VUCAの時代とは何か?──職場で起きる変化、求められる人材・スキルを徹底解説

予測が難しく変化が著しい。そんな新しい時代を表す言葉がVUCA(ブーカ)。見えてきているのは、これからは過去の常識ややり方が通用しなくなり、決められた仕事をこなすだけでは評価はされないということ。この変化の多い時代においては、どんなスキルが必要になるのか。VUCAの時代を生き抜く方法と求められる人材について、業務プロセスを改善するプロフェッショナルである、沢渡あまねさんに語っていただきました。

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VUCAとは?不確実な時代に起きている変化とは

ここ数年、我々が経験している変化を紐解くだけでも、VUCAは説明しやすいと思います。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語。あらゆるものを取り巻く環境が目まぐるしく変化し、将来の予測ができない状況を指します。まずは、VUCAの時代にどのような変化が起きているのか、紐解いていきましょう。

Volatility(変動性)

例えば、終身雇用制の崩壊などで、新卒で入った会社に定年まで勤め上げるといった生き方は、ますます限定的になっています。これまでと変わらない環境や条件で働くことが危ういことには、多くの人が気づき始めているのではないでしょうか。

Uncertainly(不確実性)

新型コロナウイルスの感染拡大が象徴的ですが、2年前には予想できなかったことが起きています。かつてない規模の水害、洪水、地震などの自然災害が増えていることも、不確実性を増しています。物事を自分なりに意味付けし、主体的に行動するスキルや経験が今まで以上に求められます。

Complexity(複雑性)

ITの加速度的進化によって、地域や価値観の異なる人たちが繋がる機会が増え、今までになかったビジネスモデルが次々と生まれています。また、リモートワークやワーケーションなど、働き方も多様化してきました。ビジネスパーソンはこのような複雑な環境・要素に向き合いながら、どうスキルを高めるか、経験値を増やしていくかが問われます。

Ambiguity(曖昧性)

ITが人の価値観を大きく変化させ、複雑性を伴う変化も拡大しています。待っていても正解は降ってきません。前例がなければ、自分たちで前例を作っていくしかありません。起こっている変化、事象、問題、課題について、自分なりにどう向き合い、どう解を出していくかが問われています。

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VUCAの時代に求められる人材とは?

高度成長期の日本では、決められた物事をきちんとこなすことが正解とされていました。製造業であれば、「この製品をこう作りましょう」という業務プロセスが構築され、効率的にこなすことが合理的だったのです。しかし、言われたことだけやっていれば結果を出せる時代は、もう終わりました。むしろ、そこにはリスクが潜んでいます。

VUCAの時代は曖昧な物事や未知の事象に意味付けをし、自身で答えを出す。そんな動き方やマインドセットするスキルが求められています。では、具体的にどのような人材が求められるのか。代表的なスキル例を6つ挙げてみたいと思います。

1.デジタルを使いこなせる力

VUCAの時代に求められるのは、ITを活用しながら社内外とつながり、課題に向き合い、解決することのできる人材です。例えばコロナ禍では、オンライン会議やペーパーレス、アナログ業務をデジタル化するなど、人との接触を減らしながら成果を出すことが求められています。そのため、ITを活用したコミュニケーションやトライ&エラーを行えるデジタルリテラシーが必須になります。

2.組織の景色を変えられる力

固定化された組織や体制では、変革をもたらす新たな発想は生まれにくいのが、VUCAの時代。イノベーションやトランスフォーメーションを起こす前提条件は、従来の景色を固定化させないことです。これまでのやり方や考え方、場合によっては組織の枠組みやルールも疑い、乗り越えることで新たな価値を生み出すことができます。

近年、組織外の人と繋がる「越境学習」という取り組みが注目を集めています。これまでとは違った環境に飛び込む「越境」を業務プロセスに取り入れることで、新しさを生み出す原動力にするのもいいでしょう。例えば、大企業の社員がベンチャーや中小企業に出向することによって、スピード感を持ってビジネスを生み出す経験をする越境プログラムを展開している事例も増えています。

