「思い」だけで起業した結果、お金も仲間も失い実家に戻ることに~株式会社リフカム 代表取締役 清水巧さん【20代の不格好経験】

今、ビジネスシーンで輝いている20代、30代のリーダーたち。そんな彼らにも、大きな失敗をして苦しんだり、壁にぶつかってもがいたりした経験があり、それらを乗り越えたからこそ、今のキャリアがあるのです。この連載記事は、彼らの「失敗談」をリレー形式でご紹介。どんな失敗経験が、どのような糧になったのか、インタビューします。

リレー第25回:株式会社リフカム 代表取締役 清水巧さん

Gatebox株式会社 代表取締役CEO 武地実さんよりご紹介)

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1991年生まれ。2013年、明治大学経営学部卒業後にSansan株式会社に入社。2014年にリフカムの前身となる株式会社Combinatorを設立し、自身が課題に感じた「スタートアップ企業の仲間集め」を解決するサービス「Combinator」の立上げを行うもマネタイズに失敗。その後、リファラル採用(社員による紹介採用)支援サービス「Refcome(リフカム)」を展開。2017年11月に現在の社名に変更。

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▲新たな採用手法として注目されているリファラル採用。「Refcome」は、このリファラル採用を支援するクラウドサービスで、リファラル採用を活性化するための施策設計から、運用・効果測定をシンプルに仕組み化することを可能とする。

起業テーマも決めないまま、就職した会社を数カ月で退職

「リファラル採用」とは、社員の知人や友人を紹介・推薦してもらう採用手法。当社は、近年注目されている「リファラル採用」を活性化するクラウドサービス「Refcome(リフカム)」を展開しています。

「Refcome」をテスト的にスタートしたのは2016年1月。リファラル採用が注目を集めるとともにクライアント数も拡大し、現在では1000社を超える企業からのお問い合わせを受け、あらゆる業種の企業にご利用いただいています。

 私が今の会社を立ち上げたのはその2年前の2014年1月。22歳の時でした。大学時代から「起業」への思いがとても強く、卒業後に就職した会社を数カ月で辞めて会社を立ち上げたのです。しかし、売り上げのメドが全く立たず、わずか1年で創業事業を畳むことになってしまいました。ただ、この挫折があったからこそ今の自分、今の事業があるのだと確信しています。

 起業への想いが目覚めたのは、大学時代。外部講師であるベンチャーキャピタリストの講義を受けたとき、「ベンチャー企業が社会の課題を解決し、世界を動かしている」と感じ、ワクワクしたのがきっかけでした。

 それまでの私は陸上競技一筋で、学生三大駅伝への出場を目指して練習に明け暮れていました。しかし、3年生の時に怪我をしてしまい、ドクターストップ。駅伝への夢も断たれ、目標を見失っていたのです。そんなときに出会った、「起業」という新たな目標。残りの学生生活はその目標にほぼ費やし、さまざまなベンチャーキャピタルに事業アイディアを持ち込む日々を送りました。

 大学卒業後は、名刺管理サービスを手掛けるSansanに就職。「成長性のあるベンチャーに就職して、将来のための修業をしよう」と考えたからです。少なくとも3年は勤める計画でしたが、仕事を覚え、会社のことを知るにつれ、「この会社で頑張りたい」ではなく「このようなスゴい会社を自分の手で作りたい」との思いが強まるように。どうしても気持ちが抑えきれなくなり、会社には申し訳ないと思いながらも秋にはSansanを退職。起業準備に入りました。

 ただ、起業テーマを決めずに退職したので、仲間を集めるのに苦労しました。当時抱いていたのは、「社会の課題を解決する会社を作りたい」という思いだけ。今考えれば、そんな段階で仲間を集めようとすること自体無謀なのですが、同じ志を持つ仲間とともに目標に突き進みたかったのです。

「創業メンバーが見つからない」苦労を元に新しいサービスを思いつくが…

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 そんなとき、ふと「この苦労を解決するサービスを作れないか?」とひらめきました。すなわち、創業メンバーのマッチングができるサービスを作れば、今よりもっと「起業しよう」と思う人が増え、社会にあるさまざまな課題が解決する。きっとニーズはあるはずだ…と考えたのです。

 幸いなことに、この事業案がシードアクセラレーターから支持され、シードマネー500万円の調達に成功。それを元手に2014年1月、スタートアップに特化した仲間集めプラットフォーム「Combinator」を開設しました。

 サービス自体は、非常に好評でした。口コミで評判が広がりユーザー数は日に日に拡大、マッチング数も増えました。しかし、売り上げの見通しが全く立たず、1年もたたないうちに口座残高はわずか3万円に。このサービスで出会った創業メンバーとの関係性も悪化し、最終的にはお金も仲間も失ってしまいました。

 理由は明確で、マネタイズの見通しがあまりに甘かったから。サービス自体は無料でスタートしたのですが、ユーザー数が増え事業が軌道に乗れば、自然と有料化の道筋が見えるようになり、マネタイズできるようになる…と高をくくっていたのです。お金も仲間もなく、どうすることもできずに2014年12月、失意のまま石川・金沢にある実家に戻ることになりました。

