今は誰もがネット炎上の当事者に!リスク回避のポイントを、炎上事例の専門家が解説

近年、SNSやブログでの失言や不適切な行動に対して、不特定多数のネットユーザーから批判や誹謗中傷が集中する「炎上」が多発しています。標的は著名人や企業のみならず、一般人の投稿が思わぬ炎上に発展することも少なくありません。
こうした炎上はなぜ起きるのでしょうか?万一自分が当事者なったらどうすれば良いのでしょうか?デジタル上のトラブルに詳しい、シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所の桑江令さんに、炎上のメカニズムや、個人でできる炎上対策について教えていただきました。

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後を絶たないSNSやブログの炎上…どうして発生する?

タレントのブログがきっかけとなった炎上騒動やTwitter論争など、世間を騒がせるネット炎上は後を絶ちません。ちなみに「炎上とは何か?」について、私たちは「企業や団体、個人が発言した内容、行った行為がメディア上で掲載・拡散され、それに言及した批判や非難の投稿が100件を超えた場合」と定義しています。

その基準に従って集計すると、2020年の1日当たりの炎上件数は約3.6件で、総数では前年対比で15.2%増加しています。さらに2021年の1月~6月の集計では1日当たり約5.4件となり、ますます増加傾向にあることがわかります。

炎上に至るフローがすでに存在している

なぜ近年、このようなネット炎上が相次ぐのでしょうか。
前提として、現在は日本人の7割がスマートフォンを所有し、多くの人が自由に情報を取得したり、発信したりできる状況があります。さらに今の時代は、問題になる事象が発生してから、炎上に至るまでのシステマチックな仕組みが出来上がっているのです。

例えば、しばしば世間を騒がせる「バイトテロ(飲食店などのアルバイトがふざけて不適切な行為をし、店舗に被害を与える事件)」を例にしてみましょう。

【発生】バイトスタッフが仕事中の不衛生な動画を、仲間だけに公開する鍵付きアカウントで、24時間後に削除されるSNSに投稿。

【SNS拡散】何者かがその投稿をTwitterに転載し、ソーシャルメディア上で拡散。

【ネット拡散】掲示板や、まとめサイトで関連ページが立ち上がり、話題になる。

【メディア拡散】話題を聞きつけたネットメディア、WEBメディアが記事化。

【まとめサイト】さらにキュレーションメディア、ポータルサイト等のニュース欄に転載される。

このケースでわかるのは、たとえ鍵付きアカウントで限定公開した投稿であっても、転載されるリスクはゼロではないということです。友達の中には単に「面白いから」と転載する人がいるかもしれませんし、もしかすると悪意を持って転載する人もいるかもしれません。

まとめサイトの作成者やネットメディアの記者も、こうしたネタを常に探しており、最初の事案の発生から実際に炎上するまで、最短で1日しかかからないケースもあります。何気なく投稿したものが、あっという間に百万人単位に拡散するかもしれないのです。

ネットユーザーに広がる、炎上を増幅する風潮

上記の仕組みに加えて、企業や個人が炎上を起こすリスクが高まっている背景には、次のような風潮も影響していると考えられます。

1.動画投稿が身近なものになった

「Instagram」や「TikTok」などで、誰でも気軽に動画投稿ができるようになった。文字や写真に比べて情報量の多い動画は桁違いのインパクトがあり、より炎上に繋がりやすい。

2.過剰な“正義感”の高まり

ターゲットとなった企業や個人に対し、正義感を楯にして過剰な反応をする傾向が強まっている。不適切事例を求めて自らネット上をパトロールする“炎上仕掛け人”や“ネット自警団”と呼ばれる人も数多く存在する。

3.ネットユーザーの感情や言動の変化

ネットユーザーの感情が過敏になり、言動も過激化。最近の例では制作物が“ジェンダー”“ヘイト”“労働問題”などに触れたことで、意図せぬ批判や誹謗中傷に発展するケースが増えてきた。

4.コロナ禍による社会不安

コロナ禍による社会的な心理的不安の増大が炎上のリスクに直結。小さなことに“イラッ”としやすい雰囲気が広がり、特に企業や著名人の発言が「上から目線」と捉えられやすい。

想定外の炎上。起きてしまったらどう対応するべきか?

