【20代の不格好経験】この事業は当たる!と確信して起業したのに、売り上げゼロ。わずか半年で畳むことに~八面六臂代表 松田雅也さん

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今、ビジネスシーンで輝いている20代、30代のリーダーたち。そんな彼らにも、大きな失敗をして苦しんだり、壁にぶつかってもがいた経験があり、それらを乗り越えたからこそ、今のキャリアがあるのです。この連載記事は、そんな「失敗談」をリレー形式でご紹介。どんな失敗経験が、どのような糧になったのか、インタビューします。

リレー第10回: 八面六臂株式会社代表取締役 松田雅也さん

株式会社マネーフォワード代表取締役社長・CEO 辻庸介さんよりご紹介)

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(プロフィール)
1980年大阪府生まれ。2004年京都大学法学部卒業後、UFJ銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。翌年ベンチャーキャピタルに転職。2007年に電力購買代理ビジネスで起業するがうまくいかず、休眠状態に。2009年に、総合物流会社に入社し、ITを駆使した物流ビジネスの経験を積む。2011年、休眠会社においてインターネットを駆使した生鮮流通サービスを立ち上げ、第二の創業を実現。

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▲全国の産地市場や築地市場などから仕入れた水産物を、インターネットと物流を駆使して飲食店に販売する。中間業者を減らすことでコストが削減できるうえ、流通時間も短縮できるのでより鮮度の高い商品を届けることが可能に。今後は野菜や肉、米、酒類など取り扱い商品を増やし、「インターネットを駆使した料理人向けの生鮮流通プラットフォーム」を目指している

■顧客ニーズがないところでビジネスは成立しないと痛感

 2011年に、水産物のECビジネスを手掛ける「八面六臂」を立ち上げましたが、実は起業したのは2007年のこと。しかし、わずか半年で事業がとん挫してしまい、長らく休眠会社化していました。
 
 当時は、民間企業の電力分野への新規参入が相次ぎ、電力ビジネスが盛り上がりを見せていた頃。都銀を経てベンチャーキャピタルに勤務し、新しいビジネスの芽は常にチェックしていたので、壮大で面白そうな分野だと早くから注目していました。
 ベンチャーキャピタルを退職し、次のキャリアを模索していた時、「民間電力供給会社の販売代理業をビジネスにすれば当たるのでは?」と思いつき、資本金300万円で会社を設立しました。26歳の時でした。
 民間電力供給会社に片っ端から当たって「電気を売らせて下さい」と頼み込み、ようやく数社と契約。それはそれで無謀ですが、よくやったかと思います。そして、営業ターゲットであるビルのオーナーや施設運営会社に、勇んで売りに行きました。電力会社を民間に切り替えれば、年に数パーセント程度の電力コスト削減になります。電気を多く使うビルや施設であれば、スケールメリットを感じて下さると考えたのです。

 しかし、全く売れませんでした。民間企業が電力を販売するという認知がまだなかったうえに、そもそもニーズもなかった。認知が高まった今であれば、反応は違っていたのかもしれませんが、当時は「電気代が数パーセント下がる程度ならば、面倒くさいからいいや」という声ばかりでした。顧客ニーズのないところでビジネスが成立するはずはない。自分一人で「マーケットは大きい!ニーズは絶対にある!」と思い込んでいましたが、それではダメなのだと思い知らされました。ベンチャーキャピタル時代は、投資先であるベンチャーの事業計画書にとやかく言っていたのに、実は商売のしくみが全くわかっていなかったんですね。

 売り上げは全く上がらず、ゼロ円続き。しかし、オフィスと自宅の家賃、その他諸経費で月に50万円は出ていく。資本金は300万円ですから、きっかり半年で首が回らなくなりましたね。生活費を稼ぐために採用広告や携帯電話などの販売業などで食いつなぎ、その後、銀行時代の知り合いに紹介された物流ホールディングスのIT子会社の立ち上げにジョインすることになりました。

 振り返ってみれば当時は、「このビジネスを世に広めたい!」などという大きな目的があったわけではなく、単に起業家になりたかっただけだった。この失敗で、ビジネスは顧客のためにやるべきであって、自分のためにやってもうまくいくはずはないという、極めて当然でシンプルなことに気づかされました。

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■水産業界関係者、飲食店の生の声をつかんでから、二度目の創業へ

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 現在のビジネスを手掛けるようになったのは、前職の物流ホールディング会社時代に水産業界関係者に出会い、旧態依然とした水産流通への課題感をつかんだのがきっかけ。水揚げされた水産物は、漁業者から漁業組合、産地市場、消費地市場(東京で言えば築地市場)、納品業者を経て、ようやく飲食店などエンドユーザーへと渡ります。流通過程に入る仲介業者が非常に多いので、時間もコストもかかるし、何より鮮度も失われる…という悩みに触れ、「手掛けるべきビジネスがここにある」と感じたのです。
 前回と同じ轍を踏まないよう、他の水産業界関係者や飲食店、プロの料理人などに話を聞きながらビジネスのイメージを固め、「インターネットを駆使した料理人向けの生鮮流通プラットフォーム」を作ることを決意、2011年に休眠会社を復活させて八面六臂として再スタートを切りました。

 今回は、目の前の「困っている人(飲食店)」の存在と、「そのようなECサイトがあれば今すぐ使いたい」という声があったから、必ず成功するという確信と、困っている人の役に立ちたいという使命感を持って、事業を立ち上げることができました。

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■一度失敗を経験すれば、落とし穴の位置も深さもわかる

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 今思えば、一度目の事業立ち上げの失敗は、必要な経験だったのだと実感できますね。一度失敗を経験すれば、どこに落とし穴がありそうか見当がつくし、穴の深さも予測できるようになります。穴に落ちないように事前に手を打てたり、這い上がって来られないほどの穴は避けて通れるようになるはずです。また、若いうちに失敗を経験できたのもよかったと思っています。再び這い上がるための体力も、精神力もありますからね。

 今の若い人の中には、失敗を恐れてチャレンジしない人が見受けられますが、失敗してみないと、本当の自分に気づくこともできないと思いますよ。
 たとえは変かもしれませんが、高嶺の花の女性へアタックするのと同じ。断られることを恐れずデートに誘ってみて「服装がダサいからイヤ」と断られたら、おしゃれな服に着替えてまたチャレンジする。「清潔感がないからイヤ」と言われたら、顔を洗ってひげをそって、またチャレンジしてみる。これをひたすら続けていけば、その女性好みの男性に徐々に近づき、いつかOKをもらえるかもしれません。このように、チャレンジで気づいた「自分のダメな点、足りないもの」を改善し続ければ、成功に近付けるものです。

 私は、人間、いつ死ぬかわからないと思って毎日を過ごしています。最期の瞬間に「ああ、あれをやり残した」と後悔したくないから、やるべきだと思ったことにはどんどんチャレンジを続けています。
 明日で人生終わりかもしれないと考えると、今やるべきことが明確に見えてくるし、すぐに行動にも移せます。明日で終わりだってときに「失敗するかも…」なんて、誰も恐れないでしょう?
 人生は有期だと考えると、今日のこの一日がとても大切。毎日が充実するし、精力的に行動できるようにもなりますよ。

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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