「好きを仕事に」ってキレイごとだけじゃない! | ユリコタイガー(コスプレイヤー)

さまざまなシーンで活躍しているビジネスパーソンや著名人に、ファミコンにまつわる思い出から今につながる仕事の哲学や人生観についてうかがっていく本連載「思い出のファミコン – The Human Side –」。

今回はテレビゲームと共に育ち、ゲームキャラクター好きが高じて、イタリアから来日しコスプレイヤーとして活躍するユリコタイガーさんにお話を伺いました。世界で唯一の「鉄拳」シリーズ公式コスプレイヤーに任命された背景や、「好き」を仕事にしていくための秘訣を話していただきました。

プロフィール

ユリコタイガー

1993年生まれ、イタリア出身のコスプレイヤー。幼い頃からテレビゲームに親しみ、日本のアニメやマンガを見て育つ。14歳でアニメやゲームキャラクターのコスプレを始め、イタリアの有名人気コスプレイヤーとして数々のコンテストで優勝を重ねる。2013年より日本に移り住み、日本でもコスプレイヤーとして活動を開始。鉄拳シリーズの公式コスプレイヤーをつとめるほか、各種関連イベントや動画サイト、SNSを通じた熱烈なファンが多い。
Twitter:@YURIKOTIGER

ゲームのキャラクターに自分の思いを重ねてきた

―― 小さい頃からゲームの「英才教育」を受けてきたそうですね?

イタリアで父がゲームショップを営んでいたので、3歳のときからプレイステーションで遊びはじめ、『鉄拳」シリーズは1作目から父と一緒に対戦していました。クラシックなファミコンゲームも好きで『パックマン』や『バブルボブル』をよくプレイしていました。

――鉄拳のコスプレを始めたきっかけは?

『鉄拳』に登場するニーナ・ウィリアムズというキャラが母にすごく似ていたので、ニーナを使ってよくプレイをしていたんです。まるで自分の母とプレイしているみたいな感じがして、そこから鉄拳が大好きになりました。

―― 鉄拳シリーズの他で、思い入れのあるキャラクターは?

『ストリートファイター』シリーズのキャミィ・ホワイトとか、『トゥームレイダー」シリーズのララ・クロフト、最近だと『ダンガンロンパ」シリーズの江ノ島循子が好きですね。

私、ゲームの中で選ぶキャラクターは必ず女の子なんです。特に強さと勇気のある子が好きですね。私は子どもの頃ゲームでばかり遊んでいたので周りの人に「男の子っぽいね」ってよく言われていたんです。だから男の子が遊ぶゲームだけど、女の子っぽさを表現しようという思いもあって、女の子のキャラクターを選ぶようになりました。そうしているうちに、彼女たちへの思い入れが強くなっていったかんじですね。

衣装やメイクをマネをするだけじゃ、私のコスプレじゃない

―― コスプレするときのこだわりはありますか?

コスプレするキャラクターに「私が似ているか」と、そのキャラクターを「やってみたいか」は違うんです。例えば『ダンガンロンパ』のカリスマギャルで、ムードメーカータイプの江ノ島循子は、私とは全然違うタイプだけど、彼女を演じるのは面白いし、楽しくて大好きです。

コスプレイヤーにもいろんなタイプがいて、メイクや衣装を忠実に再現して、綺麗に撮られたい……というだけの人もいます。私の場合は、そのキャラクターになりきりたい。単純に見た目を一緒にしているだけでなく、キャラクターの気持ちや表情も伝えたいと思っています。ある意味、女優さんと同じスタンスですね。コスプレをするキャラクターに関する情報は、インターネットで調べ尽くして、動画もしっかり見て、セリフや歩き方など細かいところまで研究します。つまり、単なるコスプレイヤーじゃなくて、「ゲームの女優になりたい」っていうのが、私のこだわりですね。

 

――ゲームの腕前にも自信がありますか?

