私は、人を「伸ばす」よりも「殺さない」ことを意識してきたリーダーなんです――美容室「Hair&Make EARTH」代表取締役社長・國分利治氏<後編>

日本全国にフランチャイズ美容室「Hair&Make EARTH」235店舗を展開する「株式会社アースホールディングス」代表取締役社長、國分利治氏。地方の一般家庭出身、工業高校卒からカバンひとつで上京。日本初の大規模多角経営美容室で成功した人物として出版やメディアでの人気も高い國分氏に、仕事で成功するためには、何が必要なのかについて語っていただきます。前編では若手社会人に向けて國分氏が大切にしている「習慣とこだわり」についてお話しいただきました。

後編では、「リーダーシップにおけるバランス力と人間力」についてうかがいます。

プロフィール

國分利治(こくぶん としはる)氏

 株式会社アースホールディングス 代表取締役社長

1958年生まれ。福島県出身。工業高校を卒業後、地元の縫製工場に就職。19歳のとき、美容師の経営者になることを目的に上京し、東京・新宿の美容室に住み込みで就職。1年半後には店長、5年後には17店舗を管理するマネージャーとなる。その後30歳で独立。葛飾区に「HAIR&MAKE EARTH(ヘアメイクアース)1号店」をオープンする。大型店舗展開で業績を伸ばし、約10年後には16人ものフランチャイズオーナーを育て、総店舗数も100店舗に達する。2007年にはロンドンにも進出。現在、日本全国に235店舗を展開。フランチャイズオーナー104 名、総従業員数約2700名にものぼる。

部下を「育てる」と思うな。今の時代のリーダーシップとは?

私が、20代から管理者として、そして30代からは経営者として、長年多くの部下・スタッフに接してきた中で思うのは、「部下を育てる」ととらえること自体、違うのではないかな、ということです。上の者が実際にしてあげられることは、あくまで「成長のきっかけを与える」ことではないかと。相手はもう大人ですし、すでに生まれ育った家庭や環境で培ったベースをしっかり持っています。それを変えることはできないし、変えようと思うと、上からの押しつけになり、かえってその人の持っているものをつぶすことになるのではないでしょうか。もっと根本的なことを言えば、「変える」「伸ばす」は、その人自身でしかできないことなのです。

これをふまえて、私が上に立つ身として部下と接する時に気をつけていることは、その人を「伸ばす」という意識より、「殺さない」ことに気をつけている、という点ですね。本人の個性や能力を邪魔せず、ヒントになりそうなことがあったら伝える…というスタンスです。

経営者や上司の中には、部下を育てるつもりが、逆に「邪魔して」しまうケースも多々あります。自分が上であろうとする結果、部下に“自分より目立つな。自分より頑張るな”と圧力をかけてしまうパターンです。自分より部下が優秀になると、嫉妬やひがみの感情が沸き上がってくる。結局は上司自身が弱いからそうなるわけですが、力のない上司には同じく力のない部下しかつきませんから、そんなチームはまったく伸びません。

また、時代にあった方法も必要です。旧態依然の体育会系「俺についてこい!」というリーダーシップをいまだにしている人もいますが、そういったスタイルはもう時代が求めていません。そんなリーダーが率いるチームは、やはり伸びない傾向にありますね。
これからのリーダーシップとして必要とされるのは、「バランス力」だと思っています。

これまでは、ひとつのことに抜きんでて、強力な統率力を持ったトップが、文字通り先頭に立って組織を率いてきました。しかし、これからの時代は、さまざまなスキルのバランスの取れた人物が、突出することなく柔らかに率いて行く…縁の下の力持ちのような存在が支持され、また伸びて行くと私は思っています。

そしてそれらのスキルは、足し算ではなく掛け算で表される。足し算の場合は、一項目でも点数が高ければ合計点を稼げますが、掛け算の場合は、ひとつでもゼロがあると、答えはゼロになってしまいます。なので、どの項目も満点のうち、半分は取れることを目指そうと、組織の中で伝えています。

