【紅茶のプロが教える】ティーバッグ紅茶をとびきり美味しくいれるには

自宅でのリモートワーク環境では、ブレイクタイムにリフレッシュするための美味しい飲み物が必要、という人も少なくないでしょう。そのような中で、自分でいれて楽しむ時間的余裕はできたものの、毎回コーヒーばかりで飽きてきたという人は、紅茶でティーブレイクしてみませんか?

高価な茶葉でなくても、美味しくできる紅茶のいれ方を、ティーブレンダーの熊崎俊太郎さんに教えていただきました。

ティーブレンダー熊崎俊太郎さん

熊崎俊太郎(くまざき・しゅんたろう)さん

1967年東京生まれ。小学生のときに紅茶の魅力に目覚め、大学時代から出張ティーパーティーを企画・運営。卒業後は、食品輸入商社、紅茶専門店勤務を経て独立。カルチャーサロン講師や講演活動の傍ら、ティールームのコンサルティングやオリジナル・ティーのブレンド、商品企画などを手掛ける。株式会社フィーユ・ブルーの専属ティーブレンダー。著書に『紅茶を楽しむ』(大泉書店)ほか。

誰でも美味しくいれられるのは、実は茶葉よりティーバッグ

私はティーブレンダーとして、いろいろな農園の茶葉を調合して商品の安定した味わいを維持したり、世界中の茶葉をブレンドして時代に合った新製品をプロデュースしたりする傍ら、紅茶の魅力を広く伝える活動をしています。

そこでよく聞かれるのは、「ティーバッグは(茶葉の紅茶より)おいしくない」という“誤解”です。まずはそこから、お話ししていきましょう。

「ティーバッグってインスタントみたい。茶葉(リーフ)を使っていれる紅茶のほうが本格的で美味しいのでは?」これは、本当によく尋ねられる質問です。

しかし、決してそうではありません。現に、私が開発責任者として運営に携っているのはティーバッグを主軸にした紅茶ブランドです。

なぜなら、ティーバッグのほうがいれる際に難しい技術を必要とせず、失敗もなく、最適な味わいのブレンドバランスで楽しんでいただけると考えているからです。

私の30年ほどの実務経験と、その間に全国各地で行ったブラインドテストでは、概して「ティーバッグでいれた紅茶のほうが美味しい」という結果が出ています。

ティーバッグには、わかっているだけでも120年以上の歴史があります。「手軽に素早く飲みたい」「誰がいれても同じ味を出したい」「茶葉の後始末を簡単にしたい」という要望からまずイギリスで誕生。その後アメリカで定着、進化し、世界に広がりました。

ティーバッグでいれる紅茶が美味しい理由は、“バッグに入っている”ことにあります。

何よりまず、茶葉が予め計量されているティーバッグは、茶葉(適切に量るのが難しい)ではなく湯量(見た目で把握しやすい)の方で抽出具合を調整できるため、いれ方マニュアルに従えさえすれば誰でも同じように美味しく、好みの濃さでいれることができます。

また、抽出途中に茶葉の産毛から出る泡(あく)などがバッグの中に閉じ込められて、雑味の少ないクリアな味わいになります。

さらに言えば、特に三角錐形のティーバッグが判りやすいのですが、角が浮き上がって立つ=エキスが抽出されたサイン(次項の「紅茶のいれ方」を参照)なので、蒸らし時間を計らなくても視覚で飲みごろを確認できるという利点もあります。

ですから、「これから紅茶を楽しんでみよう」という方にはまず、あれこれ技術的に悩まなくてよいティーバッグで、紅茶本来の味やいろいろなバリエーション、さまざまなお菓子との相性などを手軽に知っていただきたいと思います。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

これだけあればOK!美味しい紅茶をいれるために準備するもの

ティーバッグの紅茶をいれるのに、最低限用意するのは下記のものです。

<最低限必要なもの>
*ティーバッグ
*マグカップなどの器
*沸騰した湯(汲みたての浄水の水道水)

さらに、カップに被せる蓋と下に敷くタオルなどを用意できれば、より美味しくいれることができます。

<あるといいもの>
*マグカップに被せる蓋(小皿で代用可)
*タオル(またはコルク製などの厚めのコースター)

器(マグカップ)は、いつも使っているお気に入りのものでOK。お気に入りの道具を使うほうが、気分も上がりますし、同じ器で毎日いれて飲んでいると抽出の加減もわかって、好みの味をつくりやすくなります。

湯は、空気をたっぷり含んだ汲みたての浄水の水道水を沸騰させます。湯沸かしポットで保温中の湯を使う場合は、汲みたての水を足して再沸騰させて使いましょう。

湯を沸かすのが面倒なら、電子レンジでカップ1杯分をチンするのでも構いません。

紅茶には、沸騰したての100度に近い熱湯を使います。抽出中に80度以下になると苦みやえぐみが出やすくなるため、特に寒い季節では、蓋とタオルを使ってできるだけ温度を下げないようにするといいでしょう。高い温度で保温しながら茶葉を静かに蒸らすことで、紅茶はより美味しくなります。

