臨床検査技師、と聞いてどんな仕事が思い浮かびますか?
この仕事は医師の指示に従って様々な検査を行う医療技術者のことを指します。業務は大きく分けて2つあり、腹部エコーや心電図などで、患者の体の表面や内臓器官を検査機器を使いデータを記録する『生体検査』。もう一つは採取した血液や尿などからウィルスや細菌を調べ、病菌の見本を作ったり原因を調べたりする『検体検査』があります。今回は、臨床検査技師の年収について、リクナビNEXTの会員登録者のデータからリサーチしました。
臨床検査技師の平均年収は400万円
リクナビNEXTの2010年12月~2015年11月までの臨床検査技師の新規登録者における平均年収は約400万円です。また年代別で見てみると、20代は約313万円、30代は約410万円、40代は約480万円、50代は約494万円、60代以上になると約733万円と、年齢が上がるごとに年収も増加する傾向にあるようです。
なお、少し時期がずれますが、リクナビNEXTの2015年12月の全データでは、299万円、30代は416万円、40代は495万円、50代は628万円、60代は524万円と、20代のうちは年収の高い臨床検査技師ですが、その後の伸び率は全体と比較すると鈍化する傾向にあります。特に50代において、全体平均との乖離が広がっており、約130万円程度低い結果となりました。
なお、臨床検査技師の81%は正社員として主に病院や医療機関で働いていますが、残り19%は契約社員やアルバイトとして勤務しており、正社員で勤務している人の平均年収は461万円に対し、契約社員やアルバイトで働く人の平均年収は273万円となっています。
細胞検査士などの関連資格の取得で、活躍の場は広がる
臨床検査技師は国家資格ですが、近年の合格率は8割以上と受験者の多くが資格を得ている状況です。その数はざっと15万人程度。もちろん病院や検査機関など就職先はありますが同様の資格を持っている人が多いため、できれば関連資格を取得し活躍の場を広めることが重要です。
例えば細胞検査士はその名の通り、細胞の病理を検査する臨床検査技師の上級職で、日本の細胞診断技術は世界でもトップクラスと評されるほどの正確さで知られています。この仕事は人体から採取された細胞を標本にして染色・観察し、がんなどの疾病を探しだす“細胞版”臨床検査技師と言えます。加えて、医師ががんなどの病気を見つけ出すためには欠かせない、重要なポジションなのです。
この資格を得るためには臨床検査技師の資格を持っていることが前提で、かつ1年以上細胞に関する検査業務に従事しているか、養成所にて規定の単位を取得した場合に受験資格を得ることができます。全国の合格平均律は約25%と狭き門ではありますが、取得できれば年収アップも見込めます。さらに、細胞検査士の上級職である国際細胞検査士は国際細胞学会が認定する資格で、この資格を取得すると海外での活躍の場も広げることができます。
臨床開発モニターというキャリアパスも
臨床検査技師のキャリアパスとして、臨床開発モニターというキャリアも選択可能です。最も高額な臨床開発モニターは、製薬会社や医療機器のメーカーの一員として、治験の企画から実施、治験の終了までを一貫してコントロールする仕事です。つまりラボや病院で検査を行うといった現場の仕事よりも、業務自体を取り仕切ることが求められます。
例えば臨床開発モニターの仕事にはこのようなものがあります。まず治験を行うにあたり、実施する医療機関や医師を選定するための調査をします。医師なら治験の経験がどの程度あるか、治験に参加してくれる患者をどの程度抱えているか、などがポイントです。次に、治験の契約を結ぶため医療機関への交渉や、無事に行えるようにするための審査会の開催。そして治療薬を医療機関に交付し、治験の準備に入ります。治験を行う患者数の確保や治験への賛同を取り付けるための交渉事、患者の死亡や重大な障害が起こった時の対応など、コーディネーターの要素も含まれるので大変重要な仕事です。そして治験の進捗を逐一チェックし、期間が終了すれば報告書を作成。一つの治験が終了するまで、様々な業務をこなす必要があります。
臨床開発モニターの採用にあたっては、医療従事者の経験・スキルが必須となっています。臨床検査技師の経験もそのひとつ。臨床検査技師としての知識と経験は、臨床開発モニターの仕事でも活かすことができるのです。
今後も安定したニーズが見込める臨床検査技師
臨床検査技師や細胞検査士は、人体の疾病を探したり、検査をする重要な役割を担っています。厚生労働省が発表した「平成26年人口動態統計」の調査結果では、日本人の死因のトップは「悪性新生物」となっており、全体の約3割を占めています。悪性新生物とは、つまり癌。癌は早期発見により治る見込みが高くなる病気です。早期発見のためには検査が重要になります。正確な臨床検査を行うことができる臨床検査技師は、今後も医療現場で強く必要とされるのではないでしょうか。
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