3.他者を受け入れる力

自分とは異なる特性を持つ人の考え方・特性・異なる能力を認め、その人たちの勝ちパターンを学んで受け入れる力が求められます。例えば、新しいビジネスモデルを作るために今までにない能力を持った人が異動してきた際に、従来のルールや既存の論理を押しつけてしまっては、組織が抱える問題を解決することには繋がりません。状況に合わせて、相手を理解して受け入れる力が大事になります。

4.自ら問いを立て、答えを探す力

VUCAの時代は、自ら問いを立て、議論を通じて自分たちなりの最適解を模索する力が求められます。立場が異なる人たちと正しく議論し、ディスカッションによって自分たちなりの解を導いていくスキルを身につけましょう。

リーダーも、他人の意見を引き出して、一つのゴールに導くファシリテーター型のリーダーシップが求められます。これを私は、「ファシリーダー」と呼んでいます。ファシリーダーは客観的、かつ中立な立場で進行しながらも、「自分はこう考える」と言える。自分たちの解を模索していく役割です。

5.自社を深く理解できる力

イノベーションに欠かせないのは、「自社に対する深い理解」です。イノベーションとは無から有を生む所作ではありません。既存の組織、ものごと、知識や技術などの掛け合わせによって課題を解決したり、新たな価値を生み出すことを意味します。

また、他社とコラボレーションする際も、自社の歴史や知識、ノウハウ、体制、課題について深く理解し、説明できなければいけません。イノベーションやコラボレーションは、自と他とのかけ算で生まれるのですから。

オープンな世の中、ネットワーク型の世界になるほど、「自分たちは何者か」を説明できる必要があります。自分たちの強みは何か、自分たちが使えるリソースは何か、とことん葛藤しながら向き合うことで得られる自社理解が、次のイノベーションに繋がっていきます。

6.自己開示する力

組織で仕事を進める上で、自分はどう貢献したいのか、どんな知識や経験を身につけて、どんな未来を実現したいのか。与えられた仕事をこなすだけではなく、自ら変化に向き合って、必要なスキルや知識を使い、モチベーション高く解決していきたいという意思を示し、それらを自己開示する力は、VUCAの時代を生き抜く上で極めて大事です。

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現場に足を運び、生の声を聴く。一次情報に触れる癖をつけよう

VUCAの時代を生き抜くスキルを身につけるためには、まずは自分が持っていない情報に触れることが大切です。異なるカルチャーを持つ人や、異なる人たちに交流することが、VUCAの時代のトレーニングにつながります。

例えば、社外のオンラインセミナーに参加してみるなど。他社の取り組みや事例を聞くことで、自分たちのやり方の課題やヒントなど、会社への理解が深まることもあります。また逆に、自身の取り組みを発信することで、オンラインを通じて知りたかった情報が返ってくることもあるでしょう。

また、VUCAの時代は、情報量が圧倒的に増えます。何より意識すべきは、自分が直接見て、聞いて、体験した一次情報に触れる癖をつけること。新しいビジネスモデルを作っている人の多くは、現場に足を運んだり、自らが利用者になることで、不便さや課題を見つけ、新たなビジネスチャンスを生み出しています。一次情報に触れる癖をつけておくことは、情報を目利きする力を高めていく上で、大事な行動です。

私からのアドバイスは、「データやエビデンスも大事だが、ファクトを大切にせよ」。データや統計情報だけでは見えてこない一つひとつの事実に丁寧に向き合う。思考して意味づけする。それは、誰かとコラボレーションして仕事をする上でなによりの説得材料にもなります。一人ひとりが経験した事実であるファクトは、何よりの強みです。

「変化」を受け入れない人には、どう対処するか?