それぞれの実際の使い方(いれ方)は、次の「ティーバッグ紅茶の美味しいいれ方」の項で詳しく説明しますので、ぜひ参考になさってください。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

ティーバッグ紅茶の美味しいいれ方

私はいつも「紅茶は料理だ」と提唱しています。

紅茶とは言い換えれば、飲むために茶葉からエキス取り出す料理なのです。そう、お出汁をとるようなものですね。

つまり、「どなたでも手軽にうまく抽出できる料理方法として、ティーバッグ入りの茶葉を2分ほど湯に漬けて蒸らすという工程がある」ということになりますが、ここで2つのポイントがあります。

1つは、湯の温度が80度以下にならないよう保温して、エキスを1回で抽出すること。
もう1つは、ティーバッグを膨らませて、湯の中で茶葉が開いて躍るスペースを確保することです。

基本のいれ方

【1】ティーバッグを膨らませる

平たいティーバッグの場合は、バッグを逆さにして左右を軽く指でつまんで、膨らませる。
三角ティーバッグの場合は、角を引っ張って広げる。
加えて、布目の粗いティーバッグの場合は軽く振って微粉を予め落としておくことで、さらに苦みやエグ味を防ぐことができます。

【2】マグカップに沸騰した湯を注ぎ、後からティーバッグを入れる

マグカップの下に保温用のタオルを敷く(省略可)。マグカップに少量の熱湯を注いで温めたらその湯を捨て、あらためて沸騰させた湯を注いでから、ティーバッグを手早く沈める。三角ティーバッグは、三角の頂点を下にするように沈める。

【3】蓋をして蒸らす

小皿などで蓋をして蒸らす(蓋がなければそのままで)。ティーバッグは40秒~2分程度、静かに漬けておく。三角ティーバッグの場合は下にした三角の角に泡(あく)がたまって上を向き、水面に浮き上がってくるのを待つ(1分30秒~3分程度)。

上記の蒸らし時間に幅を持たせているのは、人によって好みのテイストがあるからです。長く漬けておくと雑味は少し出てしまいますが、そのかわりにふくよかさや香り、複雑さが増します

いずれにしても、ティーバッグの袋の中で泡(あく)が一箇所に固まって現れた頃合いが、ある程度抽出が完了した、飲みやすい最初のポイントといえます。

試しに何度か時間を変えていれて、ぜひ自分好みのテイストになる抽出時間を発見してみてください。

【4】ティーバッグを引き上げる

蒸らし時間が終わったら、ティーバッグをさっと引き上げ、水面上で軽くゆすってしずくを切る

※注意:湯の中でティーバッグをゆすらないこと(ゆするとバッグにたまっていた泡(あく)や雑味が出てしまうため)。
高温の湯では、一回の抽出でほぼ美味しい部分が出切るため、再利用はおすすめしません。

ミルクティーやアイスティーも手軽にアレンジできます!

レンチンミルクティー

もっとも簡単なミルクティーのいれ方は、電子レンジでチンする方法です。これなら、忙しい仕事の合間にも手軽にいれることができるでしょう。

<いれ方>

  1. マグカップに大さじ2杯(30ml)程度の水を入れて、電子レンジで熱湯になるまで温める。
  2. 膨らみをつけたティーバッグをマグカップに入れ、蓋をしてティーバッグに熱湯を吸わせる(中の茶葉を蒸らす)。
  3. ティーバッグを入れたままマグカップに牛乳を注ぎ、電子レンジで50秒程度温める。温める時間は、吹きこぼれないよう様子を見ながら調整する。温まったらティーバッグを引き上げて、できあがり。

<アレンジのヒント>

湯と牛乳の比率により、味わいが変化します。

湯75%:牛乳25%=本格紅茶の風味で大人向け(渋みとコクが増す)
湯50%:牛乳50%=万人向け(バランスの良い風味)
湯25%:牛乳75%=ほっと癒されたい方やお子様に(ミルキーに)

ぜひ、お好みやその日の気分で調整を。

*牛乳を豆乳に変えてソイミルクティーにしたり、シナモンパウダーやバニラパウダー、ラムエッセンスやアーモンドエッセンス、はちみつやマシュマロをトッピングしたりと、簡単にアレンジも可能。

レンチンアイスティー

牛乳の代わりに氷+冷水を用意すれば、レンチンミルクティーと同じ要領でアイスティーをいれることができます。

<いれ方>

  1. マグカップに大さじ2杯(30ml)程度の水を入れて、電子レンジで熱湯になるまで温める。
  2. 膨らみをつけたティーバッグをマグカップに入れ、蓋をしてティーバッグに熱湯を吸わせる(中の茶葉を蒸らす)。
  3. ティーバッグを入れたままマグカップに氷+冷水を入れる。
  4. 氷が融けて冷えたら、さらに氷を追加してティーバッグを引き上げる。