 金沢に戻ったばかりの頃は、落ち込んでばかり。安易に起業したことを反省し、地元で就職しようとも考えました。ただ、反省する中で「事業は課題解決するだけではだめで、売り上げが伴わないと続かないものだ」ということに気づかされたのです。当時の私は「課題解決」にばかり重きを置き、「売り上げ」の視点が完全に欠けていた。「今回の失敗で諦めてしまっては、何の学びもない。課題解決、売り上げの両方を意識したうえでの成功、もしくは失敗を経験しないことには、次のステップには進めない」と思い、再び自分の手で事業を行うことを決意しました。

「マネタイズができる」採用イベント事業で、計画的にマイナスを取り返す

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 次に手掛けたのは、採用イベント事業。すでに世の中にあるビジネスではありますが、まずはマネタイズできる分野で実績を作り、少なくとも失ったシードマネーと同じ500万円は稼ぎ出そうと考えたのです。

 ベースになったのは、とん挫してしまった「Combinator」事業でした。サービスを立ち上げてから1年で、「仲間がほしいベンチャー企業」とのコネクションができ、「ベンチャーで働きたいビジネスパーソン」のデータベースも3万人近く貯まっていたのです。そこで「Combinator Meetup」と題する採用イベントを企画、自分でWebページを作成して集客を行い、月に1、2回ペースで東京にて採用イベントを開催。1回につき平均7、8社に出展いただくことができ、半年間で500万円を稼ぐことができました。

 企業の誘致は電話やメールで、集客はWebで行っていたので、誰一人として私が金沢にいるとは思っていなかったと思います。イベント開催日の朝に着く深夜バスで上京し、涼しい顔で現場を仕切っていましたから(笑)。

「社員みんなで仲間集めを行う」ことの重要性に気づく

 そして、半年間の採用イベント活動で得た資金をもとに「Refcome」を立ち上げることになるのですが、発案のきっかけになったのは、採用イベントで出会ったあるベンチャー企業でした。

 その企業は、今や売上高100億円超の誰もが知るITサービス企業ですが、当時は社員数約20名のスタートアップ企業。そして、20名ほどの社員全員が、採用イベントに参加していたのです。他社では人事担当者1名しか参加していないケースもあるのに、同社では休日にもかかわらず社員全員が自社ブースで来場者に対応している。皆が自社を愛し、一緒に会社を大きくする「仲間」を真剣に探そうとしている姿に心打たれました。

 そして、「この世界観を、サービスによって実現できないか?」と考えたのです。すなわち、企業のトップが旗を掲げて仲間を集めるのではなく、スタートアップ段階にあるからこそ社員全員で仲間を集める。これこそ、ベンチャー企業の仲間集めや採用に関わり続けてきた自分がやるべきことではないか?と強い使命感を覚えました。

 アメリカでは、リファラル採用の動きが活発化しつつあることは知っていました。それらの事例を研究しつつ日本企業に合った方法を検討し、2015年8月にリファラル採用支援のクラウドサービス「Refcome」として事前予約ページを公開したところ、多くの問い合わせをいただいたことで本格的に事業化することを決意。クラウドサービスを提供するだけでなく、効果的なリファラル採用を行うための施策設計サポートから入ることで有料化を実現。「自社に合う仲間を採用したい」というベンチャー企業の課題解決、そして売り上げの確保の両方を実現することができました。

 今の目標は、リファラル採用をきっかけに、人材採用を「社員みんなでやる仲間集め」に再定義すること。採用は、組織づくりに大きな影響を及ぼします。それを人事任せにするのではなく、社員が主体的に「現場に必要とされるメンバー」を考え、各々が一緒に働きたいと思う心地よい仲間を集める。そうすれば、人が集まり、人が辞めない魅力的な組織ができるはず。「そんな企業であふれている将来」を、この手で実現したいと真剣に考えています。

待っているだけでは成長はない。自ら動いてみることで変化が生まれる

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 現在の私は、使命感を覚えるテーマに出会うことができ、大きな目標を持てるようになり、ありがたいことにそれに賛同する仲間も得ていますが、今に至るまでには同じ年齢の人の何倍も紆余曲折、試行錯誤を経験しました。社会人1年目で会社を飛び出し、起業するなんて無茶をしなければ、こんな苦労もなかったし、挫折し落ち込むこともなかっただろうと思います。

 でも、大変な環境に身を置くと、否が応でも成長します。お金が底を突き、仲間にも去られ、一寸先が見えなくなるような経験をしても、なにくそ!と立ち上がれるのは体力がある若いうちだったから、とも思います。

 もし、現状に何となくモヤモヤしたものを感じているのであれば、一歩でもいいから踏み出してみることをお勧めします。会社の枠を超え、何か興味を持っているものに挑戦してみれば、きっと何かが見えてくるはずです。もしかしたら思わぬ壁にぶつかり、ショックを受けることもあるかもしれませんが、モヤモヤ解消のヒントも見つかるはず。動かなければ、モヤモヤはモヤモヤのまま。現状が変わるのをただ待っているようでは、成長はありません。

 企業規模にこだわらない転職に挑戦するのも、いい方法かもしれません。リーンスタートアップなど、リスクの少ない起業の新しい手法が広まったことで、スタートアップ企業に転職するリスクは低下していると感じます。もしワクワク感を覚える企業と出会ったら、飛び込んでみるのも一つの手だと思います。苦労はあるかもしれませんが、その分必ず成長も伴うはずですよ。

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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