ロールモデルの見つけ方とは?自分に合うロールモデルからキャリアを考えるコツをプロが解説

キャリアを考える上で「目標」や「お手本」とされる、ロールモデル。ロールモデルを見つけたいと思っているけれど、どんな人をロールモデルに設定すればいいのかわからない、どうやって探せばいいのかわからないと悩む人は少なくないようです。そこで、ロールモデルの見つけ方や、ロールモデルからの学び方などについて、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんに伺いました。

ロールモデルのイメージカット
Photo by Adobe Stock

ロールモデルとは?ロールモデルを設定するメリット

「ロールモデル」とは、考え方や行動の模範となる人物のこと。仕事やキャリアにおいては、ビジネススキルが高く、キャリア形成のお手本となる人物を指します。

厚生労働省では、「ロールモデルとは、社員が将来において目指したいと思う、模範となる存在であり、そのスキルや具体的な行動を学んだり模倣をしたりする対象となる人材のこと。またスキルだけでなく、仕事とライフイベントの両立や業務への取り組み姿勢など考え方やあり方についてよい刺激を受けることができる存在でもある」と定義しています(※)。

(※)出典…厚生労働省ホームページ「女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」

ロールモデルを設定すると、一般的には次のようなメリットがあると言われています。

キャリアプランが立てやすくなり、成長スピードが早まる

ロールモデルを設定することで、目指すべき道や、やるべきことが明確になり、成長スピードが早まるとされています。ロールモデルを参考にすれば、どのようなスキルをいつまでに身につければいいのかなどが明確になります。

例えば「ロールモデルの○○さんは営業の後企画部署を経験しているから、自分も異動が叶うよう努力しよう」とか、「△△さんは5年目までに○○の資格を取得していたから自分も勉強を始めよう」などキャリアプランが立てやすく、具体的なアクションが起こしやすくなります。その結果、成長スピードも上がるでしょう。

ロールモデルの成功談だけでなく、失敗談や反省点なども取り入れることで、キャリアにおける不要なリスクや失敗を避けられることもメリットと言えます。

仕事に対するモチベーションが高まる

ロールモデルの仕事に取り組む姿勢、意識の高さなどが刺激になり、モチベーションを維持しやすくなるのもメリットです。

ロールモデルがいることで、「自分もロールモデルを目指して努力すれば、あのようにイキイキと活躍できるようになるのだ」と思えるようになります。「充実した将来像」を具体的にイメージできるようになり、日々のモチベーションも高まるでしょう。

つまらないと思える仕事であっても、後々のキャリアに活かせるとわかれば、「目の前の雑務も、自身の将来に必ず役立つ」と意味づけることができ、視座を高く持ってあらゆる業務に臨めるようにもなります。

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ロールモデルを見つける前に準備しておきたいこと

ロールモデルには、自身の「キャリアのお手本」になり得る人を設定する必要があります。そのため、まずは自分が進みたい方向性、なりたい将来像をある程度明確にしておくことが大切です。

方向性だけでも決めておかないと、どんな人をロールモデルにすればいいかわからず、いつまで経っても見つけられない可能性があります。まずは仮置きでもいいので、おおよその方向性を決めておきましょう。

方向性や将来像がまだ決まっていない、漠然としているという場合は、現在抱えている仕事やキャリアに関する悩みや課題、気になりごとなどを整理するといいでしょう。例えばですが、結婚・出産後のキャリアが気になっているのであれば、「仕事で活躍しているワーキングマザー」がロールモデルの一つの方向性として考えられます。

もしくは、適職診断などを活用し、自分の強みや持ち味を活かせる方向性を明らかにするという方法もあります。抽出された強み、持ち味がロールモデルを見つける際の指針になるでしょう。

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ロールモデルの見つけ方:身近な人物から探す場合

ここではロールモデルを見つける具体的な方法をご紹介します。まずは、「身近な人から探す方法」をいくつか挙げてみましょう。

身近な上司や先輩から探す

同じ部署内に「この人すごい」「この人のようになりたい」と思える上司や先輩がいれば、その人をロールモデルにすることをお勧めします。身近な存在であればあるほど、日常的に働く姿を観察することができるので、仕事ぶりを真似したり、頻繁に学びや刺激を得られたりできます。自身の仕事やキャリアに直結する質問や相談も、気軽にしやすくなるでしょう。

手本にしたい社内の人を探す

同じ部署に候補者がいない場合は、社内の別部署から目標となる人物を探すという方法もあります。別部署であっても社内の人であれば、コミュニケーションは比較的取りやすく、仕事ぶりも観察しやすいと思います。

そのためにも、社内横断の研修や勉強会などに積極的に参加して、社内ネットワークを広げ、「キャリアの手本にしたい」と思える人に出会うチャンスを広げるといいでしょう。上司のネットワークを利用するのも有効。振り返り面談や1on1などの場で、上司に「自分はこういうキャリアを歩みたいのですが、社内に参考にできる方はいませんか?」などと聞いてみると、適した社員を紹介してくれるかもしれません。

