マインドフルネスとは?ビジネスパーソンに必要な理由や実践方法を紹介【専門家監修】

心と脳の筋トレと言われる「マインドフルネス」。コロナ禍で気ぜわしい日々が続く中、心身を落ち着かせる効果があるマインドフルネスに興味を持つビジネスパーソンが増えているようです。マインドフルネスとは何か、具体的にはどんなことをすればいいのか、一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事の荻野淳也さんに詳しく伺いました。

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一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート(MiLI)代表理事 荻野淳也さん一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート(MiLI)代表理事
荻野淳也さん

慶應義塾大学卒業後、外資系コンサルティング会社勤務や複数のベンチャー企業での経営企画室長、取締役などを歴任。20年以上の企業経営、組織マネジメントの経験を踏まえ、リーダーシップ開発、組織開発の分野で、コンサルティング、トレーニング、エグゼクティブコーチングに従事。2013年MiLIを共同設立。多摩大学大学院MBA客員教授。
マインドフルネス企業導入事例を多数紹介した『マインドフルネスが最高の人材とチームをつくる』(かんき出版)、3万部を超えた『心のざわざわ・イライラを消すがんばりすぎない休み方』(文響社)を始め、著書、監修本など多数。

マインドフルネスとは「心を今に向ける」こと

マインドフルネスとは、「今、ここに心を向け、集中している状態」のことを指します。
よくマインドフルネス=瞑想、リラクゼーションと捉えている人がいますが、瞑想やリラクゼーションはあくまで、今ここに心を向けるための「手段」の一つです。

マインドフルネスはここ数年、特に注目度が高まっています。その要因の一つが、新型コロナウイルスに代表される世界的なパンデミック。これによりわれわれを取り巻く環境は一変し、VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性の頭文字を取った造語)の時代が鮮明化。先の見えない不安やストレスによる、気ぜわしく心が落ち着かない状態から脱するために、マインドフルネスに注目する人が増えています。

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マインドフルネスの効果とは?ビジネスパーソンにこそ必要である理由

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ビジネスにおけるマインドフルネスの主な効果は、次の2つです。

自己認識力を高めることができる

マインドフルネスは、自己認識力を高めるメソッドと言われています。「自己認識力」とは、感情や身体的な感覚といった自分の内面の状態や、想いや考え、リソースなどを認識する力のこと。“己を知る”ことで、人間関係構築力やコミュニケーション力が向上し、判断力が高まるとされています。自分を深く知らずして、他者を十分に理解することは不可能であるため、特にビジネスリーダーにとっては必須のスキルと言われています。

そして、マインドフルネスの状態にあると、自己認識を司る脳の領域が活性化することがわかっています。マインドフルネスに取り組むことで、自己認識というOS(オペレーティングシステム=基本ソフトウェア)が鍛えられれば、営業スキルやマーケティングスキル、交渉力、対人折衝力などといった「アプリケーションソフト」の機動力も上がり、ビジネスパーソンとしての武器を磨くことができるのです。

注意力が高まり集中できる時間が増える

ある研究によると、ビジネスパーソンが仕事に集中できる時間は限られていて、勤務時間の約半分は注意散漫になっているという結果が出ています。

これをマインドワンダリング(心の迷走)と言いますが、人は強く意識しないと、目の前のことから気持ちが逸れ、過去の気になりごとを思い出してはウジウジしたり、将来に対しての不安が湧いてきてモヤモヤしたりするもの。そしてそのままどんどん気持ちが逸れて行き、気づけば目の前の仕事から遠く離れてしまいます。調べものに集中しなければならないのに、ふと我に帰ったら仕事とは全然関係ないネットサーフィンをしていた…なんて、皆さんも身に覚えがあるのではないでしょうか。

マインドフルネスにより注意力が上がれば、集中できる時間が増え、パフォーマンス向上、生産性の向上につながります。自身の感情もマネジメントできるようになるので、仕事に関連するネガティブな感情やモチベーションが上がらない状態をうまくコントロールすることも可能です。

