【20代の不格好経験】キャッシュフローを理解せぬまま起業し、設立5カ月後に「残金5万円」に~株式会社Loco Partners代表取締役 篠塚孝哉さん

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今、ビジネスシーンで輝いている20代、30代のリーダーたち。そんな彼らにも、大きな失敗をして苦しんだり、壁にぶつかってもがいた経験があり、それらを乗り越えたからこそ、今のキャリアがあるのです。この連載記事は、そんな「失敗談」をリレー形式でご紹介。どんな失敗経験が、どのような糧になったのか、インタビューします。

リレー第16回: 株式会社Loco Partners 代表取締役 篠塚孝哉さん

株式会社Speee 代表取締役 大塚英樹さんよりご紹介)

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(プロフィール)
1984年生まれ。2006年に東洋大学経済学部を卒業後、Washington State Universityへ留学、帰国後、2007年に株式会社リクルートに新卒入社し、旅行カンパニーに配属。企画営業として大手チェーンホテルや各地のリゾートホテル、旅館などを担当し、トップ営業として活躍。2011年9月にLoco Partnersを創業し、代表取締役に就任。2013年4月に高級旅館・ホテルの宿泊予約サイト「relux(リラックス)」をオープンする。趣味は旅行、ランニング、ギター、ワインなど。著書に『仕事が速い人が必ずやっている整理の習慣』(かんき出版)。

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▲国内の一流旅館やホテルのみを厳選した、会員制宿泊予約サービス「relux」。100項目にも及ぶ独自の審査基準をクリアした旅館やホテルを厳選して掲載している。現在国内約700件の宿泊施設が掲載中。海外からのインバウンド(訪日旅行)需要に対応するため、英語、スペイン語、中国語(繁体字)、中国語(筒体字)、タイ語、韓国語、ベトナム語、アラビア語、インドネシア語、フランス語に対応

震災後「地域の力になりたい」との情熱に突き動かされ、何の準備もせぬまま起業を選択

 私がLoco Partnersを立ち上げたのは2011年9月。東日本大震災により東北地方が大打撃を受け、日本全体が暗く沈んでいる時期でした。

 前職のリクルートでは、旅行情報サイト「じゃらん」の営業を担当。入社1年目に福島県を担当していたのですが、その時にお世話になったホテルや旅館、ペンションが震災後、次々に潰れてしまいました。こういう宿や地域のために、自分も何かできないか!?という思いに駆られ、独立したんです。

 しかしこの時点では、どんな事業を手掛ける会社にするのか、全く決めていませんでした。従業員は、自分たった一人。あるのは「地域のために何かしたい!」という勢いだけでした。
 このことが失敗だったと、今は思ってはいませんが、立ち上げ直後は「もっと準備をしてからやるべきだった…」と何度も後悔させられましたね。

 会社を作ったからには、何らかの事業を行い、売り上げ・利益を確保しなければならない。幸い、プログラミングやデザインの知識があったので、当座の数字を確保するために企業や宿泊施設のホームページ受託制作を始めました

経理・財務の知識ゼロ、いきなり「黒字倒産」の危機へ

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 前職の人脈を活かし、受託案件自体は順調に集まったのですが、初めにぶつかった壁は「経理・財務」。簿記に関する知識はゼロ、しかしほかに頼る人はいません。売掛金や買掛金なんて言葉の意味も知らないし、キャッシュフローが何を指すかもわからない。必要になった時にその都度、その言葉の意味から調べ、付け焼刃でどうにか乗り切っていました。

 しかし、会社を立ち上げて5カ月が過ぎた2012年2月のある日。200万円あったはずの会社の口座に、わずか5万円しか残っていないことに気付きました。初月からずっと黒字だったのに…なぜ!?と、我が目を疑いましたね。

 当時、受託案件の拡大に伴い、外部のデザイナーやライター、エンジニアなどに仕事を発注するようになっていました。売り上げは確保できているし、従業員は自分一人しかいないから経費もかからないし…と安心し、クライアントに制作料をいただく前に外注先にギャランティをばんばん支払っていたんです。2012年1月は、そういう支払いが約100万円に上りましたが、一方で、あるクライアントからの入金が遅れ、「残金5万円」という事態に陥ったのです。

 ちょうど学生アルバイトを1人雇い始めたばかりだったので、焦りに焦りました。彼に何と言えばいいだろう、黒字で倒産するってこういうことなのか!?…と。

 幸いにして、前述のクライアントからは少しの遅れで入金があり、事なきを得ましたが、これを機にキャッシュフロー管理の重要さを痛感。外注先への先払いは止め、入金管理を徹底するようになりました。