VUCAの時代を生き抜くために何をすべきか、語ってきましたが、今いる組織の中には、変化をなかなか受け入れられない人もいるでしょう。変わりたがらない人たちや組織に対し、どう渡り合っていったらいいのかについて考えてみましょう。

変化に無関心な人、抵抗する人に対する基本のスタンスは「A.向き合わない」「B.向き合う」の2つに分かれます。まずは、このスタンスを決めることです。Aはより上位の人の力を借りて、バリバリ進めてしまう。抵抗勢力とは、あえて向き合わない戦略です。Bの場合のアプローチは、3つあります。

1.とにかく相手に寄り添い、心を解かす

「こういう理由や背景、思いがあって、こんな新しいことをやりたい」ということを粘り強くコミュニケーションします。相手を受け入れ、自己開示をし、打ち負かすのではなく、ディスカッションする能力が必要ですが、逆にそれを鍛えられる面もあります。

2.期間を決めて、引っ張り込む

「1カ月だけでいいので、新しいやり方を試してみましょう」というように、期間を区切った提案をします。「1カ月経ってうまくいかないなら、元に戻しましょう」と、加えてもいいでしょう。

大切なのは、期限を決めた上で、必ず振り返りをすることです。上長や関係者を入れてチームでしっかり行う。なんとなく結果が出て、うやむやになって終わってしまうのは最悪のパターン。必ず振り返りをして、うまくいったこと、うまくいかなかったこと、向き合うべきことなどを共有する。できるだけ多くのメンバーを巻き込むことがポイントです。

最初は「今さら新しいことはやりたくない」と猛反発されても、使って見たら意外に便利で、仕事が楽になったと受け入れられることがあります。期間を決め、小さな成功体験を積んでいくという、ひとつのアプローチです。

3.相手に興味のない分野で勝手にやる

既存業務ではなく、新規業務に新しいやり方を取り入れていく。例えば、若手を中心にITを使った営業スタイルを試してみる。ベテラン勢から、「ITはよくわからないから勝手にやって」という声が飛んできたらこっちのもの。虎の尾を踏まない戦略です。

これは、「向き合わない」アプローチとは違います。声の大きい人たちの興味ないところで、新しいことを起こす。どうやって虎の尾を踏まないで済むかを考えるということです。

VUCAの時代を象徴する3つのシフトで、変革を起こそう

VUCAの時代に求められる変化を大きく象徴すると、「デジタルワークシフト」「マインドシフト」「スキルシフト」という3つのシフトが挙げられます。

● デジタルで繋がり、素早く仕事をしていく「デジタルワークシフト」
● デジタルを使って、関係構築する「マインドシフト」
● 多様な人材と交流して成果を出す「スキルシフト」

デジタルを取り入れて、トランスフォーメーションを起こす「デジタルワークシフト」。デジタルを使って関係構築し、今まで慣れてきた不便を解消していく。そんなマインドを変えていく「マインドシフト」は組織変革の中で、間違いなく必須になるシフトです。

さらに、多様な人材を同じゴールに向かって率いることや、異なる人とディスカッションして成果を出していくこと。そのために自分が、あるいは組織が何者であるか説明をできるのが「スキルシフト」。この3つのシフトは、DX時代にますます求められるでしょう。

まずは、自分には何が足りていないのか認識をすることです。それを見極めた上で、変化に抵抗する人材に流されない自分を作ってください。というのも、自らが変化に抵抗する人になってしまう危険も、必ずつきまとうからです。

常に景色を変える、仕事を陳腐化させない、常にアップデートする習慣を持つことが、VUCAの時代に変革を起こす人材に求められます。

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あまねキャリア株式会社 代表取締役CEO 沢渡 あまねさん

沢渡あまねさん業務プロセス&オフィスコミュニケーション改善士。株式会社なないろのはな 浜松ワークスタイルLab所長、株式会社NOKIOO顧問ほか。人事経験ゼロの働き方改革パートナー。日産自動車、NTTデータなどで、広報・情報システム部門・ITサービスマネージャーを経験。現在は全国の企業や自治体で働き方改革、社内コミュニケーション活性、組織活性の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。趣味はダムめぐり(
著書は『業務改善の問題地図()』『職場の問題地図()』『チームの生産性をあげる。()』『仕事ごっこ~その“あたりまえ”、いまどき必要ですか?()』『バリューサイクル・マネジメント()』など多数。

取材・文:上阪徹 編集:馬場美由紀
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