取柄や長所がなく自信が持てない…強みを見つける方法とは?

「取柄がない」と悩み、自分に自信が持てずにいる人もいることでしょう。自分ならではの取柄を見つけ、イキイキ働くにはどうすればいいのでしょう?そこで、そもそも取柄とは何か、取柄がないと思う理由、取柄の見つけ方などについて、株式会社人材研究所代表で組織人事コンサルタントの曽和利光さんに伺いました。

取柄がないと悩むビジネスパーソンのイメージカット
Photo by Adobe Stock

「自分には取柄や長所がない」と思ってしまう理由とは?

若手向けの講演会や勉強会などの場で、「自分には取柄や長所がない」という声をよく耳にしますが、実際に取柄がないわけではなく、我々を取り巻く環境の影響が大きいと思われます。

今は、さまざまな情報がSNSなどネットで収集できる時代です。自分にはこんな取柄がある、こんな強みを持っていると思っていても、ネット経由で「上には上がある」ことがわかってしまい、「自分なんて大したことないんだ」と自信を失ってしまう人が多いと感じます。

人間は本来、半径3メートル程度の狭く身近な人間関係の中で生きていて、そのテリトリーで力を発揮できていればそれなりに自己効力感を覚えながら生きていけるものです。しかし、ネットで同じような世代の人が大成功している姿を見て、意気消沈してしまう人が多いようです。

実際、自分よりできる人なんて山ほどいるし、自分の代わりなんていくらでもいるのが現実ですが、「それが見えてしまう」のが問題。つまり、「取柄がない」という悩みのほとんどは、単なる自己認知の問題であり、乱暴に言えば「見なければ解決する」問題とも言えます。

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そもそも「取柄がない」人なんていない

そもそも、基本的に取柄がない人はいません。

強みや弱み、長所や短所も同様ですが、人間にあるのは「特徴」だけ。そして、仕事内容や職場環境などによって、その特徴が取柄になったりならなかったりします。人の特徴には表裏があり、取柄がないと思える場面でも、仕事内容や場所が変われば「これが自分の取柄かもしれない」と感じられることは多いのです。
そもそも、日本の教育方針的にも、近年は一人ひとりの個性を伸ばす方向にあり、今の若い人は私ぐらいの世代に比べて、自分ならではの特徴=取柄を持ちやすくなっているはずです。

人は、誰かと何かを比較しながら生きていて、比較により価値を測る傾向にあります。だからこそ、ネット情報に翻弄されてしまう人が多いのでしょうが、本来は、自分のテリトリー外にいるどこの誰がすごかろうが、自分には関係ないはず。「取柄がない」と悩んでいる人は自分と他人とを比較するのを止め、自身の特徴に意識的に目を向けることが大切です。

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自分ならではの取柄を見つける方法とは?

「取柄」は、強みや長所、持ち味とほぼ同義であり、自己分析で洗い出すことができます。
例えば、これまでの成功体験を洗い出してみたり、仕事で楽しいと思えたもの、熱中できたものを洗い出してみたりすると、その中から自分の特徴が見えてきます。そしてそれらの特徴を細かく言語化していくことで、自分ならではの取柄が見えてきます。

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他者からフィードバックを得るのも有効です。例えば上司や先輩、同僚、親しい友人など、自分のことを良く知る第三者のほうが、自分の特徴を理解している場合があるので、意見を聞いてみると新たな発見があるでしょう。

これらを試してもピンとこないという場合は、診断テストなどを活用して、自身の特徴を客観的に洗い出すのも一つの方法です。

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取柄を見つけるだけでなく「取柄が活かせる場所」を選ぶことが重要

ただ、くり返しになりますが、「特徴」は自分が置かれた環境によって強みにも弱みにもなります。せっかく前述のような方法で「特徴=自分ならではの取柄」をつかめても、それが活かしにくい場所では、取柄を感じることはできません。