もしも炎上の当事者になってしまったら、私たちはどう対応し、行動するべきなのでしょうか?ここで数年前に同じようなきっかけから炎上した、2つの企業の有名なエピソードを振り返ってみましょう。

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<炎上対応の成功例>菓子メーカー「A社」の場合

【事件発生】
「チョコの中に芋虫が入っていた」という写真がTwitterに投稿される。
【3時間後】
A社がTwitterで公式見解を表明。写真の商品の最終出荷時期を特定し、芋虫の成長から製造過程以後に混入したことを示唆。「虫混入の多くは出荷後に家庭内で起きる」とした業界団体のサイトを紹介し、「お騒がせしており申し訳御座いません」というコメントで結んだ。
【炎上収束】
A社の冷静で的確なツイートは、賞賛の声と共にTwitter上で約1万回もリツイートされ、炎上は短時間で収束。一方、苦情を投稿した人はツイートをアカウントごと削除。

<炎上対応の失敗例>食品メーカー「B社」の場合

【事件発生】
カップ焼きそばの中にゴキブリが入った写真がTwitterに投稿される。翌日、投稿者は保健所とB社へ電話で連絡。
【12時間後】
B社の担当者が投稿者を訪ねて返金をすると共に「写真を削除してほしい」と依頼。それを投稿者が再びツイートしたことで「もみ消しだ」という批判が起こりさらに炎上。
【39時間後】
B社は「製造過程で混入の可能性は低い」としながらも、当該製品の自主回収を発表し生産を休止。
【一週間後】
「製造過程での混入の可能性は否定できない」とし、全工場の停止と販売休止を発表。流通業者からの返品が殺到。

炎上を最小限に抑えるための3つのポイント

A社とB社、賞賛と炎上を分けたものは何だったのでしょうか?
炎上のリスクマネージメントとして、私たちが最も重要と考えているのは「迅速さ」「正直さ」「慎重さ」の3つのポイントです。上の成功例・失敗事例は、まさにこれらを裏付けるものだと言えるでしょう。

迅速さ:スピーディーな把握と対処

“炎上の芽”を確認したら、とにかく早い段階でお詫びのコメント投稿、もしくは公式発表をすることが非常に重要です。A社は事件発生わずか3時間で、事実関係を分析した公式見解を出したのに対し、SNSに投稿される投稿を定期的に収集し、迅速に対応できる体制作りがなかったことも対応が遅れた一因と言えるでしょう。

正直さ:事実を隠蔽せず謙虚な姿勢

ネット上で騒ぎが起きると、問題の投稿や画像は多くのネットユーザーに即時に保存されるため、元の記事を削除してもその事実をネット上から消すことはできません。従って炎上の当事者はその存在を認めたうえで、誠実に対応することが必須です。しかしB社は、投稿者に写真の削除を求めるという、「隠蔽」とも受け取られる対応をし、結果として炎上を決定的なものにしてしまいました。

慎重さ:さまざまなリスクを考慮し判断

炎上に関して謝罪する場合も、反論する場合も、リスクを考慮しながら慎重に行う必要があります。コメントに少しでも相手を非難する要素が含まれていると、さらに批判を呼び、事態を悪化させるからです。A社のケースは事実関係を冷静に述べたうえで、投稿者に反論するのではなく、不安の払拭を第一にしたコメントを出したことが、成功の理由と言えるでしょう。

個人の炎上でも「迅速・正直・慎重」に対応を

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個人の場合のよくある炎上例

【事件発生・拡散】
SNSでの不適切な発言や動画がほかのユーザーから指摘を受け、それが拡散されてしまう
【投稿削除】
大事になったと感じた本人が該当投稿を削除、アカウントを非公開にする
【投稿者の特定】
既に該当投稿のキャプチャ画像が保管されており、また過去投稿の掘り起こしなどからユーザー本人の個人情報が特定、関係先(所属する学校や会社、バイト先など)に通報される。
【炎上の弊害が続く】
所属先から(内容によっては)処分され、また名前が特定されてしまった場合は解説ページが作成され、数年経っても自分の名前で検索するとその情報が見られてしまう状態に。

