観光地やリゾート地でも仕事の効率を上げる「ワーケーション」活用のポイント

観光地やリゾート地などでテレワークを活用し、仕事と休暇を両立するワークスタイル「ワーケーション」。働き方改革や地域活性化、新型コロナウイルス感染症対策などの観点から政府も推奨する新しい働き方として注目されています。
一方で、休暇を楽しみながら仕事ができるのかという疑問や不安を感じる人も少なくないようです。そこで今回は、様々な企業に業務プロセスの改善を行い、自らもワーケーションを実践している沢渡あまねさんにワーケーションで仕事の効率を上げる方法について伺いました。

「ワーケーション」活用のイメージ画像

あまねキャリア工房代表 沢渡 あまねさん

沢渡あまねさん業務プロセス&オフィスコミュニケーション改善士。株式会社なないろのはな 浜松ワークスタイルLab所長、株式会社NOKIOO顧問ほか。人事経験ゼロの働き方改革パートナー。日産自動車、NTTデータなどで、広報・情報システム部門・ITサービスマネージャーを経験。現在は全国の企業や自治体で働き方改革、社内コミュニケーション活性、組織活性の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。趣味はダムめぐり、#ダム際ワーキング()。著書『ここはウォーターフォール市、アジャイル町()』『職場の問題地図()』『仕事ごっこ~その“あたりまえ”、いまどき必要ですか?』『職場の科学 日本マイクロソフト働き方改革推進チーム×業務改善士が読み解く「成果が上がる働き方」()』『はじめてのkintone~現場のための業務ハック入門()』など多数。

そもそもワーケーションとは?

ワーケーションとは、ワーク(労働)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語で、休暇を兼ねて観光地やリゾート地、自然にあふれた場所などでテレワーク(リモートワーク)を活用しながら働くことを指します。ワーケーションは大きく2つのタイプに分けることができます。

1つは、休暇中に仕事をするタイプ。旅行先で休暇を取りながらリモートで仕事をするというやり方。バケーションが中心のワークスタイルです(以下「休日型ワーケーション」と称します)。

もう1つは、平日の業務時間中にオフィスではなく、観光地やリゾート地で仕事や会議などを行うタイプ。この場合、ワークが中心にあります(以下「平日型ワーケーション」と称します)。

このどちらを選ぶかによって、どのような働き方や業務がワーケーションに適するか全くことなってきます。日本では、ワーケーションと聞くと、1つ目の休日型ワーケーションを想起することが多いためか、導入に慎重な企業や「休暇中に仕事したくない」などの個人のネガティブな意見も少なくないようです。

しかし今後は、平日型ワーケーションを追求することが、新しい働き方を切り拓くことにつながるのではないでしょうか。そこで、ここからは平日型ワーケーションタイプで仕事の効率を上げる方法について、述べたいと思います。

事例紹介:「ワーケーション」を導入する企業も増加中

私はフリーランスとして独立する前の2009年頃から、たまに休日型ワーケーションを実践していました。当時担当していたシステムのテスト項目を、休暇で秩父の山奥に滞在しながら設計したこともあります。

オフィスではなかなか集中できなかった仕事も、人が少なく静かな環境では大いに作業に没頭でき、いつも以上に仕事がはかどったことを覚えています。

私はダムが好きなので、平日の日中にダムのそばでパソコンを広げて屋外で作業することがあります。まさに平日型ワーケーションです。ちなみに、静岡県の太田川ダムでは、ダム際で働く「#ダム際ワーキング()」の参加企業を公式に募集し始めました。既に申し込みが入り始めているそうです。

大好きな場所で仕事したら、効率アップする?──働き方専門家がワーケーションを実践してみた

観光地やリゾート地で仕事する事例も増えています。三菱地所のワーケーション支援プラットフォーム「Work×action」では、和歌山県・南紀白浜にあるワーケーション施設を活用して1カ月以上中期滞在を実践したIT企業など、実際にワーケーションを導入された企業の体験談()が紹介されています。

ここではアイデアのブレストをしたり、集中的に作業に没頭したりする時間を設けながらも、ランチを地場のレストランで食べたり、就業後は砂浜に出て遊んだりと、メリハリをつけて、いつもと異なる環境を仕事に活かしています。ミーティングを屋外の開放的な空間で行うことでクリエイティビティが高まり、いつもと違うアイデアが出るという声が多いようです。

また、ある大手銀行は長野県・軽井沢の自社保養所をワーケーション施設として利用しています。この保養所内にオフィスを新設したところ、「生産性が向上した」「クリエイティブなアイデアが生まれた」といった声が相次いでいるのだとか。

最近では、和歌山県白浜町、広島県福山市など、行政が主導でワーケーションを行うビジネスパーソンや企業を積極的に受け入れているケースもあるので、興味がある方はチェックしてみてください。

ワーケーションで働くメリット・デメリット

メリット

平日型/休日型に関わらず、ワーケーションのメリットは気分転換できること。代わり映えしないいつもの仕事環境を離れ、海や山、川に囲まれた場所へ出かけるだけで、日頃のストレス解消となります。リフレッシュして、モチベーション高く仕事に取り組めるようになるはずです。

