【20代の不格好経験】オフィス家賃15万円を振り込むところを、間違って150万円振り込み、創業資金の大半がなくなる危機に~nanapi代表取締役 古川健介さん

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今、ビジネスシーンで輝いている20代、30代のリーダーたち。そんな彼らにも、大きな失敗をして苦しんだり、壁にぶつかってもがいた経験があり、それらを乗り越えたからこそ、今のキャリアがあるのです。この連載記事は、そんな「失敗談」をリレー形式でご紹介。どんな失敗経験が、どのような糧になったのか、インタビューします。

リレー第6回:株式会社nanapi代表取締役 古川健介さん

キラメックス株式会社代表取締役社長 村田雅行さんよりご紹介)

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(プロフィール)
1981年生まれ。浪人時代に受験生向け情報サイト「ミルクカフェ」を立ち上げ、早稲田大学政治経済学部経済学科在学中に起業。大学卒業後は「ビジネスパーソンとしてオカネを稼ぐ力をつけるため」にリクルートに就職。2009年に生活の知恵があつまる情報サイト「nanapi」を立ち上げる。

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▲生活やビジネス、恋愛、料理など、あらゆるジャンルのハウツーを集めた「nanapi」。現在掲載中のライフレシピは10万件超に上る。

■得意な人が、得意な分野をやるべきだ、と気づく

 今までを振り返ってみても、「失敗」と呼べるような大きな失敗はした覚えがないんですよね。単に忘れているだけかもしれませんが…。
 ただ、細かいミスレベルであれば、いろいろやらかしています。その中でも、「アレはちょっと慌てたな」というミスは、創業まもない頃、不動産屋にオフィスの家賃15万円を振り込むところを、間違って150万円振り込んでしまった、というものです。

 当時はお金が全然なかったので、150万円は、創業時の銀行口座のほぼ全部でした。すぐに気づき、不動産屋さんに電話しましたが、あまり働かない不動産屋さんだったので、午後は全部休んでいて、電話に出てくれなかったんですよね。
もともと、その不動産屋さんもゆるくて、1カ月や2カ月家賃を滞納しても全く気づかないんですけれど、もしかして電話も一切つながらないんじゃないかとちょっと焦りました。次の日にようやくつながったので事情を話すと、「あー、はいはい。じゃあ振り込み返しておきますねー」と。数日後に135万円、ちゃんと振り込んでもらいました。今となっては、笑い話ですね。

 創業期は、こんな些細なミスの連続でした。まだ人手が少なく、僕が会社のお金のすべてを管理していた時代です。請求書作り、出入金管理、給与計算、家賃や光熱費の振り込み…ありとあらゆることをやっていましたが、実は細かい日々のお金の管理が苦手なんです。気をつけていても、社会保険料の率が変わるなど、細かい動きを把握できなくて、給与を間違うこともありました。その結果「ビジネスにおいては、得意な人が、得意な分野をやるべきだな」と思うようになりました。
 お金の管理が得意な人を採用し、仕事を任せる、税理士や会計士などの外部のプロにも積極的に入ってもらう、というやり方を取るようになって、お金にまつわる小さなミスはほぼなくなりました。

■「好き」を軸に行動すれば、苦手なことも好きになれるし努力もできる

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 苦手な分野を克服するべく努力するのは、素晴らしいことです。でも、僕の経験から言えば、「苦手なことを一生懸命頑張ったところで、普通の人どまり」。それよりも、得意な分野に注力したほうが、価値が発揮できると思っています。

 僕は、子供のころから基本的に何をやってもダメなタイプでした。しかも、努力が苦手なので、「苦手なことを克服するのが大事だ!」と言われても、頑張れないんですよね。そんな中、嫌なことを努力したところで、その分野でスゴい人にはなれるはずもなく、せいぜい普通の人どまりなのだから、無駄だなあ、と思うようになりました。それよりも、10時間やっても20時間やっても楽しいからやれる、というものをやろうと。
 また、「やらなければいけない」ことも、楽しく好きなものにすることで、成果を出す…ということも大事にしています。例えば、高校生時代の僕にとって、好きなものは「ネット」でした。大学受験のための勉強をしなければならないけれど、いやいや勉強するのではなく、大好きなネットと掛け合わせれば楽しく勉強ができるのではないか?という発想で、受験生向け情報サイト「ミルクカフェ」を制作。ここで、いい参考書や勉強法などの情報を得ることができ、無事に大学に合格できました。大学に入るための受験勉強はつらいけど、サイト運営のための勉強だと思うと楽しめるよね、という考え方です。

 その後も、同じやり方で、ネットという「好き」を軸に就職、起業…と歩んできました。創業時代の細かいミスは、「経営者たるもの、お金の管理や労務も頑張らないと!」と気負って「苦手なものを好きにする」という基本を忘れていた結果、強みを活かせないどころか、トラブルを起こしてしまったのだととらえています。

■社員のマイナスを見すぎず、プラス面を見て評価するように

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 現在ももちろん、基本スタンスは変わりません。自分の行動を決める時もそうだし、社員を評価するときもマイナス部分ばかりを見ず、ポジティブな部分に注目し、評価するようにしています。

 最近ウチに中途入社した、「イケてるしヤバい男」としてネット上で有名人になった長島も、イケてるしヤバイな~と思って採用したのですが、採用後、実は予想外に生真面目な性格で、営業能力やコミュニケーション能力はもちろん、業務改善の提案や周りを巻き込む力も高いとわかったんですよね。こうしたパッと見ではわからない「隠れた得意分野」をも、見逃さないようにしたいと思っています。

 自分のダメな部分ばかりを見て落ち込んだり、自信をなくしてしまっている人を見かけることがありますが、時間がもったいないって思いますね。そんな暇があったら、自分が得意な部分を磨いたり、好きな分野を極める努力をしたほうがいいのではないかな。時間は有限です。できるだけ有益なものに集中投資したほうが、効率がいいと思いますよ。

※次回は、古川さんのご紹介で、ピクシブ株式会社 代表取締役社長の片桐孝憲さんが登場します!

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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