ただ、この章の冒頭でお伝えしたとおり、これらの対処法は「一時」にとどめてください。「あるべき姿」のレベルを下げたまま、開き直ったままでは、成長が止まってしまいます。気持ちが安定したら、再び理想の姿を追って成長していきましょう。

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「仕事ができない」と悩んだときの対処方法

上記の方法で気持ちを落ち着かせたら、「仕事ができない」状態の解決に取り組みましょう。一口に「仕事ができない」といっても、その内容は多様であり、それぞれ解決法も異なりますが、ここでは私自身の体験をもとに、大きく2つの対策をご紹介します。

コミュニケーションを増やし、「ニーズ」を的確につかむ

「仕事ができない」とは、自身の行動やアウトプットが評価されないということ。なぜ評価されないかというと、「ニーズを的確につかんでいない」ケースが多く見られます。

私もコンサルタント時代、一生懸命分析をして資料を作成しても、上司やお客様に評価してもらえないことがありました。「いや、知りたいのはそれじゃないんだよ」と。つまり、何を求められているかに気付かず、論点が外れてしまっていたのです。

そうなった原因は「コミュニケーション不足」でした。私はマネジャーに厳しいことを言われるのが嫌で、マネジャーの座席になるべく相談に行かず、単独で作業を続けていたのです。だから、マネジャーが考えていることがわからない。マネジャーとコミュニケーションをとらないから顧客先にも連れて行ってもらえず、顧客が考えていることもわかりませんでした。

同期の指摘でそれに気付き、以降は「1日3回、マネジャーの座席に行って会話する」という行動を徹底しました。怒られても嫌味を言われても、とにかく行く。そうすれば情報が入り、アドバイスも得られ、課題へのピントが合っていきました。

結果、「いい分析をするね」と評価され、お客様にも同行させてもらい、お客様の話を直接聞くことで、さらに的確な分析ができるようになり、好循環が回り始めたのです。

「仕事ができない」と悩んでいるなら、ぜひ関わる人々とのコミュニケーション量を増やし、「自分に何が求められているのか」をつかむことから始めてみてください。

自分の強みの活かし方を考える

仕事ができない理由として、「それが得意ではない」可能性も考えられます。私もコンサルタント時代、提案書を作成してもまったく評価されず、悩んだことがありました。

そのプロジェクトは、ある企業の「研究開発組織のKPI設計」。私は事業会社での勤務経験がなく、研究開発職が日々どんな仕事をしているかも知らなかったため、成果を出せなかったのです。

そこで、「この仕事は研究開発職の経験者に任せた方がいい。私はExcelでの数値分析が得意なので、そのスキルが活かせる案件を担当させてほしい」と上司に掛け合いました。すると、その企業の製品の販売データと顧客満足度データの分析業務にアサインされ、そこで高評価を得て、立ち直ることができたのです。

これまでの経験を振り返り、自身が得意とすることは何なのかを整理・言語化してみましょう。それを上司なり会社なりに伝え、強みを活かせる業務に就けるように働きかけてみてはいかがでしょうか。

自身の強みを認識するには、日頃から他者と比べて自身が秀でているポイントを見つけてストックしておくといいでしょう。とはいえ、自身を客観的に見て判断するのは難しいこともあります。強みを診断するツールなどを活用してもいいでしょう。

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どうしても仕事ができなくて辛いときは?

仕事ができないという辛さに追い詰められると、「転職」が頭をよぎることもあるでしょう。しかし、安易に転職に踏み切る前に、「仕事のフェーズ」「人生のフェーズ」を意識してみてください。

今はたまたま自分に合わない業務に就いていたりプロジェクトにアサインされていたりして、辛い日々を過ごしているかもしれません。しかし、この先、異動したり新たなプロジェクトに参加したりと、フェーズが変わることで自身の強みが活かせるようになり、活躍できる可能性もあります。

また、家庭の状況や健康状態といったプライベートの事情により、仕事に集中できていないケースもあるでしょう。それもライフステージが進むにつれて問題が解消され、仕事に前向きに取り組めるようになるかもしれません。

しかし、どうしても今の仕事が自分に合っていないのであれば、悩みながら続けていくのは人生のムダともいえます。少しでも早く軌道修正し、活躍できる場所へ移ることをお勧めします。見極めは難しいですが、第三者に相談して意見やアドバイスを受けるなどして検討しましょう。

人生は長い。仕事に集中できない時期もあって当然

長い人生、仕事に集中できる時期もあれば、そうでない時期もあります。何らかの事情により、仕事がはかどらずに辛い思いをしても、それは一時のことだけかもしれません。

仕事は人生の一部に過ぎず、仕事よりも人生の方がずっと大事です。私が子供の頃あれこれ悩んでいた時、親によく言われたのが「命までは取られないよ」という言葉でした。仕事ができないからといって「命まで取られることはない」ので、あまり思い詰めず、ときには開き直り、心の平穏を保って、冷静に問題解決を図ると良いと思います。

株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ
グローバルCEO・代表取締役社長 高田 貴久(たかだ・たかひさ)氏

高田貴久氏_プロフィール画像東京大学理科Ⅰ類中退、京都大学法学部卒業、シンガポール国立大学Executive MBA修了。戦略コンサルティングファーム、アーサー・D・リトルでプロジェクトリーダー・教育担当・採用担当に携わる。マブチモーターで社長付・事業基盤改革推進本部長補佐として、改革を推進。ボストン・コンサルティング・グループを経て、2006年にプレセナ・ストラテジック・パートナーズを設立。トヨタ自動車、イオン、パナソニックなど多くのリーディングカンパニーでの人材育成を手掛けている。著書に『ロジカル・プレゼンテーション』『問題解決―あらゆる課題を突破するビジネスパーソン必須の仕事術』がある。
▶プレセナ・ストラテジック・パートナーズ 公式サイト

取材・文:青木典子 編集:馬場美由紀
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