<アレンジヒント>

*2の段階で砂糖をひとつまみ入れると、雑味のない透明なアイスティーができる。
*4で氷を追加する代わりに、冷たい牛乳を注げばアイスミルクティーに(3の水も減らす)。
*4で氷を追加する代わりに、フルーツジュースを入れればフルーツティーに(3の水も減らす)。

自分に合った紅茶を見つけるには

紅茶を楽しむために大切なのは、いつでも美味しくいれること。まずは楽をして「ティーバッグ紅茶の美味しいいれ方」の手順に沿って気軽にいれましょう。

そして、次のステップとして「紅茶の選択力」を身につけることです。

「今の気分にはこの紅茶」「このスイーツにはこの紅茶」と選べるようになるためには、同時に2種類の紅茶をいれて飲み比べてみることがとても有効です。

どちらの紅茶を先に飲み切ったかなどを意識しながら1カ月ぐらい飲み比べていると、自然とその日の気分やお茶菓子に合った種類の紅茶に手が伸びるようになります。

いろいろな味を試すための手軽な方法を、3つご紹介しましょう。

  • いろいろな紅茶が入ったアソートパックを購入する
  • まずは、産地の特徴を活かした紅茶(エリアティーと呼ばれます)の代表格3種+アールグレイを購入する
    ダージリン:インドで採れる茶葉。すっきりとした風味で和菓子にも合う。ストレートティー向き。
    アッサム:インドで採れる茶葉。まろやかでコクがあり、甘味の強い洋菓子に合う。ミルクティー向き。
    セイロン:スリランカ(セイロン島)産の茶葉。さっぱりと爽やかで、酸味のあるフルーツに合う。ストレートティーにもミルクティーにも、アイスティーにも向いている万能タイプ。
    アールグレイ:ベルガモット(柑橘類)の香りをつけたティー。代表的なフレーバーティーの1つで、アイスティー向き。チョコレートやチーズなど、味の強いものにも合わせやすい。
  • 紅茶仲間をつくっていろいろな味の紅茶をシェアする(茶葉の交換会は楽しく経済的)

かつては紅茶といえば、「メーカー名×産地名(ダージリンなど)=紅茶の商品名」が市販品の中心で、イングリッシュ・ブレックファストやアフタヌーンティー向けなどのTPOに合わせたブレンドが多少あるだけでしたが、現在は、より複雑に産地の個性を組み合わせたのもの、フレーバードティー、ハーブを加えたもの、そしてご当地ブレンドなどのオリジナルティーが数多く登場しています。

ですから、「このお菓子にはこの紅茶が合う」「この紅茶にはこのアレンジが合う」と一概に語ることが難しくなっています。

ブレンドが多様化しているだけに、紅茶を購入する際にはパッケージの表記や店頭POPのコメントに注目し、その差に興味を持って楽しみ、いろいろな味を試して自分に合う紅茶を見つけていくのがいいと思います。

自分に合う紅茶が見つかったら、次はいれ方をステップアップさせてみたくなるかもしれません。その時はティーバッグや、そしてリーフティーを使って、エキス抽出の限界を体験してみましょう。

こうすることで、扱いが難しそうにおもえていたリーフティーでも、美味しく楽しむことができるようになります。

そしてさらに上級レベルを目指すなら、今度はティーポットを使って、よりデリケートな風味である高級リーフティーの蒸らし方や抽出加減を体得していく――これが、紅茶を極めるための最短ルートだと考えています。

紅茶の美味しさを保つための保管方法

紅茶は、湿気、直射日光、空気、ほかのものの強い臭い、急激な温度差などで劣化していきます。ですから、火の近くや家庭用冷凍冷蔵庫での保管は避けましょう。

比較的適しているのは、リビングダイニングにある食器棚など。特に普段は使わないような食器を収納していて、日常的に開け閉めする頻度が少ない場所に保管しましょう。

紙で個包装されているティーバッグは、購入したら箱から出してファスナー付きのプラスチック・バッグに入れ、空気を抜いて密閉します。

防湿の個包装になっているティーバッグは、箱に入れたままの状態で保管して問題ありません。茶葉の場合は、空気に触れないよう袋に入れて密閉し、さらに缶に入れて保管しましょう。多彩なデザインの紅茶缶や箱をコレクションするのも楽しいものです。

私は、「紅茶は手軽に楽しめて日常の生活に優雅で寛いだ幸福感を与えてくれる飲み物」だと確信しています。皆さんにも、ぜひ、紅茶で幸せな時間を過ごしていただければと願っています。

INTERVIEW&WRITING:笠井貞子
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