企業のネガティブ口コミは、どこまで信用すべき?転職のためのネット情報の読み方

転職の企業選びをするとき、ネットで情報を集める方は少なくないでしょう。そこで「パワハラ」「ブラック」など口コミの悪い評判が気になり、転職すべきか悩んでしまうケースがあります。ネットの口コミは信頼できるのでしょうか?また、どの程度参考にすべきなのでしょうか?

炎上やデマの拡散といったデジタル上のトラブルに詳しい、シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所の桑江令さんに、企業の口コミサイトやSNSの情報を正しく活用するヒントを教えていただきました。

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企業に対するネガティブな口コミはなぜ発生するのか

企業に関するネガティブな口コミはなぜ発生するのでしょうか。転職系の企業口コミサイトや掲示板に情報を書き込む人は、内容から考えるとほぼ何らかの形でその企業に関わっている人、今働いている方や以前に働いていた方、その家族や友人、取引先や関係会社の方だと考えてよいでしょう。

一般論として、不特定多数による口コミにはどうしてもネガティブな事象の方が多い傾向があります。なぜなら、ある程度まとまった文章をネットに書き込もうとする場合、実際に書くかどうかには書き手のモチベーションが関係してくるからです。

例えば、ネットに書き込もうとする事象をポジティブからネガティブまでの5段階で表すとしましょう。

5=「非常にポニティブ」
4=「ポジティブ」
3=「ニュートラル」
2=「ネガティブ」
1=「非常にネガティブ」

この中で5の「非常にポジティブ」な場合、例えば「この感動を誰かと共有したい!」というレベルのポジティブさであれば、ネットに文章を書き込むモチベーションになります。でも4「ポジティブ」=「まずまず良い」や、3「ニュートラル」=「普通」では、わざわざ書き込みをする必要を感じない人の方が多いでしょう。

それに対してネガティブな事象の場合、人の性質として「怒りや腹立ちを吐き出したい」という感情が働くため、2「ネガティブ」=「やや悪い」も、1「非常にネガティブ」=「すごく悪い」も、どちらもネットに書き込むモチベーションが高くなる傾向があります。

もし、世の中の企業に対する人々の評価を網羅したとすると、たぶん5と1はそこまで多くはなく、割合としては2、3、4が大きいと思われます。中でも3はそもそも書き込みをしませんし、4の人も前述の理由から、口コミを書くモチベーションは高くありません。

その結果、全体として2の「ネガティブ」に該当する書き込みが目立つようになります。口コミサイトや掲示板にネガティブな情報が多い裏には、そんな仕組みがあるのです。

ネット上のネガティブ情報の信ぴょう性とは?

企業に関するガティブな書き込みの信ぴょう性については、次のポイントに注意しながら判断する必要があります。

会社を辞めた人の口コミはバイアスがかかりやすい

転職系の企業口コミサイトの多くは、気になる企業の情報を見るために、まず自分自身の会社の情報を書き込むことが求められます。そもそも会社を辞めて転職しようという人には、給料や評価、人間関係への不満などのネガティブな理由がある人が一定数いるため、書き込む口コミはどうしても会社に対して否定的な内容に寄りがちです。

また、前職でトラブルを起こして退職した場合も、基本的に「自分に非があった」と書くことはなく、逆に会社側を責めるケースもあります。そうしたことから会社を退職した人の口コミは客観性に欠け、バイアスがかかりやすい傾向にあります。利用者側はそれを考慮して情報を受け取る必要があるでしょう。

情報が正しく更新されていないことがある

ここ数年の労働環境の変化を見ると、多くの企業で労務面が改善されてきています。十年前は月何十時間の残業が当たり前だった業界でも、今は是正されているケースが増えているでしょう。

ところが企業の口コミサイトには7、8年前の古い情報が、そのまま掲載されているケースが少なくありません。情報提供の時期を明記する場合もありますが、一瞥しただけでは分かりにくいことも多いようです。口コミサイトで入手した情報は、最新のものであるかを確認することが大切です。

SNSでは極端な情報ほど広まりやすい

TwitterなどのSNSでも特定の企業に関する評判を目にすることがあります。SNSはモチベーションに関わらず誰もが気軽に書き込める場なので、口コミサイトや掲示板に比べると、ネガティブな情報に偏る傾向は少ないと言えます。

半面、SNSの場合は書き込まれた情報よりも、それを拡散する人の動機の方に影響力があります。普通に「いいね」レベルではあまり広まりませんが、「これは酷い」「けしからん」あるいは、「素晴らしい」「感動した」という極端な内容ほど一気に拡散されます。しかも拡散する人は多くの場合、事実確認をすることはありません。SNSの情報は広く拡散されているから真実とは限らず、企業に関する口コミもまた同様です。