最近では、テレワークによる運動不足やメンタル不調も社会問題化してきています。とはいえ、「わざわざ」ジムに通ったり、メンタルヘルス対策を施すのもなかなか大変です。仕事する「ついでに」リフレッシュも兼ねる。ワーケーションではそれが可能になります。「健康経営」(従業員の身体や心の健康に配慮した経営の取り組み)の一環とも言えるでしょう。

業務上では、クリエイティブな発想が生まれ、生産性が向上する点が大きなメリットです。いままでにないアイデアが次々と出てきたり、オフィスでは言いにくい本音が言えたり、改善提案が生まれたりなど。新しいビジネスの企画やその具現化にも適しています。

また、普段なかなか集中して検討できない議題について時間をかけてディスカッションしたり、業務合宿などを行うことで、進みづらかった仕事を加速度的に進める効果も期待できます。

経済効果も見逃せません。現地で食事をしたり、地元の店で買い物したりと、地域の経済活性にもつながります。とりわけ平日型ワーケーションでは一般観光客の客足が鈍い平日に観光地にお金を落とすことになりますから、平日の経済効果を高める地域貢献にもなります。企業が導入する場合は、CSRを兼ねた業務遂行スタイルとも言えます。

デメリット

休日型ワーケーションの場合、労務管理や代休の有無、その期間の仕事の評価など、マネジメントが何かと面倒です。

とはいえ、勤怠については在宅勤務扱いにしたり、業績の評価についてはリモートワーク時の方法を適用するなど、コロナ禍で各社が取り組んできた対応法が柔軟に応用できるのではと考えます。

平日型ワーケーションの場合、通常勤務や出張扱いでの対応が可能です。ただし、環境を変えると生産性が落ちてしまう職種や人にとってはデメリットとなる可能性もあります。

周囲の雑音やノイズが気になって集中力が落ちてしまう、ルーティーンを変えてしまうと業務に集中できないという人は、普段のワークスペースでいつも通り仕事をする方がいいでしょう。ワーケーションはあくまでも選択肢の一つです。無理をしてまで行うことではありません。

ワーケーションを勤務先が許可してくれない場合は?

休日型ワーケーションのみをワーケーションと捉えている企業は、「休暇中に仕事をさせるなんて」と、労務管理を疑問視するケースが多いようです。

しかし、平日型ワーケーションであれば、ワーケーション=在宅勤務の延長あるいは出張扱いで遂行することも可能です。まずはここから取り組んでみてはいかがでしょうか。

向いていないと思われている 業務もワーケーションでできるかもしれません。挑戦してみることで、自社に向いているか、本当に生産性が上がるのかわかってくると思います。

まずはワーケーションを体験してみて、その効果が実感できたら、周囲に伝えたり、導入するように社内で働きかけてみることをお勧めします。

ワーケーションで生産性が上がる場所や業務とは

場所の選び方

自分の業務に応じて、最適な場所を主体的に選ぶことが重要です。これは2018年頃オランダから始まったABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)という考え方に基づいています。

オフィス内なら、オープンスペースやパーテーションで区切られた小さな個室、ボックス席など一般的な「自分の席」にとらわれずにワークスペースを考える。パソコンやテレビ会議ツールなどのモバイルツールを駆使し、カフェ、図書館、コワーキングスペースと、業務に応じた場所で働くことで生産性が上がります。

この「業務に応じたワークスペース」の概念を、観光地やリゾート地まで拡張したワークスタイルが、ワーケーションだと言えます。

業務の選び方

ワーケーションは、アイデアのブレストや、ビジョン・ミッションの共有など、クリエイティビティを必要とする業務が向いていると言われています。一方、作業に没頭したいエンジアやライターなどが行うプログラミング、記事の執筆作業など一定期間集中して取り組む業務もワーケーションのほうが捗る人もいます。

最も向いているのは「いつもとは違う業務」です。観光地、リゾート地という非日常の場を有効活用し、新しい製品・サービスの企画やチームビルディング、中長期的な目標の設定を行えば、パフォーマンスは大きく向上できるでしょう。

一方、指定の書類に印鑑を押す、特定の機器を使って承認作業をするなど、働く場所がオフィスに限定される業務はワーケーションには向いていません。逆を言えば、書類や印鑑や機器に依存する業務を減らせば、私たちはもっと自由になれるということでもあります。

もちろん、向き不向きは人によって、あるいは仕事のやり方によっても変わります。決めつけずに、まずは試してほしいと思います。

ワーケーションは、未来の働き方をどう変えていくか

ワーケーション自体は以前から存在していた考え方ですが、これまでは一般的な考え方ではありませんでした。コロナ禍で多くのビジネスパーソンが、オフィスに出社しなくても仕事ができることに気づき、休暇を兼ねてリラックスしながら仕事をするという選択肢もアリなのではないかと考える人が増えてきました。

以前と比べて、ワーケーションに取り組む人は格段に増えています。これから先、リモートワークがスタンダードなものになるに連れ、ワーケーションも当たり前のものとして徐々に定着していくでしょう。

ひとりでも多くの人が、自分に合った働き方を知り、実践してみることが、日本の働く環境を変えることに繋がっていくと思います。

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WRITING:石川香苗子 EDIT:馬場美由紀

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