関連記事:集中力が高まり心が安定する!ビジネスパーソンのための5つのマインドフルネス活用法

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まずは「1分間マインドフルネス」を試してみよう

マインドフルネスの効能はわかったけれど、やり方がわからない人がほとんどだと思います。
マインドフルネスは10分ほど瞑想するのがポピュラーなやり方ですが、まずは気軽に取り組める1分間マインドフルネスから挑戦してみてください。

1分間マインドフルネスの方法

1.できるだけ静かな場所で、心を落ち着けて鼻呼吸をする

鼻からゆっくり息を吸い、鼻から出します。鼻腔に空気が当たる感覚、肺に空気が入り、出ていく感覚を感じましょう。

2.鼻呼吸を繰り返しながら、呼吸そのものに集中する

鼻から空気が入り、出て行くことを感じられるレベルまで落ち着くと、呼吸そのものに集中でき、「今ここ」に心を向けることができます。

わずか1分であっても、毎日繰り返し習慣化することができれば、集中力や自己認識力につながる脳の領域を活性化させることができます。
効果の感じ方は人によってさまざまで、1回で効果を感じる人もいれば1週間で感じる人もいますが、8週間続けることで、効果や変化を感じる人が多いという科学的なエビデンスがあります。

「8週間も」と思うかもしれませんが、慣れてくればわずかなすき間時間に取り組むことも可能。通勤電車の中でもできますし、仕事を始める前や休憩時間などにも取り入れられるようになります。
マインドフルネスは1日に何回やってもOK。もちろん1分を5分、10分に増やせればそれに越したことはありませんが、まずは1分間を習慣にすることを意識してみて下さい。

そして「忙しすぎて時間がない」という人にこそ、この1分間マインドフルネスをお勧めしたいです。忙しい人は切れ間なくミーティングが入っていたりしますが、前のミーティングで頭の中が散らかったまま、別のミーティングに入るのは生産性がいい行為とは言えません。ミーティングとミーティングの間に1分だけマインドフルネスを挟むことで、集中力を取り戻し、頭をスッキリ切り替えることができます。

慣れてきたら、5~10分に増やしてみよう

5分以上時間が取れる場合は、次の4つのサイクルを回すことを意識してみてください。より早期に効果を感じることができるようになるでしょう。

1.鼻呼吸をしながら、自分の呼吸に注意を向ける

イスに座って「今ここの呼吸」に意識を集中しましょう。

2.雑念がわいて注意がそれる

呼吸を繰り返すうちに、誰しも自然に注意がそれて雑念が湧く状態になります。

3.注意がそれたことに気づく

注意がそれて別の思考や感情が芽生えても、それを頭の中で追わないこと。自分が注意散漫な状態に陥っていることを自覚しましょう。

4.雑念を手放す

注意がそれたことに気づくことができれば、呼吸に注意を戻すことができます。そして再び1~4を繰り返すことで、「今ここに心を向ける」力を鍛えることができるようになります。

マインドフルネスを行う際のポイント

マインドフルネスを行う際に、大切にしてほしい姿勢が2つあります。「評価・判断を手放す」、そして「あるがままを受け止める」です。

人は無意識のうちに、自己批判や他者批判をしています。何かにつけて自分はできている・できていない、あの人はできている・できていないと評価・判断したくなりますが、それがネガティブな感情につながり、心を不安定にする「雑念」になります。評価・判断をしてしまう自分をまずは理解したうえで、それをいったん手放しましょう。

そして、誰もが心の中に何らかのアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を持っています。それに捉われすぎず、自分の感情が今どういう状態にあるのか見つけ、あるがままを受け止めることで心が安定し、「今ここ」に目を向けることにつながります。

日常生活すべてがマインドフルネスな状態であるのが理想

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マインドフルネスは特別な状態を指すわけではありません。本来であれば、日常生活すべてがマインドフルネスであることが大切です。

「今ここ」に集中しているときの頭の中は、クリアかつリラックスした状態にあります。仕事中だけでなくプライベートなシーンでも、マインドフルネスな状態が保てれば、健康的な心を保つことができ、今考えなくてもいいことに悩んだり不安を覚えたりする機会が減り、毎日をイキイキと過ごせるようになります。

そのためにもまずは、毎日1分間マインドフルネスを継続してみてほしいですね。積み重ねるごとに頭と心がクリアになることを感じられると思います。

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EDIT&WRITING:伊藤理子
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