20代~30代で資産運用を始める人が増加。初級者にもおすすめの「投資信託」「ETF」とは

超高齢化、年金の受給年齢引き上げ、終身雇用の崩壊……将来が不安になる報道がされるたび、「預貯金だけじゃ心配。将来のために資産運用を始めたほうがいい?」と考える若手ビジネスパーソンが増えています。

とはいえ、「投資」に対して、「元本保証じゃないから損をするリスクもあるよね」「手数料がけっこうかかるんじゃないの?」「種類が多すぎて、知識がないと簡単には手を出せない…」などと迷っているのではないでしょうか。

そんな皆さんが、資産運用の第一歩を踏み出す方法としておすすめなのが「投資信託」。多くの資金や時間を投じることなく、資産運用が始められるとあって、多くの方に選ばれています。投資信託の一種である「ETF」も、注目しておきたい商品です。

そこで今回は、All About「投資信託」ガイドである深野康彦氏に、最初の一歩としての「おすすめの投資方法」をアドバイスいただきます。

ETFのイメージ
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深野康彦さん顔写真深野康彦氏

有限会社ファイナンシャルリサーチ代表
ファイナンシャルプランナー
AFP、ファイナンシャルプランニング技能士1級
1962年生まれ。大学卒業後、クレジット会社を経て独立系FP会社に入社。FP業界歴33年(2021年4月現在)を誇る。金融資産運用設計を研鑽して1996年に独立。現在の有限会社ファイナンシャルリサーチは2006年に設立(起業2社目)。さまざまなメディアやセミナーを通じて、資産運用のほか、住宅ローンや生命保険、あるいは税金や年金などのお金周り全般についての相談業務や啓蒙を幅広く行っている。日本経済新聞夕刊「投信番付」のほか連載多数。新聞・マネー雑誌、経済誌などへの執筆・取材協力および金融商品などのデータ提供を行いながら、テレビ、ラジオにも多数出演している。また、オールアバウトではマネープランクリニックを担当しているほか、さまざまな分野のガイドを行っている。
主な著書:『1万円から始めるETF投資』(日本経済新聞出版社)『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版)『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない』(ダイヤモンド社)など多数

若年層の「投資」が拡大しているのはなぜ?

2020年以降、若年層を中心に「投資」をする人が急増しています。

2019年、金融庁の試算等をきっかけに、老後資金について、幅広い世代で関心が高まりました。そうした中で起きたのがコロナ禍。

テレワークや外出自粛など、自宅で過ごす時間が増え、多くの人が自身のライフプランを見つめ直したようです。

将来に備えようとする意識の高まりが、「投資行動」に反映されています。

日本総研が2021年9月に発表したレポートによると、2020 年1~3 月期以降、オンライン証券口座の新規開設数が大幅に増加。2021年初旬にかけて一段と加速しました。

年齢別の株主分布では、40 歳代以上がほぼ横ばいである一方、30 歳代以下の株主数は大幅に増加しているようです。

若いうちから資産運用をスタートする――それが当たり前となる時代がやってきています。

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そもそも…資産運用をしたほうがいい理由

考え込むスーツ姿の社会人5人男女混合
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なぜ「投資」による資産運用が選ばれているのでしょうか。
主なポイントを3つ挙げてみましょう。

預貯金だけでは資産が増えない

日本では21世紀に入ってから超低金利が続いており、預貯金だけで資産を増やすことが難しくなっています。

現在、定期預金の金利は年0.002%。この金利だけで年間50万円(税引前)を稼ぎ出そうとすると、預貯金であれば250億円が必要となる計算です。

一方、投資の場合、50万円の運用益を得ようとするなら1000万円程度の投資によって達成できる可能性があります(世界の株式に連動する商品の例)。

もちろん、投資先(銘柄)や年によって上下の変動はありますが、世界経済の成長率の平均は概ね3%前後で推移しており、多くの専門家の予測では今後も同様の成長が続くとされています。