著名人の成功例

【事件発生・拡散】
SNSでの不適切な発言が指摘を受け、拡散されてしまう
【謝罪対応】
3時間後には謝罪。言い訳をせずに素直に謝るとともに、該当ツイートは消さずにそのまま残す
【炎上鎮火】
その謝罪を評価したファンが擁護コメントを次々と投稿し、アンチファンの声は次第に小さくなった。

個人が炎上を起こしてしまった場合の対応のポイントも同じです。
もし批判されている理由が事実と違っていたら、相手を責めたりせず、事実関係を冷静に説明するよう努めましょう。一方、少しでも「自分に非があるかもしれない」「ちょっと行きすぎだった」と感じているなら、できるだけ速く謝罪することが最良の方法です。言い訳に走ったり、謝罪せずに投稿を削除したりしては、火に油を注ぐことになりかねません。

炎上を起こすと過去の投稿を掘り返されて晒されたり、「今の言動と矛盾する」と批判されたりすることもあります。そうした場合も事実を認めて、「過去の自分はその通りですが、今は改めました」と潔さを見せることが大切です。逃げることなく真摯に向き合って対応すれば、多少の批判は残っても、それ以上炎上が広がることはないでしょう。

ネットリテラシーの基本に立ち返る

思わぬ炎上の当事者にならないために、私たちはネットとどう付き合えば良いのでしょうか。結論としては基本的なことですが、送信ボタンを押す前に以下のようなことを自問自答することに尽きると思います。

この言葉を本人に直接言えるか?
自分の顔を見せて公開できるか?

例えばSNS上の著名人に対して正当な批判を述べることには問題はありませんが、少しでも批判が行きすぎると、支持者やファンから一斉に攻撃を受けるリスクがあります。また、もし自分のクレームが企業を炎上させてしまった場合、ネットユーザーの攻撃は企業だけでなく自分自身にも向かうことがあります。

個人の表現の自由は尊重されるべきであり、線引きは難しいですが、攻撃的な言葉を誰でも見られる場で発信することに伴うリスクは常に意識しておく必要があるでしょう。

炎上に参加することにもリスクがある

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ネット炎上のリスクは、自分が火元になることだけではありません。
TwitterやInstagramなどのSNSでは、リツイート機能を使って、他人の投稿を自分のアカウントから再投稿できます。文章を打つ必要もなくすぐに発信できるため、「みんなリツイートしているから」というノリで、内容も確認せずリツイートする現象がよく起こります。その結果、意識せずにデマを拡散させたり、炎上に加担したりすることも少なくありません。

注意したいのは、リツイートする行為自体が法的には本人が発信しているのと同じと見なされることです。つまり、他人が投稿した誹謗中傷をリツイートして拡散するだけでも、罪に問われる可能性があるのです。過去には、ある人物に関する事実無根のデマをリツイートしたことで当人から訴えられ、名誉毀損が認められて慰謝料の支払いを命じられたという判例もあります。

誰でも自分を否定する投稿が何百回もリツイートされれば、精神的に追い詰められるものです。それは紛れもなく数の暴力であり、自分もそのひとりなら、暴力を振るう加害者に他なりません。誰かを攻撃する投稿や、炎上を煽る投稿をリツイートすることには、慎重になるべきでしょう。

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シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所 桑江 令(くわえ りょう)さん桑江 令(くわえ りょう)さん

シエンプレ株式会社 主任コンサルタント。シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所 主席研究員。デジタルクライシス対策の専門家としてNHKのテレビ番組への出演、出版社でのコラム、日経新聞や様々な雑誌へのコメント寄稿も担当。一般社団法人テレコムサービス協会 サービス倫理委員も務める。

【シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所()】

世の中のデジタル・クライシス(デジタル上で発生した危機や重大なトラブル)を研究する日本初の研究機関。炎上などに関する研究を行い、正しい対応方法を普及させ、社会問題の解決及び企業活動に貢献することを目的として活動。また運営元のシエンプレ社では、警察庁よりサイバーパトロール業務、インターネット・ホットラインセンターの管理・運営を受託している。

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WRITING:鈴木恵美子 EDIT:馬場美由紀

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