EARTHホールディングス式、「バランス力」を養う掛け算公式とは、具体的には以下のようなものです。

 知×信×思×勇×厳=バランス力

「知」は知識。

「本を読む」「講習に参加する」「自分でよく考え理解する」「経験から体で知る」といったことです。これは多くの人がやっているのではないでしょうか。

次に「信」。これは、信用できる人物であること。

当たり前のことですが、「時間を守る」「体調管理をする「言動・行動・結果を大切にする」…。つまり、自分に責任を持つ、ということですね。時間を守れない人と一緒に仕事はできないですよね。最低でも5分前行動を心がけたいものです。

「思」は、他人を思いやる心を持つこと。

具体的には、「礼儀正しく誰にでも笑顔で接する」そして「『ありがとう』をたくさん使うこと」です。「『ありがとう』を一万回言えば成功する」という言葉が好きなのですが、ありがとうには、人を笑顔にするパワーが強く宿っていると思います。どんどん使いましょう。

「勇」は勇気のこと。

恐怖、不安、恥ずかしいと感じることを恐れない強い心。嫌われる勇気や、困難や危険を恐れない心を持ちましょう。自分の目標を成し遂げるために欠かせない盾になりますね。

最後の「厳」は、厳しさです。

ただし、その厳しさの中にも愛がなくてはいけません。
指導する立場では、時に相手に厳しく叱ることが必要になります。厳しさの中の「愛情」を相手も感じていなければ、単なる説教になってしまい本当に伝えたいことも伝わりにくくなります。また、愛情も持って叱ることで、「叱る」ということを自分自身も割り切ることができるので、すぐ笑顔に戻ることができるはずです。

一方、単に厳しく叱ってしまった場合は、怒りにつながってしまうことがあります。一度怒り出したら一日中怒りが収まらない…相手が謝るまで許さない…という風に、自分自身もの感情に振り回されてしまうし、何より相手とのいい関係が築けないでしょう。

ビジネスの先にあるもの~誰からも好かれる人になる心得と「成功」の捉え方

またもう一つ、私が日々伝えている内容で「好かれる人の心得」があります。これは、肩書や時代に関係なく、社会に生きる人として「人間力」をつけるための指針になります。

  好かれる人の心得(人間力)の五か条

  1.  誰に対しても公平であること
  2.  自分の話よりも相手の話を聞くこと
  3.  人の長所を探すこと
  4.  毎日5分間 人のために時間を使うこと
  5. 「ギブ&ギブ」の心を持つこと
    (一方的に尽くすという意味です。例えば、親の愛はそうですよね、これを自分の部下に行うこと。見返りは求めないこと)

すなわち、人間力がある人とは「自分より相手のことを思い、行動することができる人」ということです。

また、ビジネスで「成功」してお金や地位があっても、それを独り占めするだけだったら、それは「幸せ」と言えるでしょうか?ときどき私は、多くの人が「成功」と「幸せ」を混同しているのではないか、と思うことがあります。

「成功」とは…

目標としていた、人・モノ・金(ビジネス)を手に入れること

「幸せ」とは…

手に入れたものを使って、自分が楽しみ、そして周りを楽しませること

あなたは何のために成功したいですか?その「何のために」の答えが、本当の「幸せ」だと思います。

部下に上手なヘアカットの技術を教えることは簡単です。高い技術を身につけた先にあるものとは?自分の生きる目的、意味をそれぞれが自分で考えて見つけ、その人自身の成功と幸せをつかみ取って欲しい。そのように思っています。

大晦日のように反省し、元旦のように初心を胸に歩き出す

最後になりますが…私が新年に、その年の目標として掲げている言葉があります。会社のカレンダーや手帳にも書き込んである言葉を紹介します。

毎日を大晦日のように反省し、元旦のように初心を胸に歩き出す

誰でも大晦日の年一回は、厳かな気持ちで一年を振り、翌日の元旦には新たな気持ちで頑張ろう、と思いますが、三日も経てば忘れてしまうもの。それをせめて月一回でも同じ気持ちになれるよう努力して、さらにその頻度を増やして行けたら、毎日はまったく違ったものになるでしょうし「成功」しないわけもないと思います。

ぜひ少しでも生き方のヒントとしていただければ幸いです。

インタビュー・文:倉島 麻帆 撮影:⼭中 研吾

Pagetop