世界の株式に投資した場合、この経済成長率に株式に投資した場合のリスクプレミアム(有価証券の期待収益率と無リスク金利差)1~2%が加わります。

結果として世界の株式(株価指数)に投資した場合の平均収益率は4~5%程度が期待できる考えられるわけです。

資産を増やすためには、預貯金より投資のほうがはるかに効率的なのは明らかですね。

給与が増えなくても、企業の利益の還元を受けられる

日本では働く人の給与額がなかなか上がらない一方、企業側では近年、過去最高益を記録するなど、利益を上げているケースが多数見られます。

その利益はどこへ流れているのでしょうか。従業員にも一部還元されてはいますが、多くは配当金という形で「株主」の懐に入ります。

給与額に不満を言っても改善は難しいですが、「株主」の立場だと、企業が得ている利益の還元を受けられるのです。

そして、日本経済が悪化して国内企業の収益力が低下したとしても、「投資」という手段を用いれば、世界の好調な国・企業の利益を取り込むことが可能になります。

税金面で優遇される

投資をする人は、税制における優遇制度があります。

老後の資産運用を支援する「積み立て投資」を例にとると、『iDeCo(イデコ)』『つみたてNISA(ニーサ)』などは、運用益がすべて非課税となるのです。

給与は累進税制。つまり、稼げば稼ぐほど税率が上がるしくみになっていて、最高税率はなんと55%(復興特別所得税は考慮せず)。所得税と住民税合わせ、55%を税金として支払うことになります。仮に給与所得が1億円とすると、控除があったとしても約5割・5000万円ほどが税金にとられます。

一方、株や投資信託などの税率は20%(復興特別所得税は考慮せず)なので1億円の運用益を得れば、税金は2000万円。手取りで残る額は、前者が5000万円、後者が8000万と、大きな差があります。

このように、合法的に節税できるという点でも、資産の拡大につながるわけです。

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はじめて資産運用を始めるなら、どんな方法がいい?

AとBを天秤にかけている若い女性
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株式での資産運用方法には、「個別銘柄の株式に投資」と「投資信託」があります。
まずはその違いを理解しておきましょう。

ちょっと想像してみてください。皆さんが1年間、同じレストランで食事をするとします。

A店では、初日にアラカルトメニューから1品を選び、毎日その料理を食べ続けます。同じ料理にもかかわらず、食材の質に違いがあることから、その料理が美味しい日もあれば不味い日もあります。

一方、B店では初日にお皿を受け取ると、日替わりのお勧め料理をプロのシェフが盛り付けてくれます。その日ごと、季節ごとに旬の食材を活かした料理が、美味しい状態で給仕されます。

これを資産運用に置き換えると、A店を利用するのが「個別銘柄への株式投資」、B店を利用するのが「投資信託」に近いと言えます。

もっとも個別株式投資の場合、料理が毎日自動的に出てくるわけではありません。自ら店を訪れメニューを吟味するが如く、自身で日々いろいろなことを学んだり調べたりする必要があります。株価の変動を追い、決算発表があればその中身を調査し、新商品のリリースや不祥事などの情報も精査しなければなりません。

こうした時間と手間のかかる作業を、専門家に任せられるのが「投資信託」です。

投資信託とは、複数の投資家から集めた資金をまとめて大きな資金とし、それを運用の専門家(ファンドマネージャー)が株式や債券などに投資。その運用で得た利益を投資家たちに還元するものです。

つまり、投資家は購入する投資信託を決めて資金を預けるだけ。その後、株式投資を行うにあたって必要な情報収集や判断は、運用のプロが代行してくれます。

20代~30代は、ビジネスパーソンとしてのスキルを磨き、キャリアの基盤を構築する時期。限られた時間を株式投資の調査に費やすのではなく、自身のスキルアップに時間を使えば、将来より大きな収入アップにつながる可能性があります。

運用をプロに任せるとなれば、当然ながらコスト(信託報酬等)もかかります。しかし多少のコストがかかっても、手間と時間がかかる調査や研究は専門家に任せて、自身は本業に集中するほうが合理的と言えるでしょう。

こうした理由から、若いうちは個別銘柄投資よりも投信信託を活用するほうが得策。そして、その投信信託を「積立投資」するのがおすすめです。

資産運用の原則と投資信託の特性

資産運用の原則は、以下の通りです。

  • 長期間かけて積み立てる
  • 時間分散を図る(価格が高いときも安いときも定期的に定額を買い続けることで平均取得単価を引き下げられる)
  • さまざまな銘柄に分散投資する

「100円から」という少額で始められ、これらを叶えられるのが積立型の投資信託のメリットと言えます。

それに対して、個別銘柄への株式投資では、原則積み立てができません。また、投資金額も数万円~数十万を要します。資金が少なければ、多様な銘柄への分散投資も不可能です。

