自分の弱みへの向き合い方とは?【克服すべき?強みを伸ばすべき?】

仕事上での自分の弱みが気になり、どうすれば対処すればいいのか悩んでいる人もいることでしょう。そもそも弱みは克服したほうがいいのか、それとも強みを伸ばしたほうがいいのかも迷いどころです。そこで、弱みの考え方や向き合い方、克服方法などについて、株式会社人材研究所代表で組織人事コンサルタントの曽和利光さんに伺いました。

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人に「弱み」や「強み」はなく、あるのは「特徴」

大前提として、人間には本来、「弱み」や「強み」はありません。あるのは「特徴」だけです。そして、仕事内容や職場環境などによって、その特徴が強みになったり弱みになったりします。

わかりやすい例で言えば、「明るくハキハキと話すのが苦手」という特徴は弱みのように思えますが、たとえば葬儀会社のスタッフであれば途端に強みに転じます。「落ち着きがある」「遺族の悲しみに寄り添える」などと評価されるでしょう。一般的に強みと捉えられそうな「明るく元気で快活」な人は、ここでは浮いてしまうはずです。

このように、人の特徴には裏表があり、弱みのように思えることも、仕事内容や場所が変われば強みに転じることがあります。

例えば、「理屈っぽい」という一見弱みのように感じられる特徴は、ところ変われば「論理的思考力がある」と強みとして評価される可能性があります。ほかにも、「飽きっぽい→好奇心旺盛」「無鉄砲→冒険心がある、チャレンジ精神がある」「強引→統率力がある」「頑固→信念がある」などが挙げられます。

今は自分の弱みだと感じていることでも、環境が変われば強みになり、評価される可能性は大いにあるのです。したがって基本的には、自分の弱みにとらわれ過ぎて自信を失ったり、克服せねばと焦ったりする必要性はありません。

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弱みを克服するよりも、強みを伸ばしたほうがいい理由

「とはいえ、今の環境では自分の特徴は弱みのままだし、当面仕事も職場環境も変わる予定はない」という人も多いことでしょう。環境を変えられない以上、弱みは克服しなければならないと考える人もいると思います。

しかし、それでも弱みよりも「強みを伸ばすこと」にリソースを割いたほうがいいと考えます。その理由をご説明しましょう。

弱みを埋めるだけでは「中途半端なゼネラリスト」になる可能性が高いから

一般論ではありますが、頑張って弱みの克服に取り組んでも、弱みを強みにするのは難しいでしょう。前述のように、弱みはあくまで「もともと持っている自分の特徴」ではありますが、今の環境で弱みと感じている以上、自分の力だけで強みに転じさせるのは難しいでしょう。したがって、弱みに固執し過ぎると、「弱みのマイナス分は埋められたけれど、強みもそこそこ」に留まってしまう可能性が大です。

このような「取り立てて弱みはないけれど、でも突出した強みもない」という中途半端なゼネラリストは、残念ながらAIに代替されてしまう可能性があります。AIの急速な進化に伴い、平凡なスキルの人は徐々に埋没し、1つの領域で突き抜けられる非凡な人材が「人にしかできない価値」を発揮できるという、「Winner take all(勝者総取り)」の流れにあります。

したがって、弱みを埋めるべく努力し平均点を目指すよりも、弱みはいったん切り捨てて、強みにリソースを集中したほうが、これからの時代に合っていると考えられます。

会社組織は「弱み」を「強み」で補完し合うようにできているから

会社組織は基本的に、誰かの弱みを誰かの強みで補完し、相乗効果を生み出せるようにできています。そして各部署では、マネージャーがメンバー一人ひとりの強みや弱みを把握したうえで、補完し合える者同士を同じグループやチームに割り振っています。

つまり、気になる弱みがあったとしても、組織に属していれば、誰かがその弱みを補完してくれるということ。自身は強みに集中すれば、組織としてのパフォーマンスは発揮できるはずです。1人で成果を上げる必要があるフリーランスなら別ですが、会社員であるならば、無理に弱みを克服する必要性はあまりないと言えます。

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それでも「どうしても弱みを克服したい」場合の対応法

仕事をするうえで、弱みが明らかにボトルネックになっている場合は、多少なりとも対策を講じたほうがいいでしょう。その場合、主に次の3つの対応方法が考えられます。

互いに補完し合える「バディ」を見つける

まず、自分の弱みを補完してくれる「バディ」と言える人を、同じ部署内で見つける方法が考えられます。例えば、「営業力には自信があるけれど事務作業が不得意」という場合は、事務作業に長けた人とバディを組めば、事務作業はその人にサポートしてもらい、自分は営業ノウハウを伝授するなど、補完し合い相乗効果を生み出せるでしょう。
前述のように、組織自体が「補完し合える環境」にはあるはずですが、自分の弱みをピンポイントで補完してくれる1人を探し、協力体制を築いたほうが確実ではあります。

もしバディが見つけられない場合は、上司に自分の強みと弱みを伝え、補完し合える人がいないか相談してみましょう。本来これはマネージャーの仕事の一つなので、相談すれば「ならばあいつと組んでみる?」などと具体的に話を進めてくれるでしょう。

ITツールをフル活用する

時間が守れないのであればアラームを設定したり、タスクの優先順位付けが苦手なのであれば、タスク管理ツールを活用したりするなど、自分の弱みを補完してくれるITツールを活用するのは有効です。

もちろんITツールだけでなく、メモや付箋などアナログなツールを活用するのも有効。「暗くて社交性が低い」という弱みであれば、「明るい色の洋服を着てみる」「明るい色のネクタイをしてみる」というのもアリだと思います。自分の弱みを補完できそうなツールやアイテムを探し、どんどん取り入れてみましょう。

メンターを見つけて自己効力感を高める

たとえ致命的な弱みはなくても、「弱みがある自分」そのものが受け入れられない人もいます。自分のマイナス面ばかりが気になり、ネガティブ思考に陥っている人も見受けられます。

このような場合は、今の自分を認めてくれて、自己効力感(自分の可能性を自分自身で認知できている状態)を高めてくれる人を見つけることが最優先です。

人は褒められたり、励まされたりすると、自己効力感が高まりネガティブな感情が軽減します。親しい先輩や同僚などにメンターになってもらい、仕事ぶりを褒めてもらったり、悩みを相談して励ましてもらったりすると、徐々に自信がつき弱みが気にならなくなるでしょう。

30代以降は、弱み克服にこだわりすぎるのは好手とは言えない

繰り返しになりますが、今の時代は仕事の成果を上げるうえでも、今後のキャリアを考えるうえでも、強みを伸ばすことに注力したほうが効果的です。

20代の若手であれば、まだ弱みを克服し伸ばせる力があるかもしれませんが、30代以降は致命的なもの以外の弱みは切り捨てたほうが無難です。人間は年齢を重ねるごとに肉体的に衰えますが、脳も例外ではありません。苦手なことを克服し、かつ伸ばすのは難易度が高く、キャリア的にも好手とは言えません。

組織に属している以上、基本的には「適材適所」が考えられていて、強みを活かして活躍していれば自然と補完関係が成されるはず。ビジネスパーソンとして長く活躍し続けるためにも、プラスの方向にリソースを集中させてほしいですね。

 

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人材研究所・曽和利光氏株式会社人材研究所・代表取締役社長 曽和利光氏

1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)など著書多数。新刊『部下を育てる上司が絶対に使わない残念な言葉30』(WAVE出版)、『シン報連相~一流企業で学んだ、地味だけど世界一簡単な「人を動かす力」』(クロスメディア・パブリッシング)も話題に。

EDIT&WRITING:伊藤理子
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