事業の主軸が固まらないまま1年が経過。ようやく「やるべきこと」に気付く

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 このような試行錯誤の繰り返しで、数字に関する知識は何とか身についてきましたが、会社の事業コンセプトはなかなか固まりませんでした。ただ、業務自体はホームページの受託制作だけでなく、クライアントの要望によりFacebookページ(当時はファンページ)制作・運用と広がり、広告代理業にも展開。リソースがないのに、図らずも多角化できてしまい、利益も安定して確保できるようになりました。

 ただ、会社経営としては安定しましたが、「今の業務は、会社を立ち上げてまでやりたかったことなのだろうか?志は別のところにあったはずでは?」と改めて考えるように。このままではいけないと思いつつも、日々の業務に追われ、月日は流れて行きました。

 現在の当社のメイン事業である、会員制宿泊予約サービス「relux」のスタートは2013年3月。会社立ち上げから1年半も間が空いているのは、こういう理由からなのです。

 そんな中、ふと、前職時代から友人に「旅行の際の宿泊先」について頻繁に相談を受けていたことを思い出しました。「彼女との記念日にはどこに泊まればいいか」「両親を連れてゆっくり温泉地に行きたいけれど、宿はどこがいいか」…などなど。そんなとき、私は「海か山か」「どんな料理がいいか」などいくつかの簡単な質問をして、3つに候補を絞って提案。するとみんな必ず、その3つの中から宿泊先を決めるのです。

 大手の旅行サイトを見れば、たくさんの候補が載っているのに、そこから探すのではなく私に聞いて決める。つまり人は、情報量があまりに多すぎると、その中からなかなか1つを選び切れないものなのです。クチコミ情報もありますが、さまざまな意見があるため、やはり判断に迷います。結果、「何となく」で決めてしまって後悔する――。この状態を解消できるメディアを、自社で作れないか?と考えるようになったんです。そう思いついたのが、創業して1年が経った2012年9月ごろでした。

 その後、リクルート時代の先輩であり旅行業界にも精通している塩川にジョインしてもらい、事業アイディアを練り上げ、宿泊者目線で100項目による独自の審査基準をクリアした旅館やホテルのみを掲載する「relux」をリリース。サイト上で宿の魅力を十分に伝えることで、「その地に行き、この宿に泊まってみたい」と思う人を増やすことができれば、その地域の活性化につながる。…ようやく、創業時の想いを具現化することができました。

一生懸命頑張った経験の数々は、必ず一本の線になり、将来につながる

 もしかしたら、回り道をしているように見えるかもしれませんね。私も初めはそう思っていました。でも結果的には、「relux」リリース前の業務内容やご縁が、全て今につながっていると感じています。

 ホームページの受託制作やFacebookページの制作・運用業務のクライアントは、前職時代にお世話になった宿泊施設が多く、サイトイメージができる前から「おたくのサイトならば掲載するよ」と言っていただけたんです。それまでに築いた信頼関係があるからこその言葉で、厳しい審査についてもご納得をいただけました。「篠塚が頑張っているから」と前職時代の同期や先輩から紹介をいただいたご縁も数多くあります。

 過去の頑張りは、それぞれを見ると「点」ですが、一見無関係に見える点同士であってもいずれはつながって「線」になる――スティーブ・ジョブズも言っていたことですが、まさにそれを実感しています。前職の営業時代に努力したからこそ、同僚や先輩にサポートいただけたのだと思うし、会社立ち上げ後も目の前のできることに全力投球してきたからこそ、クライアントから信頼をいただくことができて、今につながっているのだと。

選択までに迷い過ぎると、選択したことで満足してしまい、先に進めなくなる

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 事業内容も何も決めず、情熱に突き動かされて勢いで会社を立ち上げた私ですが、今では「それが良かったのだ」と心から思っています。

 今の若い人を見ていると、「アイディアを行動に移すまでが非常に遅い」と感じます。考えられるリスクをできるだけ潰そうとし過ぎて、リスク探しばかりに必死になっていたり、「他の選択肢もあるんじゃないか」と考え、本当はAからCの中で選べばいいのに、Zまで考えてしまう。それに、考え、悩んだ挙句に時間を出して選択すると、「選択したことで満足」してしまい、先に進めないケースも考えられます。

 どの選択肢を選ぼうが、実は大した意味はなくて、どれを選んだって成功させればいいだけの話。まずはどれかを選び、選んだ後に改善すべき部分をチューニングしながら前に進めば、必ず成功にたどり着けます。

 私の場合は勢いで、迷うことなく「起業」という選択をすることができた。結果、何度も何度も試行錯誤させられ、失敗や苦労も何度も経験しましたが、壁にぶつかるたびに深く考え、学び、改善しながら進んできたからこそ、全てが糧になって今につながったのだと確信しています。これからも「悩むヒマがあったら、まずは行動」をモットーに、突き進んでいきたいと思っています。

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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