ドラマ『着飾る恋には理由はあって』(TBS系)に学ぶ、自分の軸を持って仕事をする方法

「SNSを見ると活躍している同世代がうらやましいと感じる」「仕事でもプライベートでも周りの反応や顔色が気になる」ことはありませんか? 周囲にいる人が自分をどう思っているのか、人の目を気にしながら行動することはストレスをため込み、新たなチャレンジへの気持ちを抑え込むことにもつながります。そこで今回はドラマ『着飾る恋には理由はあって』をもとに、「人の目を気にせず仕事をする方法」を、組織変革のスペシャリスト沢渡あまねさんにアドバイスいただきました。

ドラマ『着飾る恋に理由はあって』(TBS系)画像

あまねキャリア工房代表 沢渡 あまねさん

沢渡あまねさん業務プロセス&オフィスコミュニケーション改善士。株式会社なないろのはな 浜松ワークスタイルLab所長、株式会社NOKIOO顧問ほか。人事経験ゼロの働き方改革パートナー。日産自動車、NTTデータなどで、広報・情報システム部門・ITサービスマネージャーを経験。現在は全国の企業や自治体で働き方改革、社内コミュニケーション活性、組織活性の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。趣味はダムめぐり、#ダム際ワーキング()。著書『ここはウォーターフォール市、アジャイル町()』『職場の問題地図()』『仕事ごっこ~その“あたりまえ”、いまどき必要ですか?』『職場の科学 日本マイクロソフト働き方改革推進チーム×業務改善士が読み解く「成果が上がる働き方」()』『はじめてのkintone~現場のための業務ハック入門()』など多数。

【1】価値観の異なる人と対立したら?

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雑貨ブランドの広報として、新店オープンイベントを成功させようと奔走する真柴(川口春奈)。イベント当日に出店してくれるケータリングのお店が見つからず、急きょ同じシェアハウスに住むシェフ・駿(横浜流星)に頼むことに。しかし、シンプルを追求する駿とSNSでの見映えを意識する真柴は、駿と対立してしまいます。仕事で価値観の異なる人と意見が対立してしまうときは、どう対応したらいいのでしょうか。

環境を変え、新しいコラボレーションの可能性を広げよう

沢渡あまねさんSNSに集まる人の世界観や価値観は、固定化してしまいがちです。しかし人生に強い影響を与えてくれる人や、新たな可能性を開いてくれる人が必ずしもSNSの世界にいるとは限りません。

思い切って付き合う相手や所属するコミュニティを変えてみると、見える景色も変わってくるものです。このドラマの主人公、真柴さんもシェアハウスに引っ越し、多様な価値観を持つ人たちと接することで、これまでの考え方にも変化が生まれるのではないでしょうか。

職場や取引先とは全く違うコミュニティへ飛び込んで価値観を変えてみるのも良いでしょう。リモートワークやワーケーションの活用、部署異動や出向、転職などの機会を活用する方法もあります。

例えば営業の人なら、広報やエンジニアなど他の職種の人が集まる勉強会に参加してみるのもおすすめです。日常と違う領域の人と接点を持つことによって、これまで見えていなかった自分の強みが発見できたり、逆に足りないものが見えてきたりするでしょう。あるいは自分にはない知見や情報を持つ人と繋がりが生まれることもあるかもしれません。

コロナ禍でも、工夫次第で環境を変えることは可能です。オンラインをフル活用して繋がる相手を変えたり、働く環境を変える施策を取り入れたりなど、ポジティブな変化を起こしてみましょう。異なる価値観を持つ人同士の相互交流は、心をオープンにする効果があります。

また、このシーンでは「SNS映え」を意識する真柴と見た目よりも料理の味で勝負するという駿とで議論となり、ぎくしゃくする場面で、一方は広報目線で話をしていますが、一方はシェフ目線で話をしています。自分の意見を主張することも大切ですが、他者の意見も尊重し、自分の強みとなる軸を掛け合わせてコラボレーションしてプロジェクトを達成するスキルも大切です。

環境を変え、景色を変えることで、新しい繋がりが生まれます。そして価値観の異なる他者とコラボレーションする可能性を広げましょう。そして価値観の違う人とコラボレーションするときには、自分だけで問題を抱え込まず、積極的にオープンにして協力を求める「ヘルプシーキング行動」を実践することをおすすめします。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

【2】アイデンティティを見失ったら、どうする?

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これまで5年間、広報として公式SNSを運営してきた真柴。10万人近くのフォロワーを持ち、インフルエンサーとしても活躍する真柴は、広告宣伝のPR活動業務に広報としての「アイデンティティ」を見出してきました。しかし会社の経営体制が変わり、全面的にSNSを停止するように言われます。

一方、駿は若くして自分の店をオープンさせたものの、経営や店のスタッフのマネジメントがうまくできず挫折。早々に店を畳んでしまいます。

自分の「軸」となるような仕事やミッションを失ったとき、精神的なショックからどのように立ち直ればいいでしょうか。

まずは気持ちをフルリセット。新しいチャンスに備えよう

沢渡あまねさんまずは、「空(くう)」になってはいかがでしょう。アイデンティティを見失うほどの失敗、挫折、虚無感に陥ったときのショックは非常に大きいものです。気持ちをフルリセットしてまっさらな気持ちで次の仕事に向き合うためにも、「空」になる時間を作りましょう。

長い人生のなかには様々な挫折を味わうこともあるでしょう。そんなときは、一度離れることで気持ちを整理できると思います。一説によれば、かのスティーブ・ジョブズも定期的に京都の寺へ行き、「心を整えて」いたそうです。ちなみに、私はたびたびダム際に行ってワーケーション(#ダム際ワーキング)しつつ、心を「空」にしています。