ネガティブな口コミに対する正しい見極め方

企業に対するネガティブな口コミの真偽について、私たちが見極めるにはどうしたらいいのでしょうか? 個人でもできる、口コミの背景や事実確認のヒントを、桑江さんにアドバイスしていただきました。

SNSでは発言者の過去の投稿に注目する

SNS情報の信頼性を判断するには、まず発信元のアカウントが普段どんな投稿をしているかを確かめることが大切です。攻撃的な投稿が多い場合は、その情報も実際よりネガティブ寄りに書かれているかもしれません。反対に普段は冷静で客観的な投稿をしているアカウントであれば、その情報の確からしさは増すことでしょう。

また、投稿の下にぶら下がるツリーもチェックするようにしましょう。SNSではひとつの投稿に対して、違う立場からさまざまな意見が書き込まれます。賛成・反対両方の意見を意識的に集め、それぞれの発信のエビデンスがどこにあるのかも確かめながら「何が正しいか」を判断していくことが大切です。

口コミサイトは複数意見の整合性を見る

一方、企業の口コミサイトや掲示板の場合、書き込んだ人が他でどんな投稿をしているのか分からないことが多いため、内容の検証は難しくなります。その場合にできるのは、同じ企業についての他の人が書き込んだ口コミとの整合性を確かめること。また同じ企業における事象でも、投稿者が一般社員なのか、派遣社員なのか、アルバイトなのかというポジションによって受け止め方が違います。それも踏まえて見極めることが必要でしょう。

企業そのものの発信情報を見るのが最も確実

実は、口コミサイトや掲示板のネガティブな書き込みに対し、企業には直接対策する手立てがあまりありません。運営会社に対して「完全に事実無根」という根拠を示すのは難しく、100%否定できないと判断されれば、投稿を削除してもらえる可能性が低いからです。

そこで今、私たちが推奨しているのが、転職希望者の多くがそうした口コミを見ていることを前提として、それらに対する見解を企業側から積極的に発信することです。

例えば、転職サイトの求人広告や、公式サイトの中にQ&Aコーナーを作り、ネット上のネガティブ・ポジティブ両方の口コミを取り上げて「実際のところはどうか?」という見解を表明する。こうした取り組みをする企業は確実に増えています。

ですから、企業に関する口コミの事実確認をするには、企業自身の発信情報に当たるのが最も確実な方法になっていくでしょう。転職を考える企業のネガティブ情報に当たったら、まずその企業の求人広告や公式サイト、公式SNSをチェックしてみましょう。

それでも分からなかったことは、直接企業に聞いても良いでしょう。面接の際に「ネットでこう言われているのですが、実際はどうですか?」と質問すれば、それに対する企業側の回答スタンスも、良い判断材料になるはずです。

転職先として企業のクチコミ・SNS情報をチェックするには

「ネガティブ情報を隠さずに自ら取り上げ、真摯に対応する企業こそ信用できるのではないでしょうか」と桑江さん。ネット上のネガティブな口コミへの対応力は、今後の企業選びの新しい判断基準になると言います。

転職先として企業の口コミ情報をチェックする際には、以下の点にも注意しましょう。

1)客観的な判断をする

評判の悪い口コミが気になっても、客観性の観点からそれだけを参考にするのはおすすめできません。上記のアドバイスを参考にさまざまな角度から情報収集を行い、自分自身で客観的な判断ができるようにしましょう。

2)自分の転職の軸を明確にする

仮にネガティブな事実があったとしても、自分が転職で何を叶えたいのかという「転職の軸」に影響がなければ、あなたにとって深刻な問題にはならないかもしれません。それを判断するためにも、自分の転職の軸と希望条件の優先順位を明確にしておきましょう。

3)関係者に話を聞く

その企業に詳しい人から直接話を聞くのもひとつの方法です。ただ友人や先輩に話を伺う際は、「客観的に見ればどうなのか」、また、客観的に話を聞いた上で「どう感じたのか」を判断するようにしましょう。

【おすすめの参考記事】
* 口コミで評判が悪い企業には、転職しない方が良いでしょうか?【転職相談室】

シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所 桑江 令(くわえ りょう)さん桑江 令(くわえ りょう)さん

シエンプレ株式会社 主任コンサルタント。シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所 主席研究員。デジタルクライシス対策の専門家としてNHKのテレビ番組への出演、出版社でのコラム、日経新聞や様々な雑誌へのコメント寄稿も担当。一般社団法人テレコムサービス協会 サービス倫理委員も務める。

【シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所()】

世の中のデジタル・クライシス(デジタル上で発生した危機や重大なトラブル)を研究する日本初の研究機関。炎上などに関する研究を行い、正しい対応方法を普及させ、社会問題の解決及び企業活動に貢献することを目的として活動。また運営元のシエンプレ社では、警察庁よりサイバーパトロール業務、インターネット・ホットラインセンターの管理・運営を受託している。

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WRITING:鈴木恵美子 EDIT:馬場美由紀

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