「先に飛び込む」か「取り残される」か、リスクが高いのはどっちだ?!ーーマンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー(→)。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』です。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい奥深い一言をピックアップして解説します。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「オレたちベンチャー企業は、ファーストペンギンになれる」

(『インベスターZ』第6巻credit.47より)

大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

「先に飛び込むリスク」と「取り残されるリスク」のどちらを取るか?

財前は、道塾学園を創設した藤田家の現当主に対して、投資部の金庫に眠る財宝を処分することを進言。それをベンチャー投資に充てるよう提案し、採用されます(“経歴”や“肩書き”じゃない時代。「こいつ…デキる…!」と思われるため、必要なのは?――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス参照)。藤田家は約束通り、ベンチャー投資用として15億円を財前に託します。ところが、財前はベンチャー投資の素人です。投資部のOBでベンチャー企業を経営している人がいることを知った財前は、会いに行きます。

“リッチーさん”と呼ばれている、その投資部のOBは、ロケット開発を行う会社を経営しています。事情を聞いたリッチーさんは、財前に「ベンチャー投資とは、ファーストペンギンになることだ」と教えます。ファーストペンギンとは、群れで行動することの多いペンギンの中でも、危険な海に先陣を切って飛び込む勇敢なペンギンことを言います。

ファーストペンギンは、リスクを冒して海に飛び込み、エサをたくさん食べて子孫を残すことができます。しかし後から飛び込んだペンギンはエサにありつけないことも多く、時には死に至ります。リッチーさんはこう話します。「チャンスと安全は表裏一体だ。規制で守られた業界は、安全だけれども競争力がなくて利益も少ないことが多い。今の日本には、互いの顔色ばかりをうかがい、新しい世界に飛び込もうとする企業が少ないのが実情」なのだ、と。

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チャレンジよりも横並びをよしとする日本の風潮

『インベスターZ』には、面白いたとえが引かれています。英語圏ではファーストペンギンという言葉は、「不確実な状況下において果敢にチャレンジする勇気ある行動」を象徴しているのに対して、日本にはそのような言葉がない、というのです。代わりにあるのは「出る杭は打たれる」とか「雉も鳴かずば撃たれまい」といった発想の言葉ばかりだ、というわけです。

今の日本を象徴するような話として、ロケットの製作コストの話が出てきます。国や大企業は、「ロケットは高い部品でなければ飛ばせない」と思い込んでおり、「万一、安モノを使って失敗した場合は、誰が責任を取るのか」と恐れるあまり、国内産のロケットはコストが高く、世界の競争から遅れをとっている、というのです。

とりわけ、新興産業では、大なり小なりこのような事態に遭遇します。市場規模が大きければ大きいほど歪みは大きくなりがちです。

新しい市場では、国のサポートが不可欠

新しい産業というのは、リスクが比較にならないほど大きいので、投資家は当然ハイリスクハイリターンを狙いにいきます。

それに対して、国のサポートが産業の発展を抑える方向に過度に行きすぎてしまうと、産業自体を殺してしまうか、他国へ人材やノウハウの流出を加速させてしまいます。そのようなことが産業レベルでも起き、会社レベルでも起きているのがいまの日本です。

例えば、ソニーの 営業利益が前年の約2.5倍の7348億円で、20年ぶりに過去最高を更新したと話題になりましたが、その陰でサムソンは一桁上回る営業利益を上げています。

投資家のお金が集まることで優秀な人材が才能を思う存分に発揮でき、その発展を国が後ろ盾となってサポートする。

言葉を換えると、ボーダーレスと言われるこの時代においては、1つの新興産業で覇権を握ると、世界中のから資金や人材が集まるのです。

日本にもファーストペンギンが飛び込む時代がやってくるか?

確かに、日本人が「同質性をよし」とする風潮は、必ずしも悪いことばかりではありません。例えば戦後日本の高度成長期を支えたのは、優良で同質的な労働力でした。

けれど時代は変わり、今はイノベーションが求められる世の中です。少しずつではありますが、日本でもベンチャー企業が育ちつつあり、以後は次々とファーストペンギンが飛び込む時代がやってくることを期待したいところです。

マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス 第37回

俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン(→)』および『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?(→)』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」(→)』を上梓。著作累計は42万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

俣野成敏 公式サイト

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