このシーンで、「無理するのも頑張るのもやめて、持ってるもの全部捨てて。何もなくなったけど、自分が見えるようになった」というセリフがありますが、これは気持ちをリセットして「空」になったことを示しています。

リセットした後は、いろんな人との対話を増やすこと。多くの人と話をすることで、新しいチャンスに気づき、別の角度から自分の強みを見つめ直すきっかけにもなります。

フルリセット後に誰かと対話するときは、肯定的な意見をくれる人だけではなく、厳しい意見もしてくれる「メンター」的な役割の人と話すことも大切です。例えば昔の上司や学生時代のサークルメンバーなど。キャリアをサポートしてくれるキャリアカウンセラーといった、プロかつ第三者と話をすることも有効です。

「自分軸」は、主観と客観を行き来しなければ研ぎ澄ませることはできません。インプットする、仕事を頑張る、環境を変えて「空」になる、そしてまた頑張る。このプロセスを繰り返すことで、自分の軸が研ぎ澄まされるでしょう。また、日頃から冷静な意見をくれるメンターを見つけておくことも重要です。

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【3】周りに頼りながら自律的に生きるベストバランスは?

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シェアハウスの住人でオンラインカウンセラーをしている寺井(丸山隆平)は、アーティストの羽瀬(中村アン)が、周りにまったく頼らず「なんでも一人でできる」と言い切ってしまうことに心配を隠せません。

周りに依存しすぎず、かつ一人で抱えすぎないベストバランスはどのように取ればいいのでしょうか。

「発信」ファースト、「受け入れ」ネクストでいこう

沢渡あまねさんものごとは自己肯定感が高すぎても低すぎてもうまくいきません。自己肯定感が高すぎると、周りに自分の意見や自己流を押しつたり、敵を作ってしまいます。一方、自己肯定感が低すぎると「自分は何もできない」という感情に支配され、周りが見えなくなってしまいます。その結果、良質な経験を重ねることができなくなってしまいます。

まずは自分の状況を「発信」し、それから周りの意見を「受け入れ」ましょう。そのためには、常日頃からオープンマインド・オープンコミュニケーションで「自分はどんな人で、どんな強みを持ち、どんな弱みがあるのか」を発信することが重要です。

ただし、発信する際はゴールを明確にすること。会社や組織のゴールを達成するために、「自分はこれをこうしたい」「自分のタスクや役割はこうであるがこれができない」という発信をしなければ、丸ごと助けを求めるだけの人になってしまいます。

自分を受け入れてもらうためには、相手を正しく理解し、ストーリーを持ってコミュニケーションする「ナラティブ・アプローチ」という考え方が役立ちます。ナラティブ・アプローチとは、あなたが何者でどんな経験を持っているか、自分が貢献できることや自分が目指していることを相手の関心事・相手のゴールと一致させるために話すこと。自分の軸・相手の軸の相互理解をし、組織のゴール・目的をしっかり把握することが重要となるでしょう。

大切なのは「理(=ゴール・目的)」に「情(=熱意、考え、想い)」を添えること。理だけでは人の共感を得にくいですが、情だけでは組織として仲間を動かす合理性に欠けます。目的・ゴールにそっと感情を添えるくらいの温度感がちょうどいいと思います。

一方で、誰かからアドバイスをもらうときは「受け入れ方」にコツがあります。それは、とにかく素直になることです。相手のアドバイスを否定したり、斜にとらえたりせず人として向き合い、正面から受け入れること。そして、ゴールに照らし合わせて考えること。目的を見失わないことが重要です。

【おすすめの参考記事】

周りに助けを求める『ヘルプシーキング』の磨き方

【まとめ】状況が「ループかサイクルか」を見極める

仕事をする中で、誰しも自分の軸を見失うような壁に突き当たることがあるでしょう。そのときは、いまの状況が「ループなのか、サイクルなのか」という視点で見てみてください。

何度も同じ問題やトラップに嵌り、出口が見えない状況で同じ苦しみが続く「ループ」であるのなら、その環境から抜け出し、新しい環境に踏み出し景色を変えることをおすすめします。

一方で、新しい環境に挑戦したり、何かを乗り越えて新しい課題に直面している「サイクル」の場合は、その苦難に立ち向かった方がいいと思います。課題に向き合った結果、自分が成長していくのであれば、自分の「軸」は磨かれていくのではないでしょうか。

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<番組情報>

着飾る恋には理由があって』(TBS系 火曜22時)

ドラマ『着飾る恋に理由はあって』(TBS系)画像自分を着飾ることで居場所を得ていた主人公がシェアハウスで暮らすことになり、価値観の違う人たちと過ごす中で、自分らしく生きていく姿を描く。出演:川口春奈、横浜流星、丸山隆平、中村アン、向井理、夏川結衣、ほか。主題歌は星野源『不思議』(スピードスターレコーズ)。

WRITING:石川香苗子
新卒で大手人材系会社に契約社員として入社し、2年目に四半期全社MVP賞、年間の全社準MVP賞を受賞。3年目はチーフとしてチームを率いる。フリーライターとして独立後は、マーケティング、IT、キャリアなどのジャンルで執筆を続ける。IT系スタートアップ数社のコンテンツプランニングや、企業経営・ブランディングに関するブックライティングも手がける。学生時代からシナリオ集を読みふけり、テレビドラマで卒論を書いた筋金入りのドラマ好き。テレビやドラマに関する取材記事・コラムを多数執筆。
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