意外に活用できるのが、自社の採用ページなどに載っている「社員インタビュー」。さまざまな部署で活躍している人材の仕事観、キャリア観などが紹介されているので、その中から自分の方向性にあった人を探してみましょう。

複数の人をロールモデルに設定するのも方法

希望にピッタリ合ったロールモデルが社内にいない、もしくは1人に絞り込めないという場合は、複数の人をロールモデルにするという手があります。

例えば、営業スキルはAさん、仕事に向き合う姿勢はBさん、アイディアや発想力ならCさん…などというように、複数の人の参考になる部分を組み合わせて、自身の方向性に合ったロールモデル像を作るといいでしょう。

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ロールモデルの見つけ方:身近にはいなさそうな場合

基本的には、身近にいて日常的にコミュニケーションが取りやすい人のほうがロールモデルとして適していますが、自身が目指す方向性に合致し、かつ「この人のようになりたい」と思える人はそう簡単には見つからないものです。社内では見つからなさそうだと思えた場合は、次のような方法を検討してみましょう。

友人や知人などに相談する

社外の人をロールモデルにする方法もあります。例えば学生時代の友人などに、「このような方向性で進みたい」「このような将来像を描いている」などと伝え相談すれば、「うちの会社の上司が当てはまりそうだ」などと紹介してくれるかもしれません。日常的なコミュニケーションは取れなくても、その人の仕事観、キャリア観、仕事に対する姿勢などは大いに参考にできるでしょう。

社外のイベントやセミナー、コミュニティなどに参加する

社外のさまざまな集まりに参加して、人との出会いを広げてみましょう。例えばビジネス関連の書籍出版イベント、ビジネスセミナー、勉強会などはもちろん、地域の活動や趣味などの集まりの中でも、意外なロールモデル候補と出会えるかもしれません。

著名人や歴史上の人物を参考にする

著名人や歴史上の人物をロールモデルにするという方法もあります。実際、ビジネス界の著名人や、歴史を変えた偉人、戦国時代を生き抜いた武将などをロールモデルとする人は少なくありません。

ただ、時代背景や働く環境などが大きく異なるため、日々の業務や働き方の参考にするのではなく「ありたい姿」として設定することをお勧めします。そのうえで、「目標に向かって突き進む姿勢」や「組織を成功に導くための考え方」、「困難への立ち向かい方」など、スタンス面や考え方などを取り入れるといいでしょう。

ロールモデルを設定したら「観察して」「真似てみる」

同じ部署や社内など、身近な人をロールモデルに設定できた場合は、まずはロールモデルの仕事ぶりを観察しましょう。

仕事の進め方や効率化の仕方、目標設定の方法などはもちろん、仕事に対する姿勢やモチベーションの源泉なども探ってみましょう。その中で、日々の業務に取り入れられそうな部分を抽出して、真似てみることをお勧めします。そのうえで、わからないことを質問したり、アドバイスもらったりすることで、より精度の高い学びが得られ、知識やスキルを自身に装着することができます。

可能であれば、これまでのキャリアの歩みも聞いてみるといいでしょう。目標とする人がどんな仕事をしてきたのか、何を学び、どんな失敗や試行錯誤を繰り返して今に至ったのか…などは、ビジネスパーソンとしての大きな知見になります。自分のキャリアをより深く考えるきっかけにもなるでしょう。

ただ、「この人のようになりたい!」と思えるほど魅力的なロールモデルを見つけるのは、簡単ではありません。幸運にもそう思える人に出会えたとしても、おそらくそういう人は非常に忙しく、日常的にアドバイスをもらったりヒアリングをさせてもらったりするのは難しいかもしれません。社内の別部署や社外の人である場合はなおさら、「存在すら知らなかった若手」に無償で指導してくれる可能性は低いと思われます。

その場合、前述のようにロールモデルを特定の1人に決めず、複数の人を設定するのは有効です。例えば、キャリアの歩みはロールモデルを参考にして、仕事のスキルは直属の上司を真似、思考法は著名人の〇〇さんの書籍で学ぶ、などとすれば、さまざまなロールモデルの「いいとこどり」が可能です。

また、ロールモデルから直接アドバイスを得るのではなく、ロールモデルの考えや働きぶり、発言などから自分が活かせそうな要素や考え方を抽出して、日常の仕事や生活に取り込むのもいいでしょう。自分の置かれた状況などに合わせて、ロールモデルの活かし方も柔軟に考えることが大切です。

 

粟野友樹さん組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント
粟野友樹さん

大学・大学院にて人材教育ファシリテーションの経験を積み、大学院を修了後、GMOインターネットグループ、外資系金融機関、パーソルキャリアを経て2018年より現職。これまでに約500人の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

EDIT&WRITING:伊藤理子
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