優秀な人は、世の中にある“3つの台本”の存在を知っている!ーー『マネーの拳』に学ぶビジネス格言

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『マネーの拳』をご紹介します。

『マネーの拳』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

ここでは、私がオススメする名作マンガの一コマを取り上げます。これによって名作の理解を深め、明日のビジネスに生かしていただくことが目的です。マンガを読むことによって気分転換をはかりながら、同時にビジネスセンスも磨くことができる。名作マンガは、まさに一石二鳥のスグレモノなのです。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「大まかな台本ができるのを見てから、自分の役どころを考えればいいんです」

(『マネーの拳』第8巻 Round.68より)

地元・秋田の高校を中退した花岡拳(はなおかけん)は、友だちの木村ノブオとともに上京。花岡は、偶然始めたボクシングによって才能が開花し、世界チャンピオンにまで上り詰めます。

その後、ボクシングを引退した花岡は、タレント活動をしながら居酒屋を開業しますが、経営は思うようにいきません。そんな時に知り合ったのが、通信教育業界の成功者・塚原為之介会長でした。花岡は会長の教えを受けながら、ビジネスの世界でも頂点を目指すべく、新しいビジネスをスタートさせますが…。

誰が敵で、誰が味方なのか?

Tシャツ専門店のビジネスで成功し、株式上場も果たした花岡。これを知ったライバルの井川は、好機到来と見なします。この機にM&A(合併・買収)を仕掛けて花岡を追い落とそう、というのです。井川が目をつけたのは、花岡の会社の幹部たちでした。株を持っている彼らを味方に引き入れて、会社を乗っ取る計画です。

幹部の大林は、次期社長の椅子と引き換えに、井川への協力を約束します。ところが、その動きを察知した花岡によって、買収防衛対策室の責任者に任命されてしまいます。二重スパイにさせられた大林は、苦しい立場に立たされます。圧力に耐えかねた大林が向かった先とは、証券アドバイザー・牧の事務所でした。

花岡側の人間と思われる牧に対して、率直に「社長は自分をどうするつもりなのか?」と訊ねる大林。しかし、牧からの答えは「焦る必要はない」、というものでした。牧はこれまで、数多くの買収合戦の修羅場をくぐり抜けてきたアドバイザーです。「今後の展開によっては、社長が買収に応じないとも限らない」と、ひとまず大林に静観することを勧めるのでした。

仕事を俯瞰するには“プロデューサー目線”を持つこと

「先が読めない」ときというのは、「どうなるのかわからない」状態、ということですから、何か大きな変化が迫っていることが予想されます。そういうときでも浮き足立つことなく、落ち着いていられる人の特徴として、「ものごとを俯瞰して考えられる」という点が挙げられます。

本日の一言では、劇にたとえられていますので、ここでも劇になぞらえてみますと、まずは「この“物語の役者”は誰なのか?」ということから考えます。この場合、「物語」とは事業やプロジェクトのことを、「役者」とは担当する社員やチームメンバーなどのことを指します。ここで、自分の役回りや立ち位置などを確認するとともに、メンバーそれぞれの能力やポジショニングなどもチェックします。

続いて、「どういう“観客”に対して、どのような演技をしていくのか?」について考えます。「観客」とは、ユーザーや顧客のことです。「自分たちの顧客とは、どのような人なのか?(人物像)」「自分たちが顧客から期待されているものとは何なのか?」といったことを検討します。総じて、ものごとを俯瞰するためには、“プロデューサー目線”から仕事を考えることがコツです。

©三田紀房/コルク

ビジネスに関する“3つの台本”

例えば、自分がプロデューサーになったつもりで仕事を俯瞰し、「顧客からは、こういうサービスを求められている」「今後、取引はこのように進む」という予測の下に、自分なりの“台本”に基づいて行動したとします。すると、自分の頭の中で思い描いていたことと、現実との間には、必ずズレが生じます。顧客がこちらの提示した条件に難色を示したとか、納期が折り合わない、クレームが発生した、などなど。

このズレが生じた際に、自分の描いた筋書きに固執してしまうと、それが行動を阻害する要因となります。人は意外に「間違えた」と思っても、すぐには軌道修正できません。それまでかけた費用や労力を惜しんで、やめる勇気がなかなか持てないのです。これを、回収ができなくなった投資費用の意味でサンクコストと言います。優秀なビジネスパーソンであるためには、「ズレたらズレたで、現実をもとに台本を書き直す」くらいの柔軟な姿勢を持つことが大切です。

実際、会社に所属している方は、少なくとも3つの台本を考慮すべきでしょう。その3つとは、「自分自身が思い描いている台本」、「会社が思い描いている台本」、そして「世の中が描く台本」の3種類です。会社が描く台本とは、会社が持っているビジョンや、目指す方向性に沿って描かれるシナリオのことです。世の中が描く台本とは、流行とか時勢のことを指します。

これからのビジネスパーソンに必要なスキルとは

こうした複数の筋書きを考慮に入れることは、ビジネスパーソンとしてのキャリア形成を考える際も、全く一緒です。そもそも、自分と会社の描くキャリアビジョンが一致しなければ、会社から活躍の場を与えられません。また時代性から大きく外れてしまうことは、事業の衰退を意味するでしょう。

これをお読みのビジネスパーソンの方には、ぜひこの3つの台本を常にチェックし、早めに軌道修正することを、ぜひ習慣化していただきたいと思います。

俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン()』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?()』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」()』を上梓。著作累計は38万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

俣野成敏 公式サイト(

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