じつはそれほど上手くないどころか、ちょっと下手くそなくらいですね(笑)。私はゲームのキャラクターデザインとかストーリー・世界観に憧れるタイプですね。だから、実際のゲームプレイはあまり得意ではありません……。
たとえば「ファイナルファンタジー」シリーズが大好きで、プレステ3と4の本体はFFエディションの限定デザインモデルを持っていますが、ゲーム自体は全然クリアできないですね(苦笑)

 

―― コスプレイヤーとして苦労することは?

最近のゲームはどんどんグラフィックが進化していて、キャラクターが着用しているコスチュームの生地や素材感もイメージできるくらいですので、それを再現するのがとても難しいですね。オーダーメードで作らないとイメージ通りにならないし、こだわりすぎるとコストが……。あと、キャラクターが使用する武器なども現実離れしたものが多いので再現するのがとても大変です!

情熱をもって取りくめる仕事を大切にしたい

――コスプレのお仕事における喜び・やりがいとは?

見てくれた人から「すごい!」「完璧です!」と褒められるとやっぱり嬉しいですね。
一方、私自身がコスプレに納得できていなくて、あまり可愛くできなかったなとか、あまり似合わないなと思うことも正直あります。

例えば、白雪姫やシンデレラなどディズニーのキャラクターは、私も子どもの時は大好きでしたが、コスプレで演じてみたいとはそこまで興味はなかったんです。でも日本ではディズニーのキャラクターはとても人気があるので、イタリア人の私がお姫様のコスプレをしたら、日本の子どもだちに喜んでもらえるかなあ、って思って試したことがあります。すると小さい女の子から「コスプレしてくれてありがとう、完璧!」って褒めてもらえたので、そのときはすごく満足できました。

私がコスプレで大切にしていることはパッション(=情熱)です。愛情をこめて演じれば、見てる人に必ず伝わると思っています。ただ単に「可愛い」「美しい」だけなら、すぐ忘れられてしまう存在にしかならないと思うんです。なぜなら、それは見た目の印象が一瞬、華やいだだけで、その人の心に残ったわけではないから。

だから私はコスプレの仕事をする時は、情熱を込めて、見てくれた人と心のつながりを持ちたいと考えています。自分の気持ち、演じるそのキャラクターが大好きで、それを見てくれた相手が感動するリアクションが欲しい。私の自己満足だけじゃなくて、そのキャラクターのファンの気持ちも考えて、一生懸命に演じたいといつも思っています。

 

―― 「好きなことを仕事にする」って、思い通りにいかないこともありますよね?

そうですね。つい先日も、とあるコスプレのお仕事で、オーディションというかコンペティションになることがありました。最終選考まで残って、自分かもう一人か、というところまでいったんですけど、結果的に自分は選ばれませんでした。決め手は何だったかというと、SNSフォロワー数の差だったらしいんです。

クライアントにとってもビジネスですから、フォロワー数が多くて影響力の強いコスプレイヤーを起用したいという理屈は理解できます。しかし、だからといって、私がフォロワー数を増やすだけのために、コスプレイヤー以外のSNS投稿……たとえばグラビアとかをやったりするのは、私のタレント性ではないなと思うんです。私が目指しているのは、コスプレイヤーとして忘れられない存在になることなので。

「私もまだまだだな」って自覚するところは、たくさんあります。でも、とりあえず今できることを精一杯やってみる。それでもっと成果をあげられるようになったら、新しい他のことにもチャレンジしてみればいいんじゃないかと思っています。今は自分がパッションをもって取りくめることを大切にしていきたいですね。

 

取材・文:深田洋介
1975年生まれ、編集者。2003年に開設した投稿型サイト『思い出のファミコン』は、1600本を超える思い出コラムが寄せられる。2012年には同サイトを元にした書籍『ファミコンの思い出』(ナナロク社)を刊行。
http: //famicom.memorial/

撮影:向山裕太 編集:鈴木健介

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