こうした特性を踏まえ、20代~30代の皆さんが資産運用を始めるなら、「投資信託」からスタートすることをおすすめします。

投資に慣れてきたら注目したい「ETF」

資産運用初心者には、投資信託がおすすめですが、それを実践して「投資」の感触がつかめてきたら、「ETF(上場投資信託)」にチャレンジしてみる手もあります。

ETFは「Exchange Traded Fund」の頭文字をとった略称で、投資信託の一種ですが、証券取引所を介して取引する商品です。

投資信託といえば通常は上場していないものを指し、これがETFとの違いです。ETFは証券取引所に上場されており、株式と同じように取引ができます。
※投資信託、ETF、株式それぞれの特性については、下記の<ETF・投資信託・株式の違い>の図をご参照ください

投資信託と同様、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)といった国内株式の株価指数のほか、ダウ・ジョーンズ工業株30種平均(通称「NYダウ」)などの外国株式の株価指数、国内外の債券指数、東証REIT(不動産投資信託)指数、金やプラチナなどの商品価格など、さまざまな指数や価格に連動したETFがあります。

そのため、値動きが異なるETFを組み合わせ、国際分散投資を行うことも可能です。

一般的な投資信託や株式投資との違いは、次の図のとおりです。

<ETF・投資信託・株式の違い>

投資信託 ETF 株式
購入金融機関 証券会社や銀行など(金融機関によって取扱商品は異なる) 証券会社 証券会社
売買価格 1日に一つの基準価額 その時々の時価 その時々の時価
注文方法 基準価額がわからない状況で購入・換金の申込みを出す(ブラインド方式) 成り行き・指値注文 成り行き・指値注文
売買手数料 投資信託ごと、取扱い金融機関ごとに異なる。 証券会社ごとに売買手数料は異なる 証券会社ごとに売買手数料は異なる
保有時の手数料 ETFより運用管理費用(信託報酬)は高め 投資信託より運用管理費用(信託報酬)は低め 保有時に手数料はかからない

ETFのメリット・デメリット

ETFのメリットは次のとおりです。

  • 保有している間は運用管理費用(信託報酬)がかかるが、同じ指数に連動する投資信託よりETFのほうが投資コストは低いものが多い
  • 証券取引所に上場されているため、売買価格の透明性が高い
  • 指数が日々報道されるため、値動きがわかりやすい
  • 株式と比べて破綻リスクが低い
  • PER(株価収益率)など専門的な指標を分析する必要がない
  • 個別株式と比較して少額の資金で売買できる

ただし、「売買できるのが証券会社に限られる」「積み立て投資がしにくい」「売買できる株価指数の銘柄が限られ、銘柄によっては流動性リスクがある」といったデメリットもありますので、心得ておいてください。

先ほども触れたとおり、投資信託への投資は100円から開始することもできます。とはいえ、100円ではさすがに投資効果を実感できないので、5000円程度以上で試してみてはいかがでしょうか。

早く始めて経験値を積むことで、投資効果を拡大できる

for futureとかかれた瓶にコインを入れる
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これからの時代、資産運用はどんな人にとっても大切な「たしなみ」であると私は考えます。

国の現状、世界的情勢も踏まえて将来を考えると、得意・苦手に関わらず、やらざるを得ない状況と言えるでしょう。

もちろん、転職や出産などといった大きなライフイベントを控え、キャッシュフローが不安定な時期に始めるのは適切ではありません。借金までして始めるのもNG。手元に数カ月分の生活費を残しておくことは必須です。

そした状況をクリアできれば、少額で構わないのでなるべく早くスタートすることをおすすめします。

仕事はどこかのタイミングで終わりを迎えますが、お金との付き合いは一生涯切れない。「生涯現役」なのです。

いつか始めなければならないことなら、なるべく早めに始めたほうが得策です。20代~30代のうちであれば、万が一失敗したとしてもリカバリーする時間が十分ありますし、これから収入を上げていくことも可能だからです。

「時間の長さ」も、お金を増やすためには重要な要素。だから「長期投資」です。

資産運用とは、経験値が活きてくるもの。「習うより慣れろ」のスタンスで臨むことをおすすめします。若いうちにリテラシーを高めておけば 年齢を重ねて収入が増えた頃に適切な投資ができるようになり、投資効果を高められるはずです。

そして、冬のボーナスが入って資金に余裕ができた今の時期であれば、年末年始のお休みを利用して証券会社に口座を開き、ETFにトライしてみてもいいかもしれません。

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WRITING:青木典子
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