したがって、自分ならではの取柄を感じるためには、自分の特徴を洗い出すだけではなく、「その特徴を取柄として活かせる場」を見つけることが大切です。

特徴が活かせそうな業務に注力し成果を出すことで、自己効力感を上げる

例えば、「継続力があり、一つのことにじっくりコツコツ取り組める」という特徴は立派な取柄ですが、スピード感が求められるような職場では、その特徴を取柄として発揮しにくいでしょう。「じっくりコツコツ」が評価される仕事や職場を選べば、取柄を感じながらイキイキ働くことができ、かつ評価もされやすいはずです。

もし今の職場で「取柄がない」と感じているならば、特徴が活かせるような業務に積極的に手を上げたり、自分でそういう業務を創り出したり、特徴を活かせそうな働き方を組み立ててみたりするといいでしょう。

「じっくりコツコツ取り組む」という特徴を持つ人が、新規開拓がメインの営業職に就いていてなかなか取柄を感じにくいという場合は、どういうマーケットやどういうタイプの顧客であればOKをもらえる可能性が高いのか、じっくりリサーチしてコツコツ計画を練ることに注力すれば、受注確度が上げることができ、取柄を実感しやすいと思います。

特徴を評価してくれやすい環境に転職するのも一つの方法

転職を検討している場合は、洗い出した自分の特徴をキーワードに、応募先を探してみるといいでしょう。もしくは、スカウトサービスに登録するのも有効。自分の経歴などを登録しておけば、その内容を評価したさまざまな企業や転職エージェントから声がかかるため、自分の特徴を活かせる環境が見つけられる可能性が高いでしょう。転職する予定がなくても、評価される特徴がつかみやすいのでお勧めです。

皆が目指さない方向を選ぶ「逆張り」も、一つの方法です。

私が新卒入社したころのリクルートは、大きな借金を背負い「潰れるかも」と言われていた時代で、同期入社者はわずか50人程度。その直前までは何千人単位でした。32歳で採用マネージャーを任されましたが、私が特に優秀だったわけではなく、「新卒採用極小期」に入社したためほかに適した人材がいなかったのです。当時その発想があったわけではありませんが、結果的に「逆張り入社」したことで、ほぼ競争することなくステップアップすることができました。

このように、例えばまだ小さいスタートアップ企業や、なかなか人が集まらず困っている「不人気」とされる業界や企業など、一人ひとりの力がより強く求められている環境を逆張りの発想で選べば、「自分の働きが役に立っている」と自己効力感を得やすくなり、取柄も感じやすくなるでしょう。

特徴が活かせる場所を能動的に選択すれば、成長スピードも速まる

ここまで「自分が活かせる環境を選ぶことが重要」とお伝えしてきましたが、決して「分相応に生きよ」と言っているわけではありません。より自分が活きる場所を能動的に選択したほうが、キャリアにとって圧倒的にプラスに働くからです。

例えば、小さくても自分が活かせる会社で働き、20代でマネージャーに抜擢されるのと、あまり特徴が活かせない大企業で40過ぎて役職者になるのとでは、前者のほうが身に付く能力が高く成長スピードも速く、結果的に市場価値もより高まる傾向にあります。例え小さい集団であってもそこで力を発揮しトップになるほうが、大きな集団の中のビリになるよりも良いという意味を持つ、「鶏口となるも牛後となるなかれ」ということわざがありますが、まさにその通りで、立場が人を作ることは多いのです。

知名度の高い大企業であるか、周りから羨まれる人気企業であるか、などの発想はいったん捨て、自分の特徴が活かしやすく評価されやすい環境を選べば、成果を出してステップアップもしやすく、ますます取柄を感じやすくなる…という好循環が期待できます。

繰り返しになりますが、取柄がない人はいません。したがって「取柄がない」とくよくよ思い悩んでいるだけでは、何も変わりません。まずは「よく知りもしない人と自分とを比較しない」、そして「特徴を活かせる環境を自ら探す、開拓する」。この2つに臨むことで、必ず現状は変えられます。

 

人材研究所・曽和利光氏株式会社人材研究所・代表取締役社長 曽和利光氏

1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)など著書多数。新刊『部下を育てる上司が絶対に使わない残念な言葉30』(WAVE出版)、『シン報連相~一流企業で学んだ、地味だけど世界一簡単な「人を動かす力」』(クロスメディア・パブリッシング)も話題に。

EDIT&WRITING:伊藤理子

 

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